甘くてファンタジックな夢の世界を作り出す! スイーツアーティストとは?
甘い物が好き、かわいい物が好き、手先を動かして何かを作ることが好き…。
そんな人にピッタリの“スイーツアーティスト”というお仕事があるって知ってる?
今回は、スイーツアーティストというジャンルを確立し、その道のプロとして活躍するKUNIKAさんに、詳しい仕事内容やこの仕事を始めたきっかけについて聞いてみることに!
展示や撮影に使うデザイン性の高いスイーツを作るのがスイーツアーティストのお仕事
撮影する雑誌の世界観や、ハロウィン、クリスマスなどのイベントに合わせてデザイン性のあるケーキやクッキーを作るのですが、私が始めた4年前は、まだこの仕事のジャンルに名前がありませんでした。
それで、何かわかりやすい言葉はないかな…と考えて、“スイーツアーティスト”という肩書きを付けることにしました」
スイーツアーティストは、KUNIKAさんが名付けたものだったんだ!
でも、新たな職業のジャンルを確立するなんて、かなり大変そう…。
どんなきっかけで、この仕事を始めることになったの?
やっぱりもともとお菓子作りが好きだったとか…?
中学時代の“職業体験”が夢をみつけるきっかけに!
でも、中学1年生の時に学校の授業の一環で、たまたまケーキ屋さんに職業体験に行くことになり、そこで、イチゴのデコレーションケーキを初めて作ったら、とても楽しくて!
しかも、それを家に持って帰ったら母や祖母がとってもよろこんでくれたんです。
その時、『作っている自分も楽しくて、人にもよろこんでもらえるなんて、ケーキ屋さんってなんて幸せなお仕事なんだろう』と思ったんです。
それがきっかけで、『高校でもお菓子の勉強がしたい!』と思い、フード関係の科目も学べる単位制の高校に進学しました」
中学生で、すでに将来の仕事のことを考えて進路を決めていたなんてすごい…!
その後、高校で栄養学や製菓についての基礎を学び、卒業後は製菓の専門学校に進学したというKUNIKAさん。
在学中は、夏休みなどの長期休暇を利用して、ホテルの中にあるデザート類を専門に作る“ペストリー”という部門でインターンをしていたとか。
夢に向かって一直線の学生時代を過ごし、専門学校を卒業した後は有名ホテルのパティシエとして働くことに!
パティシエから“スイーツアーティスト”への転身
ただ、外資系の高級ホテルだったので、お客様の前にパティシエが立つことはありませんでした。
修業を始めて2年経ったころ、最初にケーキ屋さんを目指したきっかけでもある『誰かのよろこぶ顔が見たい』という思いを大切にしようと決め、別の道を探すことにしました」
ホテルでのパティシエを辞めた後は、どういうきっかけでスイーツアーティストに…?
それは、仕事でもなんでもなくて、ただみんなのよろこぶ顔が見たくて作っていました。
そしたら、それがたまたまモデルのAMOさんの目に留まって、スタイルブック用の小道具を作ってくれないかとの依頼が舞い込んで来たのです。
私自身、昔からAMOさんの大ファンだったので声をかけてもらえるなんて夢みたいでした。
しかも『趣味として楽しんでやってきたことが仕事になるんだ!』と、とても感激しました」
偶然の出会いがきっかけなんて、なんだか運命的…!
その本が出版されてからは、『このスイーツを作っているのは誰なんだろう?』と私のことを探して連絡をくださる方がちょっとずつ増え始めて。
そこから、雑誌のお仕事やデパートでの展示につながっていきました」
“大好きなお菓子を作って人をよろこばせたい!”という純粋な思いが、パティシエともケーキ屋さんとも違う、スイーツアーティストという新たな道に繋がったんだ!
やり直しがきかないからこそ打ち合わせが大事! 具体的な仕事の流れとは?
「製作のご依頼をいただいたら、まずは細かく打ち合わせをします。
『KUNIKAさんのイメージでおまかせします』という場合もありますが、『マリーアントワネットのような世界観の写真を撮りたい』『カラフルな色で統一したい』などの世界観やコンセプトが決まっている場合も多いので、製作前にそれに合うスイーツのイメージを共有していきます。
スイーツといってもいろいろあるので、ケーキを作るのか、アイシングクッキーを作るのか、それともゼリーなど別のものを作るのか…。大きさや個数はどれくらいにするかといったことも、最初の段階で具体的に決めていきます。
それが決まったら、今度はイメージをイラストにします。
スイーツは、一度作ってしまうと、あとから色を変えたり形を変えたりすることができないので、色の指定がある場合はイラストの段階で確認してもらいますね。
ここで何度か修正を重ねて、OKが出たらいよいよ製作に取りかかります」
デジタルな作業と違って、できあがったスイーツは色や形を変えたり、もとに戻したりできない分、製作前の打ち合わせが大切なんだ。
撮影などの小道具の場合は、数はそれほど多くないのですが、以前プチギフトとして200枚アイシングクッキーを作ってほしいという依頼を受けたことがあって。
そのときは、今日は材料を混ぜて生地をひたすら仕込む日、翌日は型を抜いてひたすらクッキーを焼く日、その次の日はアイシング(お砂糖と卵白を混ぜ色をつけたもの)で、ひたすら模様を描いたりデコレーションをする日…なんてこともありました」
1人で200枚ものクッキーを作るなんて大変…!
スイーツ作りは一発勝負! 下書きをしないのがKUNIKAさん流
KUNIKAさんの自宅には、オーソドックスなものから珍しいものまで、さまざまな形の型抜きが数百種類近くあるというからすごい!
「型は、日本のものだけでなく海外で買うことも多いですね。ただ、依頼によっては市販の型を使わないこともあります。
例えば以前、雑誌のロゴをクッキーで作るというお仕事がありました。その時は、型がないのでクッキー生地をナイフで切ってフリーハンドで作りました」
生地をカットする時だけでなく、焼き上がったクッキーに絵や文字を書くときも下書きを一切しないのがKUNIKAさん流なんだとか!
誰もマネできないKUNIKAさんのセンスがあるからこそ、仕事の依頼が絶えないのかも。
想像以上に手間と労力がかかる作業…。これってだいたいどれくらいの期間で行うものなの?
ただ、ものによっては発注から納品までが1週間しかない…なんてこともあります(笑)」
そんな短期間で完成させなければいけないこともあるなんて…大変!
溶けたりしぼんだり…。スイーツならではの苦労もたくさん!
ほかにも、スイーツならではの大変さや工夫が必要なことも多いとか。
例えば、ケーキの土台は本物のスポンジを使うと空気が抜けてどんどんしぼんでしまうので、発泡スチロールで土台を作って、その上にデコレーションをしていきます。
生クリームを使うと、溶けたり色が変わったりしてしまうので、お砂糖を練ってペースト状にしたもの絞り出して、飾りつけをします。
これなら、時間が経つとカチカチに固まるので長期間の展示にも耐えられるんです。
短時間の撮影の場合でも、照明の熱で溶けたり、持ち運ぶときに転んだりして迷惑をかけないよう、プロとして“崩れない工夫”は不可欠です。
こうした技術には、パティシエ時代に培った巨大なウエディングケーキ作りのノウハウが生きていますね」
型くずれを防ぐため、現場でスイーツを仕上げることも!
ちなみに、「食べるシーンを撮影したい」「ケーキの断面を見せたい」というオーダーの時は、スポンジを使った本物のケーキを現場に持参することも。
カメラマンさんやモデルさんたちが撮影準備をしている横で、30分から1時間くらいでパーッと飾りつけをしなければいけないので、緊張感があります」
すごいプレッシャー!
壊れやすいスイーツだからこそ、最高の状態で提供するには事前の工夫と現場での対応力が必要なんだ!
スイーツアーティストの魅力とは?
想像以上に根気と集中力が必要なスイーツアーティストのお仕事。そんな大変な仕事を続けていける魅力って?
以前、水族館から『クリスマスのイベントで水槽に光や花を投影するプロジェクションマッピングを行うので、それに合う幻想的なイメージのケーキを作ってほしい』と依頼されたことがあったんです。
実は私は、もともとダイビングが大好きで、海の中のカラフルな魚やサンゴ礁の色に自分の作品が影響を受けている部分も大きいので、『まさか、自分が大好きな海とスイーツが重なるなんて!』とすごくテンションが上がりました。
ほかにも、ファッションブランドさんから『お洋服のイメージに合うスイーツを作ってほしい』という依頼を受け、できあがったスイーツがTシャツやワンピースの柄になったこともあります。
あとは、お花屋さんのカレンダー撮影用に、靴にアイシングでデコレーションをして花を生けたり…。
スイーツとはかけ離れたものが結びついて創作できるのが、スイーツアーティストならではの魅力だと思います」
スイーツの枠を飛び出した仕事内容は、まさに“アーティスト”!
同じ作品を作ることは二度とないからこそ、刺激的でワクワクするのかも!
これからは、本場イギリスに渡ってさらに技術を磨きたい!
スイーツアーティストとして多忙な日々を送るKUNIKAさんの今の夢は…?
今のお仕事も大好きなので、依頼を受けて創作するものが半分、自分の好きなものを作ってオンリーワンの場所を作るのが半分…というバランスで続けていけたらいいなと思っています。
ただ、お店を持つと長期休暇を取るのが難しくなってしまうので、実は今年の夏から思い切ってイギリスに渡ることに決めました。
シュガークラフトが盛んなロンドンで、スイーツと語学の勉強をして自分の作品の幅を広げたいなと思っています」
すごい行動力!
現状に満足せず、常に夢に向かって進む姿はカッコイイ!
では、スイーツアーティストを目指す高校生が今からできることって何なんだろう?
今は、アイシングクッキーの作り方など、ネットにはたくさんのレシピがあって上手な方も多いのですが、仕事にするならまずはやっぱり専門学校でしっかりと学んで、ちゃんと就職してから自分の好きなことをやるほうがいいと思いますね。
私も、もしホテルでの就職を経験せずにいきなり一人で今の仕事を始めていたら、『仕事』に対する責任感や礼儀作法なども知らないままだったと思います。
あとは、目標を声に出していうこと!
心の中で思っているだけでなく、声に出して言うと自分の耳にも届くので、改めて目標を意識することができる気がします。
そうすることで、日頃の生活でも『これは見ておいた方がいいな』とか『これは将来に役立ちそう』と無意識のうちに夢に近づく行動が取れると思います」
甘くてファンタジックな世界を生み出すスイーツアーティストのお仕事。
好きなことを仕事にするのは大変なことも多いけど、それ以上に楽しくて幸せな気持ちになれるみたい。
お菓子作りが好きな人は、夢の選択肢のひとつとして考えてみては?