人気美容師「中村トメ吉」さんにインタビュー!時代を拓く美容師になるまで
今や誰もが知る人気美容室「OCEAN TOKYO」を立ち上げた中村トメ吉さん。人気絶頂の中、2019年「GOALD」をオープンして話題をさらいました。
今回は、高校時代の過ごし方から、メンズ美容師・経営者になった今に至るまで、話を聞いてきました!
目次
動機は常に、「目立つ」「モテる」「かっこいい」!
ー美容師になろうと思ったきっかけを教えてください!
実は、高校卒業後はバンドで一花咲かせてやろうと思っていて、美容師になろうと思ったのはその後だったんです。
当時バンドブームに乗り音楽をやっていたら、高校生バンドの全国大会で優勝したんです。
バンドで飯を食うと決心し、自分はギターと作曲を担当していたので、専門学校で音楽を学んだほうがいいかなと思い、特待生枠をもらえたということもあり、音楽の専門学校に行くことにしました。
「ロックってかっこいい人が集まるんだろうな」と胸を膨らませて2月のオープンキャンパスに参加したら、参加者がロックというより、どちらかというと内向きに音楽が好きという人が多くて。
直感的に、これは合わないなと。先生に、「基礎からロックは生まれないんですよ」と謎の上から目線で言い放ち、その日のうちにやめてしまいました。
今思うと、自分で選んだんだろ!と思いますが(笑)。
ー高校生のころからすごいエピソードをおもちですね!その後、美容の方向に興味が湧いてきたのですか?
X JAPANのhideが好きだったんですが、hideは音楽をやりながら美容学校に行って美容師資格を取りました。
ちょうどそれが頭にある時に、高校の先生と話をしたら、今からだったら美容学校しか行けないと告げられ、そのまま美容学校に行くことになりました。選択肢がなかったのですが、おしゃれが好きだったので、まあいいかな、というノリでしたね。
ー初めから美容師一本と思っていたので、意外でした!おしゃれが好きだったとのことですが、高校時代は何にポイントを置いて過ごしていましたか?!
もうこれは、「目立つ」「モテる」「かっこいい」に尽きますね。
すべてこの軸をもとに行動していました。
自分にとって、人生において熱くなれるポイントが、主に「恋愛」なんです。
例えばあこがれの人がいて、その人を振り向かせることができなかったら、「じゃあどうしたら心を掴めるのか」と考え抜いて色々なことにチャレンジしていた日々でした。
わかったのは「行動は、持って生まれたものを凌駕する」こと
ーなかなか心が掴めなかった女性がいたとか…どんな体験だったんですか?
中一の時に好きな子がいて、めちゃくちゃアプローチしました。
そうしたら、学校に絶対に1人はいる、いわゆる長身イケメンのことが好きだと言い出したんです。
しかも、その子、そいつとはしゃべったことなかったんです。
それって見た目だけじゃん…と大きな衝撃を受けました。
見た目は持って生まれたもので変えられなくて、でもそこで判断されるというのは、不平等な世の中だなと。
でもそこであきらめず、それだったら振り向いてもらうために何ができるかを考えて、色々やってみようと心に火がつきました。
ー具体的にはどんなことをやったんですか?
勉強、スポーツ、部長、生徒会長、おしゃれ、それプラス他のやつより圧倒的な行動力を持っていたらいいんじゃないかと思って、中学生ながらに原宿に行って地元では浮くようなファッションをして最新のものを取り入れて、なんでもできる人になろうとしていました。
結果、好きな子を振り向かせることはできなかったけど、振り返ったら長蛇の列ができるほどめっちゃモテてました。
自分で言うのはあれですけど(笑)。
その時わかったことは、「行動は持って生まれたものの力を上回ることができる」ということです。
最初は見た目のいいやつが注目されますが、行動によって努力して得た経験をベースに日々を送ることで、この人おもしろい、かっこいいという印象で逆転できるんです。
見た目のいいやつはそれだけでモテるので、あまり努力しませんからね。
もちろん、自分がその立場だったとしても努力しないと思いますが(笑)。
その時の、「コンプレックスをどう克服するか」「それを原動力にしてどう行動するか」という経験が、「自分の体験を同じメンズに伝えていきたい」という、今の自分の理念につながりました。
あこがれのサロンに二度挑戦するも、挫折
ー中高時代から今の理念のもとになるものが作られていたのですね。美容学生時代は、どんな風に過ごしていたのでしょう?周りは行きたいサロンやあこがれの美容師の話をしていましたが、自分は興味がまったくなかったので、ギャップを感じていました。
そこに知ったかぶりで入るよりは、バンドのほうが楽しいと思い、バンドにさらにのめり込んでいました。
でも、授業はまじめに参加していました。
時間はなるべくバンドに充てたかったので、朝練や居残り練習をしなくて済むように、授業中はものすごく集中してその時間だけで吸収できるようにして。
電車に乗ってる時、頭の中で反省会をして次の日の質問内容をまとめて、実践してみてまた反省して、という今でいうPDCAを毎日回していました。
ーやりたいことがあるから効率よく時間を使うという意識が自然と芽生えたのですね。就活はどうしましたか?
「目立つ」「モテる」「かっこいい」の三原則通り、当時もっとも目立っていた人気美容室「SHIMA」に行こうと思いました。
当時、有名サロンをアポなしで30件訪問して、行きたいサロンを探したんですが、残念ながらなかったんです。
そこで、やはり「SHIMA」だなと。
それまでの人生はわりと順風満帆に進んでいたのですが、なんと選考に落ちたんです。
納得いかなくて、事務所に乗り込んで落ちた理由を聞いたら、有り難いことにもう一度面接してくれることに。
が、また落ちました。
なぜ落ちたかを考えつつ受かった人を見ると、自分との違いがはっきりわかりました。
ーどんなところが違うと思いましたか?
センスが違いましたね。
センスは、こだわり続けた末の集大成なんですが、自分はこだわりというより真似をし続けていたのに対し、彼らはオリジナルの個性があった。
そこで一旦就活をやめたんです。
卒業してから内定がなかった状態ですね。
その後、5月にタイミングよく、当時としては珍しいメンズに重心を置いた美容室に入社が決まりました。
ただ、2カ月でクビになってしまったんです…。
ーたった2カ月で!? 何があったんでしょう?
指示の理由に納得できないと、なんでやらなきゃいけないんですか?といちいち言い返してしまっていたんです。
汚れていない鏡を拭くルールに歯向かったりいろいろなことがありましたが、一番のきっかけになったのが、店内に虫が入ってきた時です。
先輩的には殺してほしかったんですが、自分は取って窓から逃がしたんです。
そしたら、虫を取ることもできないんだなと怒られてました。
先輩の中では「虫を取る=虫を殺す」というルールだったんですね。
何に対しても命を大切にする主義の僕は、そしたら上司の指示であればなんでもしなきゃいけないんですか?と言い返してその場で手に持っているものを投げつけて、クビになりました。笑
ーこれは高校生も同じようなシチュエーションになることがありそうですね。合わない価値観を押し付けられながら従うよりは、ほかに行く選択肢を選ぶほうがいいこともありますよね。
そうですね。
ただ、悔しくて泣きました。
当時のオーナーが、「おれはお前みたいなやつ好きだよ」 と言ってくれて、でも今の店だと厳しいから、知り合いのサロンを紹介すると言ってくれたのですが、これを機に美容業界以外の世界も見てみようと思い、10カ月フリーターをやったんです。
営業、路上での声がけ、女性相手の接客業、芸能系のエキストラなど単純な興味で選んでいました。
10カ月のフリーター生活を経て見えたビジョン
ー幅広いですね!そこで、美容業界に戻ろうと思ったのはどんなきっかけがあったんでしょう。
その時、いろいろな経験や挫折を味わって、もちろん男としてのコンプレックスもあって、自分と同じような思いを抱えた人たちをプラスの方向に導きたいと強く思ったんです。
美容師はそれができると思い、美容室に戻りました。
この10カ月の間に、メンズ専門の美容師になって彼らの後押しをするという今のビジョンが明確に生まれました。
ーその美容院では何ごともなく…?
長い間フリーターだったので焦る気持ちもあり、また彼女に振られたのもあり、自分を変えなきゃいけないと思って、意識や考え方を切り替えました。
また、付かせていただいた先輩がとても怖い方だったんですが、この人の言うことだったら聞こうと思えたのも大きくて。
言葉の裏に育てようという愛情を感じる人だったんですよね。
ー意識の切り替えも、行動の末にあったことなのですね。自分で会社を作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょう?
もともと、人の下には絶対にいれない人間だとわかっていたのと、学生時代に有名美容室30件を回った時に良いところがなかったので、自分で作ろうと思ったのがきっかけです。
28歳で独立するためのキャリアを描いて、公休以外の休みを取らずに走り抜けました。
25歳、年収1000万円でも「まだ足りない」
ーお聞きしにくいのですが、その時のお給料はどうだったのでしょう。25、26歳の時に店長になり、雑誌にも出まくってたくさんのお客さまを接客していたのでその分の成果報酬があり、年収は1000万円を超えていました。
自分一人だと1日の接客数に限りがありますが、自分の成功体験の最大化と、メンズ美容室という価値を世の中に広げたいと思って形にしたのが、共同代表という形でつくった「OCEAN」です。
立ち上げる前も、もっと稼ぎたい、モテたい、という軸に従っていました。
ーその時、お金もあって目立って、もうだいぶ満たされていると思うのですが、さらにモテたいと思ったんですか?
そうなんです…。
これも恋愛の話になりますが、自分ではかなりイケてるほうだと思っていたんですが、当時とても好きだった人にまったく相手にされなかったんです。
その人が急に結婚して、その相手の年収が、なんと1億。たしかに勝てないなと思い、そこから目標を更新して独立へさらに弾みをつけました。
毎月50万円貯金して開業準備をしました。
成功の先に見えた「ハサミを置いて、経営者に」という想い
ー行動力と意志の力がすごいですね!
そこで「OCEAN」を作り、その後「GOALD」を立ち上げたんですね。
どんな思いがあったのでしょう?
店を3年ほど回したころ、自分がやりたかったことはだいたいできた、理想が形になったという時に、会社としては順調にお客さまや売り上げが増えていたものの、振り返ってスタッフの顔を見たら、浮かない顔をしていたり、やめる子が出てきたんです。
そういう状況が起きている時点で、自分は失格じゃないかと思ったんです。
そこから、フォーカスが変わっていきました。
ーどのように変わったのでしょう。
「ハサミを置いて、経営者になりたい」と思ったんです。
ITや他業界の経営者と話し、本で学ぶうちにきづいたのが、会社のしくみの面でした。
当時は給与を開示しているところがあまりなくて、入社してから昇給・昇進のシステムが知るのが当たり前でした。
「OCEAN」は前に在籍していた店を参考に作ったのですが、時代の動きにきづいて他の美容師やサロンの情報を集めたところ、他社は制度がより整っているという実情を目の当たりにしました。
ー時代の流れにきづかれたのですね。そこから、どうされたのでしょうか。
これだけはやって売れて大きくなって多店舗展開もしていったので、その分、組織や給与体系、キャリアパスなどのしくみを変えるのが難しい一面もありました。
そういう状況を作ってしまったのは、もちろん自分なのですが。
そこで、すでに大きくなった組織を変えるより、新しく作ったほうが、関係者みんなにとって良い結果が生まれることもあると考え、「GOALD」をオープンしました。
この記事を見てくれている高校生には、「変化を恐れるな」と伝えたいです。
時間が流れて生きている限り、明日には変わっているかもしれない、その場面になった時に、本気で向き合い考えて行動してほしいと思います。
1人の高校生の丸刈りをきっかけに「校則改革プロジェクト」始動
ー考えて、行動する、ということですね。「GOALD」では、校則について違和感をもち、実際に働きかけている美容師の方がいるとお聞きしたのですが、その部分ともつながる話ですね。何があったのでしょう?
(米田星慧さん)
きっかけは、高校生のお客さまがツーブロックを入れた後、1週間後に僕のところに走って来て、「米田さんすみません!校則に引っかかり、坊主にされました」と泣きながら話してくれたことです。
そんなことがまかり通るのかということと、悲しそうで悔しそうなお客さまの姿を見て衝撃を受け、自分がここで動かなかったら人生後悔するなと。
一人の人間として行動しようと強く思って挑戦したのが、1歩目の出来事でした。
その後、ツイッターで校則の話をしたらバズって、これは世の中が解決を求めている問題かもしれないと思い、そこから走り始めました。
ー動いたことで、状況はどのように変わり始めたのでしょう?
関係者に会えるだけ会って1000件以上調査をし情報提供したことによって、地区の弁護士や教育機関の方々が立ち上がってくださり、実際になくなった校則もありました。
そのなかでも、僕がすごくうれしいと思ったのが、高校生や中学生が自ら学校内でアンケートを取るなど自主的に動き出してくれたことなんです。
これは学生の問題なので、当事者の学生が主体となって動いてくれるのが一番良いと思っています。
そのきっかけを作れたことが、一番の変化だと思います。
ー学生や時代に対して、大きな変化を生み出したのですね。自分の行動力と結果で周りに変化をもたらす、まさに「時代に求められる」美容師ですね。
美容師は内面を変える「きっかけ」を作ることができる
(中村トメ吉さん)
星慧がやっていることは、学生本人としては問題意識をもっているけど、「行動するのが怖い」「行動のしかたがわからない」という時に、信頼できる身近な大人を見て「じゃあおれもやってみよう!」と背中を押すことです。
美容師は外見だけを変える職業だとイメージされがちですが、その人の内面、行動を変えるきっかけを作ることも多くあります。
ー最初に仰っていた理念に通じるところですね。
背中を押されて行動したことによって、何かが形になります。
その成功体験があると、「今度はあれもやってみよう」と、そこからは主体的でアクティブな人生がスタートします。
それって、自分が納得する人生を生きるためにはめちゃくちゃ大事なことなんですよね。
高校生がやっておくべきことは「自分を知っておく」こと
ー高校生が今やっておいたほうがいいことはありますか?
「自分を知っておいてほしい」と思います。
これしたい、あれ着たい、あの子と付き合いたい、いろいろな欲求があると思いますが、このリアルな純度の高い感情について、実際にやってみたら違う、ということがけっこうあるんです。
これってやってみたらわかることで、そうすると、さらに自分が求めることや、好きなこと嫌いなことがわかって、本当にやりたいことを突き詰めることができます。
周りがどう言おうが、自分の目で感じて、自分で行動して、自分で判断してきた結果は信用できます。
自分に自信を持つことにもつながります。
高校生のみんなには、失敗しても死ぬわけではないので、どんどん挑戦していってほしいです。
ーでは最後に、美容師を目指している高校生へメッセージをお願いします!
「最高かよ!」
心から好きな仕事なので、「最高の仕事です」と素直に伝えたいです。
メンズをかっこよくさせて、人生も含めてより良い方向に転換させることができる仕事です。
さまざまな職業、年齢、立場の人の考え方や生き方を直接目にして、知識、体験、リアルな情報が増えていくことで自分の蓄えになり、それらを武器にしてさらに自分もお客さまも輝かせることができます。
その最高の仕事が、美容師です。
ーありがとうございました!
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〈中村トメ吉Instagram〉 @tomekichi1102
〈GOALD公式サイト〉https://goald.co.jp/
〈GOALD渋谷店〉https://beauty.hotpepper.jp/slnH000467444/
〈GOALD名古屋店〉https://beauty.hotpepper.jp/slnH000489442/
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