教師になるには?大学・学部選び、必要な資格と教員免許の取り方、教師を目指す進路を解説
教師は、高校生に人気の職業。リクルート進学総研が行った「高校生が就きたい職業」の調査でも、教師は公務員に次いで2位になっている。
(※ランキングの指標はリクルート進学総研を参照)
教師になりたい理由としては
「“先生”という人が身近にいたことがきっかけで、尊敬、あこがれをもったから」
「自分が中学校・高校の先生から、知らなかった分野の興味をもたせてもらったので、私も子どもたちに視野を広げてあげて、いろいろなことに興味をもってもらいたい」
というように、身近に良い先生がいて、その先生のようになりたいと思ったことがきっかけと答える人が多かった。
でも、教師になりたいけど、なるにはどうしたいいのか、進学先にはどんな大学や学部を選べばいいのか、資格の種類や取り方などわからないという人もいるのでは?
そこで、教師になるために必要な教員免許のことや、資格を取るための進学先選びのこと、さらに小学校教師・中学校教師・高校教師のそれぞれの仕事内容など、詳しく調べてみた。
(※)出典:「高校生と保護者の進路に関する意識調査2021」
(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ・一般社団法人全国高等学校PTA連合会合同調査)
目次
- どうしたら教師になれる?
- 教師になるのに必要な資格って?
- 教員採用試験に合格しなければ先生になれない
- 教師を目指せる学校選びに関するQ&A~注意ポイント~
- 【学校の選び方】教師になるための学校ってどんなものがあるの?
- 【学部の選び方】教育学部でないと、教員免許は取れないの?
- 【教員免許状の取り方】「中学」と「高校」など、一度に複数の教員免許状は取得できる?
- 【学歴】短大か大学に進学しないと、教師になれないの?
- 教師の仕事ってどんな仕事?
- 教師になるのに向いている人って?
- 工夫したり、アイデアを考えるのが好きな人
- 積極的に新しい知識を学び、勉強を続けていける人
- コミュニケーション能力のある人
- 何ごとも根気強く取り組める人
- 観察力のある人
- どんなときも冷静に、落ち着いて対応できる人
- 教師の今後
どうしたら教師になれる?
※教師になるにはどのような進路を選択する必要があるのだろうか
学校の教師になるには、教員養成課程をもつ短大・大学などで学んで教員免許状を取得し、教員採用試験に合格して採用されることが必要。公立学校であれば、都道府県や政令指定都市の教育委員会が行う教員採用試験に合格して採用されることが必要だ。
私立学校であれば各学校が行う採用試験に合格して採用されるという流れになる。
教師になるのに必要な資格って?
教師になるには教員免許が必須で、小学校、中学校、高等学校(高校)のどの学校で教師になるにしても取得しなければならない。教員免許は、教育職員免許法という法律に基づく国家資格だ。
でも、教員免許といっても、たくさんの種類がある。
教員免許の種類のことをわかっていないと、希望している学校の教師になれないかもしれないので、ちゃんと知っておこう!
まず、最初に知っておきたいのは、教員免許は取得方法などによって、大きく3つに分けられているということ。
次の3種類がある。
教員養成課程のある4年制大学・短大などで学び、必要な単位を修得して卒業。
その後、各都道府県の教育委員会に授与申請することで取得できる(※1)。
普通免許状は、卒業する学校などによって、「専修」「一種」「二種」の3つの区分に分かれている。
◆専修免許状
一種免許状を有する者(所要資格を満たしている者を含む)が、修士号等の基礎資格を得るとともに、文部科学大臣の認定を受けた大学院または4年制大学専攻科の課程認定科目を24単位以上修得し、卒業することで取得できる。
◆一種免許状
所定の科目を修得し、4年制大学卒業で取得できる。
◆二種免許状
所定の科目を修得し、短期大学卒業で取得できる。
これらの普通免許状を取得する場合、二種免許状であれば短期大学士、一種免許状であれば学士、専修免許状であれば修士の学位を有することが必須。
なお、二種免許状は現在、短大卒業程度で取得できる教員免許となっているが、文部科学省では、2025年度より、4年制大学でも二種免許状を取得できる教職課程を新設できるよう、準備を進めている。
今後は4年制大学でも二種免許状の取得が可能になる(※2)。
(※1)教員免許は、文部科学省が管轄。各都道府県の教育委員会が教員免許の授与を行っているが、免許は全国で有効。
(※2)参考『「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等に関する改革工程表(案)令和5年2月21日最終更新』(文部科学省)
参考文献:文部科学省HP
教員免許はもっていないが、知識と経験が豊富な社会人を教師として学校へ迎え入れるために授与されるもの。
この特別免許状の授与を受けるには、担当教科に関する専門知識と技能をもち、各都道府県の教育委員会が行う教育職員検定に合格することなど、条件が決められている。
普通免許状をもつ教師を採用できない場合、期間限定で例外的に授与されるのが臨時免許状。
取得するには、各都道府県教育委員会が行う教育職員検定に合格する必要がある。
教師になりたい高校生のみんなが目指さなければいけないのも普通免許状だ。
この普通免許状にもいろいろな種類があって、学校種などによって、7種類に分類されている。
幼稚園の先生になるための資格。
◆小学校教諭免許状
小学校教師になるための資格。
◆中学校教諭免許状
中学校教師になるための資格。
◆高等学校教諭免許状
高校教師になるための資格。
◆特別支援学校教諭免許状
心身に障がいのある児童・生徒が通う特別支援学校の教師になるための資格。
◆養護教諭免許状
小学校、中学校、高校の「保健室の先生」になるための資格。
◆栄養教諭免許状
栄養教諭になるための資格。
栄養教諭は小学校、中学校、高校などで学校給食の献立を考えたり、栄養や食育についての授業を行う。
それでは、ここから先は小学校教諭免許状、中学校教諭免許状、高等学校教諭免許状の3つについて、クローズアップ!
取り方と合わせて一つずつ、みていこう。
小学校教諭普通免許状
※小学校教諭になるための資格について解説
資格は大きく分けて3種類ある。◆小学校教諭専修免許状
大学院修士課程で所定の科目を修得し、卒業することで取得できる。
取得に必要な科目の単位数…教科および教科の指導法に関する科目、教育の基礎的理解に関する科目、教育実践に関する科目、外国語コミュニケーション、情報機器の操作(または数理、データ活用および人工知能に関する科目)など合計91単位。
◆小学校教諭一種免許状
4年制大学で所定の科目を修得し、卒業することで取得できる。
取得に必要な科目の単位数…教科および教科の指導法に関する科目、教育の基礎的理解に関する科目、教育実践に関する科目、外国語コミュニケーション、情報機器の操作(または数理、データ活用および人工知能に関する科目)など合計67単位。
◆小学校教諭二種免許状
短大で所定の科目を修得し、卒業することで取得できる(※)。
取得に必要な科目の単位数…教科および教科の指導法に関する科目、教育の基礎的理解に関する科目、教育実践に関する科目、外国語コミュニケーション、情報機器の操作(または数理、データ活用および人工知能に関する科目)など合計45単位。
(※)二種免許状は現在、短大卒業程度で取得できる教員免許となっているが、文部科学省では、2025年度より、4年制大学でも二種免許状を取得できる教職課程を新設できるよう、準備を進めている。今後は4年制大学でも二種免許状の取得が可能になる。
中学校教諭普通免許状
※中学校教諭は教科ごとに教員免許状がある
中学校教師は小学校教師とは異なり、専門教科の授業を行う。そのため、教科ごとに教員免許状がある。
例えば、国語を教える教師がもっているのは「中学校教諭一種免許状 国語」、数学を教える教師なら「中学校教諭一種免許状 数学」などという具合。
資格は、大きく分けて3種類ある。
◆中学校教諭専修免許状(教科)
大学院修士課程で所定の科目を修得し、卒業することで取得できる。
取得に必要な科目の単位数…教科および教科の指導法に関する科目、教育の基礎的理解に関する科目、教育実践に関する科目、外国語コミュニケーション、情報機器の操作(または数理、データ活用および人工知能に関する科目)など合計91単位。
◆中学校教諭一種免許状(教科)
4年制大学で所定の科目を修得し、卒業することで取得できる。
取得に必要な科目の単位数…教科および教科の指導法に関する科目、教育の基礎的理解に関する科目、教育実践に関する科目、外国語コミュニケーション、情報機器の操作(または数理、データ活用および人工知能に関する科目)など合計67単位。
◆中学校教諭二種免許状(教科)
短大の中学校教員養成課程などで学び、卒業することで取得できる。
取得に必要な科目の単位数…教科および教科の指導法に関する科目、教育の基礎的理解に関する科目、教育実践に関する科目、外国語コミュニケーション、情報機器の操作(または数理、データ活用および人工知能に関する科目)など合計43単位。
(※)二種免許状は現在、短大卒業程度で取得できる教員免許となっているが、文部科学省では、2025年度より、4年制大学でも二種免許状を取得できる教職課程を新設できるよう、準備を進めている。今後は4年制大学でも二種免許状の取得が可能になる。
高等学校教諭普通免許状
※高等学校教諭の資格は大きく分けて2種類
高校教師も中学校教師と同じく、専門教科の授業を行う。そのため、教科ごとに教員免許状がある。
資格は、大きく分けて2種類ある。
◆高等学校教諭専修免許状(教科)
大学院修士課程で所定の科目を修得し、卒業することで取得できる。
取得に必要な科目の単位数…教科および教科の指導法に関する科目、教育の基礎的理解に関する科目、教育実践に関する科目、外国語コミュニケーション、情報機器の操作(または数理、データ活用および人工知能に関する科目)など合計91単位。
◆高等学校教諭一種免許状(教科)
4年制大学で所定の科目を修得し、卒業することで取得できる。
取得に必要な科目の単位数…教科および教科の指導法に関する科目、教育の基礎的理解に関する科目、教育実践に関する科目、外国語コミュニケーション、情報機器の操作(または数理、データ活用および人工知能に関する科目)など合計67単位。
※高等学校教諭の普通免許状には、短大卒で取れる「二種免許状」はない。大学、大学院を卒業しないと高等学校教諭の免許を取得できないので、要注意。
教員免許状の種類 | 有効期間・有効地域の範囲 | 小学校・教科 | 中学校・教科 | 高等学校・教科 |
---|---|---|---|---|
普通免許状 専修免許状 (大学院修了相当) | 生涯有効・全国の学校 | 教科に分かれていない | 国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、保健、技術、家庭、職業、職業指導、職業実習, 外国語(英語、ドイツ語、フランス語、そのほかの各外国語に分かれる)、宗教 |
国語、地理歴史、公民、数学、理科、音楽、美術、工芸、書道、保健体育、保健、看護、看護実習、家庭、家庭実習、情報、情報実習、農業、農業実習、工業、工業実習、商業、商業実習、水産、水産実習、福祉、福祉実習、商船、商船実習、職業指導、外国語(英語、ドイツ語、フランス語、そのほかの各外国語に分かれる)、宗教 |
普通免許状 一種免許状(大学卒業相当) | ||||
普通免許状 二種免許状(短期大学卒業相当) | ※なし(高等学校の教員免許状は、二種免許状はない) | |||
特別免許状 | 生涯有効・免許の授与を受けた都道府県内の学校 | 国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭、体育および外国語(英語、ドイツ語、フランス語、そのほかの各外国語に分かれる) | 普通免許状の教科と文部科学省令で定める教科 | |
臨時免許状 | 3年・免許の授与を受けた都道府県内の学校 | 教科に分かれていない | 普通免許状の教科と文部科学省令で定める教科 |
※参考:教員職員免許法第4条 文部科学省「教員免許制度の概要」
教員採用試験に合格しなければ先生になれない
教員免許を取得するだけでは、教師として学校で教えることはできない。公立の学校教師になるには、各都道府県・政令指定都市の教育委員会が行う「公立学校教員採用選考試験」(以下、教員採用試験)に合格することが必須。
私立の小・中・高校教師の場合は、各学校の採用試験に合格する必要がある。
公立学校の教員採用試験の内容は自治体によって異なっているが、筆記試験(一般教養、教職教養、専門教養、論文など)のほか、適性検査、面接(集団面接、個人面接)、実技(中学校・高校の音楽、美術など)、模擬授業などが行われる。
試験は第1次と第2次に分かれて実施されることが多い。
第1次試験に合格すると第2次試験の受験へと進み、最終的に合格すると、成績順に「採用候補者名簿」に登載され、その後、配属先の学校が決定すると、教員になることができる。
ちなみに2022年度教員採用試験の競争率(採用倍率)の全国平均は次のとおり(※)。
・小学校 2.5倍(前年度の2.6倍から減少)
・中学校 4.7倍(前年度の4.4倍から増加)
・高校 5.4倍(前年度の6.6倍から減少)
(※)出典:令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイント(文部科学省)
──────────────────────────────
短大卒で取れる「二種免許状」と、4年制大学卒で取れる「一種免許状」。
大きな違いは、「二種免許状」は高校の教員免許にはないので、高校教師にはなれないということ。
そのほか、最終学歴による初任給の額、といった違いはある。
でも、公立学校の教員採用試験では扱いに差はないという。
「二種だから受験できない」「一種だから有利」といったことはなく、試験の成績が上位の人から採用される。
学校に着任してからの仕事内容も「二種」と「一種」で違いはない。
ただし、二種免許状で教師の仕事に就いている人は、教育職員免許法という法律のなかで「一種免許状への切り替えの努力義務」が定められている。
その努力義務とは、二種免許状の場合、学校教師になってから所定の認定講習を受けて不足する科目などを学び、一種免許状を取得できるように努めなければならないというもの。
進路選択の際は、その点もしっかりチェックしておこう!
教師を目指せる学校選びに関するQ&A~注意ポイント~
※教師を目指す高校生のために、よくある質問にまとめてお答え!
【学校の選び方】教師になるための学校ってどんなものがあるの?
教師になるための学校は、短大、4年制大学、大学院などがあるが、自分が希望する教員免許状が取得できる教職課程があるのかどうかが、学校選びの重要ポイントになる。各校のホームページで調べるだけではなく、オープンキャンパスなどの機会を利用して、小学校、中学校、高校のどの校種の免許を目指せるのか、どの教科の免許が取得可能なのか、しっかり確認しておこう。
なお、高校の教員免許状を取りたい場合は、短大では取得できず、大学、大学院で学ぶ必要があるので要注意。
また、大学のなかには通学制のほか、通信教育で学べる学部をもつ学校もある。
こうした通信制大学でも教員養成課程をもつ場合があり、働きながら学んで教員免許(一種免許状)を取得することができる。
教師になる夢をもっていながらも、経済的な事情などで大学進学が厳しい…という状況にある場合には、通信制大学で学ぶ道もあることを思い出してほしい。
【学部の選び方】教育学部でないと、教員免許は取れないの?
教員になるための学部というと、教育学部を連想する人が多いのでは?でも、教職課程のある学部は、教育学部だけではない。
つまり、教育課程のある学部ならば、教育学部でなくても教員免許の取得を目指すことができる。
例えば、小学校教師を目指すなら、人間科学部、児童学部といった名称の学部でも小学校教員養成課程をもっている大学もあり、小学校教諭一種免許状を取得可能だ。
また、中学校の理科の教師を目指したい場合、工学部や理学部といった理系学部でも「中学校教諭一種免許状 理科」が取得可能な大学もある。
一方で気をつけたいのは、教育学部という名称の学部であっても、小学校・中学校・高校のすべての教員養成課程がそろっているわけではないということ。
教育学部といっても大学によってカリキュラムは異なり、「中学校と高校の教員免許は取れても、小学校は取れない」という場合もある。
自分が興味のある短大・大学ではどのような教員免許を目指せるのか、自分が教えたい学校・教科の教員免許を取得できるカリキュラムをもつ学部・学科なのか、短大・大学のホームページなどで調べてみよう。
【教員免許状の取り方】「中学」と「高校」など、一度に複数の教員免許状は取得できる?
複数の校種の教員免許を目指せる課程をもつ大学で学べば、可能だ。実際、「中学校の教員免許と、同じ教科の高校の教員免許」「中学校と小学校」などという具合に、複数を取得している教師も少なくない。
現在、小学校から中学校までの義務教育を一貫して行う「義務教育学校」、中学校から高校までの一貫教育を行う「中等教育学校」といった形態の公立学校が増加中で、複数の校種の教員免許を取得しておくと、教師として活躍の幅が広がっていくだろう。
【学歴】短大か大学に進学しないと、教師になれないの?
短大、大学に進学しなくても、教員免許を取得することは可能。次の2通りの方法がある。
1)大学併修制度のある専門学校で学び、必要科目を修めて教員免許を取得
数は多くないが、専門学校のなかには通信制大学の併修制度をもち、教員養成課程を履修できる学校がある。
通信制大学の単位を取得して修了すると、教員免許(一種免許状)が取れる。
ただし、取得できる教員免許の校種、教科などは専門学校によって異なるので、要確認。
2)小学校教員資格認定試験を受験し、合格して教員免許を取得
文部科学省が開催している小学校教員資格認定試験を受験して合格すれば、小学校教諭二種免許状を取得できる。
2023年度の小学校教員資格認定試験の場合、受験できるのは高校卒業者などで2003年4月1日までに生まれた者。
試験は年1回実施。第1次試験(筆記試験)と第2次試験(1次試験合格者のみ受験できる。
試験内容は指導案作成、模擬授業、個別面接など)が行われる。
教師の仕事ってどんな仕事?
※教師は授業を行うのはもちろん、ほかにもさまざまな仕事がある
ところで、学校の教師ってどんな仕事をしているのだろう?教壇に立って授業を行うほか、いろいろな仕事をしている。
小学校、中学校、高校のそれぞれについて、教師の仕事内容を調べてみた。
小学校教師の仕事内容
小学校1年生から6年生の児童を対象に教える。大きな特色は、基本的には学級担任の教師が一人で、国語や算数など、全教科を教えるということ(※)。
授業の準備をするのも仕事。
このほか、テストの制作、採点、運動会や文化祭など学校行事の運営、家庭訪問、PТA活動など、仕事内容は幅広い。
(※)音楽や図工などについては専門の教員が教えている小学校もある。
教える児童たちは満6歳から満12歳までと年齢が低く、人格形成の土台を養う大切な時期にある。
そのため、小学校教師は学習面の指導だけではなく、生活面の指導や道徳教育を行うことも重要な仕事。
学校生活を通して、児童たちが協調性や人を思いやる心などを育んでいけるよう、導いていく。
また、2022年度から全国の小学校で始まっているのが、「教科担任制」という制度。
学級担任以外の教師が専門教科を受けもつ。
対象は小学校5年生・6年生で、教科は英語、理科、算数、体育(※)。
高い専門性をもつ先生が教えることで、よりわかりやすく、質の高い授業を目指す。
(※)小学校で英語、理科、数学、体育の専科教員として教えるには、小学校教諭免許のほか、英語・理科・数学・保健体育の中学校教諭免許か高校教諭免許が必要とされる場合がある。
中学校教師の仕事内容
一人でほぼ全教科を教える小学校教師とは異なり、国語や数学など専門教科のみを教えるのが中学校教師。担当教科の授業を行うほか、学級担任、学校行事の運営、部活動の顧問、PТA活動、生活指導、進路指導など、さまざまな仕事がある。
義務教育の後期にあたる3年間の教育を行う中学校教師。
生徒に基礎的な学力を身につけさせるのはもちろんのこと、生徒一人ひとりの興味を引き出し、能力を伸ばすような指導が必要になる。
また、中学生は12歳から15歳と思春期にあたり、身体も心も急激に変化する時期。
精神的にも不安定になりがちで、勉強や学校が急に嫌いになったり、友人との関係や進路のことなど、悩んでしまうことも。
生徒が一人で悩みを抱え込んでしまうことのないよう、教師は生徒からの相談にのったり、保護者とも連携しながら、精神的なサポートをすることが重要。
高校教師の仕事内容
中学校教師と同じように、専門教科の授業を担当する。ただし、高校で教える教科は、中学校よりも細分化されているため、授業は専門的な内容になっている。
例えば、理科なら化学、物理、生物、地学などという具合に分かれているので、生徒がより探究を深めていけるよう、教師には高い専門性が必要。
高校教師も担当教科の授業のほか、たくさんの仕事がある。
学級担任、学校行事の運営、部活動の顧問、生活指導、PTA活動、進路指導など。
学校の備品管理、会計など学校運営の業務も仕事だ。
高校生活の3年間は、進学や就職など、人生の節目の決断をしなければならない時期。
高校教師には、生徒一人ひとりが希望する道に進んでいけるよう指導するという、重要な役割がある。
ただ、高校生は大人の入り口のような年頃。
部活とは別に好きなことに熱中したり、アルバイトをしたりと、自主性が高まる時期でもあるので、生徒の考え方や希望を尊重しながら、適切なアドバイスをすることが大切。
学科による分類では、多くの高校生が通う「普通科」の高校のほか、次の2種類がある。
◆専門高校
商業、工業、農業などの専門学科(職業学科)が中心の高校。
◆総合高校
総合学科をもつ総合高校。
総合学科とは、普通科と専門学科の幅広い科目から選択して学べる学科のこと。
また、授業の時間帯や学び方などによっても、3種類がある。
◆全日制高校
日曜・祝日や夏休みなどを除いた週5日~6日、朝から夕方まで授業が行われる。
◆定時制高校
夜や朝などの時間帯に授業が行われる。
◆通信制高校
学校から送られてくる課題の提出と添削指導を通して学習する。
学校に行って面接指導を受けるスクーリングと、テストを受けることで、卒業に必要な単位を取得する。
定時制高校、通信制高校は、働いている人や、不登校などの理由で高校を中退した人、外国人など、さまざまな生徒が学んでいる。
それぞれの学校の特色などによって、高校教師の仕事内容も違ってくる。
勤務する学校はどうやって決まる? 教師のキァリアは?
公立学校の場合、各都道府県・政令指定都市の教員採用試験に合格すると、採用候補者名簿に登載され、この名簿の中からその自治体の学校へ配属される。そこで気になるのは、配属される学校のこと。
どの学校に配属されるのかは、住んでいる場所からの距離や通いやすさなど、希望を出せる場合が多いが、勤務する学校を決定するのは、管轄する教育委員会。
本人の希望を踏まえながらも、教師の退職や不足が出ている状況などをみて総合的に判断し、配属される学校が決まる。
最初の配属校にある程度の期間、勤務すると、その自治体内のほかの学校に異動となる。
何年勤めたら異動するのかなどは、「新規採用者で4年以上」「同一校に3年以上勤務」など、自治体ごとに決められている。
公立学校の教師は、異動を繰り返すことになるけれど、さまざまな地域、さまざまな環境の児童・生徒を教育することを通し、教師としての経験を積み上げていく。
なかには、指導教諭・主幹教諭、さらには教頭や校長といった管理職へと進んでいく教師もいる。
教師になるのに向いている人って?
※教師を目指す高校生は必見!教師の適性とは?
教師は、子どもが好きで教えるのが好きという人に向く仕事だけど、ほかにも向いているのはこんな人!工夫したり、アイデアを考えるのが好きな人
授業は、児童・生徒に内容を理解してもらうことがなにより大切。教師が一方的に話すのではなく、相手を退屈させず、ひきつける工夫が欠かせない。
オリジナルの教材を作ったり、映像を用いるなど、わかりやすく楽しい授業をするためのアイデアを考えたり、創意工夫することが好きな人に向く。
積極的に新しい知識を学び、勉強を続けていける人
学校の授業は、文部科学省が定めた「学習指導要領」の基準に沿って計画され、教室での指導が行われる。「学習指導要領」は、全国どこでも一定水準の教育を受けられるように決められたカリキュラムの基準で、およそ10年に一度、内容の見直しが行われる。
そのときどきの社会情勢に合わせて改訂されるのだが、高校生のみんなに関係することだと、新しい「学習指導要領」によって2022年度から新たに「情報Ⅰ」が必修科目になっている。
このほか、2020年度から小学校で英語授業が必修になったり、プログラミング授業が始まったりと、「学習指導要領」が改訂するたびに、教育現場には変化が起きる。
こうした変化に対して、教師として新しい知識を吸収する努力をし、勉強し続けていける人に向いている。
コミュニケーション能力のある人
教師の仕事には、やさしい心と熱意をもって児童・生徒と向き合うことが求められる。そのためにも欠かせないのがコミュニケーション能力。
児童・生徒が社会的に間違えた行動をしてしまったときは、教師はただ叱るだけではなく、なぜそれが許されないことなのかをていねいに伝えていくことが大切だ。
また、保護者と接することも多く、コミュニケーション能力がなければ務まらない。
何ごとも根気強く取り組める人
教師の仕事のやりがいの一つに、児童・生徒が成長していく様子に立ち会えるよろこびがある。学習や部活動など、なかなか結果が出ない子どももいるだろうけれど、教師に求められるのはあせらず、根気強く、向き合っていくという姿勢。
必要に応じてアドバイスをしたり、励ましたりと、時間をかけながら見守っていくことが大切だ。
観察力のある人
いじめや不登校、子どもの貧困など、学校と子どもたちを取り巻く社会問題が深刻化している。そうした今、児童・生徒と日々接している教師の果たす役割は大きい。
問題を未然に防いだり、早期に解決できるよう、常日頃から児童・生徒一人ひとりの様子や行動に気を配り、ちょっとした異変も見逃さない、きめ細やかな観察力のある人が求められる。
どんなときも冷静に、落ち着いて対応できる人
学校ではさまざまな子どもたちが学んでいる。個性も違えば、家庭や生活の環境も違う。外国籍の子どもたちがいる場合もある。
そうした多様な背景をもつ児童・生徒と接するのが教師という仕事。
児童・生徒が授業中に騒いだり、不測のできごとが起きることもあるだろうけれど、どんなときも冷静に、アクシデントにもすばやく対応できる判断力のある人に適性がある。
教師の今後
今、日本は少子化で、児童・生徒の数や学校数が減少している。この先、教師は必要とされなくなる?…と不安に感じるかもしれない。
でも、実際には教師の人材は不足している。
公立学校教員採用試験の受験者数・採用者数と競争率の変化(全国平均)をみてみよう。
2012年度/受験者数:5万9230人、採用者数:1万3598人、競争率:4.4倍
↓
2022年度/受験者数:4万636人、採用者数:1万6152人、競争率:2.5倍
●中学校教員
2012年度/受験者数:6万2793人、採用者数:8156人、競争率:7.7倍
↓
2022年度/受験者数:4万2587人、採用者数:9140人、競争率:4.7倍
●高等学校教員
2012年度/受験者数:3万7935人、採用者数:5189人、競争率:7.3倍
↓
2022年度/受験者数:2万3991人、採用者数:4479人、競争率:5.4倍
※出典:令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況(文部科学省)
全国的に定年退職をする教員が多いため、教員の数が不足しないようにと、多くの自治体が採用者数を増やしている。
その一方で小・中・高のすべてで、受験者数は減っている。
教師の仕事に関心があっても「教師は、授業以外にもやることが多くて大変そう…」という理由で、一般企業を就職先に選ぶ人が多かったことなどが原因。
そこで、文部科学省や各自治体の教育委員会では教員を目指す人を増やし、優秀な教員を増やそうと対策を立て、実践を始めている。
例えば、
・小学校と中学校の両方の教員免許を取りやすくするよう、大学のカリキュラムを見直す。
・教師は仕事が多いので、残業時間を減らす、生徒の出欠管理や成績処理など事務処理にICT(情報通信技術)を活用して業務の負担を減らすなど、より働きやすい環境づくりをする。
・教師がより一層、授業に力を注ぐことができるよう、プリントの印刷や仕分けなど、教師の業務を支援するスタッフを配置する。
・公立の中学校・高校の運動部活動の指導について、教員の負担を軽減するために、地域のスポーツクラブや競技団体などに移行していく(部活動の地域移行)。
・公立学校教員の給与や手当など、待遇を改善するための議論を進めていく。
などだ。
今後、教員免許が取りやすくなったり、もっと働きやすくなれば、教師を目指す人が増えていくかもしれない。
教師という職業は、人の成長に間近でかかわれるという、大きなやりがいのある仕事。
未来の日本を支える「人」を育てる教育者でもあり、社会にはなくてはならない仕事だ。
少子化でも社会全体の情勢がどうなろうと、なくなることはない。
定年まで安定して働くこともできる。
そんな教師の仕事に興味をもつ人は、自分が小学校、中学校、高校のどの学校の先生になりたいのか、どの教科を教えたいのかをしっかり考え、自分に合った学校・学部を選ぼう!
※この記事は、2023年5月時点に公開されている情報に基づいて作成された記事です。
【参照元】
※教員の免許、採用、人事、研修等
https://www.mext.go.jp/a_menu/01_h.htm
※教員免許状に関するQ&A
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/main13_a2.htm
※教員免許制度の概要
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/1339300.htm
※令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況(文部科学省)
文/小林裕子 構成/黒川 安弥(本誌)※2023年5月一部追記
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