「安定した仕事」に就きたい人は必見!職業選択の重要ポイントをリクナビ編集長に聞いた

将来、どんな職業に就き、どんな仕事がしたいか…?

高校生になると、そう問いかけられるシーンが増え「なりたい職業」が現実味を帯びてくる。

一方、企業の倒産や合併・買収のニュース、ブラックな職場、低賃金の職種…といった情報に触れると、なんとなく「安定した職業・仕事」を求めてしまうもの。

しかし、安定していると思っていた職業がそうではない可能性もあり、イメージで安易に選ぶのは危険だ。

「安定した職業・仕事」とはどういうものなのか、どのような基準で選ぶべきか、職業選択のプロにアドバイスをもらった。

監修者プロフィール

吉田純子(よしだ・じゅんこ)さん
「リクナビ」編集長。
2002年、株式会社リクルート入社。以来、20年にわたりHR(人材)事業領域に従事する。
新卒採用・中途採用・教育研修等の提案営業を経験した後、事業スタッフ職、リクナビおよび新商品企画、子会社社長、営業部門の部門長を経て、2021年4月より大学・学生支援組織の部門長、さらに2022年4月より「リクナビ」編集長を兼務。

『リクナビ』とは
リクルートが運営する新卒採用の就職情報サイト。
企業の採用情報だけでなく、企業研究、自己分析に役立つ情報や就活体験談、就職イベント情報などを提供している。

高校生・大学生が考える「安定した職業・仕事」とは?

安定した仕事に就きたい人、必見!職業選択の重要ポイントをリクナビ編集長に聞いた

 

9割以上が「安定した仕事」を望んでいる!

高校生・大学生を対象に行ったアンケート調査※によると、将来の職業選択において「安定した仕事であることを重視する(とても重視する・まあまあ重視する)」と回答した人は、全体の94%にも上った。

コロナ禍の影響もあり、職業選択における安定志向はより高まっているようだ。


9割以上が安定した仕事を望んでいる

※(株)マクロミルが高校生・大学生を対象に実施した「仕事に関するアンケート」(2022年1月実施)より。

収入や勤続年数、事業の安定性を重視

アンケートでは、自分が考える「安定した仕事の条件」も挙げてもらった。

多かったのが、次のような条件だ。
・収入が高いor安定している

・リストラがない/勤続年数が長い

・事業が継続的・安定的である/倒産リスクが少ない

・景気や社会の変化に左右されない

・大企業、有名企業である/知名度がある
また、働きやすさや福利厚生面を条件に挙げる人もいた。
・福利厚生がしっかりしている/労働基準法を遵守している

・しっかりと休みが取れる/ワークライフバランスがとれている

・残業(時間外労働)が少ない

・男女差やハラスメントがない

・異動や転勤などが少ない

・職場の環境や雰囲気がいい
ダントツに多かったのが「収入面での安定」だったが、それ以外にも「安定した職業・仕事」には多くの要素があることがわかる。

また、「安定した仕事に当てはまると思う働き方や職業名」については、「公務員」を筆頭に以下のようなものが挙がった。
公務員、大手企業、医療系、外資系、インフラ系、教師・専門職、銀行

ずっと同じ仕事をするのが「安定」!?

一方で、「安定=業務内容に変化を求めない」というとらえ方をしている人もいた。
・ルーティンワークでこなせる業務が多い

・チャレンジングな業務が少ない/無理な仕事がない

・仕事内容が一定
世の中が目まぐるしく変化し、AI技術の発達により仕事の機械化・自動化が進むなか、上記のような考え方で仕事をとらえているのは、リスクが高いと言えるだろう。

周囲の人から「安定した仕事に就いてほしい」と言われることもあるかもしれない。

しかし、今一度、「安定」とは何か、自分がやりたい仕事が「不安定」なものならあきらめるのか、職業選択において「安定」がなぜ重要なのか…と、自分のアタマで考えてみてほしい。
 
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教えてリクナビ編集長!「安定した職業」の基準は?

安定した仕事に就きたい人、必見!職業選択の重要ポイントをリクナビ編集長に聞いた
変化が激しく不安定な時代における「安定した職業・仕事」とは何なのか。

また、どのようにしたら「安定」を手に入れられるのか、自分の夢やあこがれの職業が「不安定」な場合はどうすればいいのか。

「リクナビ」の吉田編集長に聞いた。

どんな時代も社会から必要とされる仕事や成長産業に注目!

「安定」とは、「気持ちや状態が落ち着いていて変動の少ない様」という意味です。

そういう意味では、社会情勢などの環境変化の影響を受けにくい、業界が安定・継続的に成長している、社会から必要とされているという職種や業界は、一般的に「安定している」と言えるでしょう。

例えば、現在においては、公務員や衣食住にかかわる産業、ITやデジタルテクノロジーといった成長産業などが考えられます。

また、今後さらに進むAI化を考慮すると、「(AIが不得意な)人ならではの仕事」に目を向けてみることも大切です。(吉田編集長)
これからニーズが高まると言われている職業は?
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◆AI技術者、データサイエンティスト
AIは、指示に従い、迅速かつ正確な結果を出すことに優れています。

一方、最初の設定をしたり指示を出したりするのは人です。

AIの開発やAIの活用に必要なデータを扱う分野は、今後ますますニーズが高まるでしょう。

近年は、大学でもデータサイエンス系の学部・学科を新設するところが増えてきています。
◆介護従事者、看護師、保育士、教師など
記憶や情報処理においては、人はAIにかないません。

しかし、人の感情や状況を理解したうえでその人に最適な解決策を提案するというのは、やはり人でないとできない仕事です。

介護や看護、保育といった人をケアする職業や人に教える教師といった職業は、これからの時代も変わらず求められるでしょう。
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「世の中が変わっても社会から必要とされる力」が安定の源

一方、上記に挙げた業界や職種がこの先ずっと安定なのか、変動しないのかというと、「大丈夫」とは言い切れません。

なぜならば、世の中はものすごいスピードで変わり続けているから。

以前は数十年単位だった時代の変化ですが、技術革新が進んだことで、今は5年後、10年後がどうなっているか予測できない状況なのです。

そんな変化の激しい時代に求められるのが、どのような世の中になっても社会から必要とされる力を身につけておくこと。

「安定」は企業や組織から与えられるものではなく、自ら作っていくものなのです。
「世の中が変わっても社会から必要とされる力」とは?
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◆自分で考え、行動し、よりよいものを生み出す力
言われたことを言われたとおりにやれば成果が出る時代は終わりました。

課題を自分ゴトとしてとらえ、自分で考え、行動し、よりよいものに進化させる。

これは、社会人として仕事をするうえでの基礎力です。

物事に対して主体的にかかわる姿勢は、変化に飲み込まれないためにもとても大切です。
◆多様な人々と協働し、最適解を見つけ出す力
これからは、一人のリーダーが引っ張っていく時代ではありません。

正解がないなか、多様な人々と一緒に「こっちかな?」「あっちかな?」と模索しつつ前進し、最適解に辿り着く力が求められます。
◆社会のニーズにこたえる技術や能力を磨き続ける力
時代の移り変わりとともに、求められるスキルも変化します。

ルーティンワークにとどまらず、新しい技術や知識を積極的に学ぶなど、自分を常にアップデートし続けることが不可欠です。

◆求められるスキルの例

英語力、ITスキル、情報編集力、問いを立てる力、コミュニケーションスキル

職業選択のお悩みQ&A

安定した仕事に就きたい人、必見!職業選択の重要ポイントをリクナビ編集長に聞いた
「働くために生きるのではなく、よりよく生きるために働く」と吉田編集長。

「人生において仕事に費やす時間はとても長い。イヤイヤやるよりも、イキイキと仕事に携われる方が充実した人生を送れる」と言う。

では、どうしたらそんな「適職」を見つけられるのか…!?

アンケートで寄せられた高校生の職業選択の悩みに、吉田編集長からアドバイスをもらった。

Q1. やりたい職業や気になることはありますが、職業として安定しているか、長く続けられるかを考えると不安です。 

「やりたいこと」と「職業に望む条件」に共通する接点を見つけることを意識しましょう。

自分がやりたいこと、興味のあることを起点にして深めたり広げたりしていくことで、自分が職業に望む条件をクリアする、もしくは条件に近い仕事を見つけることができます。

方法としては、やりたいことや興味のあるものを分解してみるのが有効です。

例えば、お菓子ができるまでのプロセスを分解してみると、「考える(企画)→作る(生産)→運ぶ(物流)→売る(販売)」となり、関係する業界や職種が見えてきます。

見えてきた選択肢のなかから、自分が優先する条件(安定しているか、長く続けられるか)と合ったところを見つけていきましょう。(吉田編集長)

Q2. 保育や介護など人をサポートする仕事に興味がありますが、給与が低くて悩んでいます。

高校生である皆さんが「知っている」仕事は、世の中の仕事のほんの一部にすぎません。

「保育=保育士」「介護=介護スタッフ」というイメージがあるかもしれませんが、保育や介護に関係する職業はそれだけではありません。

保育や看護といった領域を広くとらえ、周辺の職業にも目を向けてみましょう。

例えば、ITを掛け合わせることで、介護しやすい環境を整えるサービスを提供している企業などもあります。

「掛け算」をしながら領域を探り、職業のバリエーションを増やしていけば、自分の希望する給与が得られる仕事に出会える可能性も広がります。

Q3. 自分が就きたい職業、自分に合った職業がよくわかりません…。

職業選択における視点は、「何がしたいか」だけに限りません。自分が何がしたいかわからないという人は、「誰とやるか」「どんな環境でやるか」に目を向けてみましょう。

「誰とやるか」については、自分はどういう人と一緒に取り組んだときに楽しめたか、モチベーションが上がったか、充実していたか…と過去を振り返り、どういう人がいそうな業界や仕事であれば頑張れるか、どんな人とかかわりたいか…と未来に向けて考えてみます。

また、「どんな環境でやるか」については、どんな雰囲気の時に居心地が良かったか、自分らしくいられたかを振り返り、そういう環境が整っているところはどこだろうと考えてみましょう。

「何がしたいか・誰としたいか・どんな環境でしたいか」の3つの視点で考えてみることで、自分に合った職業や働き方が見えてくるはずです。

職業選択は、洋服のフィッティングと同じ。

誰かがかわいいと言っているから、はやりの色だから…ではなく、自分が好きなもの、自分に合ったものを選ぶことが大事なのです。

Q4. パティシエになりたいのですが、安定しない職業のため踏み切れません。

「パティシエ=安定しない職業」とも限りませんし、やりたいという思いがあるなら、ぜひ挑戦してほしいと思います。

ただし、気をつけてほしいのが、「好きなこと」と「得意なこと」が違うケースがあるということ。

仕事で効力感を感じやすいのは、得意なことをやっているとき。

周囲からも感謝・評価されて、役に立っているという実感が得られます。

なぜパティシエになりたいのかを掘り下げたときに、「おいしいものを提供することで、人を幸せにできるから」という理由なら、自分の得意なことを活かしつつ、同様のやりがいを得られるパティシエ以外の職業がないかを考えてみましょう。

「得意なこと」を「好きな領域」で活かすというアプローチは、自分に合った職業に辿り着くためにとても有効です。

そのためにも、まずは「自分の得意なこと」を自覚することが大事。

自分では見つけられない人は、家族や友人などに聞いてみるといいでしょう。

Q5. 安定を優先して公務員になろうと考えていますが、転職がしづらそうで躊躇しています。

公務員だから転職が難しいということはありません。

上記で挙げたようなどこでも通用するスキルを身につけていれば、転職してキャリアアップすることも可能です。

一方、公務員にせよ会社員にせよ、「組織が面倒を見てくれる」と思って自己研鑽に励まなければ、その組織でしか通用しない人材になりかねません。

一般的に、「職業寿命」(一人の人が一生のうちで働く期間)は約40年ですが、「企業寿命」(一つの企業の創業から廃業までの期間)は20年をきると言われています。

職業寿命の方が長い、つまり、1社だけに勤めること自体が難しいのです。

複数の組織に雇われ続ける力や自分で事業主となって仕事をする力を身につけておくことが、「安定」には不可欠なのです。
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まとめ:職業の安定は保証してもらうものじゃない!

安定した仕事に就きたい人、必見!職業選択の重要ポイントをリクナビ編集長に聞いた
結論としては、絶対的に「安定した職業・仕事」は存在しない、ということ。

吉田編集長は、「会社に安定を保証してもらうという考え方から、自分で安定を担保する力を身につけるという考え方に切り替えることが大事」と言う。

どんな環境でもやっていける、どこでも通用する力を磨いていくことが何よりも大切であり、そのためにも、高校で学ぶべきことを学び、自分の可能性や選択肢の幅を広げておくことが不可欠なのだ。


取材・文/笹原風花 監修/吉田純子(リクナビ編集長) 構成/寺崎彩乃(本誌)


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