教育関係の仕事とは?社会の未来を担う人を育てる【教育に関わる仕事21選】
教育関係の仕事といえば、真っ先に思い浮かぶのは学校の先生だろう。しかし、先生以外にも、地域、教育系NPO、民間企業、塾・予備校などに属する多くの専門家が、時に学校と協力しながら児童や生徒の教育に携わっている。
その仕事の広がり、個々の仕事の内容について、まとめて解説しよう!
目次
教育関係の仕事には何がある?
教育関係の仕事には、学校で働く先生やカウンセラー、幼稚園教諭や保育士、塾・予備校の講師、ベビーシッター、部活の監督やコーチなどさまざまな職種がある。
学校、幼稚園、保育所のほか、教育系のNPOやIT企業、塾・予備校など、教育に関わる専門家が活躍するフィールドも幅広い。
どんな教育関係の仕事があるのか、また、どうしたらその仕事に就けるのか、分野別にそれぞれ詳しく見ていこう。
Field1. 学校で働く
1.小学校教諭・中学校教諭・高校教諭
小学校・中学校・高校の教諭になるには、それぞれ該当する校種の教員免許状が必要。中学校・高校の場合は、科目ごとに教員免許状を取得することになる。
短期大学・専門学校で二種、大学で一種、大学院で専修と卒業する学校によって取得できる教員免許状の種類は異なるが、仕事内容の差などは特にない。
公立学校の場合は、教員免許状を取得し、さらに自治体の教員採用試験に合格すると教諭として働くことができる。
小学校・中学校で児童や生徒に食の指導を行う栄養教諭も、同様に教員免許状の取得と教員採用試験への合格が必要だ。
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2.養護教諭
小学校・中学校・高校の「保健室の先生」。学校内での救急処置のほか、身体検査、生徒の健康管理・保健指導・健康相談などにあたり、心の問題やストレスを抱える子どものカウンセラー的な役割も担っている。
養護教諭になるには、大学・短大・専門学校の養成課程を卒業すると取得できる養護教諭免許状が必要。
公立学校の場合は、養護教諭免許状を取得し、さらに自治体の教員採用試験に合格すると養護教諭として働くことができる。
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3.特別支援学校教諭
視覚障害や聴覚障害、知的発達障害、肢体不自由など、なんらかの障害によって通常の学校で勉強するのが困難な児童・生徒のための特別支援学校(幼稚園から高校まで)や小学校・中学校の特殊学級で、教科指導を行う教諭。それぞれの障害の特徴や困難さを理解した指導を求められるため、通常の教員免許状とは別に、障害種(視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱)ごとに交付される特別支援学校教諭免許状が必要となる。
また、特別支援学校教諭として働くためには、自治体の教育職員採用試験に合格する必要がある。
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4.スクールカウンセラー
自治体から公立の小学校・中学校に派遣される、いじめや不登校などの悩みがある児童・生徒の相談に乗り、心のケアをする専門家。大学・大学院の心理系学部を卒業し、臨床心理士、公認心理師、認定心理士、精神科医などの資格をもつ人が務めることが多い。
教職員・保護者への助言・援助もスクールカウンセラーの大切な仕事の一つであり、専門家の立場での助言や問題の解決に向けた協働のほか、外部の医療機関や地域の福祉機関へつなげる業務も行う。
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※学校の先生になるには、大学や短大で教員免許状を取得後、採用試験を受験する
5.キャリアカウンセラー
将来の職業選択やそのために必要な考え方・準備などに関して、個別に相談に乗り、助言をする専門家。個人でも活動できるほか、大学のキャリアセンターなどでも活躍している。
資格・免許が必須の職種ではないものの、教育機関や公的職業支援機関でキャリアの専門家として働く場合には、キャリアカウンセリングに関する資格が求められることがほとんど。
国家資格であるキャリアコンサルタントやキャリアコンサルティング技能士などの資格を取得しておくことが望ましい。
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6.大学教員
教員免許状をもつ教諭と異なり、大学教員になるには特別な資格は必要なく、専門領域への深い造詣や知識・技能があるかどうかが重要になる採用の際には、関連する分野での大学院博士課程修了が条件とされることが多い。
自身の研究と講義を同時にこなしながら、助手→助教→講師→准教授→教授とステップアップしていく。
そのほか、別の仕事で実績を積み、実務家教員として採用される道も。
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7.日本語教師
日本語学校などで、大人から子どもまでの外国人を対象に日本語の読み書きや会話を指導するほか、日本の文化や歴史について教える先生。日本語教師として働くために必須となる資格・免許はないが、大学・短大・専門学校で日本語教育関連の科目を履修していること、日本語教育能力検定試験に合格していること、日本語教師養成講座を受けていることのいずれかを採用条件にしているケースが多い。
また、海外で働く場合にはその国のビザが必要になる。
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8.外国語教師
児童から社会人まで、幅広い年齢の生徒に外国語を教える先生。教員免許状が必要な教諭とは異なり、各種スクールや学習塾で外国語教師として働く場合は、特に必須となる資格・免許はない。
公立小学校で外国語活動が必修となり、早期英語教育への関心が高まっているなか、児童英語教師は特に需要が増えている。
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Field2.幼稚園・保育園で働く
9.幼稚園教諭
幼稚園や、幼稚園・保育園が連携した認定こども園で、満3歳から就学前までの子どもの教育に携わる。幼稚園教諭になるには、大学・短期大学・専門学校の幼稚園教諭養成課程を卒業すると取得できる幼稚園教諭免許状の取得が必須となるほか、認定こども園で3歳未満の子どもの保育まで行う場合は、保育士の資格も必要。
学校によっては、幼稚園教諭免許状と保育士資格を同時に取得できるコースを開講している場合もある。
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10.保育士
保育所や、幼稚園・保育所が連携した認定こども園で、乳幼児から就学前までの子どもの保育・教育に携わる。子どもの発達などの専門知識が求められるため、国家資格である保育士資格が必要。
保育士資格は、厚生労働省に指定された保育士の養成施設(大学・短期大学・専門学校)を卒業すれば、無試験で取得することが可能だ。
最近は、幼稚園教諭免許状とのダブル取得が増加している。
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※保育士不足は社会問題に。待機児童解消のためさらなる人材確保が求められている
Field3.教育系サービスに関わる場所で働く
11.地域コーディネーター
公立の小学校・中学校と地域のニーズをそれぞれくみ取り、学校支援活動に必要な人材を探して紹介したり、連絡・調整役をしたりする「学校と地域」「人と人」をつなぐ仕事。探求型地域学習、読み聞かせや昔あそび、登下校の見守りやパトロール、クラブや部活動のサポート、生徒の地域行事や職業体験への参加など、コーディネートする分野はさまざま。
地域でNPOやボランティア活動に従事する人のほか、PTA活動をきっかけに保護者や元保護者が務めることも多い。
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児童・生徒の教育の場は地域や社会にも広がっており、数多くの教育系NPOやソーシャル企業がその支援に取り組んでいる。
例えば、不登校の児童・生徒のためのフリースクールの運営、学校への出前授業の企画・運営、職業体験・インターンシップの機会の提供、地域・社会で学ぶスタディツアーの企画・運営など、その取り組みは非常に幅広い。
12.塾・予備校講師
塾や予備校で、児童・生徒の学力アップや受験対策のための学習指導をする仕事。プロの塾・予備校講師のほか、副業やアルバイトの時間講師、大学生のアルバイトも数多く活躍。
わかりやすく教える力に加え、生徒をやる気にさせる指導力やコミュニケーション力が求められる。
教員免許状の有無は問われないものの、正社員として働く場合は取得していると有利になることが少なくない。
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13.幼児教育講師
0~6歳までの子どもを対象に幼児教育を行う教室・スクールの先生。
文字の読み書き能力や社会性を高める知育、外国語、運動やリトミックなどの情操教育、小学校の受験対策など、カリキュラムは教室・スクールによってさまざま。
講師にはそれぞれの分野に応じた専門性が求められるが、保育士資格や幼稚園教諭免許状のような必須の資格・免許はない。
自宅で教室・スクールを開室する人も多い。
14.児童指導員
乳児院、児童養護施設、児童発達支援センター、障害児入所施設、放課後等デイサービスなどの児童福祉施設で、子どもたちが健やかに成長できるよう、療育・支援・指導をする仕事。
保護者と離れて暮らさなければならない子どもたちに対しては、保護者の代わりとなって生活指導もおこなう。
児童指導員として働くためには児童指導員任用資格が必要となり、教員免許状、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を保有している人のほか、大学・大学院で教育学、心理学、社会学、社会福祉学の指定科目を修めて卒業することでも任用資格を得ることができる。
15.ベビーシッター
仕事をもつ保護者の代わりとなり、個人宅や託児施設で乳幼児から小学生くらいの子どものお世話をする仕事。
ベビーシッター派遣会社を介して仕事を得るのが一般的。
資格・免許は必要ないが、子どもの発達や心理、健康などに関する知識はあるにこしたことはなく、ベビーシッターとして働く人のなかには、保育士資格、幼稚園教諭免許状、看護師資格のほか、認定ベビーシッターや英国チャイルドマインダーといった民間資格をもつ人も多い。
最近では英語などを教える家庭教師的な役割や外国人宅でのニーズも多く、語学力を求められるケースも増えている。
16.監督・コーチ
プロチーム、実業団、スポーツ少年団、学校の部活動などで各種スポーツ競技の選手を育成し、試合で指揮を執る仕事。
監督・コーチを目指す場合は、選手として優れた実績をつくるほか、体育大学や体育学部に進学し、スポーツ理論やスポーツ医学などの専門知識を身につけておくと有利。
競技によっては、コーチライセンス(免許)が求められることもある。
プロ野球などは選手が引退後に監督やコーチになるのが一般的だが、高い競技実績がなくてもスポーツ少年団などで子どもを指導することは十分可能だ。
17.スポーツインストラクター
フィットネスクラブ、スポーツジム、スイミングスクール、ダンススクール、体操教室などの運動施設で、一般客を対象に、水泳、エアロビクス、ヨガ、ダンス、体操などの指導を行う。
自身の競技経験のほか、体育・スポーツ・健康科学系の大学・短大・専門学校で学んだ身体や運動に関する専門的な知識を仕事に活かすことができる。
スポーツインストラクターとして働くのに特定の資格・免許は必要ないものの、就職活動時のアピールに活かせることもあり、運動指導に関連する資格を取得する人は多い。
ジムやスクールに所属するほか、フリーのインストラクターとして活動することも可能だ。
Field4.IT企業で働く
18.ICTコーディネーター
ICTとはInformation and Communication Technologyの略で情報通信技術を活用してコミュニケーションを円滑化し、サービス向上に活かすことを指す。ICTコーディネーターは、オンライン授業に必要な環境整備やデジタル教材の導入など、先生や教育委員会と連携して学校のICT化を支援する。
教育委員会から各学校に配置され授業のサポートも行う情報通信技術支援員(ICT支援員)、教育委員会へのアドバイザー的な役割を担う教育情報化コーディネーターがおり、教育情報化コーディネータ検定試験、ICT支援員能力認定試験といった検定・認定制度がある。
IT系の企業や教育機関に属している場合もあれば、個人で活動する場合もある。
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Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた言葉。
デジタル教材やeラーニングシステム、AIを活用した学習支援ツールなどの先端技術による教育の改革を意味する。
これにより、オンライン学習の普及や生徒一人ひとりに最適化された学習指導の実現などが期待されている。
19.デジタル教材企画・開発
デジタル教材やICT化された学習支援ツールなどを企画・開発する仕事。現場の先生の意見も聞きながらニーズに合った教材を制作する。
データやAIなどのテクノロジーの知識と同時に、学校の授業や教材に関する知識も必要。
教育関連の出版社、通信教育会社、学習塾などで、企画・開発職の募集が行われている。
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電子黒板、タブレット端末、PC、スマートフォンなどで活用できるデジタル化された教材を開発する企業。
タブレット端末の導入など学校のICT化が進み、ニーズが高まるなかで、この分野に参入する企業も増加している。
※官民連携で推進されているデジタル教材開発。大手企業も続々と市場に参入している
20.AIエンジニア
「AI(人工知能)」を専門的に扱う技術者。AI(人工知能)は大量のデータから一定の傾向を分析できるため、児童・生徒の学習履歴の分析や個別最適化学習への活用が期待されており、教育系のIT企業でもAIのプログラミングができる人材のニーズが高まっている。
AIエンジニアは、統計学・機械学習・ディープラーニングなど高度で専門的な知識を扱うため、数学的知識のほか、プログラミングなどIT関連のスキルも必要。
理系の大学・学部に進学して知識を身につけるのが一般的で、最近では、AI学部、データサイエンス学部、コンピュータサイエンス学部など、AI分野に特化した学部も増加傾向にある。
21.データサイエンティスト
学校のICT化が進むと、児童・生徒の学習・行動履歴が大量のデータ(教育ビッグデータ)として蓄積される。このデータを研究・分析し、デジタル教材や新たな教育サービスの開発につなげていくのがデータサイエンティストの役割。
データサイエンス学部、情報デザイン学部、情報学部などのほか、理学部や理工学部にもデータサイエンティストを目指せる学科・コースが設置されている。
●データサイエンティストについて詳しく知る
教育関係の仕事の年収は?
教育関係の仕事の年収は職種によってさまざまだが、たとえば公立学校に勤務する教諭や幼稚園教諭は地方公務員に該当するため、地方公務員の給与体系に則って決められる。
公立小学校・中学校教育職(幼稚園教諭を含む)の毎月の平均給与は、諸手当含め40万8337円(※1)、平均年収は約669万円(※2)となっている。
そのほか、一般企業に就職する場合は企業の給与形態によって、フリーランスとして働く場合はどれくらいの仕事量を受注できるかによって年収が変動する。
※1 総務省「令和4年地方公務員給与実態調査結果等の概要」参照。平均年齢41.8歳
※2 人事院「令和4年人事院勧告 給与勧告の骨子」参照。算出方法: 40万8337円×12カ月+賞与分4.4カ月(期末手当+勤勉手当)
教育関係の仕事に向いている人は?
教育関係の仕事に向いているのは、「未来を担う子どもたちの成長をサポートしたい」「日本の教育環境をよりよいものにしたい」という情熱や向上心を持っている人。
教師のように子どもの教育に直接関わる仕事と、ICT支援や教材開発のように間接的に関わる仕事があり、前者の場合は「人に何かを教えることやお世話をすることが好きであること」、後者の場合は「最先端のITテクノロジーの知識・技術」が適性として求められる。
教育業界の最新事情
「1人1台端末」は達成するも、学校側の利活用と人的体制が課題に
文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」。2023年度までに整備予定とされていた義務教育段階※における「1人1台端末」は、コロナ禍の在宅オンライン学習の必要性の高まりを反映し、2021年7月末時点で達成。
(※小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校/前期課程、特別支援学校/小学部・中学部)。
端末の整備は急速に進んだ一方、授業や家庭学習における利活用や、学校のICT化を支援するため4校に1人の配置基準が設けられている情報通信技術支援員(ICT支援員)の配置については地域や学校によって大きな差が見られ、教育の機会均等の観点から、いかにこの差をなくせるかが今後の課題に。
「GIGAスクール構想」のさらなる推進に向けて、ICT化をサポートする外部人材の需要もますます高まっている。
※文部科学省「GIGAスクール構想に関する各種調査の結果」令和3年8月30日公表
※文部科学省「1人1台端末の利活用促進に向けた取組について」令和4年11月25日公表
コンテンツ提供/ リクルート進学総研『キャリアガイダンス』
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取材・文/伊藤敬太郎(原文)、ミューズ・コミュニティー(2023年7月、一部更新)
イラスト/桔川 伸
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