研究に関わる仕事7選!理工系から社会学系まで人気・注目の分野を紹介
私たちの社会やテクノロジーの進化を根本で支えているのが各分野の研究職。「わからないことを解き明かしたい!」「物事を突き詰めて考えるのが好き!」という人にはぴったりの仕事だ。
どんな種類の研究職があるのか、各分野の研究職はどのような職場で活躍しているのか、まとめて解説しよう。
目次
研究に関わる仕事とは?
物事を掘り下げて考える専門家。「研究する仕事」はバリエーション豊富
これまでにない概念や価値など、「無」から「有」を生み出す仕事。ひとつの研究テーマをとことんまで突き詰めるため、物事を深く掘り下げて考えることが好きな人や知的好奇心旺盛な人に向いている仕事だ。
基礎研究に取り組む「大学」と、基礎研究結果をベースにした新しい製品やサービスの開発=応用研究に取り組む「企業」と、働く場所によってメインとなる仕事内容には違いがある。
研究職の分野は、自動車・ロボット・機械・化学・薬学・バイオ・IT・防災・製菓・食品など幅広く、日本の労働力不足や社会保障など、社会問題の調査・解決策の提案に携わる社会科学系研究者もいる。
研究職になるには?
必要な学歴は就職先によって異なる。
分野によっては学部卒でも就職可能だが、民間企業の理工系の研究職は大学院修士課程までの学歴が求められることが多く、大学教員なら博士課程修了が条件となるのが一般的だ。
学生時代の専攻と就職後の専門領域は必ずしも合致するわけではないので、大学・大学院は自分の学びたい分野に進んでOK。
研究職の分野別、人気・注目の職業
自然科学系から社会科学系、人文科学系まで、学問領域の数だけ幅広い種類の研究職がある。
大学は組織の性質上、教員(研究職)の専攻に文理の大きな偏りはないが、民間企業の場合は、研究職の90%以上は理工系が占めている。
なお、最近では、環境学やデータサイエンスなど文理を融合した研究領域も広がってきている。
AI(人工知能)研究者
人が獲得している知覚・知性を人工的に再現するAI(人工知能)は、今、世界中で注目されている研究領域。ITだけではなく、神経科学・認知科学などの領域も総合して研究が進められており、その成果は、これからの社会のあり方や人々の生活に大きく影響すると考えられている。
ロボット研究者
ロボットも、AI(人工知能)と組み合わせることで、多様な場面での応用が期待されている領域。触覚を持つロボット、人や動物と同じようにスムーズな動きをするロボット、人と同じように会話できるロボットなどの開発が急ピッチで進められている。
化学系研究者
化学の専門知識を生かして、新たな合成樹脂や合成繊維などの素材や、その応用方法について研究する仕事。物理やバイオなどの専門知識が求められることも多い。
大学や化学・食品・製菓メーカーなどで活躍している。
※ゼロから何かを生み出すワクワク感があり、研究成果が世のため人のためにもなる仕事だ
薬学・バイオ系研究者
薬学や生命科学の専門知識を生かして、製薬会社、食品・化粧品メーカーなどで活躍する研究者。新薬・再生医療技術・バイオ食品・化粧品などの研究開発、あるいはそれらにつながる基礎研究を行う。
機械系/電気・電子系研究者
機械工学や電気・電子工学の専門知識を生かして、自動車・産業用機械・家電などのメーカーで新技術やその応用方法について研究する。理工系の研究職の中でも非常にニーズが大きい職種。
インフラ系研究者
道路・公園・河川や運河・病院・学校など、人々が快適かつ安全に暮らせる都市インフラ構築のための研究に携わる。さまざまな学問分野を総合した領域のため、土木工学・防災工学・情報通信工学・環境学・都市計画学など各研究者のバックグラウンドは多様。
社会科学系研究者
社会学・法学・政治学・経済学・経営学などの考え方・手法を駆使し、社会で起きている現象や問題を調査して解決策を導き出す専門家。活躍の場は主に大学だが、民間企業ではシンクタンクなどでニーズがある。
※調査・実験を行い、実験結果をデータにまとめて分析。沢山の数字を扱う仕事でもある
研究職が活躍する主な職場
下に挙げているのが、研究職が活躍する代表的な職場。最も割合が大きいのが企業の研究開発部門(約7割)で、次いで大学(約2割)、各種公的研究機関となっている。
学術機関である大学では、未知の物質や未開拓の原理を発見・解明する基礎研究を行い、企業では基礎研究内容を応用した製品やサービスの開発を行っていることが多い。
大学・企業・公的研究機関はそれぞれ連携して共同研究に取り組むことも多く、人の交流も行われているが、今後はその規模を拡大することが大きな課題。
最近では、大学の最先端の研究成果を事業化する「大学発ベンチャー」も増えている。
大学
大学は教育機関であると同時に研究機関。大学や個人によって比重の違いはあるが、教授・准教授・助教・講師などの教員は、専門分野に関して学生への教育と並行して研究活動にも取り組み、論文を執筆する。
企業の研究開発部門
自動車・機械・化学・IT・製菓・食品などのメーカーの研究開発部門は、研究職の主要な活躍の場。国内の研究職の約7割は企業に勤務している。
ビジネスニーズに合った製品やサービスを開発するための応用研究のほか、その一段階前の基礎研究にも取り組む。
国立研究開発法人
それぞれの専門領域に関して、自主的・自律的に中長期視点で研究開発を行う独立行政法人。独立行政法人とは、政府の事業のうち、独立して運営した方が効率的な部門を分離独立させた法人を指す。
代表的なものに「理化学研究所」「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」「国立がん研究センター」「産業技術総合研究所」などがある。
国立研究機関
中央省庁が設けている研究施設。代表的なものは厚生労働省の「国立社会保障・人口問題研究所」「国立感染症研究所」、国土交通省の「国土地理院」、警察庁の「科学警察研究所」など。
正規職員は国家公務員であり、採用人数も少ないため、狭き門と言われる。
※研究者が活躍する職場は、公的機関から民間企業まで多岐にわたり分野もさまざま
公設試験研究機関
地方自治体が、地域の産業の振興・環境保全・保健衛生などを目的に設置している研究機関。代表的なものは、各都道府県の「農業技術センター」「産業技術センター」「環境保健センター」など。
地方公務員の研究職の代表的な活躍の場となっている。
シンクタンク
社会の課題や現状を調査・分析し、政府・官公庁、企業、社会に向けて解決策の提案を行う研究機関。政府系シンクタンクと民間シンクタンクがあり、民間のシンクタンクは金融機関や商社など、大企業のグループ会社であることが多い。
民間シンクタンクが扱う領域は企業にもよるが、国際情勢・産業・雇用・金融・環境・エネルギー・テクノロジー・農業など幅広い。
民間研究機関
一般企業の研究開発部門のほか、独立した財団法人、社団法人の研究機関も全国に多数ある。電力・自動車・鉄道・地域経済・エネルギー・農業など、特定の分野・産業・技術領域に特化した研究機関が多い。
研究に関わる仕事の最新の業界事情
日本の研究者は増加傾向。必要な研究費をいかに獲得するかが課題
総務省の科学技術研究調査結果によると、2020年度、日本の研究費の総額は19兆2365億円。対前年度比1.7%減となり、長期的に見ると緩やかに増加しているものの、研究開発費ランキング1位・2位のアメリカ・中国の大幅な増加率と比べるとほぼ横ばいに近い。
分野別の研究費の内訳を見ると、トップは「ライフサイエンス(創薬・再生医療など)」、次に「情報通信」、「環境」と続き、対前年度比で比較すると「ナノテクノロジー」が11.1%増、「海洋開発」が8.0%増となっている。
なお、日本の研究者数は2020年度まで5年連続で増加し、女性研究者が占める割合は17.5%と過去最高に。
ただし、研究者一人あたりの研究費は2年連続で減少しており、日本の研究者数に対しての研究費の少なさが課題として取り上げられることも増えてきた。
この現状を憂い、日本の「科学技術立国」としての復活を目指そうという動きも出ており、行政からの資金に加えて、大学や研究機関が立ち上げる独自の基金や財団や企業からの助成など、研究費の獲得方法も多様化が進んでいる。
また、近年では、学術系クラウドファンディングも研究費獲得の一つの手段として受け入れられつつあり、成功を収める例も。
クラウドファンディングサイトには、研究者のプロフィールや想いとともに、支援を募る数々の研究プロジェクトが紹介されている。
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コンテンツ提供/ リクルート進学総研『キャリアガイダンス』
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参照元/2021年(令和3年)科学技術研究調査 総務省統計局
我が国の産業技術に関する研究開発活動の動向 経済産業省 令和3年11月
取材・文/伊藤敬太郎(原文)、ミューズ・コミュニティー(2022年5月、一部更新) イラスト/桔川 伸
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