臨床検査技師ってどんな仕事?必要な資格、向いている人、気になることを徹底解説!
医療機関などで臨床検査を行い、病気の早期発見に寄与する臨床検査技師。医学や治療の進歩とともに需要が高まっている人気の医療職だ。そこで今回は、仕事の内容やなる方法、やりがい、向いている人などを、現役の臨床検査技師・浅野直仁さんに話を聞いてみた。
医療系に進みたいという人は必見の、実際の現場の声だ。臨床検査技師の仕事を詳しく見てみよう!
目次
東京女子医科大学附属足立医療センター
公益社団法人東京都臨床検査技師会
検査科 浅野直仁さん
・1990年4月 学校法人田島学園 東京医学技術専門学校入学
・1993年3月 学校法人田島学園 東京医学技術専門学校卒業
・1993年4月 東京女子医科大学附属第二病院
(現東京女子医科大学附属足立医療センター)検査科 入職
・1995年4月 東京女子医科大学病院 中央検査部
・2005年10月 東京女子医科大学東医療センター
(現東京女子医科大学附属足立医療センター)検査科
・2022年1月 東京女子医科附属足立医療センター 検査科
臨床検査技師の仕事
※臨床検査技師が行う検査には、検体検査と生体検査の2種類がある
臨床検査技師は、医師や歯科医師の指示の下に、主に医療機関で臨床検査を行う専門家。臨床検査には、患者の体から血液、尿、組織の一部などを取り出して行う「検体検査」と、体の表面や内部を検査する「生体検査」の2種類がある。
仕事の内容
臨床検査技師の業務は①微生物学的検査②血清学的検査③血液学的検査④病理学的検査⑤医動物学的検査⑥生化学的検査⑦生理学的検査(厚生労働省令で定めるもの)を行うことを業とする
と法律に定められている。検体検査は①から⑥、生体検査が⑦だ。
検体検査では、患者の血液、尿、便、組織片などを検査し、微生物やウイルス、腫瘍蛋白、ホルモン、細胞などを分析して病気や健康状態を調べる。
生体検査では、体の表面や内部の状態を、測定器を付けて計測する。
例えば、心電図による心臓機能の検査や、脳波計の脳機能検査などを行い、データを取得。腫瘍の診断は超音波診断装置を用いて画像を記録する。
検体検査は現在1700項目を超えると言われ、新規の検査項目は毎年導入されているという。
業務範囲は遺伝子分野、不妊治療の現場などにも拡大中だ。
「専門学校を卒業して、29年間、現在の職場で臨床検査技師として勤務しています。
検体検査のなかでも、血液の検査が専門です。
検査科では、それぞれの専門部署があり、検体検査ではPCR検査も行います。
検査室は24時間体制のため、夜勤で人がいないときには私もPCR検査をすることがあります。
仕事の流れとしては、病院の出勤の定時は9時ですが、外来患者さんの検査のために測定機器などがすぐに使えるようにするため、私たちは朝7時に来て機器の立ち上げをします。
業務は主に検査ですが、ミーティングや会議、勉強会などが入ることもあります。
16時に当直に引継ぎするために機器を調整して終えます。
拘束時間は7時から16時です。検査科は24時間対応なので、シフトによっては夜間勤務もあります」
臨床検査技師の活躍場所と将来性
臨床検査技師が業務する場所として、病院などの医療機関のほか、臨床検査専門の企業や製薬会社などがある。
臨床検査技師の職場はどんなところがある?
臨床検査技師が働く場所は、病院や診療所などの医療機関のほかに、検査を専門で行う臨床検査センター、製薬会社などの企業もある。また、医療機器メーカーで臨床検査の専門家として、医療機関などで自社の医療機器の説明を行う「アプリケーションスペシャリスト」も、最近注目されている業務だ。
診療所や規模が小さい病院では1人の検査技師が採血を含めいくつかの部門を掛け持ちで行っているところが多い。
多くの検査技師が在籍しているような大きな病院や臨床検査センターなどでは、検査の分野がさらに細分化され、それぞれ専門分野の検査業務を行っている。
将来性と就職率について
ITやAI技術など、臨床検査機器の発達により、検査の自動化が進んでいる。検査は機器にまかせ、人にしかできない知識やスキルが求められる傾向にあるようだ。では臨床検査技師としての就職は難しくなっているのかというと、そうではない。遺伝子分野や不妊治療分野、予防医学の分野、動物医療など、活躍の場所は医学の進歩と共に広がっている。
細胞検査士や超音波検査士、微生物検査士など、より専門性を高めることで、活躍の場が広がるだろう。
※東京女子医科大学附属足立医療センター検査科に従事する浅野さん。血液検査を専門とする
「医学の進歩とともに検査項目が増えてはいます。
しかし、検体検査でいうと、検査のAI化も同時に進んでおり、人が行うという点で将来性というと、先細りなのかもしれません。
ただ、AIは人の感情や思い込みが入らない分正確であり、臨床検査技師が病気を最初に発見するという役割から考えると、検査におけるAIの進歩は良いことだと、私自身は思っています。
その代わり、臨床検査技師の働く場は増えているのではないでしょうか。
病院や検査センターのほかに、特殊な検査を専門とする企業もあります。
健診センターで検査技師として従事している人や、企業で治験コーディネーターとして働いている人もいます。
また、臨床検査技師の資格のほかに、学会で認定されている資格を取得している人も多く、私自身も血液関連の資格をもっています。
検査技師以外の資格を生かして、検査以外の仕事に就く場合もありますね。
例えば、人工授精には生殖補助医療胚培養士などの学会認定の資格が必要ですが、その資格を取得して不妊治療分野で働いている人もいます」
臨床検査技師になるには
臨床検査技師は国家資格。国家試験を受けて合格することが大前提だ。
大学や短期大学、専門学校で必要な科目を修了することで受験資格が取得できる。
必要な資格と目指す学校
臨床検査技師になるためには、「臨床検査技師国家試験」に合格することが大前提。受験資格を得られる学校に進学する必要がある。
受験資格は、臨床検査技師養成所(大学・短期大学・専門学校)で得られるほか、大学の獣医学部、薬学部、大学の医学部、歯学部でも取得できる。
厚生労働省で定めている科目の単位取得が必要な場合があるので、注意しよう。
厚生労働省の「職業情報提供サイトjobtag」によると、臨床検査技師の就業に必要だと感じる学歴で、一番多いのが専門学校卒で73.2 %。次が63.4 %の大卒で、短期大学卒29.6 %が続いている。
大学と専門学校・短期大学の違い
※専門学校の卒業後に実習先へ臨床検査技師として入職
◆大学の場合大学の場合は、臨床検査技師のになるための勉強の他、一般教養なども学ぶことができ、幅広い知識を身に着けることが可能だ。
学校によっては、超音波検査士や細胞検査士の資格取得できる場合もある。
また、病院に付属している大学の場合は、付属する病院で実習を行い、そのまま就職できるというメリットも。
企業では入社条件に四年制の大学卒業を求めている場合もあるので、将来の就職先として臨床検査技師以外の分野も検討したい場合は、大学への進学を視野に入れておくとよいだろう。
◆専門学校・短期大学の場合
専門学校や短期大学は、臨床検査技師になるための科目や実習に特化しているため、3年で卒業し受験資格を得られる。
専門学校によっては病院や業界と提携しており、実習先や就職へのサポートも充実している場合も多い。
国家試験対策講座を設けるなど合格率が高めだとも言われる。臨床検査技師を目指しやすい環境だと言えるだろう。
「私が臨床検査技師という職業を知ったのは中学の健康診断でした。
尿検査が再検査となり病院に行ったのですが、『こういう仕事もあるのか』と思いました。
臨床検査技師を目指そうと考えたのは、高校生のときです。
化学や生物が好きだったということもあり、臨床検査技師の専門学校を進路に選びました。
当時、臨床検査技師になるための大学は少なくて、関東でも4校くらいだったのではないでしょうか。
専門学校では、2年生までで授業を終えて、3年生で臨地実習と国家試験対策というカリキュラムでした。
私の場合、実習先が今の職場でして、実習中に『試験を受けてみないか』と言われ、ちょうど空きがあり入職しました。
臨床検査技師として仕事をするためには、国家試験に合格しなければ始まりません。
ですので、学校のほうも卒業できるかできないかを含めて、厳しめに就職指導を行っているようです。
臨床検査技師に合格してから、就職活動を行う人もいます」
臨床検査技師の年収
医療分野である臨床検査技師の、年収や職場環境はどのようになっているのだろうか。
年収は20代で320万円
厚生労働省「2021年賃金構造基本統計調査」によると、臨床検査技師の平均年齢は38.6歳で勤続年数は10.6年、月額給与は31万9200円で、賞与85万300円、平均年収は468万700円となっている。年齢とともに上昇する傾向にあり、20代前半なら320万円、50代後半の男性では743万円だ。
女性は男性よりも上昇はゆるく、出産などの事情で一度辞めるなどの事情がありそう。
職場の規定によっても違いがあると思われ、今後の改善に期待したい。
勤務時間は、企業の場合は日勤が一般的だが、救急対応や入院施設のある病院の場合は、夜間当直や休日出勤もあるようだ。
臨床検査技師になるために必要なスキルとは?
※責任感と判断力、そしてコミュニケーション能力が必要な臨床検査技師の現場
医師の診断や治療に欠かせない臨床検査技師の仕事。国家資格を取得するだけでは、仕事にするには難しいだろう。
臨床検査技師になるために必要な素質を知ろう。
どんな人が臨床検査技師に向いている?
臨床検査技師は、患者の生命にかかわる仕事。責任感はもちろん、検査の際の慎重さ、判断力、忍耐力が必要だ。
さらに、医療の高度化や予防検診、感染症の対応など検査の量や多様化が進むなか、常に知識の習得や研鑽が求められる。
また、現場では検査の結果を伝えるなど医師や看護師との連携は不可欠だ。
そのため、コミュニケーション能力も求められている。
「臨床検査技師は、最初に病気を発見する人です。
『命に関わる仕事をしている』という責任感は、この仕事をするうえで最も大切だと思います。
例えば、ガンの検査でも、健診で見逃してしまうようなものを検査技師は発見して、再検査をアドバイスできます。
それでガンを発見できれば治療できるが、逃してしまうと治療までは遅れてしまう。
患者さんの人生を変えてしまう可能性があるのです。
素質でいえば、探求心と忍耐力ですね。
疑う力というか、おかしいなと思ったら、その原因をコツコツ突き詰めていける人は向いていると思います。
検査技師の仕事は、医師やほかの専門の検査技師と、症例検討など情報交換をしながら進めます。
従って、コミュニケーション能力や協調性は大切ですね。
昔は検査一筋のコミュ障みたいな人も多かったみたいですけれど(笑)、そうも言っていられない状況になっています」
高校生のうちにしておくべき勉強は
医療分野のため、化学、生物はもちろん、検査結果の傾向を判断するなどのため統計学も必要とされる。試験では理数科目が必須のため、高校では理数系に進むのが確実だと言えるだろう。
大学や専門学校に入学してからも、高校の理数系の授業を理解していることが前提とされ進められる。
数学も含めて、しっかりと勉強しておこう。
臨床検査技師・浅野直仁さんから高校生のみんなへ
※検査試薬の作成中の浅野さん
臨床検査技師のやりがいは
「患者さんの血液検査をしていたときに、他院から紹介で来られた患者さんの細胞に異常をみつけ、医師に追加検査をお願いしたところ、やはり白血病だったということがあります。
病気を最初に発見し、治療につなげられたとき、この仕事をしていた良かったと、やりがいを感じますね。
『君達は人の命にかかわる仕事をするのだから、それなりの覚悟で仕事をしなさい』
これは、就職して最初に言われた言葉です。今でも肝に銘じて取り組んでいます」
臨床検査技師を目指す高校生に向けてアドバイスを
命にかかわっている自覚や責任感を問われますし、ただ資格を取りたい、医療分野で働きたいな、という気持ちだけでは難しいと言えるでしょう。
しかし、最初に病気をみつけ、医師に伝えて適切な治療へ導くのが臨床検査技師の役割です。
医療の裏方的な仕事だとしても、医療現場において非常に重要な役割を担っています。
誇りをもって、長く続けられる職業だと思っています」
取材・文/櫻庭由紀子 取材協力・監修/浅野直仁 構成/寺崎彩乃(本誌)
★関連記事をcheck!
将来やりたいことがわからない…進路で悩んでいる高校生へ!将来やりたいことの見つけ方
病院で働く仕事ってどんな仕事があるの? 医師・看護師から医療事務まで大公開!
【医学部、看護・医療系学部、スポーツ学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!
看護職の種類がわかる!看護師・保健師・助産師などに必要な資格や仕事内容まで詳しく説明!