幼稚園教諭ってどんな仕事? 保育士との違い・やりがいを徹底比較!

子どもが好きで、将来は幼稚園の先生になりたいと思っているキミ!

「幼稚園の先生にあこがれているけど、保育士の仕事もいいかな…」なんて、迷ったりしていない?

そもそも幼稚園教諭と保育士ってどう違うのか、知ってる?

そこで幼稚園教諭と保育士の資格のことや仕事内容、やりがいを解説!

幼稚園教諭、保育士として活躍する先輩たちの声も紹介するので進路選びに役立てて。

幼稚園教諭とは?

小学校に入学する前、幼稚園に通っていたという人は大勢いると思うけど、幼稚園も小学校や中学校などと同じく「学校」に分類されている。

学校基本法という法律の中で、義務教育とその後の教育の基礎を養う「学校」と規定されている。

その目的は、「幼児を保育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長すること」。

つまり幼稚園教諭とは、幼稚園という「学校」の先生なんだ。

一方、小学校に入る前に保育所に通っていた人もたくさんいる。

幼稚園が学校であるのに対し、保育所は児童福祉法という法律で定められた児童福祉施設。

保育士とは、保護者に代わって乳児・幼児の保育を行う施設で知識と技術をもって、子どもたちの保育をする専門家だ。

幼稚園教諭も保育士も、もとになる法律や管轄する省庁が異なり、仕事内容にも違いがあるが、共通しているのは両方とも国家資格が必須の職業であるということ。

それでは幼稚園教諭と保育士のそれぞれについて、必須の資格や主な仕事内容などを、次の項目で解説していこう。

幼稚園教諭と保育士の違い~必要な資格・主な仕事内容~

幼稚園教諭と保育士の概要

<幼稚園教諭>
・必須資格:幼稚園教諭免許状

・管轄省庁:文部科学省

・主な仕事内容:幼稚園は、学校基本法で定められている「学校」。
幼稚園教諭は、学校の先生として、国が示す幼稚園教育要領や各幼稚園の方針に基づいて教育を行う。
教科書は使わず、「遊び」を中心にした活動を通じて、子どもの創造性や感性、身体能力の成長を支える。
子どもの健康状態やしつけなどをするのも重要な仕事。

・教育の対象:3歳から小学校に入学するまでの幼児。原則として年齢別に学級編成をする。
<保育士>
・必須資格:保育士

・管轄省庁:厚生労働省

・主な仕事内容:保育所は、児童福祉法の中に規定されている児童福祉施設。
保育士は、保護者に代わって子どもの身の回りの世話をし、「食事や排泄、着替えなどの生活習慣を身につけさせる」「遊びを通して心身の発達の支援をする」「集団生活のなかで社会性を養う」といった役割を果たす。
子育てに不安を感じている保護者をサポートするのも重要な仕事。

・保育の対象:0歳から小学校に入学するまでの乳幼児。
一人の保育士がみる乳幼児の数は、子どもの年齢別に、国によって決められている。

資格取得に必要な履修科目・試験科目など

<幼稚園教諭>
必修科目(一種免許状)の例:運動方法演習、音楽実技、造形表現、教職論、幼児教育原理、発達心理学、教育社会学、幼児指導法、保育環境論、保育内容の指導、教育実習など
※参考:各校のHPより

<保育士>
保育士試験の試験科目
筆記:保育原理、教育原理、社会的養護、子ども家庭福祉、社会福祉、保育の心理学、子どもの保健、子どもの食と栄養、保育実習理論
実技:「音楽に関する技術」「造形に関する技術」「言語に関する技術」から2分野を選択
(※)「一般社団法人全国保育士養成協議会」HPより

幼稚園教諭の資格

幼稚園教諭になるには、国家資格である幼稚園教諭免許状の取得が必須。

まず、大前提としてこの免許状には、大きく分けて「普通免許状」「特別免許状(※1)」「臨時免許状(※2)」の3種類があり、多くの幼稚園教諭が取得しているのは普通免許状。

幼稚園教諭になりたい高校生のみんながまず目指さすのも普通免許状だ。

普通免許状は、大学・短大などの所定の課程で学んで必要な単位数を修得し、卒業すれば取得できる。

資格試験を受験することなく取ることができるが、幼稚園教諭免許状取得に対応した課程をもつ学校で学ばないと取得できないので、進学先を選ぶ際にはチェックを。

(※1)特別免許状:教員免許はもっていないが、知識と経験が豊富な社会人を教師として学校へ迎え入れるために授与されるもの。
この免許の授与を受けるには、各都道府県教育委員会が実施する教育職員検定に合格するなど、いくつかの条件を満たす必要がある。

(※2)臨時免許状:普通免許状をもつ教諭を採用できない場合、期間限定で例外的に授与されるもの。
取得するには、各都道府県教育委員会が行う教育職員検定に合格することが必要。
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教諭免許状の種類と取得法

幼稚園教諭の普通免許状は最終学歴などによって、「二種」「一種」「専修」の3つがある。

●二種免許状(短大・専門学校卒)

基本的には短大で所定の科目を履修して39単位を修得することで、卒業と同時に取得できるが、養成課程をもつ専門学校でも取得可能。

ちなみに幼稚園教諭として幼稚園で働いている人の約7割は、二種免許状取得者が占めている(※)。

(※)令和元年度「学校教員基本統計調査」より

●一種免許状(大学卒)

大学で所定の科目を履修して59単位を修得することで、卒業と同時に取得できる。

なお、短大の専攻科で学び、幼稚園教諭一種免許状を取得するという方法もある(※)。

(※)幼稚園教諭一種免許状が取得できる短大専攻科で学ぶには、短大で必要な科目を履修して幼稚園教諭二種免許状を取得していることなど、出願条件を満たす必要がある。

●専修免許状(大学院修士修了)

幼稚園教諭免許状一種を取得し、さらに大学院修士課程または専門課程を修了することで取得できる。

免許の種類で、仕事内容に違いはある?

幼稚園教諭の普通免許状には3種類あることがわかった。

では、二種免許状か一種免許状かで、仕事内容に違いがあるの?

そんな素朴な疑問が湧いてくるのだけれども、仕事内容には違いはない。

ただ、私立幼稚園で働く場合には、給料などに差が出るケースもあるといわれている。

また、幼稚園の園長先生になるには原則として一種免許状の取得が必要とされているので、将来は園長先生になって幼稚園を運営する業務に携わってみたい人は、大学で学んで一種免許状を取得しておきたい。

☆専修免許状(大学院修士課程修了)を取得後の進路って?

専修免許状を取得して、幼稚園で働く人はそう多くない。

ただ、幼児教育の研究者や、大学・短大の教員として幼稚園教諭育成の仕事に興味がある人は、進路を考える際に大学院進学まで視野に入れて検討したい。

幼稚園教諭免許に更新は必要?

以前は、小学校、中学校、高校、幼稚園と、すべての校種の教諭免許状(普通)は有効期間が10年と決められていて、10年経過後に免許を有効にするには教員免許更新講習を受ける必要があった。

そんな「教員免許更新制」が、2022年7月1日に廃止になった。

幼稚園教諭免許状など教諭免許状は取得したら期限はなく、先々まで有効な免許状となっている。

更新のための講習受講や手続きなどは不要になったのだが、教諭の資質の向上を目的に新たな研修制度が設けられることになった。

教員免許更新制の廃止はニュースでも話題になっているので、興味のある人は最新情報をチェックしてほしい。

幼稚園教諭の働く場所は?

幼稚園のほか、「認定こども園」で活躍する人も増えている。

認定こども園とは、教育と保育を一体的に行い、幼稚園と保育所の両方の機能をあわせもつ施設。

待機児童問題の解消や少子化対策の目的で設けられた施設で、年々、増え続けている。

2011年には全国で762園だったのが、2021年(4月1日時点)には8585園になっている。

また、幼稚園教諭免許状をもっていることで、民間の幼児教室の講師として働くことも可能。

幼児教室には芸術系やスポーツ系、小学校受験対策など、さまざまなタイプのものがあるが、そこで働く講師は幼児教育に関する知識が欠かせないので、幼稚園教諭免許取得者の活躍の場となっている。

保育士の資格 

次は保育士の資格について、解説していこう。

保育士になるには、保育士の国家資格が必須。

資格を取るには次の2つの方法がある。

●無試験で国家資格を取得する

大学・短大・専門学校などの保育士養成課程で学んで、所定の科目を修得し、卒業することで保育士の資格を取得できる。

保育士試験を受験しなくても国家資格を取得できるが、都道府県知事が指定する学校・学科(指定保育士養成施設)で学ぶことが条件になっているので、進学先を選ぶ際にはチェックを。
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●保育士試験に合格して国家資格を取得する

資格取得の方法にはもうひとつ、保育士試験 を受験して合格するという方法がある。

この試験の受験資格があるのは、大学・短大・専門学校(修業年限2年制以上)を卒業した人、大学に2年以上在学中で62単位以上修得している人、所定の実務経験がある人など。

受験資格に定められている大学・短大・専門学校は、学部・学科は不問。

保育士とは関係ない学部・学科で学んだ人も受験資格はあるのだが、筆記試験全9科目と実技試験のすべてに合格する必要があり、簡単な試験ではない。

例年、合格率は20%前後と低く、合格するまでに2~3年かかる場合もあるという。

ちなみに保育士試験の2021年度の合格率は20.0%(※)

(※)厚生労働省「保育士試験の実施状況(令和3年度)」より

保育士の資格に更新は必要?

保育士の資格には有効期限はなく、ひとたび取得するとほぼ永久に有効

ただ、注意が必要なのは、指定保育士養成施設卒業証や保育士試験合格通知証などがあっても、それでは保育士として働くことができないということ。

保育士として就業するには、業務に就く前に、都道府県知事に対して登録申請手続きを行い、保育士証の交付を受けることが必要。

登録申請手続きを行わなかったことで、保育士の資格を失うことはないが、保育士証の交付を受けなければ、保育士として働くことができないということは、覚えておきたい。

保育士の働く場所は?

保育所のほか、認定こども園、児童館、児童養護施設、乳児院、障がい児施設、母子生活支援施設など、保育士が働く場は幅広い。

また、ベビーシッターサービス会社に登録してベビーシッターとして働いたり、企業や医療施設などの一時預かり所なども働く場となっている。

幼稚園教諭と保育士の仕事内容や給料の違い

1日の仕事スケジュールに違いはあるの?

●幼稚園教諭の場合

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幼稚園教諭の仕事の流れ


☆1日のタイムスケジュール

幼稚園の1日の教育時間は、文部科学省の「幼稚園教育要領」に基づき、4時間が標準となっている(幼稚園によっては預かり保育なども実施)。

しかし、幼稚園教諭は子どもたちへの教育だけではなく、さまざまな仕事を行っている。

※幼稚園によって1日の仕事の流れは異なっているので、紹介するのは一例。
・8時 出勤
園児を迎える準備、教室内の点検など。

・9時 園児が登園

・10時 各クラスの活動

・12時 昼食
後片付けや手洗いなども指導

・13時 かけっこをしたり、お遊戯など、自由遊びの指導

・14時 園児の降園を見送る

・15時~ 翌日の準備、行事の計画や準備、連絡帳への記録など事務作業、掃除

・17時 退勤
※出典元:全国幼稚園教員養成機関連合会より

●保育士の場合

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保育士の1日の仕事の流れ

☆1日のタイムスケジュール

保育所は、保育の必要量などに応じて、2つの利用区分があり、「保育短時間」の区分で預かる場合、最長8時間。

「保育標準時間」の区分の場合、最長11時間。

さらに延長保育も行っている。

このように開園時間が長いため、シフト制勤務を採用している保育所が多い。

※保育所によって1日の仕事の流れは異なっているので、紹介するのは一例。
・7時 出勤
シフト制勤務で早番の保育士は7時に出勤。開園の準備

・7時30 分~ 園児の出迎え
子どもたちの顔色や表情を見て健康状態をチェック

・9時~11時 朝礼、年齢別のクラスに分かれて保育
歌や手遊び、工作などを行いながら、授乳、おむつ替えや排泄援助など、子どもたちの身の回りのサポートも行う

※10時~10時30分頃 遅番の保育士が出勤

・11時~ 昼食の準備、配膳

・11時30分~12時30分頃 昼食
昼食後は昼食の後片づけや、子どもたちのお昼寝の準備

・13時 お昼寝中の子どもたちの様子を見守りながら、保育士は休憩をとる。保育日誌や連絡帳を書くなど、事務作業をすることも

・14時 子どもたちの起床
寝起きの悪い子を起こしたり、布団を片付ける

・15時 おやつを食べさせる

・16時 帰りの会
帰りの歌を歌って、みんなでさようならの挨拶をする

・16時~19時 お見送り、事務作業、掃除など
保護者が迎えにきたら子どもをお見送り。その際、その日の子どもの様子などを保護者に伝える

※16時ごろには早番の保育士が退勤。遅番の保育士による延長保育が始まる

・19時~9時30分 遅番の保育士が退勤
※出典:スタディサプリ進路より

収入はどんな感じ?>

幼稚園教諭と保育士の給料事情について、厚生労働省の資料を調べてみた。

☆幼稚園教諭の収入の目安
・月額給与: 25万6400円
・年間賞与: 78万9400円
・平均年収: 386万6200円
・平均年齢: 36.6歳
・勤続年数: 8.8年
・1カ月の平均労働時間:171時間/月
・超過労働時間: 2時間/月
☆保育士の収入の目安
・月額給与:25万6500円
・年間賞与: 74万4000円
・平均年収: 382万2000円
・平均年齢: 38.1歳
・勤続年数: 8.8年
・1カ月の平均労働時間: 166時間/月
・超過労働時間: 3時間/月
出典:厚生労働省「令和3年 賃金構造基本統計調査」
※幼稚園教諭のデータは、幼稚園に勤務する幼稚園教員と、認定こども園に勤務する保育教諭を対象にした調査結果。
※平均年収は、月額給与(きまって支給する現金給与額)×12カ月+年間賞与その他特別給与額にて算出。

両方の資格を取るには

幼稚園教諭と保育士の両方の資格を取りたいという人も大勢いるだろう。

そんな高校生のキミは、幼稚園教諭・保育士の同時取得を目指せる課程をもつ大学・短大・専門学校への進学を検討してみてはどうだろう。

在学中の2年~4年で両方の資格の取得を目指すとなると、幼稚園での教育実習(計4週間程度)と、保育所などでの保育実習(計30日以上)があるなど、実習が増えたり、修得が必要な単位数が増えて大変になるかもしれない。

でも、両方の資格をもつことで保育・幼児教育の専門家として就職先の選択肢が広がるというメリットがある。

例えば、認定こども園。幼稚園と保育所の両方の機能をあわせもつ施設で、認定こども園のタイプによっては幼稚園教諭と保育士の両方の資格を取得している保育教諭の人材が必要とされているんだ。

両方の資格を取るためにこんな方法もある

幼稚園教諭、保育士の両方の資格を取る方法は、ほかにもあるが、いずれも片方の資格を取得していることと実務経験が必要となっている。
 
●保育士の資格を取得している場合

幼稚園教員認定試験を受験して合格することで、幼稚園教諭二種免許状を取得できる。

ただし、幼稚園教員認定試験の受験資格があるのは、保育士として3年以上かつ4320時間以上の実務経験がある者など。
 
●幼稚園教諭の免許を取得している場合

保育士試験を受験して合格すると、保育士の資格を取得できるのだが、受験の際、筆記試験の一部の科目や、実技試験の受験が免除される。

ただし、この特例制度を利用できるのは、幼稚園教諭として3年以上かつ4320時間以上の実務経験がある人のみとなっている。

●「幼保特例」制度

幼保特例制度は、2025年3月までの期限付き制度で、かつ、幼稚園教諭・保育士の実務経験者を対象としたものなのなのだが、参考までに制度のあらましを解説しておこう。

保育士を取得している人が幼稚園教諭免許状を、幼稚園教諭免許状を取得している人が保育士の資格を取得しやすくするための特例制度。

この制度に対応したコースを設けている短大・大学で、一部の科目を選択して学ぶ科目等履修生として入学し、必要な科目を修得することで、最短半年で資格を取得することが可能。

通信制の短大・大学でも幼保特例に対応したコースを設けている学校があるので、仕事を続けながら目指す資格を取得することができる。

・「幼保特例」で保育士の資格取得者が幼稚園教諭免許状取得を目指す場合

保育士として3年以上かつ4320時間以上の実務経験がある人は、所定の8単位を修得すれば幼稚園教諭免許状を取得できる(幼稚園教員認定試験の受験は不要)。

取得できる免許の種類は、大学卒の人は一種免許状を、短大卒・高卒の人は二種免許状となる。

●「幼保特例」で幼稚園教諭免許状取得者が保育士の資格を目指す場合

幼稚園教諭として3年以上かつ4320時間以上の実務経験がある人は、所定の8単位を修得すれば、保育士試験が全科目免除となる。

先輩たちはどう決めた?

幼稚園教諭と保育士の違いや資格の内容がわかってきたところで、先輩たちの声を紹介しよう。

「スタディサプリ進路」編集部では、幼稚園教諭・保育士として活躍する先輩たち104人にアンケート調査を実施。進路選択のことや仕事のやりがい、大変なところなど、いろいろ聞いてみた。

Q 幼稚園教諭と保育士、進路選択の際にどちらを目指すのか、迷いましたか?

104人中、迷ったと回答した人は16人。意外と少ないかも!?

迷った理由は人それぞれだけど、大きく2つの傾向があることがわかった。

1つめは仕事内容や待遇面が理由で迷ったという回答。

例えばこんな理由。
・給料や休みの取り方などがどうなのか、気になった(愛知県・保育士)

・仕事内容が違うから、どちらを選んだらいいのか迷った(大分県・保育士)

どちらが安定しているかどうか、わからなかった(大阪府・幼稚園教諭)
2つめはやりがいをもって働けるかどうかで悩み、迷ったという回答だ。

例えばこんな理由。
どちらが自分に合っていて長く働けるのか悩んだ(三重県・保育士)

・どちらのほうが、やりがいが感じられるかどうかわからなかった(広島県・幼稚園教諭)
また、ほかにも、「両方の違いがよくわからなかったから(兵庫県・保育士)」といった理由を挙げた人も。

Q 幼稚園教諭か保育士か、決めた理由は?

では、幼稚園教諭か保育士か、迷った人も迷わなかった人も、先輩たちはどんな理由で決めたんだろう?

104人中21人と、2割を占めたのが「子どもが好きだから」という理由

このほかの人たちも子どもが好きだから幼稚園教諭・保育士の仕事を選んでいるわけだけど、具体的な理由を挙げている。

そのなかからいくつかピックアップしてみよう。
☆幼稚園教諭を選んだ人の場合

・母が幼稚園教諭をしていたから(埼玉県)

・幼児教育に興味があった(岡山県)

・幼稚園には夏休みがあるから(長崎県)

・収入は安定しているし、働く時間の融通もききやすい(大阪府)

・音楽会や運動会などの行事があって、子どもたちと一丸となって取り組むなかで達成感を感じられると思った(神奈川県)
☆保育士を選んだ人の場合

・自分が保育園出身なので、保育園で働きたかった(東京都)

・障がい者福祉にも興味があったので、保育士のほうが今後の選択の幅が広がるだろうと思った(埼玉県)

・0歳児から小学校入学前まで、長く子どもと過ごせるから(愛知県)

・預かる子どもの年齢に幅があり、月齢によって成長が違ったり、保育の仕方も異なるため、自分自身の勉強になると感じた(沖縄県)

・昔からあこがれていたし、小さいころからピアノを習っていたので生かせると思った(京都府)

Q 実際に働いてみてどうだった?

気になるのは、幼稚園教諭、保育士になった先輩たちが実際に働いてみての感想。

「よかった」と回答している人は33.7%、「まぁよかった」が22.1%と、幼稚園教諭、保育士の仕事に満足している先輩が過半数を占めていることがわかった。

その一方で、「あまりよくなかった」が4.8%、「よくなかった」が5.8%と、不満を感じている先輩が1割程度いる。

では幼稚園教諭、保育士の仕事のどんなところにやりがいがあって、どんなところが大変だと感じているのか、アンケート結果から先輩たちの声を紹介しよう。

☆やりがいは?

回答の約42%と多数を占めているのが「子どもの成長にかかわれること」。

また、「子どもの笑顔」「子どもたちがかわいい」といった声も少なくなかった。

アンケートでは「どんなときに『この仕事でよかった』『この仕事は楽しい』と感じる?」という質問もしていて、こんな回答が寄せられた。
・子どもたちが昨日できなかったことを、できるようになったとき(千葉県・保育士)

・毎日子どもたちと笑い合えること!(静岡県・幼稚園教諭)

・卒園していった子どもが、数年たって成長した姿を見たときや、挨拶してくれたときは、自分がその成長に役に立つことができたと、誇りに感じます(青森県・保育士)

・子どもたちと一緒に遊んでいるときはとにかく楽しい(岡山県・幼稚園教諭)

・自分がしんどいときでも子どもの笑顔を見るだけで頑張れる(三重県・保育士)

・子どもたちが「先生が大好き!」と言って、駆け寄ってきてくれるときはウキウキする(埼玉県・幼稚園教諭)

・子どもの成長を保護者と喜び合い、共感できたとき(埼玉県・保育士)
☆大変なところは?

幼稚園教諭、保育士の仕事で大変なところを挙げてくれたのは104人中67人(「大変なことはない」と回答した人は37人)。

どんなことが大変だと思うのか、上位3位は次のような結果になった。

※回答は複数回答。
・1位 保護者への対応

「クレーマーの保護者がいる」「保護者が細かいことを心配しすぎる」「過保護な保護者が多い」など、親への対応が大変だと答えた人が32人と最も多かった。

幼稚園教諭も保育士も、子どもだけではなく、その保護者とも密に接する仕事であることを実感させられる結果だ。

・2位 連絡帳や書類などを書く時間が多い

「連絡帳が多い」「書類が多い」「書き物が多い」など、事務作業が多いことにストレスを感じていると答えた人は9人。

子どもたちのケアをしながらの事務作業なので、負担が大きいということなのかも。

・3位 仕事量が多い

「自宅に仕事を持ち帰ることが多い」「やることが多すぎて子どもたちと向き合うことがおろそかになるときがある」「時間外の仕事が多い」など、仕事量が多いことを大変だと答えた人は7人だった。
・次点

「幼稚園教諭、保育士の仕事の大変なところ」の4位は、「給料が安い」だった(回答者は6人)。

事務作業を含めて仕事量が多いわりに、給料が低いということなのかもしれない。

このほか、「職場の人間関係」「休みが少ない」「朝が早い」などの回答があった。

Q どんな人に向いている?

幼稚園教諭、保育士の仕事に向いている人についても調査した。

「子どもが好きな人」のほか、どんな人に向く仕事なのか、寄せられた回答の中からいくつか、紹介しよう。
・子どもたちのさまざまな感情、性格の異なる子どもたちを受け止めることができるよう、視野が広くて柔軟性のある人(神奈川県・幼稚園教諭)

・子どもたちにも、大人にも、どんなときもイライラしたりせず、常に心穏やかに冷静でいられる人(富山県・保育士)

・幼稚園の先生なので、子どもたちにわかりやすく、楽しく教えることができる人(熊本県・幼稚園教諭)

・子どもたちの状態は毎日変わるので、予期せぬことも楽しめる人(神奈川県・保育士)

・仕事では大変なことも少なくないのでストレスを抱え込まず、何事も前向きに受け止めることができる人(大阪府・幼稚園教諭)

・事務作業が多いのでパソコン作業が得意で書類作成などが苦にならない人(埼玉県・保育士)

Q 幼稚園教諭、保育士を目指している高校生への応援メッセージ

高校生に向けて、先輩たちからメッセージをもらいました。
・子どもたちは一人ひとりで性格などが違うので、教科書だけでわからないことのほうが多いです。
たくさん実習に行って、たくさんの子どもとかかわりましょう(大分県・保育士)

・子どものしつけにもかかわる仕事なので、子どもが悪いことをしていたらきちんと注意できる人になってほしいです(熊本県・幼稚園教諭)

・実習では、自分がやりたいと思う遊びや、指導案を積極的に提出し、どんなことが子どもにとって理解しづらいのか、うまくいかなかったのか、どんどん挑戦してみてください。また、いろいろな手遊びを覚えておくと、実際に保育の現場で働くようになったときに役に立ちます(岡山県・保育士)

・幼児教育は、今日やったことが明日に結果に出るような仕事じゃない分、大変な面もありますが、行事や日常の生活を通じて子どもの「初めて」に出会える仕事です。困ったり、悩むこともありますが、私はため込まずに先輩の先生方に相談しています。先生方が親身になって考えて下さり、私も前向きに頑張ろうという気持ちになれます。子どもたちと一緒に自分も成長していける、やりがいのあるお仕事です。ぜひ、頑張ってください!(神奈川県・幼稚園教諭)

・保育士の給料面の低さや労働環境が社会的な問題になっていますが、それだけ注目されている職業でもあり、少しずつですが改善されてきている実感はあります。大きな規模の保育園もあれば小規模な園もあるので、自分に合った保育園を選べると働きやすいと思います。子どもと過ごす毎日は楽しくて、ワクワクがいっぱいです!(三重県・保育士)
幼稚園教諭も、保育士も人の乳幼児期という、その後の発達に大きな影響を及ぼす時期に携わり、子どもたちの成長を支える重要な仕事。

どちらの仕事を目指すのか、今の段階で自分が向いていると思えるほうを選んでもいいし、幼稚園教諭と保育士の両方の資格取得を目指せる大学、短大、専門学校に進学してから進みたい道を決めるのもいい。

まずはオープンキャンパスなどで、先生や先輩の話を聞いたり、仕事内容をしっかり調べてみよう!

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取材・文/小林裕子、編集/黒川安弥(本誌)、監修/乾喜一郎(リクルート進学総研・主任研究員)

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