MRの仕事内容は?文系も目指せる?仕事の1日の流れ、魅力ややりがいをインタビュー!

MR(医薬情報担当者)とは、医師や薬剤師などに医薬品の情報を提供する仕事。

製薬企業に勤務して、医薬品にかかわることができる仕事だが、大学の薬学部を卒業しなくても、文系も目指すことができる仕事として、注目を集めている。

そこで、医療用医薬品メーカーのMeiji Seika ファルマ株式会社でMRとして活躍する杉江 紘さん(30歳)に話を聞いてきた。

MRの仕事に興味がある、大学の薬学部への進学を目指している、文系で医療に携わる仕事をしたいと考えている、という高校生は要チェック!

MRの仕事とは?

医師や薬剤師などに医薬品の情報提供と情報収集を行うのが仕事

※自社の医薬品について勉強することからスタート

MRとは、Medical Representativesの略で、医薬情報担当者ともいう。

製薬企業の営業部門に所属して、病院・医薬品販売卸売会社・薬局などに出向き、自社の医薬品の品質・有効性・安全性などに関する情報の提供・収集・伝達を行うのが主な仕事。

患者志向に立ち、医薬品の適正使用に必要な情報活動を行うスペシャリスト。

人材派遣会社から派遣されて製薬企業で働くこともある。
「弊社では、主に感染症の抗菌薬やワクチン、中枢神経系の医薬品、ジェネリック医薬品を扱っています。

自分は現在、うつ病・統合失調症の薬を担当。

医師60~70人、薬局30店、医薬品販売卸売会社4~7社をまかされていて、医薬品販売卸売会社では1社あたり3~6人のMS(医薬品販売卸売会社の営業担当者)と情報のやりとりをしています。

すべての医師を訪問するわけではなく、メールを送ったり、手紙を書いたりすることも。

医療用医薬品メーカーの営業所に勤務する営業職ですが、MRが医薬品の販売や価格交渉を行うことはできません。

MRの仕事は、医師・薬剤師・医薬品販売卸売会社のMSの間に入り、医薬品の情報をつなぎ合わせるのが主な役割。

自社の医薬品について、有効性・安全性などをしっかりと伝え、医師や薬剤師などの医療従事者がどのような悩みをもっているか、どんな医薬品を求めているか、情報収集することも大切な仕事です。


医師の場合、1回の訪問で直接話ができるのは5~10分程度。

そこで、事前に病院のホームページなどを見て、その病院がどういうことに力を入れているのか、自分はどのような情報を伝えるのかを決めておきます。

話が一方的にならないよう、自社の医薬品の情報を提供しつつ、患者さんの状況やどんな薬が求められているか、しっかりと情報収集できるよう心がけています
(杉江さん)

診療時間外や営業時間外に病院や薬局などを訪問する

※医薬品販売卸売会社のMSに薬の情報を正確に伝える

「MRの仕事の1日の流れとしては、基本は朝9時に出社し、午前中は薬局や医薬品販売卸売会社などを訪問します。

薬局の開店時間の前に訪問したり、医薬品販売卸売会社の始業前に朝8時くらいからMSと打ち合せをしたりすることもあります。

病院やクリニックの午前や午後の診療が終わった後、医師を訪問して、自社の医薬品の情報を提供。

こちらから話をするだけでなく、医師や薬剤師から質問や相談を受けることも少なくありません。


基本的にはメールでアポイントを取ってから訪問していますが、オンラインで面談することもあります。

空いている時間は、会社に戻って、訪問した内容の整理、医師からの質問に対する調べもの、新薬についての勉強などを行っています」
(杉江さん)

MRになるには?

文系も製薬会社などにMRとして就職できる

 MRになるには、まず製薬会社やMRの派遣会社に入社し、一定期間の研修で導入教育を受けた後、6カ月間MRとして実際の経験を積みながら、毎年12月に実施されるMR認定試験に合格すると、MR認定証が交付される。

MR認定証がなくても、MRとして仕事をすることは可能(MR認定証の取得率は97.8%)。

ただし、病院などでは、MR認定証をもっていないと訪問させてもらえない場合もある。

製薬企業やMRの派遣会社に入社するにあたっては、大学卒業程度の学歴を求められることが多いが、学部学科は限定されず、文系の大学生も就職する道が開かれている。

専門の国家資格を取得しなくても、薬にかかわる仕事に就くことができる。
「祖父が医師だったこともあり、中学生までは将来、医師になりたいとあこがれていました。

しかし、理系科目が苦手で、高校では文系クラスを選択し、医師になる夢を断念。

大学は法学部で、就職活動を始めた当初は、銀行を志望していました。

ところが、大学3年次の冬、父からMRという仕事があることを教わり、文系も医療関係の会社に勤務できると知って、MRなら医師になりたかった夢に少しは近づけるかなと思ったんです。

いろいろな会社を調べて、今の会社に魅力を感じ、扱っている医薬品についてインターネットで調べたり、業界誌を読んだりして、就職活動にのぞみました。

大学時代、薬学の勉強はしていませんが、文系で医薬品会社に就職することはできたし、入社後に研修でしっかりと勉強すれば、MR認定証を取得できます
(杉江さん)

MRの気になる年収は?

MRの平均年収は約550万円

 MRの仕事は、製薬会社の正社員または派遣会社の社員として勤務。

パートタイマーやアルバイト、フリーランスでMRの仕事をすることはほとんどない。

そのため、就職した会社の規模などによって収入に差がでる。

MRの年収は平均551万8000円。

出典:令和3年度 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)

 MRの仕事のやりがいは?

医師や患者の役に立つことができる仕事

※他の医薬品の担当MRと情報交換することも

「医師から『こんな症状の患者さんがいて悩んでいたんだけど、御社の薬で改善したんだよね』と言われると、誰かの役に立てているのだとうれしくなります。

自分が薬の情報提供をしたことで、その患者さんの症状の改善につながったかと思うと、大きなやりがいを感じます。

間接的にでも治療の役に立つことができると、医師でなくても、患者さんを陰ながら支えられる存在になれたんだなと実感。

最も印象的で、今でも忘れられないことは、精神科の患者さんで、衝動的に死にたくなってしまうことがあったのですが、弊社の薬でそういう衝動を抑えて自殺を防ぐことができた、と医師から感謝されたケース。

自分はうつ病・統合失調症の薬を担当しているので、責任は重いけれど、患者さんの命を救うサポートができたとき、MRの仕事をしていてよかったと心から思います。

医師と面談するなかで、治療提案をすることもあります。

『その考え方はなかったな』と、医師に提案を受け入れられた時、MRの存在価値を実感できるんです。

医師は自分よりずっとたくさんの薬を知っているけれど、逆に細かいところまで気づかないことも。

そこに気づいてもらえるよう、ご提案させていただくことが大事。

納得してくださるまで説明するのも、MRの仕事の一つです。

次に訪問したとき、『そういえば、こんなことを言ってくれたけど、その薬を使ってみたら、すごくよかったんだよね』と言ってもらえると、とてもやりがいを感じます
(杉江さん)

MRに向いているのはどんな人?

※MRは人と会って話をすることが仕事

人と会ったり話したりするのが好きな人

「薬の名前や成分などはカタカナが多く、慣れるまで大変ですが、大学の薬学部で学ぶような専門知識がなくても、文系出身の人も問題ありません。

製薬会社に入社してから研修を受け、自社の薬に関するメカニズム、効能や副作用などを覚えて、積極的に情報収集ができれば大丈夫。

医薬品業界では、昨年あったことが今年は違っていたり、いろいろなことが起こったりするので、常にアンテナを高くして、情報を集め、勉強していくことが大事です。

MRは医師やMSと会って話をすることが仕事なので、人と会うこと、人と話すこと、人とコミュニケーションをすることが好きな人が、MRに向いていると思います。

自分はコミュニケーション能力がないと考えている人でも、人と会うことが好きだったら、MRの仕事を通じて、自然とコミュニケーション能力が身についていくと思うので、安心してください。

例えばクリニックを訪問したとき、待合室にはどんなものが置いてあるか、医師がどういうことに興味をもっていそうなのか、観察してみると、医師に話しかけるきっかけをみつけることができるので、観察力があって、まわりをよく見られるといいですね」
 (杉江さん)

MRを目指す高校生へのメッセージ

「部活動や趣味など、自分がやりたいと思っていることを最後まで突きつめてください。

人と話をすることがMRの仕事なので、友達だけでなく、部活動の先輩後輩、アルバイト先の自分より年上の方たちなど、いろいろな人と交流して、たくさんコミュニケーションしましょう。

それがMRの仕事の基本スペックになるので、人と話すことを楽しんでほしいですね。

部活動や趣味など、どこで医師と共通項があるかわかりません。

医師を訪問したとき、まずは天気や世間話などの雑談から入るのですが、思わぬ共通の趣味や関心事があると話のネタになります。

自分は経験していないことでも、『詳しく教えてください』と興味を示せば、そこから話がはずんで、医師の本音が聞けるかもしれません。

高校生や大学生のうちに、たくさんの人とコミュニケーションをして、いろいろなことに興味をもって、さまざまな経験をしてほしいと思います
(杉江さん)
薬学部に進学したいと考えている人はもちろん、文系クラスの高校生も、MRの仕事を目指すことはできる!

たくさんの人と会って、いろいろな話をすることが、MRの仕事につながるのだ。
 
 
取材協力/Meiji Seika ファルマ株式会社   日本製薬工業協会   公益財団法人MR認定センター
 取材・文/やまだみちこ 撮影/沼尻淳子 構成/寺崎彩乃(本誌)
※この記事は2022年9月に取材した記事です。
 
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