医療事務とは?1日の流れ、やりがい、キャリアetc.お仕事の疑問を解決!
病院に行くと必ずお世話になる受付や窓口。受診や入院の際の説明や会計など、医療現場における医療事務の人たちは、患者に一番近い存在ではないだろうか。
今回は、そんな医療事務に必要な専門知識や資格、仕事の内容を解説しよう。
目次
日本医療事務協会
日本医療事務協会は1975年の設立以来、医療事務の専門校として、数多くの受講生を医療現場へと送り出している。
日本医療事務協会の各講座は、現場の声を最大限に取り入れた「実務直結のカリキュラム」と、高い合格率を支える「手厚いサポート制度」をご提供。
また、医療・歯科事務・介護・調剤のスペシャリストとしてその確かな実力の証明となる資格試験を主催。
各種検定試験の作成・運営および対策教材の作成・出版を主に行っている。
日本医療事務協会ホームページ:http://www.japanmc.jp/
医療事務とは
※医療事務の仕事は受付やレセプト業務のほか、多岐にわたる
医療事務とは、医療機関において診療報酬を請求するための書類の作成を主に行い、窓口において外来の受付、医療費の請求、入退院の手続などを行う業務だ。つまり、診察の補助となる事務作業全般が、医療事務の業務であるともいえる。
具体的な業務内容をみてみよう。
医療事務の仕事内容
◆受付業務病院やクリニックなどの医療機関のカウンターで、外来の患者の応対をする。
具体的には、保険証を預かり、診察券やカルテを作成し、患者を診察へ案内する。
受付業務は会計業務を伴うこともある。
患者が病院やクリニックで最初に接する人であり、病院の顔。
医療事務として入職した際に最初に配属されるのが受付部門だ。
◆会計業務
診療が終了した患者から診療費用を受け取る業務。
カルテから診察の内容や検査の種類、薬の量などをコンピュータに入力し点数化し(診療報酬点数)、患者が加入している医療保険から、患者が自己負担する金額を計算して請求する。
◆レセプト業務
医療費の内容を明確に記した「診療報酬明細書(レセプト)」の作成と、健康保険組合などへ保険診療における医療費の請求を行う。
現在は、日々の会計業務でコンピュータに入力しているため、レセプト業務は月末や月初めに簡単な作業で請求書が作成できるようになっている。
しかし、間違いがないかをチェックしなければならず、医療事務の専門性が発揮される業務だ。
◆クラーク業務
「外来クラーク」と「病棟クラーク」に分かれる。
外来クラークは受付業務のほか、カルテやレントゲン、検査データの準備を行う。
医師や看護師を補佐する業務だと言えるだろう。
「病棟クラーク」は、病棟にあるナースステーションで働き、入退院に必要な書類のやり取りや費用の説明、施設の利用案内を行う。
入院に対して不安になっている患者や家族からの質問を受けることも多く、やはり幅広い知識が必要な業務だ。
レセプト業務は、最近は月末など締める日に集中して行っています。
専門性の高い業務ではたしかにレセプト業務とはいわれますが、実は、受付も会計もクラーク業務も、医療事務の専門知識は必要です。
例えば、電子カルテに入力された内容が会計に反映されるのですが、知識がなければ内容を確認することができません。
医療保険の種類がわからなければ、自己負担分がわかりません。
ソフトに入力して自動で請求書ができてくるとしても、説明のコメントを入れるなどITだけでは追い付けない部分があります。
こうした部分はまだまだ人のチェックが必要で、業務全般において専門知識は必要だと考えられます」
医療事務になるには?
※専門知識が必要となるため、進路は資格取得を視野に入れて
医療事務になるのに特別な資格は必要なく、無資格であったとしても入職できる。ただし、前述したように医療事務の業務には医療事務特有の専門知識が必要だ。
このため、やはり勉強はしておいたほうが有利ではある。
医療事務の知識を得るためには、大学、短大、専門学校のほか通信教育という方法がある。
◆大学・短大
大学や短大の場合は、医療や福祉の学部で医療事務だけではなく医療や福祉全般について学ぶことができる。
看護師のサポートを業務とする看護助手の勉強をすることも可能だ。
また、医療事務そのものに従事するのではなく、例えば医療事務や福祉事務関連のソフト開発などの仕事に就きたい場合、企業の就職に有利となる場合もある。
医療事務だけではなく幅広く進路を考えたい場合は、大学・短大への進学を視野に入れてみてはどうだろう。
◆専門学校・通信教育
専門学校・通信教育の場合は、医療事務に特化しているため資格取得と実践に強い。
専門学校では実践研修をカリキュラムに設けているところもあり、即戦力として就職に有利となるだろう。
また、医療事務に関連する知識や資格として、医療秘書などの勉強をすることも可能だ。
例えば、大学を卒業してから大きな病院に事務職として入職するとしても、配属先は医療事務のほかにも、経営や人事、総務などさまざまです。
大学で医療事務を勉強していなかったのだけど、配属先でレセプト業務が必要になるからと、通信教育の短期集中コースで資格取得する人もいます。
大学・短大か、専門学校かは、将来の選択肢やキャリアをどこまで広げるかを考えて選ぶのがよいと思います」
医療事務のもっていたほうがいい資格
厚生労働省認定の資格は、難易度は高いがキャリアアップに有効
医療事務には国家資格は存在しないが、民間団体による資格や研修は多い。医療事務は一般の事務とは違い、診療報酬の計算や医療保険制度の理解など、専門知識が必要となるため、勉強のためにも資格取得を視野に入れたい。
どんな資格があるのか、主なものを具体的にみてみよう。
診療報酬請求事務能力認定試験
厚生労働省が認可した唯一の医療事務資格。医科と歯科があり、どちらも学科試験と実務試験がある。
学科試験では診療報酬や医療保険制度に関する問題、実技試験では実際のカルテからレセプトを作成する。
現在、電子カルテの普及によりコンピュータに入力され自動的に計算されるが、試験では手作業によるレセプト作成となり、確実な理解と知識が必要だ。
このため難易度も高く、資格手当の対象としている病院も多い。
医療事務に関する各種検定(一例)
◆医療事務検定試験医療保険制度の知識から、医療事務の実践的なスキルである医療費算定の知識など、医療事務全般の基本的な知識と技術を問う試験。
学科試験と実技試験がある。
◆医事コンピュータ能力技能検定試験
医事コンピュータの入力業務に必要な知識と技能レベルが審査される。
学科試験はなく、診療報酬明細書の作成2題(外来1題、入院1題)の実技試験がある。
◆レセプト点数業務技能検定試験
レセプトの病名に対して行われた検査や治療、処方された薬が正しいかどうかなど、請求業務の全般的な知識が審査される。
学科試験と実技試験がある。
◆保険請求事務技能検定試験
歯科医院での請求事務業務に必要な知識と技能レベルが審査される。
歯科医師法・歯科衛生士法・歯科技工士法など歯科に特化した法律の知識や業務を問う学科試験と実技試験がある。
このほか、介護報酬や調剤薬局の事務に関する検定、各民間団体や協会が認定する医療事務試験、接遇やマナーなどの試験がある。
医療事務の平均的な給料
就職する病院の規模や地域によって違いはあるが、正社員であれば一般企業の事務職と同程度だ。医療事務では、学歴よりも経験や能力を重視するため、大卒でも専門学校卒でも、収入の差はさほどない。
経験が長いほど昇給率は高く、入職して10年ほどの年収は平均で350万円といわれる。
医療事務の一日の仕事の流れ
※受付開始時間は患者が一気に来院するため忙しい
医療事務は実際にどんな1日を送っているのだろうか。ここでは、一般的な病院の様子をみてみよう。
7:45 始業
受付が8時からの場合、30分前には来て掃除や看板を出すなど環境整備をして、今日の検査や診察の用意を行う。
8:00 午前の受付開始
受付時間と同時に診察の患者が入り、受付やカルテの準備、会計の業務がスタート。
体調の悪い患者も多いため、目配りをしながらスピーディーに業務をこなしていく。
13:00 午前の診療が終了
会計を一度締めて、午後の検査の準備をして休憩に入る。
診療所は昼休みが長いところが多いが、これは医師や看護師が訪問診療にでかける場合があるため。
医療事務でも、訪問診療で発生した会計処理を行うなどの業務がある。
15:00 午後の診療
午後の診療がスタート。
午前中と同じ業務を行っていく。
16:30 午後の受付終了
すべての診療が終了したら、会計を締めて掃除等を行い、次の日の準備を行い、終業となる。
診察が長引いた場合は残業となることも。
17:00 終業
レセプト業務が忙しい月末や月初めは残業となることも多い。
今はコンピュータに入力したものが自動で請求書として作成されるが、間違いがないかチェックしたり、コメントが必要な場合は入れたりなど、レセプトチェックの作業は欠かせない。
画面で見るだけではなく、紙にプリントアウトしてチェックすることも多く、2時間程度の残業となる場合も。
最近では、レセプトチェック専門の人を配属するなど、できるだけ残業がない方向に進めているようだ。
医療事務の大変なところ
※法改正の際には研修制度を設けている医院も多い
資格は必要なく、デスクワークであり、残業もそんなに多くない職場だと思われがちな医療事務。事務職のなかでも人気の職業だ。
しかし、実際は専門知識が問われ、診療の様子によっては予期せぬ残業があるなど、見えていない部分も多い。
仕事の幅が広く、覚えることが多い
医療事務は一般の事務と比較して、受付や会計、患者さんへの対応など覚えなくてはならない事柄が多く、診察の介助やカルテ作成、レセプト処理といった医療や法律にかかわることもあるため、常に正しい知識の習得が必要だ。地域の診療所やクリニックの場合は人員不足ということもあり、病院の業務全般にかかわる場合もあり、医療用語を覚える必要性も。
さらに、医療制度の改正があった場合は、そのつど新しい制度を覚えなくてはならない。
しかし、いつ何時、どこに配属されるかはわからないので、全般的な知識は身につけておいた方がよいでしょう」
入力や請求書作成のソフトも、改正に合わせて変更になりますが、チェックできるように知っておくことは重要だ。
患者さんからのクレーム対応に追われることも
医療事務の仕事は幅広く、受付も大切な業務のひとつ。このため、患者からのクレームの窓口になることもあり、臨機応変な対応力が必要とされる。
体調が良くない患者が吐いてしまうということもあり、その場合もスピーディーに対処しなければならない。
その病院の窓口となるからこその、大変さであるといえるだろう。
感染症のリスクが高い
病院にやってくる患者のなかには、感染症に罹患している人もいる。窓口で受付をしていると、やはり感染症に感染してしまうリスクは高くなる。
感染症対策を万全にしておかなくては、他のスタッフに迷惑がかかるうえに、最悪パンデミックを引き起こしかねない。
体調管理も重要な仕事のひとつだ。
また、医療だからこそ感染症に対する研修や勉強会がしっかりと行われていることもある。
金銭にかかわることのため精神的な負担も
医療事務に限ったことではないが、会計やレセプト業務など金銭にかかわる業務のため、責任は重大だ。特に、医療事務は疾病や検査による点数や、医療保険の種類によって自己負担分が変わるなど、制度によって綿密に計算が決められている。
ミスにより、間違った会計をしてしまったり、請求できなくなってしまったりすることも。
さらに、カルテや処方箋を間違うと、命にかかわることもある。
常に気を抜けない職場であり、事務といえども医療にかかわっている自覚が必要だ。
医療事務のメリット・やりがい
※知識や経験が昇給に結び付き、柔軟な働き方を選べるため、長く就業する人も多い
大変なことも多い医療事務の仕事。しかし、メリットややりがいのほうが大きいという現役の事務員も多い。
どんなメリットややりがいがあるのかを聞いてみよう。
人の笑顔に接し、感謝してもらえる
クレームがあるとしても、それは一部の患者。医療事務の受付では、笑顔でのコミュニケーションや真摯な勤務態度により、患者から感謝される場面が多い。
入院していた患者が病気の治癒や改善を報告に来ることもあり、そういった人との暖かいやり取りがやりがいであると答える医療事務員は多いようだ。
誰かの役に立っている実感がやりがいに
医療事務は、検査やカルテの準備など、医師や看護師のサポートの業務も行う。したがって、医療に関係する知識を身につけるようになり、そのことがまた、医師や看護師の補助業務につながっていく。
ひいては、医療にかかわるすべての業務に役立ち、キャリアを積むにしたがい、医療にかかわる一員であると実感できる。
社会貢献しているという実感が、やりがいにつながるのだ。
ライフステージに応じてさまざまな働き方が可能
医療事務は正社員登用だけではなく、派遣やパートなどさまざまな働き方を選択できる。子育てや介護などで時短のパート勤務になったとしても、経験や資格により復帰が可能だ。
また、レセプトチェックなど、月の決まった期間だけ働くなどもできる。
自分のライフステージに応じて選択できる柔軟な働き方が用意されていることは、大きなメリットだ。
どこにいても安定して働ける場所がある
病院で働く医療事務の働き場所は、社会に絶対に必要なものであり、どの地域にも必ずある。したがって、地元で働くこともできるし、病院が倒産することはあまりない。
また、景気に左右される職種ではないため安定しており、長く働けるという安心感も大きい。
医療事務が人気の事務職であることの、大きな理由のひとつだろう。
医療事務のキャリアとは?
※経験や知識を深めることで診療情報管理士や医師事務作業補助者の仕事も
安定して長期間働くことができる医療事務。さらに資格取得など知識や経験を積むことで、キャリアアップも期待できる。
例えば、医療事務の仕事をさらに深める「診療情報管理士」「医師事務作業補助者」の仕事がある。
「診療情報管理士」は、大学病院・総合病院などに勤務し、診療情報をデータベースに入力し、さまざまな統計資料を作成する仕事。
医療事務の現場におけるICT化が進む今、注目されている資格だ。
病院によっては医療事務の仕事を任されることがあるため、医療事務の知識も持っていることが戦力となるだろう。
「医師事務作業補助者」は、医師の代行として、診断書の文書作成や電子カルテへの入力を行う仕事。
「医療クラーク」とも呼ばれ、医療機関における医師の事務作業を補助する。
主な就職先は、総合病院や大学病院など大規模な病院が多く、その場合は専任だ。
従事するための特別な資格は必要ではないが、医療事務の経験と実績がみられる。
検定試験を受験し合格することで、知識や能力をアピールできるだろう。
ステップアップすることで、資格や能力による手当がつくなど、給与アップも見込める。
キャリアアップを目指すことで、やりがいも増すはずだ。
医療事務の勤務先
※病院だけではなく、調剤薬局や高齢者施設など活躍の場は多様化している
医療事務の勤務先は病院だけではなく、知識や資格、キャリアアップによって病院以外のさまざまな施設や機関、企業での就職が可能だ。病院・総合病院・大学病院
医療事務の仕事といえば、やはり病院での業務が圧倒的に多いことも事実。病院の規模によって、働き方も異なる。
総合病院や大学病院などの大規模な病院では、業務が分業されていることが多く、より専門性を求められることもあるだろう。
診療所・クリニック
地域の診療所やクリニックの場合、医療事務員数は少なく、庶務的な業務の一切を行う。地域の人々との交流もあり、地域貢献できる職場だ。
歯科医院
歯科の医療事務は一般の医療事務とは違うため、歯科の医療事務の勉強が必要だ。調剤薬局
患者が医療機関から処方された処方箋の入力や会計、調剤報酬請求事務などを行う。医療事務の知識のほかに、調剤事務の資格や知識が必要だ。
介護施設など高齢者施設
介護の請求事務は介護報酬請求事務となるのだが、医療の診察が伴うことも多く、医療事務の出番となる。ケアマネジャーや施設職員、医師とのコミュニケーションが必要な職場だ。
また、最近ではレセプト業務を外注することも多く、請求事務代行業での需要も高まっています。
さらに、ICT化が進むなか、医療事務の需要が高まっているのが、医療事務コンピュータメーカーです。
電子カルテシステムや医療事務コンピュータソフト・診察券発行機などを開発・販売します。
今後も求人の増加が予想されます。
知識と経験を生かして、医療事務の専門学校や通信教育などの講師を勤めるという働き方もあります」
医療事務を目指す高校生へメッセージ
※困っている人に気づける目をもつことが医療事務には大切
医療機関には、具合が悪い人はもちろん、赤ちゃんを抱っこした人、検査が不安な人、障がいをもっている人など、さまざまな人がやってきます。
そういった人が何に困っているのかを、すぐにみつけることができる目をもつことが、この仕事にはとても大切です。
仕事の向こうに人がいる、医療にかかわる仕事をしているという自覚が、正確な事務処理や請求の業務へとつながり、患者への笑顔となり、やりがいにつながっていきます。
高校生の皆さんが、医療にかかわる仕事や医療事務に興味を持っているのであれば、人を思いやる視点を養ってほしいと思います。
気配り・気遣いの意識は、コミュニケーション能力を高め、感謝される医療事務員への成長にも役立つはずです」
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