企業の成長を支援する「コンサル」とは?東大・京大生になぜ人気?仕事内容とやりがいに迫る!

「コンサル」とは、正式にはコンサルタントと言い、依頼主(クライアント)の経営課題を明らかにし、課題解決のための戦略立案をすることで、企業の成長や業績の改善を支援する仕事だ。

そんなコンサルタントは、東大・京大生の就職先調査で上位にランクインする人気の職業。

そこで今回は、コンサルタントとはどんな仕事なのか、詳しく解説!

実際に活躍しているコンサルタントのインタビューも交えて、仕事内容ややりがいなどを紹介しよう。


コンサル(コンサルタント)とは

コンサルタントとは、企業や官公庁などから依頼を受け、さまざまな調査・分析を行って課題に対する最善の解決策を考え、今後の成長に向けてアドバイスや支援をする専門家のこと。

略称でコンサルとも言われる。

コンサルタントは、依頼主(クライアント)の課題解決のためにどう実行するのかを考え、実行支援まで行うケースもある。

依頼主(クライアント)の業種や規模、課題がどんなものであっても、コンサルタントはクライアントのこれからの経営状態や事業戦略にもかかわる、重要な役割を果たす。

主にはコンサルティング専門の会社(コンサルティングファームとも呼ばれている)に勤務し、活躍している。

コンサルタントは東大生・京大生に人気の職業

東大生の就職先調査でもコンサルティング会社は上位にランクイン

コンサルタントは、クライアント企業や団体、さらにはそこで働く人たちの未来にもかかわる仕事。

そのため、高い分析力と専門知識、課題解決力が必須だ。

そんなコンサルタントという職業は、東大生・京大生の就職先として人気を集めている。

公益財団法人東京大学新聞社(※1)が東大の学部卒業・大学院修了者を対象に行っている就職先調査の結果をみてみると、ここ数年、コンサル人気が続いていることがわかる。

就職先ランキングでは、複数のコンサルティング会社が上位にランクインしているという人気ぶりだ。

2023年卒業者への調査では、学部卒業者の就職先上位20社の中で7社がコンサルティング会社。

大学院修了者も上位20社のなかで5社がコンサルティング会社で、そのうちの1社はランキングの1位になっている
(※2)。

【出典】
(※1)公益財団法人東京大学新聞社:東京大学の学生新聞である「東京大学新聞」を発行する団体。記事の企画・執筆・運営は、現役の東大生・東大院生が行っている。
(※2)2023年東大大学院修了者の就職先ランキングの1位は、外資系コンサルティング会社のアクセンチュア。

東大生に聞いた!「コンサル」人気の理由は?

 それではなぜ、コンサルタントは東大生に人気があるのだろう?

人気の理由を探るべく、編集部では、現役東大生・東大院生と卒業生にアンケート調査(※)を実施した。

回答を紹介しよう。
東大生がコンサルになりたいと思う理由とは?
──────────────────────

☆最も多いのは、「高収入だから」

●「高収入が得られるというイメージがある仕事だから」(20歳・教養学部)

●「高収入であり、近年注目度の高い職業だから」(18歳・教養学部)

●「高収入で、東大生が就職した前例が多数あって、入っていきやすいから」(20歳・法学部)

●「収入の高さと肩書の良さ」(24歳・法学政治学研究科)

●「高収入で優秀さの代名詞のような職業で、良い企業に転職しやすそうなイメージ。また、論理的思考力での問題解決、というのが東大生の思考スタイルに合っていると思う」(21歳・教育学部)

このように「高収入」「収入が高い」というキーワードを挙げての回答は過半数を占めた。

☆「やりがいがある仕事だから」という理由も!

収入面だけではなく、コンサルの仕事のやりがいなど、仕事内容にかかわるコメントも多く寄せられた。

●「企業の事業活動に貢献でき、社会に大きくかかわることのできるグローバルでスケールの大きい仕事だから」(18歳・教養学部理科一類)

●「自分のスキルを発揮できる仕事」(20歳・教養学部理科一類)

●「今まで頑張ってきたことを精いっぱい発揮できると思うから」(19歳・教養学部理科三類)

●「やりがいが感じられる職業であって、経験や知識がものをいう職業だと思うから」(18歳・教養学部理科一類)

●「自分の力で人を助けることを実感できる仕事だから」(18歳・教養学部)

●「経営難に苦しむ企業を助けることができる仕事」(19歳・教養学部)

●「やれることの幅が広く、キャリアアップの観点からも得られることが多いと考えられる」(23歳・工学研究科)

こうした回答から、「高収入で、自分の専門知識を発揮できてやりがいが大きい仕事」であることが、東大生のコンサル人気につながっていることがわかる。

 

(※)2023年6月、東大生・東大院生・卒業生57名に実施したアンケート調査からコメントを紹介。

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コンサルタント

※コンサルタントは、自分の専門知識を存分に生かして活躍できるうえ、高収入が得られる仕事とあって、東大生から人気を集めている

コンサルタントの活躍フィールド

コンサルタントの活躍分野は幅広い

コンサルタントといっても、取り組む分野は幅広い。

金融、自動車、外食、アパレル、小売・流通、通信、医療・福祉、教育、観光、不動産、建設、レジャーなど、あらゆる業種で活躍している。

民間企業だけではなく、官公庁や自治体などで活躍するコンサルタントもいる。

では、企業や官公庁などのどんなニーズに対してコンサルタントが支援しているのだろう?

代表的なところを紹介すると、次のようになる。

●新しい事業を立ち上げたい。

●海外に進出して事業を広げたい。

●業績が低迷しているので、回復させたい。

●他の会社と手を組んで事業を発展させたい。

●会社を成長させていくために、М&A(☆)を行いたい

●優秀な社員をたくさん育てていきたい。

●最新のIT技術を取り入れて、業務を効率よく行いたい。

●業務の生産性を高めたい。

●地域の人口を増やし、活性化させたい


このようにコンサルタントの活躍フィールドは、幅広い領域にわたっている。
☆М&A(エムアンドエー)とは
─────────────────
「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略で、企業の合併・買収のこと。

2社以上の会社が一つになったり(合併)、ある会社が他の会社を買うこと(買収)。

企業の合併・買収によって新しい技術や優秀な人材などを手に入れることができ、企業の成長につなげていくことが可能になる。

また、会社を売った側にとっても、買い手となった会社の資金などにより、経営が安定するといったメリットがある。

東大生に聞いた! コンサルタントになったらどんな仕事をやりたい?

このように、幅広い活躍の可能性があるコンサルタント。

そこで、現役東大生・東大院生と卒業生にも「コンサルタントになったら、やってみたいこと」を聞いてみた。

アンケート調査(※)に寄せられた回答からピックアップ。
コンサルタントになったら、やってみたい仕事は?
──────────────────────────

●「企業の再編に取り組んでみたい」(21歳:法学部)

●「中小企業の復活」(20歳:教養学部)

●「法律の知識を生かして企業のM&Aをやっていきたい」(24歳:法学政治学研究科)

●「金融ビジネスにかかわってみたい」(20歳:教養学部)

●「IT関連のコンサルタントになりたい」(25歳:人文社会系研究科)

●「危機的な状況の会社を救いたい」(18歳:教養学部)

●「いろいろなことに興味があるので、多分野にかかわりたい」(22歳:理学系研究科)

●「国や自治体の少子高齢化対策など、公共政策に取り組んでみたい」(19歳:教養学部)

など、バラエティーに富んでいる。

 

(※)2023年6月、東大生・東大院生・卒業生57名に実施したアンケート調査からコメントを紹介。


コンサルタントは、幅広い分野で活躍している

※コンサルタントは、幅広い分野で活躍している

コンサルティング会社の種類

コンサルタントは、主にコンサルティング専門の会社に勤めて活動している。

さまざまなコンサルティング会社があり、コンサルティングの対象や内容によって、大きく4種類に分けられる(※)。
●総合系コンサルティング

官公庁、自治体、企業などクライアントは多岐にわたり、あらゆる業種、あらゆる分野の課題解決と支援を行う。

●戦略系コンサルティング

主に企業の経営課題の解決を目的に、高い業績をあげていくための事業戦略を考えたり、実行するうえでの支援を行う。

●IT系コンサルティング

IT機器や新しいシステムの導入など、IT技術で、クライアントの課題解決や業務の効率をあげるための支援を行う。

●専門コンサルティング

業種や分野など、特定の領域に対して、専門的にコンサルティングを行う。

建設、医療、金融、小売など、特定の業種に絞り込んでコンサルティング業務に取り組んでいる会社や、財務・会計、組織・人事など、特定の事業活動のコンサルティングを行う会社もある。

  

(※)コンサルティング会社の種類について分類する方法や名称などは、ほかにも諸説あるが、この記事では取り扱う分野を軸に分類している。

コンサルティング会社とシンクタンクの違い

コンサルタントについて調べているとき、頻繁に出てくるのがシンクタンクという言葉。

シンクタンクとは、主に官公庁や自治体などからの依頼により、経済・産業などに関する調査・分析、政策の提言を行う研究機関のこと。

クライアントに対して解決策を示すことまでを業務としているコンサルティング会社とは違い、調査・研究を主な業務としていることがシンクタンクの特徴だ。

ただし、シンクタンクのなかには、蓄積された調査・分析の知見を生かして、コンサルティング業務にも取り組んでいる機関もあり、民間企業からの経営改善に関する依頼にも対応している。

そうしたことから、コンサルティング部門をもつシンクタンクも、コンサルタントの活躍の場になっている。

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コンサルタントの仕事内容

コンサルタントの仕事はかかわる業種や案件などによって異なるが、一般的な流れは次のとおり。
1)クライアントからヒアリング

クライアントから依頼を受けて、どんなことに困っているのか、どういうことをやりたいのか、現在の事業状況や問題点、要望などを聞き取る。

経営者のほか、担当する従業員から話を聞く場合もある。

2)調査・分析を行い、課題を明らかにする

ヒアリングで得た情報をもとに、クライアントがどんな状況にあるのか、分析。

また、市場調査などを行い、最新情報を集めて分析することも行う。

売り上げの増加や経営状況の改善など、クライアントが望む結果を実現するために、解決しなければならない課題をみつけ出す。

3)課題を解決するための方法を提案

課題を解決するためにどうしたらいいのかを考え、最も効果のある方法をクライアントに提案。

クライアントの実情に合わせた提案を行うことが重要。

4)課題解決の実行

クライアントと話し合い、課題解決策を固める。

その後、解決に向けて実行支援を行うケースも少なくない。

クライアントの現場責任者が集まる会議にコンサルタントも定期的に出席して状況の確認や検証を行うなど、クライアントに伴走しながら課題を解決し、さらなる成長へと導いていく。

膨大なデータを分析し、課題解決に結びつくよう提案

※膨大なデータを分析し、課題解決に結びつくよう提案

コンサルタントになるには

コンサルタントになるには、必須の資格はないが、コンサルティング会社のほとんどが応募条件として「大学卒以上」としている。

つまり、コンサルタントになるには、大学卒または大学院修了の学歴が必要といえる。

コンサルタントは豊富な専門知識と論理的思考能力が求められる職業であるため、難関とされている大学・大学院の出身者が多いということを考えたうえで、高校卒業後の進路を選ぶ必要があるだろう。

このほか、まず一般企業に就職してキャリアを積んだあと、その経験と専門知識を生かせるコンサルティング会社に転職するという方法もあるが、その場合でも大学卒以上の学歴が必要になる。

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コンサルタントの年収

コンサルティング会社や取り組む分野、役職にもよるが、編集部の調査によると、コンサルタントの平均年収は1145万円となっている。

成果をあげることでインセンティブ(報奨金)を支給する制度を取り入れている会社もあり、経験と実績しだいでは入社10~15年ぐらいで年収2000万円以上を得ているケースもある。

日本の給与所得者の平均年収が、年間443万円(※)であることを考えると、コンサルタントは高収入であるといえる。

コンサルタントの収入が高い理由として、大きく、次の2点が考えられる。
1)コンサルタントはクライアントの未来を左右する仕事

コンサルタントの提案や意見が、クライアント企業がこの先も順調に売り上げを伸ばしていけるのかどうか、企業の将来にかかわってくる。

それはその企業で働く従業員やその家族の今後にもかかわる、とても重要なことだ。

2)高度な知見と専門知識が欠かせない仕事

クライアントからのさまざまな要望に応じ、活躍するためには広くて深い専門知識や経験がなければつとまらない。
こうした特性のある仕事だから、コンサルタントは高収入となっているのだろう。

  

(※)日本の給与所得者の平均年収について 出典:国税庁『令和3年分 民間給与実態調査』

現役コンサルタントに聞いたお仕事のリアル

ではコンサルタントの仕事って、実際にはどんな感じなのだろう?

山田コンサルティンググループで活躍中の高野佑さんにお話を聞いた。
<お話をうかがった人>

高野佑さん
高野佑さん

山田コンサルティンググループ株式会社 海外事業本部
資産運用アドバイザリー事業部マネージャー

東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻修了後、2012年3月に新卒入社。
2014年4月にシンガポール支店赴任。
その後、同社提携先のTakenaka Partners(アメリカ・ロサンゼルス)への出向などを経て、2021年1月より東京本社へ復職し、現職。

コンサルタントになりたいと思った理由は?

「就職活動をする以前から、漠然とながらも、コンサルタントになりたいと思っていました。

どんなところに惹かれたのかというと2つ、あります。

1つめが、世の中のいろいろなことを学べる仕事だと思ったからです。

私自身、いろいろなことに興味があって、分野を絞らずにやりたいことをやっていきたいというタイプ。

大学と大学院で学んだ社会基盤学という学問も、橋やダムなど生活を支えるインフラを造るという理系の面と、造って完成させるまでの人、お金などのマネジメント、地域や国土の計画といった文系的な面があって、幅広く学べることに魅力を感じたからでした。

そしてもう1つが、コンサルタントは直接、目の前の人の役に立てる仕事だと感じたからです。

きっかけになったのは、大学院で防災の研究室に所属して活動していたとき、東日本大震災が起き、被災地へ出向いて仮設住宅に関する調査を行ったことです。

自然災害が発生した際に、被災地で効率的にかつ、効果的に仮設住宅を提供するにはどうしたらいいか、という研究テーマに取り組んでいて、市役所の人や、仮設住宅で暮らす被災者の方々からお話を聞きました。

被災された方たちにとっては震災が発生したときのことは、思い出したくない話だったと思いますが、私の研究のために話をしてくれました。

そんななか、こんな思いがこみ上げてきたのです。

『私の研究は、この先、いつかは社会の役に立つかもしれない。でも、私の目の前にいる被災地の方たちに、直接、役に立てることなのだろうか…』と。

目の前にいる、困っている人のために役に立てることを仕事にしたいと強く思い、頭に浮かんできたのがコンサルタントだったのです

学生時代を振り返る高野さん

※「大学時代、社会基盤学科の授業を通して、建設系のコンサルタントの仕事のことを知りました」と、学生時代を振り返る高野さん

就職先選びでこだわったことは?

「コンサルティング会社といってもさまざまですが、調査や分析に重きを置くというよりも、現場主義を大切にしている会社がいいなと思いました。

お客さまに会い、コミュニケーションを交わし、お客さまがどんなことに困っていて、コンサルとしてどう役に立てるのか考えて、実行支援までやる…そういう仕事ができることが決め手になってここに就職しました。

また、製造業から飲食、アパレル、ホテル、学校、建設業など、さまざまな業種のコンサルティングを手がけていることも、『世の中のいろいろなことを知りたい』という、私の希望にマッチしていたのです

新人のころはどうだった?

「入社して最初の2年間は、国内の中堅・中小企業の事業再生に取り組んでいました。

業績が上がらなくて不振に悩んでいる企業に対し、業績を改善するためのコンサルティングです。当社の場合、入社1年めでも現場に出ます。

先輩コンサルと一緒にクライアント企業とのミーティングに参加し、議事録を作成するといった仕事から入るのですが、経営者や役員の方、各事業部の部長さんから話を聞かせていただくことができていました。

クライアント企業からすれば、私は大学院を出たばかりの新人なので、頼りなく見えたと思います。

そんな私でも信頼していただけるよう、多くの案件に対応する上司や先輩では目が届かないようなクライアント企業の財務資料なども、細かいところまでしっかり目を通しました。お客さまからのどんな質問にも答えられるようになろうと、心がけていました

所属する海外事業本部とは? どんな仕事をするところ?

「新たに海外に進出したいという企業や、すでに海外で事業を展開していて、何かに困っているという企業、さらに成長させたいという企業を支援する部署です」
具体的にはどんなことをするのだろう?

そこで、国内で日本食レストランを展開している企業から、「海外で新店舗をオープンさせたい」という依頼を受けたとして、どのような流れでコンサルティングを行うのか、高野さんに解説していただいた。
1)クライアント企業から話を聞く

「クライアントと話し、海外進出を目指す理由をはっきりさせるところから私たちがかかわります。

さらに海外で店舗をオープンさせるにあたり、どんなところに重点を置いた店にするのか、売り上げの目標、どの国に店を開きたいのかなど、クライアントの希望を具体的にしていきます

2)情報を集め、調査・分析。課題を洗い出す

クライアントが海外進出をはたすために必要な情報を収集し、分析します。

特に、進出先の候補となっている国についての調査は、海外進出が成功するかどうかを左右することなので、さまざまな情報を集めて分析します」
どのような情報を集めて分析するのかというと、例えば

・経済成長率

・国民所得

・月にどのくらいの金額を外食に使っているのか

・どのくらいの売り上げが見込めそうか

・日本食の普及状況

・宗教による制約で、食べてはいけない食材があるのかどうか(例:豚肉は禁止:イスラム教徒が多い国)

など、いろいろな角度から情報を集め、比較検討する。
「私たちが、候補となっている国へ出向いて調査をする場合もありますが、当社には海外に支社や子会社、提携している調査会社などがあります。

主には、そうしたネットワークを生かして最新の情報を手に入れています」
さらにそのうえで、解決すべき課題の洗い出しを行う。

どのような課題があるのかというと、例えば

・食材は現地で調達できるのかどうか

・食材の物流拠点の問題

・現地従業員の雇用の問題

・日本から進出するにあたり、その国が外国の企業に対して設けている法律的な規制に対応できるのかどうか

など、解決すべき課題はさまざまだ。

また、海外で日本食レストランをどのようにして経営・運営していくのかも重要な検討事項。
「その国で子会社を作るのか、あるいはすでに現地で同じようなレストランを展開している企業と組んで店舗を展開するのか、検討していきます。

現地の企業と組むというケースを選ぶ場合でも、その企業との合併や買収など、複数の方法があるので、クライアントにとって最善の方法を考えていきます。

ここ最近は、短期間で、少ないリスクで海外に進出する方法ということで、現地の企業と組んで事業を展開するケースが増えています。

その際、パートナーとなり得る企業を探し出し、提案するのもコンサルタントの重要な仕事です」

3)進出する国を決め、実行支援

クライアントと話し合いを重ね、一つひとつの課題を解決していきます。

そして、日本食レストランを開店する国やパートナー企業の候補が決まったら、契約が成立するまで、コンサルタントとしてサポートします。

先方との交渉はクライアント自身が行いますが、私たちは交渉の場を設定して立ち会い、話し合いの進行・まとめ役をつとめます
この交渉がまとまって成約するまでの期間は、案件が立ち上がってから最短でも1年ぐらいかかるという。

高野さん

※高野さんは、コンサルタントの仕事内容について、順序立てて、わかりやすく説明してくれた

コンサルタントの大変なところは?

企業の海外進出をサポートするコンサルティングでは、候補としている国やパートナー企業が決まるまで、たくさんの課題を解決しなければならないうえ、思うとおりには進んでいかなくてひと筋縄ではいきません。

例えば、進出しようとしていた国にクーデターが起きるなど、不安な情勢になったり、パートナーとなる企業がみつかったものの、契約直前になってその企業に問題があることがわかり、契約を結ぶことができなくなる、といったことも少なくありません。

例えば、『不法移民(※)を従業員として雇っている』など、日本では考えられないような問題があることがわかり、そのたびにゼロから見直し、新たなパートナー企業を探します。

うまく進んでいかない場合も多く、成約にこぎつけるまで3年、4年とかかることもあります。

私たちの力の及ばないところで、いろいろな問題が起きるので、毎回、悩まされます。

でも、困っているクライアント企業のために、私たちコンサルタントは、何があっても、粘り強く取り組み続けるのです

 

(※)不法移民
正しい手続きをとらずに外国に移り住んでいる人のこと。
または、法的に認められている在留期間を過ぎてその国に滞在できる資格を失ったあとも、その国にとどまっている人。

この仕事のやりがいや魅力はどんなこと?

クライアント企業の方と一緒にいろいろな問題を解決し、現地で良いパートナー企業をみつけ、成約までこぎつけることができたときはうれしいです。

苦労をともにしてきたお客さまとよろこびを分かちあえる…このうれしさは、格別です。

『高野さんのおかげです』と言っていただけるときは、目の前の困っている人のために直接役に立てたという実感がわいてきて、大きなやりがいを感じます」

一日の流れ

高野さんのある一日を紹介しよう。
●午前8時
オンラインで海外支社のコンサルタントと会議。

●午前10時
出社し、社内でミーティング。
その日の業務についての打ち合せなどを行う。

高野さん

※高野さんは、マネージャーとしてプロジェクトのリーダーでもある

●14時
クライアント企業に出向き、ミーティング。

学生時代を振り返る高野さん

※クライアントの悩みごとに耳を傾け、アドバイスをする

●16時
帰社。クライアントとのミーティングで話し合った内容や、必要となる作業内容を整理。資料の作成・分析も行う。

高野さん

※デスクワークに集中

●19時
終業。
日本のクライアント企業と海外企業との合併や買収などの契約に向け、最終段階にあるときなどは、深夜や、土日でも現地のスタッフとオンラインでミーティングを行う。

コンサルタントとして活躍するために必要な資格

必須の資格は特にはないけれど、高野さんはこんなアドバイスをしてくれた。
「人事・組織系のコンサルなら社会保険労務士、企業会計・監査系のコンサルなら公認会計士など、専門分野に関連する資格は、あれば役に立つと思います。

コンサルタントは常に勉強が必要な仕事ですので、資格取得を目指すことは勉強のモチベーションを高めることにもなるでしょう」

コンサルタントに必要なスキルは?

高野さんが教えてくれたのは、次の3つ。
●簿記の知識

「コンサルタントの仕事は、企業の財務・会計状況を知ることが必須なので、最低限、簿記の知識は必要です」

●英語力

「海外事業部など、海外進出を支援する部署でのコンサルティングには、英語力が求められます。

日ごろから英語力を高める努力が必要なので、私自身、仕事に関連する英文のニュース記事を読んだり、海外のニュース番組などでリスニング力を養うといったことを続けています」

●情報の分析力・構成力

「情報はインターネットで集めることができますが、それだけではコンサルタントはつとまりません。

膨大な情報のなかから、クライアントのニーズに合わせて必要な情報を取捨選択して整理し、分析する力が不可欠です。

さらには情報を分類して読みやすく構成し、お客さまに役に立ててもらえる形にして提供する力も求められます」

コンサルタントに向いている人は?

●聞き上手な人

「コンサルタントの仕事にまず必要なのは、クライアントがどんなことに困っているのか、正確に理解すること。

そのためには、クライアントから寄せられる相談にしっかり耳を傾け、聞き上手であることが求められます」

●好奇心が旺盛な人

「クライアント企業の業種や事業内容はさまざまですし、海外事業にかかわる場合ですと、進出先の国も異なります。

このようにコンサルティングの案件ごとに求められる情報や専門知識が大きく異なるので、新たな案件に取り組むごとに勉強が必要になります。

でも、その分、仕事を通じて、世の中のいろんなことを知ることができるので、どんなことにも興味をもち、楽しみながら学んでいける人が向いていると思います」

コンサルタントとして成長につながったできごとは?

「入社して2年めに初めての海外出張でフィリピンへ行きました。

事業再生の業務に取り組んでいたとき、業績不振の原因が海外の工場にあることがわかり、現地調査のため、渡航したのです。

最初は上司と一緒に渡航して3日間ほど滞在。

いったん帰国するのですが、詳しい調査が必要ということで、今度は私ひとりで現地へ行きました。

約2週間、クライアント企業の現地駐在員の方と一緒に行動するうちに、事業で困っていることなど、これまで表に出せずにいた思いを、私にお話ししてくれたのです。

当時の私はまだ経験が浅い若造です。

でも、そんな私を人として信頼してくれ、話していただけた…そう思うと、とてもうれしかったですよ。

その現地駐在員の方から打ち明けていただいた悩みから業績不振の原因が見えてきて、改善へとつなげていくことができました。

この経験から、『コンサルタントはお客さまと良い人間関係を築き、どんなことに悩んでいるか、本音で話していただけることが、問題の本質をつかみ、解決につなげていくうえでとても大切なことなんだ!』と、気づきました。

コンサルタントに必要なのは、専門知識だけではなく、人間力。

このことを身をもって学んだことで、私自身、成長できたと思っています」

高野さん

※「コンサルタントは人対人の仕事。お客さまとの信頼関係を築くことがなにより大切です」と、高野さん

コンサルタントの仕事の将来性は?

「情報の整理などの作業は、AI技術を活用すれば、短い時間でできるようになるかもしれません。

しかし、コンサルタントの仕事の価値は、提案したり、解決へと支援していくことにあり、人として信頼していただけて成り立つ仕事です。

『このコンサルタントが提案していることならば、やってみよう!』と、クライアントに信じて頼ってもらえる…それがコンサルタントの仕事なので、今後もAIにとってかわられることはなく、将来もずっと、社会に必要とされると確信しています

今後のキャリアや目標は?

「私の場合、海外をキーワードにさまざまな案件にかかわっていますが、これからは専門分野をきわめていきたいと思っています。

また、新たな分野にもチャレンジしてみたいです。

その目標に向けて、2019年に休職してスイスへ留学しました。

AISTSというIOC(国際オリンピック委員会)などが設立した教育機関のスポーツマネジメント修士課程で学んだのです。

日本のスポーツの世界は、まだまだビジネスとして成熟していないので、もっと進歩させるべく、コンサルタントとして取り組んでみたいと思っています」

高野さん

※高野さんは、高校時代はサッカー、大学時代はフットサルに熱中していたというスポーツマン。スポーツマネジメントに関するコンサルティングにチャレンジしてみたいと笑顔で話してくれた

コンサルタントを目指す高校生へメッセージ

「コンサルタントといっても、コンサルティング会社によって、取り組む仕事はさまざまです。

かっこいいとか、キラキラした仕事のイメージがあるかもしれませんが、私が経験してきた業務は泥臭い仕事かもしれません。

つらいこともたくさんあります。

でも、やりがいも大きいです。

なので、この仕事に興味がある人は、複数のコンサルタントから話を聞いてみるといいと思います。

そして、高校生の今はいろんなことに興味をもってほしいです。

コンサルタントはいろいろな業種、分野にかかわる仕事なので、『これは興味がない』と言って切り捨てたりせず、好奇心をもって調べたり勉強してみて、どんどん新しい知識を吸収していってくださいね。

自分の可能性をせばめず、勉強や部活、趣味など興味を広げていく…それが自分の人間力を豊かにすることにもなって、いつか、きっと、困っている人の役に立てるようになれると思いますよ」

コンサルタントは自分が成長することで、誰かの役に立てる幅も広がっていく仕事。

ますます興味が湧いてきた人は、詳しく調べてみよう!

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取材・文/小林裕子 撮影/沼尻淳子 構成/寺崎彩乃(本誌) 取材協力/山田コンサルティンググループ株式会社
※この記事は2023年6月に取材した記事です。


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