鉄道に関わる仕事とは?運転士、土木・建築、設備管理etc.交通インフラを支える仕事13選
安全・快適な移動を支える交通インフラでもある鉄道に関わる仕事は、社会に対する貢献度もやりがいも大きい。子どもの頃から電車の運転士や駅員に憧れていたという人も多く、安定した仕事のイメージもあることから、就職先としての人気が高い業界だ。
鉄道業界にはどんな仕事があって、どのような役割を果たしているのか、それぞれ詳しく見ていこう。
目次
鉄道に関わる仕事とは?鉄道業界の仕事の種類
鉄道に関わる仕事、鉄道業界の仕事は、「電車の運行に関わる仕事」「技術系の仕事」「事務系の仕事」の大きく3つのカテゴリに分けることができる。
ほとんどの人がイメージするのは、運転士、車掌、駅員、客室乗務員などの「電車の運行に関わる仕事」だが、鉄道に関わる仕事は実はそれだけではない。
利用者が普段目にしない時間・場所で働いているスタッフも数多く存在し、車両メンテナンス、保線、土木・建築、電気設備管理などは「技術系の仕事」、営業、事業・サービス計画、経営企画、不動産開発などは「事務系の仕事」と呼ばれている。
このように職種が幅広いことからさまざまな知識・スキル・興味志向を持った人たちが集まり、文系・理系いずれの出身でも目指せるのが鉄道業界の魅力だ。
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鉄道会社とは、鉄道の建設や運行を担う会社のこと。
旧国鉄のJRグループ、民間企業が運営する私鉄、地方公営企業や地方自治体が運営する地下鉄などの公営鉄道、国・地方自治体と民間が共同で運営する第三セクター鉄道の4種類がある。
鉄道事業をメインとしつつ、沿線の不動産開発、商業施設・ホテル・レジャー施設の運営、電子マネー事業など、多角的な経営に取り組んでいる鉄道会社も。
非鉄道事業や技術系の業務は、鉄道会社本体ではなく、グループ会社が担っていることも多い。
電車の運行に関わる仕事
安全第一に乗客やモノの輸送を行えるよう、第一線の現場で活躍している「電車の運行に関わる仕事」。運転士、車掌、駅員、客室乗務員のほか、ダイヤ(運行計画)の作成や見直しを行う鉄道運行計画員、ダイヤ通りの運行を管理する鉄道管理員という仕事もある。
駅員から経験を積み、車掌や運転士へキャリアアップしていくのが一般的。
1.鉄道運行計画員・管理員
鉄道運行計画員とは、社会経済の動向や鉄道会社の経営方針、乗客数や他路線との接続、駅と駅との間の距離や停車時間など、さまざまな要素を踏まえてダイヤ(運行計画)の作成・見直しを行う仕事。乗務員の運用や配置などの諸条件を調整しながら、乗客が利用しやすく安全面にも無理のないダイヤをつくりあげる重要な役割を担う。
鉄道管理員とは、決められたダイヤに基づいて列車が運行しているかを把握し、指令室で管理する仕事。
事故や災害などで遅れが生じた時には、遅れの状況や復旧見込みなどの情報を集め、行先駅の変更や列車の運休など運転計画を修正して現場のスタッフに指示。
一刻も早く正常ダイヤに戻せるよう復旧作業を行うのが任務となる。
また、保守作業が時間通りに計画した区間で行われているかを確認したり、ポイントの切り替えや信号の表示などを遠隔操作で行ったりするのも鉄道管理員の仕事。
2.駅員
駅員とは、駅構内で、改札、切符販売、乗客の案内・誘導・介助、出発・到着電車のアナウンス、ホームの安全管理などを行う仕事。最近は外国人の利用客も増え、語学力も重要になっている。
駅員として現場経験を積み、車掌、運転士へとキャリアアップすることも多い。
3.車掌
車掌とは、電車に乗務し、電車のドアの開閉、出発・到着時の車内アナウンス、車内改札、空調管理などを行う仕事。車内でのトラブル対応や非常時の乗客の安全確保も車掌の大切な役割。
通常、電車の最後尾にある車掌室に乗務している。
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4.客室乗務員
客室乗務員とは、新幹線・特急電車・普通電車のグリーン車等に乗務し、車内改札、特急券の販売、車内販売、その他の接客・サービスを行う仕事。多くの乗客とコミュニケーションをとり、さまざまなニーズ・リクエストにも応えるため、正しい接遇とホスピタリティの知識・スキルが求められる。
車掌の仕事に似ているが、客室乗務員はドアの開閉は行わない。
5.運転士
運転士とは、電車を運転し、車掌など他のスタッフと協力しながら、時間通り安全に電車を運行させる仕事。通常、駅員・車掌を数年ずつ経験した後、社内の登用試験に合格し、運転する車両ごとの運転免許(国家資格)を取得して運転士となる。
新幹線の運転はより難易度が高く、在来線の運転士として経験を積んだ上で、さらに新幹線運転士の登用試験に合格する必要がある。
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鉄道に関わる技術系の仕事
車両や線路、踏切、信号設備、高架橋やトンネル、駅施設など、鉄道運行に関わる設備や建築物のメンテナンスをするのが、鉄道に関わる「技術系の仕事」。機械・電気・土木・建築などの知識・技術を活かしながら、現場の最前線で鉄道の安全を支えられるやりがいのある仕事だ。
運行中にできない部分は夜間に作業をすることになるため、夜勤がある場合も。
6.車両メンテナンス
車両メンテナンスとは、技術者として、鉄道車両の保守・点検・修繕を行う仕事。故障を未然に防ぐため、車両基地で装置の摩耗や機能についての定期的な検査を行う他、数年ごとに工場で車両を解体して一つひとつの部品を精密に検査するオーバーホールも担当する。
車両の型式によって搭載する装置などが異なるため、検査の内容や手法はそれぞれ異なり、
現場で経験を積みながら知識・技術を蓄積していく必要がある。
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鉄道車両メーカーとは、電車の車両を製造する会社のこと。
鉄道会社から発注を受けて製造を行うが、鉄道会社が設計まで行う場合もあれば、仕様だけを指定する場合もあり、新型車両の設計から量産までは数年を要することも。
日本のメーカーの技術力を評価する海外企業からの発注もある。
7.保線
保線とは、技術者として、線路の保守・点検や管理を行う仕事。線路をメンテナンスしないままでいると電車の揺れや騒音、最悪の場合は脱線事故を招くため、安全な運行と快適な乗り心地を維持するために欠かせない仕事だ。
担当エリアの線路において計測車や人の目で巡視を行い、レールの摩耗・ゆがみ・ずれがないかミリ単位でチェックしていく。
異常が見つかれば、レール・枕木の補修や交換、砕石の入れ替えなどを行う。
8.土木・建築
鉄道業界における土木・建築とは、線路・駅施設・トンネル・高架橋などの設計・工事、保守・点検などを行い、鉄道という社会インフラを陰で支える仕事。日常的なメンテナンスの他、新線や新駅の建設、ターミナル駅の改良などの大規模なプロジェクトを手掛けることも。
工事の発注、設計、工事、監理、維持管理など幅広い業務があり、各分野のプロフェッショナルが活躍している。
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9.電気設備管理
鉄道業界における電気設備管理とは、各種電気設備のメンテナンスを専門的に行う仕事。パンタグラフを通して電車に電力を供給する設備や、信号設備、通信設備、電車内の電灯・冷暖房設備、鉄道会社が保有する発電所・変電所や送電線など、メンテナンスの対象物はさまざまある。
いち早く設備の異常を見つけ、適切な補修を行うことで、鉄道の安全・安定輸送に貢献できる仕事だ。
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鉄道に関わる事務系の仕事
集客のためのイベントの企画やマーケティング、新規事業やサービスの企画、経営戦略の策定、駅ビルや駅周辺の商業施設・観光施設の開発などが、鉄道に関わる「事務系の仕事」。少子高齢化で鉄道利用者が減少することが予想される中、時代のニーズにあったサービスや新しい価値の創造がミッションとなっている。
鉄道事業の発展や新規顧客の開拓、沿線の活性化など、都市開発・街づくりにも取り組むことができるスケールの大きな仕事だ。
10.営業
鉄道業界における営業とは、集客のためのイベント・サービスの企画、宣伝、マーケティングなどを行う仕事。沿線の観光素材や鉄道の魅力を広く伝え、利用者やファンを増やし、会社全体の収益拡大や地域活性化に貢献する。
地域と連携した観光キャンペーン、インバウンド施策、観光列車・お得な切符の企画・宣伝などに幅広く携わる。
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11.事業・サービス企画
鉄道業界における事業・サービス企画とは、鉄道事業以外の新規事業やサービスを企画・運営する仕事。少子高齢化で鉄道利用者が減少傾向にある今、人やモノの輸送だけでなく新たなサービスを展開することでビジネスの可能性を広げ、企業としての価値の存続・向上をはかることが求められている。
たとえば、駅構内の商業スペースである駅ナカの開発、SuicaなどのICカードを活用した電子マネー事業などがその成功例だ。
12.経営企画
鉄道業界における経営企画とは、長期的視点に立って鉄道会社の経営戦略を策定する、鉄道会社の中枢を担う仕事。時代や消費者のニーズを読み解き、鉄道システムを支える新技術・新車両の導入、新路線の開発、新規事業への進出などさまざまな視点から新たなサービスを生み出し、より豊かで便利な社会づくりに貢献していく。
13.不動産開発
鉄道業界における不動産開発とは、沿線地域の活性化を図るため、駅ビルや駅周辺の施設などの企画・開発を行う仕事。鉄道の利用者の増加や沿線価値の向上を目的とし、オフィスビル、商業施設、観光・リゾート施設、ホテル、マンション、戸建て住宅などさまざまな用途の不動産を手掛けている。
プロジェクトの立ち上げから始まり、自治体との調整、不動産取得、設計、建設、運営まで仕事内容は幅広く、鉄道という社会インフラの強みを活かした街づくりに携われる点が魅力だ。
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鉄道に関わる仕事の最新の業界事情
駅周辺や沿線の開発など、「非鉄道事業」が収益の要に
コロナで激減した鉄道利用者数は回復傾向にあるものの、テレワークやリモートワークの普及により遠方移動や定期券のニーズが減少するなど、鉄道と社会との関係性はここ数年で大きく変わりつつある。そんな背景もあり、近年の鉄道会社は「非鉄道事業」に力を入れるようになっており、ターミナル駅にはオフィスビルや百貨店、駅ナカ施設などが並び、駅周辺にはマンション、沿線上には戸建て住宅も展開。
特に私鉄各社では「非鉄道事業」の売上が鉄道事業の割合を大幅に超えており、駅周辺と沿線の開発によって鉄道利用者が増える好循環を生み出している。
また、ライバル会社と協働しての商業施設の開発や鉄道アプリの連携、他社の鉄道との相互直通・相互乗り入れも積極的に行われるなど、業界全体で鉄道文化を盛り上げていこうという流れもトレンドとなっている。
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取材・文/伊藤敬太郎(原文)、ミューズ・コミュニティー イラスト/桔川 伸
コンテンツ提供/ リクルート進学総研『キャリアガイダンス』
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