海に関わる仕事とは?船長、航海士、漁師etc. 貿易や物流、食を支える仕事を解説!

海に関わる仕事は、島国である日本の貿易・物流・食を支える存在。

最近では、長距離トラックの輸送力不足を補う存在として、また、災害などにおける道路寸断時の輸送システムとして海路輸送の需要が高く、その重要性が見直されている注目の分野でもある。

とはいえ、住んでいる場所によってはあまり馴染みのない高校生もいるかもしれない。

どんな仕事や働き方があるのか、一つずつ解説していこう。

海に関わる仕事とは?海に関わる仕事の種類

海に関わる仕事は、海路で人やモノを運ぶ「海運」、海産物を獲る「漁業」、船を造る「造船」の大きく3つのカテゴリに分けることができる。

いずれも若い世代の人材不足が課題となっているが、世界中の海と港が活躍のフィールドとなり、巨大な船を操ったり造ったりとスケールの大きさも魅力の仕事だ。

海運関連の仕事

海運関連の仕事
海運関連の仕事には、船を運行する船員(船長・航海士・機関士)をはじめ、船を安全に目的港へ導く水先人、陸上から船の運航を管理する船舶運航管理事務員などがある。

船長、航海士、機関士、水先人として働くには国家資格が必須で、高校卒業後、海技技術短期大学校や商船系大学などで専門の教育を受けて資格取得を目指すルートがある。

1.船長

船長とは、客船や貨物船、漁船などの船舶の最高責任者。

乗客や積荷を安全に目的地まで運ぶ責任があり、航海のルートや日程などの運行計画を立てる、天候などを考慮して最適な航路を判断する、乗客・船員の安全を確保する、港への出入り時や狭い海峡や水道の通過時には自ら操船の指揮をとる、などの役割を担う。

船長になるには国家資格の「海技士」を取得し、航海士として船上で一定の経験を積む必要がある。

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2.航海士

航海士とは、甲板部の船員を指揮しながら、船の操縦や航路の監視、貨物の積み下ろし、航海中の積荷の管理などを行う仕事。

国家資格の「海技士」取得が必須となるため、高校卒業後に進学するなら、海技技術短期大学校や商船系大学などで専門の教育を受けるのが航海士になるための主要なルートだ。

航行や積荷に関する業務を行う甲板部では、甲板部員からスタートし、三等航海士、二等航海士、一等航海士へと段階的に階級を上げながら、最終的に船長を目指していく。

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3.機関士

機関士とは、船のエンジンやボイラー、発電機などを管理する機関部に所属し、さまざまな機械・装置が正常に動いているかの点検や整備、燃料の補給など行う仕事。

機関士として働くには、航海士と同様に国家資格の「海技士」取得が必須となる。

機関部員からスタートし、ボイラーや冷蔵庫を冷やす冷凍機などを担当する三等機関士、発電機や舵を取る機械を担当する二等機関士、プロペラを回すメインエンジンの責任者である一等機関士、そして機関部のトップである機関長へとステップアップしていく。
機関士
※船の機械や装置が正常に動いているかの点検や整備も重要な仕事

4.水先人

水先人とは、多くの船が行き交う港や海峡、複雑な形状の海域などで船長に助言をし、船を安全かつ速やかに目的港へと導く仕事。

広大な海のすべてを船長ひとりが把握するのは難しいため、該当する海域を熟知した水先人がアドバイザーとして重用されている。

国家資格である水先人の免許は各水先区ごとに交付され、免許を受けた水先区のみで水先業務を行うことに加え、乗船できる船舶の種類は一級~三級の等級によって決められている。

なお、水先人は会社に所属しない個人事業主であり、所属する水先人会を通して業務の依頼を受けている。

5.海運会社陸上職

海運会社陸上職とは、乗船はせず、海運会社のオフィスで船と乗組員の安全のために働く仕事。

その仕事は多岐にわたるが、たとえば船舶運航管理事務員であれば、船のタイプや貨物の種類に合わせて寄港地や航路を示す運航スケジュールをつくったり、航路の天候や海の状況をチェックしたり、船から送られてくるレポートから運航や作業の状況をつかんで、入港・出港の時間について最も効率的な計画を立てたりする。

技術系の陸上職は、造船会社と連携して新しい船を造るプロジェクトの管理に携わることも。

漁業関連の仕事

漁業関連の仕事
漁業関連の仕事には、漁をしたり養殖を行ったりする漁師の仕事がある。

海産物を獲って人々の食生活を支える、豊かな暮らしに欠かせない大切な仕事だ。

漁業権を得て船を所有し個人事業主として働く漁師の他、漁業会社に就職し社員として雇用される形で働く漁師もいる。

6.漁師

漁師とは、日本や外国の海で漁や養殖を行い、海産物を獲る仕事。

陸地近くの海での漁や養殖を中心とした「沿岸漁業」、日本の沖合いで数日かけて操業する「沖合漁業」、赤道水域でのマグロ漁業やアフリカ沖のトロール漁など、遠く外洋に出て1年以上かけて漁をする「遠洋漁業」の3つの漁業がある。

沿岸漁業を行う漁師の多くは小型船舶操縦士免許を取得した個人事業主で、地元の漁業協同組合の組合員になり、漁業権を得て漁を行っている。

近年は、漁師が水産物の加工・販売まで手掛けるケースも増えている。

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漁業会社とは?
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漁業会社とは、漁船を所有し、沖合漁業や遠洋漁業を行う会社のこと。

長期の航海となる遠洋漁業では、大型の漁船に多くの漁師が乗り組んで漁を行っている。

漁業だけでなく、水産加工業まで手掛ける会社も多い。
海運会社とは?
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海運会社とは、船による海上での貨物輸送を手掛ける会社のこと。

日本国内の輸送を内航海運、日本と外国との間の輸送を外航海運といい、扱う貨物は、石油・天然ガス・鉄鋼などの資材、自動車、食料品などさまざま。

海に囲まれた島国である日本では、貿易の99.6%を海運が担っている。
漁業におけるIT企業の役割とは?
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漁業におけるIT企業の役割は、AI(人工知能)など最新のテクノロジーを駆使し、業務の効率化を図るスマート漁業やスマート物流の開発を行うこと。

AIに関する技術力やアイデアを持つIT企業が、漁業会社や海運会社のパートナーとして研究開発にあたっている。

造船関連の仕事

造船関連の仕事 
造船関連の仕事には、船を製造するための図面を造る造船設計、設計図に従って船体やパーツを製造する造船製造などがある。

オーダーメイド品である船が完成するまでには非常に多くの工程があるため、造船会社の中には、営業・マーケティング部門、計画・開発部門、設計部門、調達部門、生産部門、メンテナンス・修理部門などがあり、各分野のプロフェッショナルが協力して巨大な船を造り上げている。

7.造船設計

造船設計とは、CADという専用の設計ソフトを使い、船を製造するための図面を作る仕事。

船体の全体を設計する基本設計と、船体の部分ごとの部材の形や加工方法まで細かく設計する詳細設計とがある。

造船業は昔から男性が中心の業界だったが、最近では設計をはじめとする技術部門で活躍する女性も少しずつ増えている。

8.造船製造

造船製造とは、造船所で、設計図に従って船体やパーツを製造する仕事。

船の製造においても他の業種と同じく機械化・ロボット化が進んでいるものの、曲面の溶接作業などは機械化が困難なため、人の手による熟練の技が活かされている。

鋼板の切断や加工を行い、それを小さな部品からさらにブロック状に組み立て、クレーンなどの重機でブロック同士を組み合わせて巨大な船体を造り上げていく。
造船会社とは?
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造船会社とは、巨大な造船所を持ち、海運会社などの船主の発注に合わせて客船や貨物船を建造する会社のこと。

船は大量生産される自動車などとは異なるオーダーメイド品であり、デジタルなIT技術とアナログな人の手による匠の技とのコラボレーションにより、数多くの工程と時間をかけて世の中に生み出される。

一隻ごとに仕様と構造を細かく決めてから造られるため、シリーズ船(同じ型の船)以外は全く同じという船は存在しない。

海に関わる仕事の最新の業界事情

世界中の海や港を職場として、様々な職種の人々が活躍していることがわかった。

最後に、そんな海に関わる仕事の最前線で注目されていることについて見ていこう。

物流の2024年問題の解決策として「フェリー輸送」が注目を集めている

海に関わる仕事の最新の業界事情
※フェリー輸送は災害時の道路寸断などの影響を受けにくい輸送手段としての需要も高い
各方面で推進されている「働き方改革」で今話題になっているのが、2024年4月から施行される、トラック運転手の労働時間の上限規制。

長距離トラックが輸送してきた商品や荷物を、これまでと同じコスト・時間で運ぶことができなくなり、社会全体の輸送力が不足する「物流の2024年問題」としてニュースでも取り上げられている。

そんな迫り来る物流危機を乗り越えるため、政府が2024年問題対策の柱の一つに位置づけているのが「海運モーダルシフト」。

海運モーダルシフトとは、トラックなどの自動車で行われている貨物輸送を、フェリーなどの船舶輸送へ輸送行程の一部・また全部を転換する取り組みのことだ。

モーダルシフトに合わせたフェリーの輸送力の増強には、港湾側の規模・設備や機能の拡充や船員の確保が不可欠となっており、海運業界の人材需要は今後よりいっそう高まっていくと予想される。

また、フェリー輸送は、洪水や地震などの災害時に道路寸断などの影響を受けにくい輸送手段でもあり、災害対策の観点からも注目が集まっている。

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取材・文/伊藤敬太郎(原文)、ミューズ・コミュニティー イラスト/桔川 伸
コンテンツ提供/ リクルート進学総研『キャリアガイダンス』
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