アパレルとは?ファッションとの違いは?仕事内容や目指し方、向いている人まで詳しく解説!
アパレルとは、衣服のことを指す言葉。衣料品を製造して販売するアパレル業界にはよく知られたファッションデザイナーや販売員のほか、さまざまな職種がある。
おしゃれなイメージのあるアパレルの仕事に、あこがれている人は多いと思う。
そこで今回、キャリアコンサルタントで、アパレル業界に詳しい平山広恵さんに、アパレルの主な職種と具体的な仕事内容、目指し方、向いている人まで、詳しく解説していただいた。
目次
平山広恵さん
キャリアコンサルタント
大学卒業後、アパレル企業に25年間勤務。
婦人服ブランドの販売員からスタートし、店長として大型店舗の運営に携わる。
社内で優秀販売員賞を受賞するなど実績を積んだあと、本社に異動し、ビジュアルマーチャンダイザー(VMD)として店舗作りや、全国の店長・スタッフの育成に従事する。
新卒研修や店長研修などの指導を通してスタッフが成長する姿に接し、すべての人がもつ可能性に感動。この経験を生かして若者の未来を応援したいと思うようになり、アパレル業界からキャリアコンサルタントに転身。
現在、若者のキャリア支援を行う一般社団法人キャリアラボのメンバーとして、全国各地の高校で進路選びに関する講演を行うなど、高校生の進路支援活動に取り組んでいる。
アパレルとは?
アパレルとは衣服のことで、特に既製服を指し、さまざまな衣料品を作って販売する事業をアパレル産業という。アパレルの意味、語源
アパレルという言葉は英語で「apparel」と書き、衣服や衣料品、服装といった意味がある。その語源は、フランス語の「appreiller」に由来するといわれている。
「appreiller」には適合させる、服を着せるといった意味があり、この言葉から派生し、多くの人に売るために大量に作る衣料品のことを「apparel」と呼ぶようになったとされている(※)。
(※)このほか、アパレルの語源には、ラテン語の「apparare(アパラーレ:準備するという意味)」とする説などもある。
アパレルとファッションの違い
アパレルとよく似た言葉に、「ファッション」がある。どちらも衣服や服装を指す言葉として使われているが、実際にはアパレルとファッションという言葉には、意味合いの違いがある。
アパレルは衣服や衣料品といった服だけを指し、その生産や販売に携わる仕事や業界名としても使われる言葉である。
一方でファッションは衣服に限らず、さらに幅広い対象を表す言葉であることが、大きな違い。
ファッションは英語で「fashion」と表記し、その語源はラテン語の「factio(ファクティオ)」とされている。
「factio」には「作る」「創作」といった意味があり、そこから派生して英語の「fashion」になったとされている。
英語の「fashion」の意味は、衣服を含めた流行、個人の流儀やライフスタイル、生き方など幅広く、さまざまに用いられる言葉となっている。
そうしたことから、日本では衣服を含めてアクセサリーや靴、帽子、バッグ、ヘアスタイル、メイクなど、全身のおしゃれにかかわるアイテムやコーディネート全般、その流行を「ファッション」という言葉でくくっている。
アパレル産業とは、衣服や衣料品などを製造、販売する事業のことを指す。
アパレル産業にはどんな役割があるのか、次に解説しよう。

アパレル産業の役割
例えば、特別な日には何を着ていこうか考えますよね?
こだわりをもって服を選ぶことは自分自身を表現することです。
どんな服を着るのかによって自分の気持ちが上がってきたり、自信がわいてくることもあるでしょう。
また、衣服は相手に与える印象にも大きく影響します。
着るシーンや立場に応じた装いが必要なこともあります。
つまり、衣服はその人の魅力を引き出し、相手に伝えるものなので、アパレル産業は人の社会生活に影響を与えるという、重要な役割があるのです」(平山さん・以下同)
例えば、夏。毎年、猛暑に見舞われていますが、汗などの水分を吸う吸水性、肌に触れた部分が冷たく感じられる接触冷感などに優れた生地(テキスタイル)を使ったり、暑さで蒸れないよう空気が通りやすいようなデザインを考えるなど、暑さ対策を考慮した衣服の需要は、年々高まっています」
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アパレル企業といっても事業の形態はさまざま。
衣服を企画・製造するアパレルメーカーのほか、糸や布地などの素材を生産するアパレル素材企業、既製服をアパレルメーカーなどから仕入れて販売を行うアパレル小売企業などがある。
近年では、企画・製造から販売まで、自社で一貫して行うSPA(※)と呼ばれる形態のアパレル企業が増えている。
(※)SPA:「Speciality Store Retailer of Private Label Apparel」の略で、製造小売業のこと。
アパレルの仕事にはどんなものがある?
アパレルの仕事というと、ファッションデザイナーや販売員を連想するかもしれないが、衣服の企画から製造、販売されるまでの工程ではさまざまな職種の人たちが働いている。
大きく分けて、「(1)商品の企画・デザイン」「(2)生産・流通・情報発信」「(3)ショップやネットで販売」の3つの工程があるので、それを軸に主な職種を紹介しよう。
企画から販売まで、服がショップに並ぶまでの主な流れと仕事


それぞれの仕事について、平山さんの解説を交えながら紹介していこう。
商品の企画・デザインに携わる仕事
企画・マーケティングに携わる仕事
衣服は流行を先取りして作る商品。そのため、トレンドを予測し、多くの場合、発売の約半年から1年ほど前には新商品の企画を行い、販売戦略を考える。
そうした企画・マーケティングに携わる仕事には、クリエイティブディレクター、マーチャンダイザーなどがある。
1.クリエイティブディレクター
市場のニーズ・トレンドを予測し、シーズンごとのメインテーマ提案から、広告などのブランドイメージ戦略など、ブランドクリエーションを統括する仕事。ファッションデザイナーなど、服作りの専門技術職とも打ち合せを重ね、デザインのコンセプトを決める。
2.マーチャンダイザー
マーチャンダイザーは、市場調査のデータやトレンドの動きを分析し、商品の企画・開発から生産、販売まで、総合的に管理する仕事。ファッションデザイナーなど服作りの専門技術職と連携してデザインの方向性を決めたら、素材選び、仕入れる数量、商品のラインナップ、生産する工場、販売価格などを決定し、どうしたら売れるのか、販売戦略の立案も行う。
MDとも呼ばれ、アパレル企業の企画・開発部門で司令塔の役割を担っている。
数字やデータに強く、多くの職種との素早い連携が必要であるため、高いコミュニケーション能力も必要です」
●マーチャンダイザーについて詳しく知る

服作りの専門技術職
シーズンテーマやコンセプトが決まると、服作りの専門技術職の人たちがデザインの提案などを行う。服作りの専門技術職には、ファッションデザイナー、テキスタイルデザイナー、パタンナーなどの職種がある。
3. ファッションデザイナー
衣服のデザインをする専門技術職。商品やブランドのコンセプト、対象年齢、販売戦略などをもとに、トレンドを取り入れてデザインを考案する。
使う布地や色のバリエーション、縫い方、ボタンなど細かな部分まで考え、デザイン画を描く。
そのあとはパタンナーと連携してサンプル(試作品)の制作と修正を繰り返し、デザインを決めていく。
デザイン完成までは、マーチャンダイザーなど企画・マーケティングの職種とも打ち合せを行う。
アパレルメーカーなどで企業内デザイナーとして活躍するほか、独立開業して自分のブランドを立ち上げて活躍することも可能です。
コレクション形式で自身のブランド作品を発表するコレクションデザイナーと呼ばれる人もいます」
4.テキスタイルデザイナー
服を作るための布地をデザインする仕事。布地の素材となる繊維や糸などを選び、色や織り方、染め方の考案、柄のデザインなどを行う。
それらの素材の特性や機能を熟知し、織物、編み物、染色など布地に関して豊富な専門知識をもつ、布地作りのプロフェッショナルです」

5.パタンナー
ファッションデザイナーが描いたデザイン画をもとに、パターン(型紙)を作る専門技術職。パターンは、平面のデザイン画を立体の洋服にするために欠かせないもの。
実際の寸法を決め、デザイン画で表現されているラインやシルエット、着る人の着心地の良さなども考慮しながらパターンを作る。
近年では、コンピュータでパターンを作るケースが増えている。
また、商品化のために、縫製工場への縫製仕様書(※)を作成し、縫製工場への指示を出すのもパタンナーの仕事。
(※)既製服を生産するために必要な条件を指示する書類。
縫製仕様書には使用する生地や縫い方、ボタンやファスナーなどの付属品、仕上がりサイズ、デザインのコンセプトなどを書き入れ、企画意図に合った商品を量産する。
アパレル企業によっては、ファッションデザイナーが縫製仕様書を作成する場合もある。
パターンは服の仕上がりに影響を与えるものなので、パタンナーにはデザインの知識のほか、人の体の形状やサイズ、素材についての深い知識が必要です」
生産・流通・情報発信に携わる仕事
生産・流通に携わる仕事
サンプルを検討し、最終的な仕様が確定したら、縫製工場で商品を量産する工程に入る。生産と並行して、自社製品を扱ってくれる販売先などへの営業活動や、各店舗に商品を届けるといった業務が行われる。
そうした生産・流通に携わる仕事には、営業、バイヤー、生産管理、ディストリビューター、店舗開発などがある。
6. 営業
アパレルの営業は、自社製品の販売先である百貨店や衣料品専門店などへの売り込みをすることが仕事。新製品の発売前に開かれる展示会では、販売先からより多くの注文を受けるために交渉したり、新たな販売先の開拓を行う。
7. バイヤー
アパレルの仕入れ担当者(バイヤー)のこと。シーズンテーマやコンセプト、販売計画に沿って、アパレルメーカーのバイヤーは布地などの素材を、百貨店や衣料品専門店といったアパレル小売企業のバイヤーは商品の仕入れを行う。
マーチャンダイザーが立てた計画に沿って、売れそうな商品を選び、どのくらい買い付けるのか、責任者として取り組みます。
トレンドを先取りする力とお客さまのニーズをつかむ力も必要ですが、仕入れ価格や納期などの決定にもかかわる仕事なので、交渉力も必要です」
8. 生産管理
自社で企画・デザインした衣服を量産するために生産計画の立案から素材や付属品の手配、縫製工場への発注、生産の進捗状況の管理まで行う。服の品質の維持に考慮しながら、納期までに量産できるよう管理する。
縫製工場の作業工程の管理だけではなく、生産するためにかかるコストの管理も行うため、交渉力や管理能力が必要です」
9. ディストリビューター
商品の生産が完了したら、その商品を各店舗に分配するのがディストリビューター(DB)の仕事。それぞれの店舗には規模や特徴、売れる服の傾向があるため、その店舗に合わせて扱う商品の種類や数量などを見極め、振り分ける。
在庫の調整をするのも重要な仕事。
各店舗の商品の売り上げをみて、在庫が余っている店舗から、売れ行きのよい店舗へ移動させ、売れる機会を逃すことのないよう管理する。
10. 店舗開発
新店舗のオープンにあたり、出店する場所を探すことから、実際に開店するまでのさまざまな業務を行う。主な仕事は、土地や建物、立地や周辺環境などのリサーチ、建物の所有者や出店したい百貨店、商業施設への交渉、契約など。
ただ店舗を増やせばよいのではなく、集客力やEC(ネット販売)との相乗効果を見据えたビジネス戦略を担っています」
広報・宣伝に携わる仕事
自社の商品を多くの消費者に知ってもらい、購入してもらうためには広報・宣伝活動が必要。そうした広報・宣伝に携わる仕事には、ファッションショープランナー、プレスなどの職種がある。
11. ファッションショープランナー
ファッションショーやイベントの企画・演出をする仕事。シーズンコレクションが最も魅力的に見えるよう、ショーのコンセプトや構成、会場や空間演出、照明、音響などを提案し、当日の運営・進行の管理も行う。
ファッションデザイナーや、クリエイティブディレクターの世界観を形にする役割であり、ヘアメイクアップアーティストやスタイリスト、照明、音響など、さまざまな専門職と協働してショーを開催します」

12. プレス
アパレル企業の広報担当として、雑誌やテレビ、Webなどのメディアに自社の商品や企業イメージの宣伝をする。メディアからの取材の対応や掲載内容のチェック、撮影のための商品貸し出し、自社のWebサイトでの情報発信など、業務内容は幅広い。
ブランドの顔として、プレス自らがメディアに登場し、商品のPRに務めることもあります」

販売・店舗運営に携わる仕事
完成した商品は、アパレルメーカー直営店や百貨店、衣料品専門店、ネットショップなどで販売され、消費者の手元に届く。販売・店舗運営に携わる仕事には、販売員、店長、ビジュアルマーチャンダイザー、ECサイト運営などの職種がある。
13.販売員
アパレルメーカー直営店や衣料品専門店などの店舗で洋服を販売する仕事。お客さまの好みやスタイルなどに応じて、似合う洋服の提案や、商品の特徴の説明、コーディネートのアドバイスなど、お客さまに気に入ってもらい、納得して購入してもらえるように接客する。
販売員の商品知識、接客力、提案力、ホスピタリティは、お客さまが店舗での接客を通して得られる付加価値であり、ブランドや店舗のファン作りになくてはならない存在です。
また、店舗での活躍だけでなく、多くのブランドのWebサイトで販売員の着こなしやコメントが紹介されており、そうした発信に携われる機会も増えています」

14.店長
店舗の責任者として売り上げや在庫の管理、販売員のシフトの管理など、店舗全体の運営を担う。また、リピーターのお客さまを増やして店舗の売り上げをアップさせていくために、店舗の雰囲気の向上や、販売員の教育にも力を注ぐ。
店長として実績を積むことで、一つのブランドの販売員を統率するブランドマネジャーやビジュアルマーチャンダイザーなど、キャリアアップしていくことができるでしょう」
15.ビジュアルマーチャンダイザー
ビジュアルマーチャンダイザー(VMD)とは、店舗の商品ディスプレイを担当する職種。マーチャンダイザーが練り上げた販売戦略や、ファッションデザイナーが打ち出したテーマに沿って、商品をより魅力的に見せるようなディスプレイ、レイアウトを設計し、お客さまに「買いたい」と思わせるような店舗空間を作る。
私自身、長く携わった職種ですが、店舗のディスプレイ、レイアウトのほか、担当ブランドの店長・販売員の教育にも深くかかわっていました。
お客さまに合わせたスタイリング提案力、VMDの基礎といったスキルだけでなく、『ブランドイメージに合わせた販売員の着こなし、ヘアメイク』といったテーマの研修も行っていました」
16.ECサイト運営
自社の商品をインターネット上で販売するためのECサイト(※)の運営にかかわる。仕事内容は企業にもよるが、サイトの制作・デザイン、更新作業から商品撮影、注文内容や売り上げの管理、お客さまからの問い合わせへの対応まで幅広い。
※ECサイト:電子商取引(electronic commerce:エレクトロニックコマース)のサービスを提供するWebサイトの総称。
オンラインでいかにしてブランドの魅力を伝え、購入してもらうかを考える、重要な仕事です」
アパレル業界の仕事に向く人の特徴は?
アパレル業界にはさまざまな職種があるけれど、職種を問わず、アパレル業界の仕事に向く人には共通点がある。洋服が大好きであることを大前提に、好奇心がある人やコミュニケーション能力がある人、サービス精神がある人に適性がある。
平山さんに解説していただこう。
トレンドに敏感で、好奇心が旺盛な人
トレンドに敏感で、どんな服が流行りそうか、情報収集したり体感することが好きな人に向いています。
皆さんの身近なところでもトレンドに気づき、服のことを考える機会はたくさんあるでしょう。
例えば、サッカー観戦に出かける人が増えているなら、『サッカー観戦に着ていく服は、スポーティなパンツスタイルがあるといいかも』とか、キャンプで盛り上がっている人が多いようなら、『キャンプを楽しめそうな機能性が高いアイテムがうけるかな』とか、好奇心が旺盛なことが大切だと思います」
コミュニケーション能力が高い人
店舗の販売員は接客の仕事なので、コミュニケーション能力は欠かせません。
また、接客が仕事ではない職種であっても、コミュニケーション能力が必要です。
社内の他職種や、社外の取引先の人と接し、会議や打ち合せをすることが多いのです。
例えば、ファッションデザイナー、パタンナーといった服作りの専門技術職も、黙々と一人で作るのではありません。
マーチャンダイザーなど、社内の他の職種の人に、デザインの意図を説明したり、市場の動向を聞くといったコミュニケーションを重ねながら、服を作り上げていきます」

洞察力があって、サービス精神に富んでいる人
販売員は、目の前のお客さまがどんな服を求めているのか、会話のなかから引き出し、洞察して、お客さまによろこんでもらえる服を提案することが大切です。
ファッションデザイナーなど、直接お客さまと接する機会がほとんどない職種でも、『私はこれがいいと思う』という自分の軸で考えるのではなく、大事なのは着る人のことを考えること。
日常生活のどんなシーンで着るのか、どんな服ならよろこんでもらえるのか、想いをはせることが必要です」
アパレルの仕事に就くには? 進路は?
アパレル業界にはさまざまな職種があるので、アパレルの仕事に就くための進路を選ぶ際には、まず、どんな分野で活躍したいのかを考えてみることが大切。ファッションデザイナーやパタンナーなど専門技術職を希望するなら、大学などの服飾系の学部・学科に進学して学ぶ必要がある。
ほかの職種に興味がある場合は、服飾系の学部・学科以外にも幅広い選択肢がある。
アパレルの仕事を目指すための進路選びについて、平山さんに教えてもらった。
専門技術職を目指すなら大学・短大・専門学校の服飾関連の学部・学科で学ぶ
目指す職種によっては将来に役立つ学部・学科で力をつける
例えば、マーケティングに携わる仕事をしてみたいのなら、経営学部、経済学部、商学部といった選択肢があります。
海外で事業展開しているアパレル企業で働いてみたいのなら、外国語学部で語学力を磨くのもいいでしょう。
また、理系の学部とアパレルは関連がなさそうに思えるかもしれませんが、そんなことはありません。
例えば、化学を専門的に学んでいれば、布地の素材になる化学繊維などの知識があるでしょうから、それを生かして、素材開発の仕事などで活躍できる可能性があるでしょう。
大学か専門学校か、どの学部が自分に合っているのか…複数の情報を集めて比較研究すると、見えてきますよ」
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「ファッションデザイナー、パタンナーなど専門技術職は、その職種で募集をすることが一般的ですが、ほかの職種については、新卒での就職時には、希望どおりにはいかない場合もあるでしょう。
でも、そこで失望して辞めるのではなく、配属された職種で頑張ってほしいなと思います。
例えば、最初は販売員だった人が、実務を経験しながら人と接するスキルや、商品の知識を蓄えていき、実績を積んでプレスや営業など、もともとの希望職種に就けたという事例もあります」
アパレル業界で活躍するために役立つ資格は?
アパレルの多くの職種は資格がなくてもできるが、資格は一定の基礎スキルがあることの証明になるし、取得を目指して勉強することで知識が増えるというメリットがある。アパレル業界で活躍するために役に立つ資格はいろいろある。
例えば、次のような民間資格がある。
ファッションビジネス能力検定
ファッション商品の企画や生産、流通の業務に必要とされる知識を試す検定。3級から1級まで3つのレベルがある。
ファッション販売能力検定
ファッション商品知識や販売知識、接客技術、マーケティングなど、アパレル販売の仕事で働くための知識と技術をはかる検定。3級から1級まで3つのレベルがある。
●ファッションビジネス能力検定、ファッション販売能力検定について詳しく知る
ファッション色彩能力検定
商品の企画、マーケティング、販売、店舗運営など、アパレルのさまざまな仕事で必要な色彩の知識と活用技術をはかる検定。3級から1級まである。
●ファッション色彩能力検定について詳しく知る
パターンメーキング技術検定
ファッションデザイナーが描いたデザイン画をもとに、洋服を作るためのパターン(型紙)を起こす技術と知識を審査する検定。3級から1級まである。
繊維製品品質管理士【TES】
繊維製品の品質管理に関する知識は、商品の企画やデザイン、生産管理、販売など、アパレル業界の幅広い職種に必要とされている。そうした知識の基礎と、応用能力を認定する資格。
ここで紹介した資格試験はいずれも、年齢や学歴、業務歴に関係なく、誰でも受験できるが、ファッション・服飾関係を専門的に学んだ人などを想定した試験内容となっている。
これらの資格取得を目指せる課程をもつ大学、短大、専門学校もあるので調べてみよう。
●繊維製品品質管理士【TES】について詳しく知る
大学・短大を調べる専門学校を調べる
参考:ファッションビジネス能力検定 ファッション販売能力検定 ファッション色彩能力検定 パターンメーキング技術検定 繊維製品品質管理士【TES】
アパレルの仕事に興味のある高校生におすすめの学問
アパレル産業は、衣服という人の暮らしに欠かせないアイテムにかかわる事業なので、仕事をするうえではさまざまな学問が役に立つ。そんななかから学んでおくとよい学問や、どのように役立つのかチェックしてみよう。
服飾・被服学
服飾に関する理論と技術を研究し、快適な衣服を追求する学問。テキスタイルの素材の特徴や機能性、染色や織物、洋服のデザイン、パターン製作、縫製、服飾の流通など幅広く学ぶことができるので、アパレルのさまざまな業務に役に立つ。
服飾・被服学を学べる学校を探す
デザイン
日常にあるすべてのものを対象に、デザインの理論と表現の技術を研究する。Webサイトや映像、ポスター、インテリア製品、家電製品、空間デザインなど、多岐にわたる領域があり、そこから専門分野をきわめていく。
アパレル業界で働くことは、おしゃれで快適な衣料品を消費者に提供する仕事に従事するということなので、デザインを学んでおくと、服作りにも通じる効果的な表現技法が身につき、感性も養われる。
デザインを学べる学校を探す
商学
商学は、物やサービスを売買する事業活動(ビジネス)や、企業の経営について学ぶ学問。経営の理論を学ぶだけではなく、「ヒト・モノ・カネ」を効率的に調達し、管理、循環させていくためにどうしたらいいのか、課題の発見や分析、解決する力を養う。
身につけた専門知識は、あらゆる業種、企業で役に立つ。
アパレル企業でも商品の企画・マーケティングや、販売促進などにかかわる職種で力になるだろう。
商学を学べる学校を探す
心理学
人の心や集団行動のメカニズムを、調査や統計、分析、実験など科学的な手法によって解明する学問。対象や目的によって、さまざまな分野に分かれている。
人の知覚・触覚・記憶・学習などの仕組みや機能を研究する認知心理学、集団のなかの個人の行動や対人コミュニケーションなどを研究する社会心理学、心の問題を抱える人を解決に導くための心理療法やカウンセリング技法の研究をする臨床心理学などがある。
アパレル業界で働くなかで、「人はどんな色や服装に魅力を感じるのか」を考えるうえで、心理学の知識は役に立つ。
心理学を学べる学校を探す
コミュニケーション学
コミュニケーションをテーマに、人と人、人と集団・社会のかかわり合いについて研究する学問。異文化理解、国際交流、情報発信など、さまざまな角度からコミュニケーションのあり方を研究し、その影響や課題を分析し、より円滑なコミュニケーションをはかるための手法を探求する。
こうしたコミュニケーション学で得た知識は、コミュニケーション力が必要とされるアパレル業界の仕事で生かすことができる。
コミュニケーション学を学べる学校を探す
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「私が大学で専攻した学問は日本文学です。
日本文学を学んだことでさまざまな文学作品にふれ、言葉の大切さと表現力を磨くことができました。
また、作品の背景や登場人物の言葉を分析することで、『物事にはいろいろな視点があるんだな』という気づきや他者の気持ちを推しはかる力が身につきました。
そうして学んだことは、販売の仕事や、スタッフ育成に生かすことができたと実感しており、コミュニケーション能力やマネジメント力の根となる学びであったと振り返ります。
積み重ねた学びは、将来必ず役に立ちますので、高校生の皆さんも頑張ってくださいね」

アパレル業界の将来性は?
アパレル業界は、衣食住の「衣」を支える産業なので、今後も人々の暮らしになくてはならない産業であり続けることは間違いない。今回は、アパレルの将来性に関わるキーワードのなかから「SDGs(持続可能な開発目標)の取り組み」をクローズアップ。
平山さんに解説していただいた。
アパレル業界のSDGsの取り組みに注目が集まる
「SDGs(エスディージーズ)」とは、英語の「Sustainable Development Goals」の頭文字をとった言葉で、日本語では「持続可能な開発目標」。世界には経済・社会・環境・福祉などさまざまな分野の社会課題があり、それらを解決するために、国連が定めた17個の目標がSDGs。国連に加盟する国々では、2030年までの目標達成を目指し、取り組んでいる。
アパレル業界でもSDGsへの取り組みが進行中だ。
服を購入する消費者もSDGsへの関心が高まってきていて、従来のような『短いサイクルで新しい服に買い替え、不要になった服は捨てる』というのではなく、『よい服を長く、大事に着る』という意識が浸透しつつあります。
こうしたSDGsへの意識の高まりや、消費者の価値観の変化に合わせた提案をしていくことは、アパレル業界の新しい領域として期待できると思います」
そんな日々で頼もしく感じているのは、高校の探求学習などを通して、高校生が世の中の課題解決について学び、研究していることです。
なかでも地域課題に対する取り組み方がすばらしい高校も多く、高校生の未来の活躍を想うと、私自身ワクワクしてきます。
高校生たちが『地元の人口減少をどうしたら食い止められるか』『経済発展のためにどのような取り組みが考えられるか』など、真剣に考えているのです。
例えば、もしも洋服が好きでアパレル業界に興味があるならば、アパレルで地域の産業振興を考えてみるのも面白いかもしれません。
繊細な技術が光る『MADE IN JAPAN』の可能性として、地場産の織物や染物をクローズアップし、SNS発信力を使って海外を視野に入れた斬新なビジネスを考えてみるなど、自由な発想で『好きが人や社会の役に立つ』研究もいいですね。
大人を巻き込んでいろいろな可能性を広げてほしいです」
高校生の皆さんへメッセージ
服に対する考え方や、そこからどんな商品が生まれているのか、どんな人たちが活躍しているのか知ることができます。
また、今回ご紹介した学問についても興味をもって調べてみると、『やってみたい!』『面白そう!』と思えるような、いろいろな発見があるかもしれませんよ。
高校生の皆さんには、楽しいこと、興味のあること、夢中になれるものに、どんどんチャレンジしてほしいです。
皆さんの可能性は無限大です。心から応援しています!」
この記事を参考に、各職種の仕事内容を詳しく調べたり、進路選びの情報をチェックしてみよう。
取材協力:一般社団法人キャリアラボ
取材・文/小林裕子 取材協力・監修/平山広恵 イラスト(図版部分)/梶浦ゆみこ 構成/寺崎彩乃(編集部)
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