理容師と美容師の違いとは?仕事内容から収入、ダブルライセンスに関することまで徹底解説


理容師と美容師はどちらも髪を整えてくれる仕事だけど、理容師と美容師の違いを知っている?

なんとなくイメージはわくけど具体的に何が違うかわからない人もいるのでは?

大きな違いとしては、カミソリを使った顔そりや髭剃りなどの施術ができるのが理容師で、できないのが美容師ということ。

それ以外にも理容師と美容師には異なる部分がある。

そこで、理容師と美容師の仕事内容の違い、どうしたら理容師や美容師になれるのか、収入はどれくらいあるのか、理容師と美容師のダブルライセンス取得についても詳しく解説しよう。

理容師と美容師の違いとは?

理容師と美容師の違い
理容師は理容師免許、美容師は美容師免許を取得していないとできない仕事で、理容師と美容師の大きな違いは、カミソリを使った顔そりができるか否か。

理容師免許をもっているとカミソリが使用できるが、美容師免許ではカミソリの使用が法律上で認められていない。

理容師の仕事は、理容師法で「頭髪の刈込、顔そり等の方法により容姿を整えること」と定められていて、毛染めやパーマも理容行為に含まれている。 

お客さまの要望に合わせて、ヘアカット、顔そり、シャンプー、パーマ、カラーリング(毛染め)、整髪などを行い、容姿を整える。

理容師の免許をもっていないとカミソリが使えないため、顔そりや髭そりは理容師だけに認められている仕事。

もともと理容師は男性顧客をメインとする業務内容だったが、最近では女性へのシェービングをメニューとして提供する理容室も出てきている。

美容師の仕事は、美容師法で「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」と定められていて、ヘアカット、毛染、まつ毛エクステンションも美容行為に含まれている。

理容師の仕事の目的が「容姿を整えること」で、美容師の仕事の目的が「容姿を美しくすること」であるが、最近は理容師にも流行を取り入れた容姿の美しさを求められることが増えている。

理容師と美容師どちらも、高度な技術や知識に加え、豊かな感性や美的感覚も必要。

ただヘアスタイルを作るだけでなく、「美と健康」「やすらぎと快適」というお客さまのニーズにこたえていくのが、理容師と美容師ともに大切な仕事といえる。

美容師だけができる仕事内容は?

美容師と理容師の違い
美容師の仕事は、お客さまの要望に合わせて、ヘアカット、パーマ、カラーリング(毛染め)、化粧などの技術を使い、容姿を美しくすること。

理容師にしかできないのはカミソリを使った施術だけど、実はまつ毛エクステンションなど、まつ毛への施術は、美容師だけが行える美容行為の一つ。

化粧の一環として眉毛を整える程度は可能だが、顔全体へのシェービングは美容師免許だけでは行うことができない。

さらに美容師はネイルや着付け、美容アドバイスなどを行うことも多い。

ヘアカット、シャンプー、ブローで、それぞれスタッフが分担することもある。

理容師と美容師の資格の違いは?


理容師になるには理容師国家試験に合格して理容師免許証を取得、美容師になるには美容師国家試験に合格して美容師免許証を取得する必要がある。

どちらも都道府県知事指定の養成施設で、昼間課程2年、夜間課程2年、通信課程3年以上のいずれかで必要な学科・実習を修了すると国家試験の受験資格が得られる。

理容師国家試験と美容師国家試験は年2回、春は1月~3月、秋は7月~9月に筆記試験と実技試験を実施。

春の試験は養成施設の卒業見込み者が受験するため、受験者数が多く、合格率も高いが、秋の試験は養成施設の既卒者の再挑戦が大半になることもあり、受験者数が少なく、合格率は低くなっている。

受験者数は美容師の方が圧倒的に多いが、春の試験は美容師の合格率が高く、秋の試験は理容師合格率が高い傾向にある。
【令和5年度・春】
  理容師 美容師
受験者数 1,303人 19,523人
合格者数 1,067人 16,888人
合格率 81.9% 86.5%
【令和6年度・秋】
  理容師 美容師
受験者数 837人 4,763人
合格者数 593人 2,622人
合格率 70.8% 55.0%


理容師と美容師の働く場所の違いは?

理容師と美容師の動く場所の違いは?
理容師は床屋や理髪店、理容室と呼ばれる理容所、美容師は美容室や美容院と呼ばれる美容所で働くことが多い。

いずれも全国展開しているチェーン店から個人経営のサロンまで、店舗の規模は幅広い。

理容師法と美容師法の定めにより、理容所は理容師のみ、美容所は美容師のみ、業務を行うことができ、理容師が美容所で働いたり、美容師が理容所で働くことはできない。

そのほかに結婚式場やホテル、福祉施設に勤務する理容師や美容師もいる。

さらに、理容師の働く場所には、女性を対象としたエステシェービングサロン、カミソリを用いるブライダルサロンがある。

美容師の働く場所には、化粧品などのメーカー、テレビや雑誌などの撮影現場で活躍することもできる。

理容師と美容師の収入の違いは?


理容師と美容師の年収は、厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagによると、全国平均379万7000円(令和5年賃金構造基本統計調査より)。※理容師と美容師を合わせた平均年収が最も高い年代は、35~39歳で535万5200円。

地域や就業形態、サービス内容などによっても金額は大きく異なる。

ハローワークの求人統計データによると、理容師の求人賃金は全国平均で月額28万6000円、有効求人倍率15.75倍(令和5年度、以下同)。

美容師の求人賃金は全国平均で月額26万4000円、有効求人倍率6.1倍。

理容師のほうが求人倍率は高く、理容院や美容院に就職する場合の月額賃金は理容師のほうがやや高い。

美容院では、パーマ、カラーリング、メイク、ネイルなど、施術メニューが多いため、客単価は美容師のほうが高い傾向にある。

理容師の市場動向と将来性は?

理容師を取り巻く市場環境として、これまでは男性のお客さまに対して容姿を整えることがメインだったが、近年は男性の美容意識が高まり、理容室でもスタイリッシュなヘアスタイルが求められている。 

フェード(刈り上げ)、無精ひげ、韓流ダウンパーマ、波巻きパーマなど、さまざまな流行に対応することも。 

さらに理容室で女性へのシェービングをメニューとして提供するため、女性の理容師が増加傾向にある。 

また、理容師の将来性としては、高齢社会に対応してニーズの高まりがあると考えられる。

福祉施設などへの訪問理容を行う理容室も増えていて、理容室に来店することが困難な高齢者や障がいのある方に対応した「ケア理容師」が注目を集めている。

理容室は減少傾向にあるが、美容室は増加を続けているため、美容師免許も取得することで、ダブルライセンス取得者として美容室に勤務する道が開けていく。

美容師の市場動向と将来性は?

美容師の市場動向と将来性は?
美容師の市場環境としては、美容室の数が増加傾向にあり、お店の競争が激化しているため、美容室や美容師によって人気の差が大きくなっている。

低価格を売りにする美容室と、高額でもこだわりを重視したい人のためにハイレベルなサービスを提供する美容室との二極化が進み、働くお店のスタイルによって求められる知識とスキルにも違いが出てきている。

さらにオプションで美容室の人気のサイドメニューのヘッドスパなどの技術も求められている。

また、理容師同様、美容師の将来性としては、介護が必要な高齢者や障がいのある人の自宅や病院、福祉施設に訪問してサービスを提供する「福祉美容師」が増加傾向にある。

それ以外にも日本に住む外国人や旅行で外国からくるお客様の利用も増加傾向にある。

理容師の就職先は?


理容師の就職先で最も多いのが理容室。

全国チェーンの大型サロンから個人経営の店まで、規模は幅広い。

そのほかに、結婚式場やホテル、福祉施設、シェービング専門サロン、ブライダルサロンがある。

美容師の就職先は?

美容師の就職先で最も多いのが美容室。

全国チェーンの大型サロンから個人経営の店まで、規模は幅広い。

そのほかに、結婚式場やホテル、福祉施設、ヘアメイク事務所、ヘアセット専門店、美容サロン、化粧品などのメーカーがある。

理容師と美容師のダブルライセンスとは?

理容師と美容師のダブルライセンスとは?
理容師免許と美容師免許の両方を取得している状態をダブルライセンスという。

ダブルライセンスを取得していると、理容室と美容室のどちらでも働くことができ、仕事の幅が広がる。

今までは理容師または美容師の養成施設で2~3年学び、卒業後に国家試験に合格してから、もう一方の養成施設に再入学して2~3年学ぶ必要があったため、ダブルライセンスを取得するのに4~6年かかり、取得費用も2倍だった。

しかし2018年4月の法改正により、ダブルライセンスを取得するための期間も費用も縮小されたため、ダブルライセンスを目指す人が増えている。

ダブルライセンスを取得する方法

ダブルライセンスを取得する方法は2つ。

1つめは、理容師免許または美容師免許を取得後、もう一方の養成施設に再入学。

昼間課程または夜間課程は1年、通信課程なら1.5年の履修によって国家試験の受験資格が得られる。

2つめは、ダブルライセンスコースのある養成施設に通うことで、最短2.5年で理容師と美容師の両方の国家試験の受験資格を得ることができる。

ダブルライセンスを取得するメリット


理容師と美容師のダブルライセンスを取得すると、理容室と美容室の両方で働くことができて、仕事の幅が広がるメリットがある。

理容の業務許可を得ることでシェービングを行える美容室があったり、逆に美容の業務許可を得ることでまつエクなどもできる理容室があったりと、最近はトータルビューティサービスを提供するお店が増えてきている。

例えば、結婚式場やホテル、ブライダルサロンに勤務して、ヘアセット・メイク・シェービング・着付けを一人で行うことができれば、ブライダル業界では貴重な人材として歓迎される。

ダブルライセンスを取得するデメリット


ダブルライセンスを取得するデメリットは、どちらか一方だけよりも時間と費用が少し多くかかること。

理容師と美容師の両方の仕事をこなさなければダブルライセンスをもっている意味はないが、それ以外にデメリットはない。

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理容師に向いている人と美容師に向いている人の特徴は?


理容師も美容師も、「人をきれいにしたい」「人をかっこよくしたい」という気持ちの強い人が向いている。

さらに、流行に敏感な探究心やコミュニケーション能力も必要。

理容師と美容師は、基本的に立ち仕事になるため、ある程度の体力はあったほうがよい。

理容師に向いている人の特徴


理容師に向いている人は、「かっこいい」「美しい」ものへの探究心が強く、おしゃれが好きな人。

特に理容院に多い男性客の場合、おまかせでオーダーする傾向があるため、お客さまに合ったヘアスタイルを提案できるよう、流行にアンテナを張って、ファッションに興味関心をもっているほうが理容師に向いている。

理容師の仕事の大きな特徴として「顔そり」があり、お客さまに安心して施術を任せてもらえるよう、コミュニケーション能力があるほうがよい。

美容師に向いている人の特徴

美容師に向いている人は、美容のプロとして「美」への探究心が強く、流行に敏感で、常に感性を磨くことができる人。

季節感や流行、お客さまの髪質にも合ったヘアスタイルを提案できるスキルやテクニックも求められる。

お客さまの髪の悩みや要望などを聞いてアドバイスをしたり、商品やプラスメニューを勧めたり、美容師はメイクやネイル、着付けなど、サービスが幅広いので、常に向上心をもって新しい技術を追求していくことのできる人が向いている。

理容師や美容師になるために考えておくべきことは?

理容師になりたいなら理容業界をリードしていく強い意志があると活躍の場が広がるかも

理容師の仕事はカミソリを扱うことができる大きなメリットがあるので、ヘアカットだけでなくシェービングの技術を生かして、理容師ならではのサービスを提供していきたい。

理容師は平均年齢が上がっていて、これからの理容業界を担っていく若い力が求められている。

理容業界をリードしていくという強い気持ちで、理容師の活躍の場を広げていこう。

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美容師になりたいなら得意分野を見つけて極めよう!

美容師は人をきれいにすることで喜んでいただける、やりがいの大きい仕事。

ヘアカットをはじめ、パーマ、カラーリング、メイク、ネイル、まつ毛エクステンション、着付けなど、さまざまなスキルが求められるので、自分の得意分野を見つけて、美のスペシャリストとして、将来は自分のお店をもつ夢をかなえよう。

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取材協力
理容師の働く場所・市場動向と将来性について/全国理容生活衛生同業組合連合会
美容師について/スタディサプリ進路 美容師になるには

取材・文/やまだみちこ 構成/黒川安弥