子どもたちの体と心をケアする保健室の先生「養護教諭」
体育の授業などで擦り傷を作ってしまったときに、やさしく手当をしてくれる保健室の先生。それが「養護教諭」だ。
保健室での応急処置に加え、全校生徒の健康を管理したり、校内の衛生環境を把握したり、子どもたちを陰ながら支える存在となっている。
そんな養護教諭の一人、吉野裕美さん(27歳)は、現在、福井県内の小学校に務めている。
■居心地の良い保健室を目指して
「どこかケガをしていたわけではないのですが、遊びに行くような感覚で保健室に行って、先生と話をしていました」と照れ笑いする吉野さん。それでも先生は、しかることはせず、ていねいに話を聴いてくれたという。「いつも寄り添っていてくださった」。そこに、吉野さんは居心地の良さを感じていた。
大学時代、養護教諭になるために教育実習で学校に行ったとき、保健室の先生が優しく接してくれた理由がわかった。「何気なく保健室に来る生徒も、心の中に悩みやストレスを抱えている可能性がある。傷口は見える部分だけではない」。
そのため、生徒の話に耳を傾けることを心掛けた。昨日あったできごと、芸能人の話、何げない会話を聴くだけでも生徒の表情が明るく変わっていくことを知った。保健室の大切さがわかった実習だった。
■普段の会話から子どもたちの成長を把握する
大学で養護教諭の免許を取得した後、初めての勤務先は中学校だった。「思春期だからこそ心のケアが大切」と開かれた保健室を目指した。けがや病気の応急処置だけでなく、勉強から恋愛まで幅広く相談を受けた。東日本大震災で被災した生徒が転校してきたときは、自分だけでケアするのではなく、カウンセラーとも連携して対応した。
吉野さんは、生徒の心の状態に合わせ、その時々に合った会話やコミュニケーションを心がけた。その結果、生徒が元気な顔になって、保健室を出ていくことがうれしかったという。
現在は、全校児童が50人にも満たない小学校で子どもたちの成長を見守る。小規模校だけに、給食指導や清掃指導など保健室から出て仕事をすることも多い。
その中でも「朝ご飯を食べているか」「今何に興味をもっているか」などさりげない会話からも子どもたちの健康状態を把握することができるのだという。「保健室の外でも養護教諭の仕事はあることがわかって、いっそう意欲が増しました」と吉野さんは話す。
養護教諭の仕事は、単に傷口の応急手当をするだけでなく、子どもたちの心の変化を見つめ、そして成長を見守っていくことも必要になる。保護者や担任の先生、周りの大人には言えないことも、保健室の先生になら話せることも多いだろう。そんな養護教諭は、子どもにとって“心から頼れる存在”といえるかもしれない。
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