“好きな作業”を通して患者さんを元気にする「作業療法士」

医療現場において“リハビリの専門家”として患者さんと接する「作業療法士」。

 

立つ、歩くといった基本動作のリハビリを行う「理学療法士」とは異なり、「作業療法士」は食事や入浴などの日常生活に必要な動作や、料理、編み物といった趣味に関わる“作業”のリハビリを行う。患者さんが“楽しく生活できるように心も体も支援する”のが仕事だ。

 

作業療法士は国家資格で、国が指定する専門学校や短大・大学などの作業療法士養成施設を卒業して、国家試験に合格する必要がある。

 

そんな作業療法士として働き始めて3年目の蓑輪(みのわ)かおりさん(25)に、この仕事を選んだ理由を聞いた!

 
 

■患者さんに自分ならではのアプローチができる!

 

「作業療法士は“患者さん自身がやりたいこと”をできるようにするのが仕事なので、まずは『何をしている時が楽しいか?』を一緒に探すところから始まるんです。そんな風に患者さんと1対1で深く関われる仕事は他にはないなと思って、この職種を選びました」

 

“好きな作業”を通して患者さんを元気にする「作業療法士」

 

相手と深く関わる仕事だからこそマニュアルはなく、「自分で考えた方法でひとりひとりにアプローチできるのが楽しい」と蓑輪さんは言う。

 

「以前、足を骨折して入院してきた高齢者の方がいたのですが、最初の頃はやりたいことを聞いても『わかりません』としか言ってくれなくて…。そんな時、『一緒にちぎり絵をやりましょう』と声をかけてみたんです。ちぎり絵をしながらふと食べ物の話になった時、『私、みたらし団子が食べたい…』とポツリと言ってくれたんですよ。それで、一緒にみたらし団子を作って食べたら、初めて笑顔を見せてくれて! これをきっかけにリハビリにも徐々に意欲的になってくれました。『やりたいこと』『楽しいこと』を一緒に発見できた時はすごく嬉しいですね」

 

お菓子作りがリハビリになることも! 患者さんごとに価値を置いている作業は様々だそう

お菓子作りがリハビリになることも! 患者さんごとに価値を置いている作業は様々だそう

 

また、患者さんのやりたいことが少しでもスムーズにできるように、様々な“道具”を作るのも作業療法士の仕事のひとつだそう。

 

「病気で手が上がらないけど『髪をとかしたい』と思っている患者さんには、持ち手の長い櫛を手作りしたり、握力が弱まっているけど『絵を描きたい」という患者さんには、スポンジを巻いて持ち手を太くした筆を作ったりと、リハビリの時間以外はほとんどモノ作りに追われています(笑)。仕事帰りも患者さんのことを考えながら、100円ショップをまわることが多いですね」

 

そんな蓑輪さんに、作業療法士に必要な資質を聞いてみると、「一番大切なのは、どれだけ“人に興味を持てるか”ということですね。『この作業は、患者さんにとってどういう意味を持つんだろう?』と、相手の気持ちになって“想像”をする力がとても必要だと思いますね」とのこと。

 
 

■患者さんが喜ぶ姿を見た瞬間が最高に嬉しい!

 

そして最後に、蓑輪さんがやりがいを感じた瞬間を教えてもらった。

 

「病気やケガで入院されている患者さんは、最初は落ち込んだ顔をしてらっしゃる方がほとんどです。でも、やりたい作業が見つかって、一生懸命訓練に取り組み、やっとの思いでそれができるようになった時に、喜びの笑顔を見せてくれるんです。その瞬間は、本当にこの仕事をやっていてよかったと思います」

 

患者さんと一緒に“やりたいこと”を実現していく作業療法士。その現場では、日々患者さんと作業療法士の“挑戦”と“笑顔”が生まれているのだ。

 

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