~Vol.11~ 途上国の発展に貢献する、「質の高いインフラ」って何だろう?
MADE IN JAPANの製品。
丈夫で長持ちで機能的だと、世界中でとても評判のよい、日本の自慢です。
それは私たちの身の回りの商品だけではなくて、道路や鉄道、発電所や水道設備などの、いわゆる「インフラ」でも同じこと。
日本の高度な技術は、世界のあちこちで大活躍しているのです。
けれど、世界中を見わたしてみると、そのインフラが十分に整っているとは言えない国があるのが現実。
そんな海外の国々のこれからの発展を、日本の技術を使って支援しようとしている、外務省国際協力局の門脇史弥さんにお話を伺いました。
本当に支援が必要なのか?役に立つ支援・協力とは?
たとえば今の日本から道路や鉄道がなくなると、移動手段を失いますし、食品や日用品などの輸送もストップしてしまいますよね。
楽しみにしている漫画雑誌だって、読めなくなってしまうでしょう。
つまり、人や物が動くことって、毎日のくらしや、物を売ったり買ったりする経済の基本なんです。その基本を支えているのが、「インフラ」です。
そんな、生活にとって不可欠なものが不足している国に、技術や資金を提供して、生活や経済を発展させていこうというのが、私が携わっているODA(政府開発援助)です。
中でも、私が担当するのは、日本がより良い支援や協力を行うための制度を考えたり、その支援が本当に必要なものなのか、本当に最適なプロジェクトなのかをチェックする仕事。
途上国の発展にきちんと貢献できるプロジェクトでなければいけませんし、たとえ経済的な発展につながるものでも、その他の面、例えば環境に悪影響が出るものであってはいけません。
その国の未来にとって本当に役立つ支援・協力を行うにはどうすればよいかを考える、それが私の役目です。
インドに新幹線?
今、私の仕事の中で、「質の高いインフラ」をいかに世界中に広めていくかが一つの重要な課題となっています。
環境に優しくかつ災害にも強く、長く安全に使うことができ、整備や運用ができる現地の技術者を育成し、技術力そのものを向上させ、さらに新しい雇用の機会を生み出す。目の前の発展だけではなくて、ずっと先の将来を見据えてインフラを整備していく。
これが、日本が推進している「質の高いインフラ」の考え方です。例えば、人口が12億人を超えるインド。人の移動手段はまだまだ未発達な状態です。
そこで、日本の技術を使って、インドに新幹線を走らせようという構想が浮上してきました。主要な都市を高速で移動できるようになれば、ヒト・モノの行き来が活発になり、経済だって発達する。
「質の高いインフラ」の一つの良い例だと思います。
私は、これまで鉄道にはあまり興味が無かったのですが、この仕事をしてはじめて線路の種類やスピードに耐えるための新幹線特有の車両の形状や材質があることを知りました。
この仕事をしていなかったら一生知らなかったと思います。
オールジャパンで、質の高いインフラをつくる!
今まさに、インドで新幹線を走らせるために、外務省や関係省庁、日本国内の関連会社、開発途上国への支援を行っているJICA(ジャイカ:国際協力機構)など日本の持てる力を結集して、プロジェクトに臨んでいます。まさにオールジャパン体制と言えますね。
「質の高いインフラ」に向けたオールジャパンの取り組みは、インドだけでなく、その他のアジアやアフリカ、南米など、世界各地で進められています。
いつか、世界のどこかの国を旅した時に、「あの時やったあのプロジェクトだ!」と出会うことが出来れば素敵だろうなと思いながら日々業務に取り組んでいます。
アフリカで「ニホン」という言葉を聞いたときの驚き
私は、2016年の9月まで、南アフリカの大使館に駐在していました。
担当していたのは、南アフリカと、南アフリカの中にある小さな国、レソト。
日本は、レソトに対して、学校や病院を建設したり、食糧支援を行ってきました。
ある時、日本の支援で建てられた山奥の学校に行って子どもたちと話した時に、それまで現地語を話していた彼らから笑顔で「ニホン!」という言葉を聞いた時は、耳を疑うと同時に、私たちの支援がこんなに遠くの国にまで広がり、この笑顔を支えているんだと思い、私たちが携わる仕事の役割をあらためて理解した気がします。
現在、アフリカの国々は経済的に徐々に発展を見せはじめ、若い起業家も次々に誕生しています。
ただ、これからさらに発展をつづけていくには、まだまだ基礎となる部分、インフラの整備が必要です。そのためにも、日本の「質の高いインフラ」をさらに世界に広げていく必要があると感じています。
【日本の支援で建設したレソトの小学校】
門脇さんの受験必勝法
私の場合は、歴史や英単語など、覚えることがなかなか苦手だったので、仕方がないから教科書を頭から後ろまで、とにかく何回も読んで片っ端から丸暗記していました。
ただ、あんまり時間をかけて詰め込みすぎてしまうと、頭がパンクしちゃうので、朝起きると、いつ勉強するのか、まず1日のスケジュールを立てていました。
また、昔からテレビっ子で、ドラマやスポーツニュースなど、好きな番組を見る時間だけは必ず確保していました。
無理はせず、あらかじめ決めた勉強時間のあいだだけは、ほかのことは一切考えずに必死に勉強する。
必勝法と言うにはとても泥臭いやり方かもしれません。
でも、大切なことは、短時間でも集中してやることと、好きなことは我慢しないこと。
そうしないと、長続きしませんよね。
高校生のみなさんへ
昨年まで駐在していた南アフリカは、ペンギンと泳げる海岸があったり、おいしい牛肉やフルーツを味わえたりと、生活を送る上でも楽しみがたくさんある国でした。
そんな美しいビーチも美味しい食べ物も、すべて現地に行かないと感じることができないものです。
だから高校生の皆さんには、自分の将来で興味関心があることがあれば、足を運んで実際にその現場を感じてみてほしいと思います。
たとえばファッションに興味があるなら近くのファッションショーに行ってみたり、スポーツが好きならスタジアムでバイトやボランティアしてみたり。
自分が好きだと思ったものは、その現場をリアルに感じることが重要だと思いますし、そこで将来を左右するような運命的な出会いだってあるかもしれません。
自分の目で確かめ、肌で空気を感じてみることで、それが本当に好きなものなのか、おや、やっぱりちょっと違うなということが直感で分かると思うんです。
その直感に従って選択したことって、きっと正しいと思いますよ。
【名刺入れ】
外務省入省時から使っている名刺入れです。職業柄、世界中の人々と名刺を交換する機会があるので、毎日使ってだいぶ年季が入ってきました。これからも長く、一緒に活躍していきたい仕事グッズです。
門脇史弥
外務省 国際協力局・開発協力総括課
平成22年 外務省入省
最初に外交官を志したのは、小学5年生の時。
教科書で見かけた、日本の国連職員の方のコラムを読み、海外の国に貢献する日本人の姿にあこがれる。
入省後は本省で2年間勤務した後、英国での研修を経て在南アフリカ大使館で勤務。
2016年9月より、現在の業務に携わる。
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スタサプ編集部