AO入試って?大学のAO入試って何を聞かれるの?徹底分析

現在、大学入試には、大きく分けて下記3つの選抜方法がある。
 
・一般入試
・推薦入試
・AO入試
 
この中で、近年、急増しているのがAO入試の割合だ。
 
AO入試といえば、※2017年度の入学者に占める割合が国立3.3%、公立2.4%に対して私立では10.7%を占めるなど、私立での導入が先行していたが、2018年度の大学入試では国公立大学でAO入試を実施する大学が初めて50%を超えた。
 
国立大学協会は2021年度までに推薦入試・AO入試等の割合を入学定員の30%に引き上げるとしているため、今後もますます増えると考えられる。
 
※推薦を合わせると私立大学では入学定員の半数を超えるなど国公立大学より進んでいて、例えば、早稲田大学と慶應義塾大学でもAO入試・推薦入試の割合がそれぞれ4割を超えた。
 

※文部科学省HP 2017年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況より

私立の場合、国公立を落ちたから仕方なく入学するという学生より、最初からこの大学で学びたいという学生に入学してもらいたいという背景がある。
 
そこで、AO入試とは何なのか、一度、しっかり基本を押さえておきたい。

★注目★
※2021年度の入試より、AO入試は総合型選抜、推薦入試は学校推薦型選抜と名称が変更。

▼詳しくはこちらをチェック▼
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AO入試とは?

AO入試って?基本からAO入試体験談まで
 
まず「AO」とは「アドミッション・オフィス=入学管理局」の略で、「AO入試」とは、出願者の人物像を大学の求める学生像(アドミッション・ポリシー)と照らし合わせて合否を決める入試である。つまり、「この大学で学びたい」という意欲が重要視される。
 
文部科学省の要項によると、AO入試の概要は「詳細な書類審査と時間をかけたていねいな面接などを組み合わせることによって、入学志願者の能力・適性や学修に対する意欲、目的意識等を総合的に判定する入試方法」とある。
 
具体的には

① 入学志願者自らの意思で出願する公募制。
② 知識・技能の修得状況に過度に重点を置いた選別基準としない。
③ 大学教育を受けるために必要な基礎学力の状況を把握するため、以下のいずれかを用いることが必要。
ア 各大学が実施する検査(筆記、実技、口頭試問等)の成績
イ 大学入試センター試験の成績
ウ 資格・検定試験などの成績
エ 高等学校の教科の評定平均値
④ ③ア~ウを行う場合にあっては、③エと組み合わせるなど調査書を積極的に活用することが望ましい。

としている。
 
意欲は大切だが、それだけではなく、学力にも基準が設けられている。
 
ちなみに、大学が求める学生像(アドミッション・ポリシー)とは例えば以下のようなもの(文部科学省資料より、抜粋)である。

・学士課程教育を受けるにふさわしい学力、すなわち基礎知識・基礎技能・数理能 力・語学力・理解力・読解力を備えた学生、また、大学入学以降の学びで必要な問題解決能 力・創造力・倫理性・思考の柔軟性・コミュニケーション能力・論理的思考力・リーダーシップ、人間性や学ぶ意欲などを備えた学生
 
・理学とは、宇宙、地球、生命、物質など、私たちをとりまく自然の謎を解き明かし、人類の 英知を高めると同時に、広く社会の進歩に貢献することを目指す学問です。そのために◯大学理学部は次のような人の入学を求めています。
 
自然界の不思議に関心を持ち、それらを解明したいと思っている人/理科や数学に魅力を感じ、もっと学びたいと思っている人/自然科学を勉強し、社会のさまざまな分野で貢献したいと思っている人、さらに学問を究めるため大学院を目指すことも期待します。
 
・第一に、試験問題の内容は、高等学校教育段階において達成を目指すものと軌を一にしています。
 
第二に、入学後の教養教育に十分に対応できる資質として、文系・理系にとらわれず幅広く 学習し、国際的な広い視野と外国語によるコミュニケーション能力を備えていることを重視し ます。そのため、文科各類の受験者にも理系の基礎知識や能力を求め、理科各類の受験者にも 文系の基礎知識や能力を求めるほか、いずれの科類の受験者についても、外国語の基礎的な能 力を要求します。
 
第三に、知識を詰めこむことよりも、もっている知識を関連づけて解を導く能力の高さを重視します。

受験生はこのアドミッション・ポリシーに自分がいかにマッチするかを、志望理由書や面接で積極的にアピールする必要がある。
 
AO入試の実施時期は推薦や一般より早く8月1日からエントリーが始まり、11月から合格発表がある。このことで、不合格だった場合も、AO入試の二次や一般入試も受けることができチャンスが広がることになる。
 
一方で、AO入試は入学者の一部に学力不足が見られるという批判もあった。そこで、国公立、私立問わず、2020年度の高校3年生からは学力をみる試験の実施も義務付けられる予定。これまで以上にさまざまな視点で資質や能力を問われることになりそうだ。
 
以下は、AO入試で合格を果たした先輩。具体的な試験内容や対策法のアドバイスを聞いてみよう。
 

AO入試体験談☆大学編:えいじくん

 
AO入試って?基本からAO入試体験談まで

進学した大学:☆AO入試にて合格☆慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 環境情報学部1年生
 
AO入試で合格した大学:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 環境情報学部

AO入試受験までのストーリー

小さいころから夏休みなどに祖母の家を訪ねて畑仕事を手伝うのが好きだったが、それだけでは飽きてしまい、小学4年生のときに家の近所に畑を借りてもらう。
 
独学でいろいろな作物を作り、写真を撮り記録をつけ続けた。
 
肥料や自然農薬も自分で調合し、作物の収穫具合などを比較検討した。
 
福岡県立修猷館高校に進学。
 
周りもそうだったし、親もそう思っていたので、ごく自然に一般入試受験での国立大学進学を目指す。
 
東京大学、京都大学への進学を目指すクラスだった。
 
一方、自分は農業が好きだけれど、仕事としては何をやりたいのかを考えるようになる。
 
農家をやりたいわけではないし、ずっと大学で研究職をするのも違うと思った。
 
もっと幅広く学び、人から感謝されるような人間になりたい。例えばバイオミメティクス(生物模倣)のような分野。
 
高2の冬頃から慶應SFCのことを調べ始め、文理の枠を超えて幅広く学べるという特色に惹かれる。
 
1人で九州から東京に行って大学を訪ね、準備を始める。
 
慶應SFCはAO入試と一般入試による入学者が半々だが、自分は好きなことを突き詰めてきた自信があり、ぜひAO入試にチャレンジしたいと思った。
 
全員が一般入試を受ける高校のため、担任の先生はAO入試のノウハウはわからないとのことだったが、AOで受験。合格。
 
そのまま勉強は続けセンター試験も一応受けたが、慶應SFCで学びたいという気持ちはブレなかった。
 
必修科目もない大学なので、農業系はもちろん、生物や法律など幅広く学んでいる。
 

どんなAO入試だったか

1次は書類選考で、調査書のほか、志望理由書(2000字)、自由制作の自己アピールポイントなどを提出。
 
2次は面接。
 

どんな対策をしたか

塾には通わずにネットなどで情報収集しながら独自に対策。
 
自己アピールの書類については、自分の取り組んできたことを書き出し、畑や作物の記録写真なども添えて、パワーポイントを使ってA4用紙30枚にまとめた。
 
それ以外に2枚に簡潔にまとめた自己PRも添えた。
 
また、AO入試専門の塾が出版している本を購入し、志望理由書の書き方などを参考にした。
 
高校は一般入試受験オンリーの学習体制を敷いていたが、その勉強はそのまま続けた。
 

えいじくんからの後輩にメッセージ

これから受験する人は、何のためのAO入試なのかということを考えてみるといいと思います。
 
すると、大学が考える価値観、大学が求める学生像といったことがいかに重要かがわかると思います。
 
ぼくは大学の募集要項にあった、受験生に向けてのメッセージを暗唱できるくらい徹底的に読みました。
 
何度も何度も読み、志望理由書に、そこに書いてあることをすべて入れ込みました。
 
また、AO入試対策のための本もかなり読み込んで、何を言っているのかを分析。
 
それを、自分の取り組んできたテーマに変換して志望理由書を書き、面接試験に挑みました。
 
面接は緊張感のある雰囲気。
 
受験生が何をテーマにしているかによって、その分野に詳しい教授など3人が面接し、こちらの言うことをかなり否定されます。
 
それでも食らいついてディスカッションを重ねました。
 
泣きながら面接会場から出てくる受験生もいました。
 
あとで合格した同級生たちと話をすると、雰囲気は面接官によってかなり違うようです。
 
実はぼくは大学の面接以前に、慶應義塾大学を受験することで父を説得するほうが大変でした。
 
緊張もしました。
 
そのためのプレゼンシートも作り、国公立大学絶対主義の父を必死で説得。最後には何とか受験を許してもらえました。
 
いずれにしてもAO入試には、その大学で学びたいという強い意志が必要だと思います。

 
【AO入試についての監修】
AO入試って?基本からAO入試体験談まで
渡辺敦司(わたなべ・あつし)
●1964年北海道生まれ。
 
1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。
 
教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
 
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/