大学院とは?大学との違い、学ぶ内容や種類、大学院に行くメリットetc.わかりやすく解説!
大学院とは、大学の学部で学んだ分野について、さらに専門的に研究を行う教育機関のこと。大学院に行くには、大学の学部で学び「学士」の学位を取得することが必須となる。
大学院とは具体的にどんなところで、大学卒と大学院卒とでは、その後の進路にどのような違いがあるのだろうか?
リクルート進学総研、主任研究員の乾 喜一郎さんに聞いてみた。
さらに、先輩たちに聞いた行くことのメリット・デメリットも含めて知っておこう!
目次
大学院とは何をするところ?
※大学院では自ら学び探究する姿勢が求められる
大学院は、専門分野について深め、その道のプロフェッショナルになるための研究をするところ。
大学の学部を卒業した人(社会人含む)が、「もっと研究したい」「もっと専門的な知識を身につけたい」と思ったときに進学する場所だ。
高校生にとっては少し先のことだけど、将来の選択肢の一つとして、ぜひ知っておこう。
大学と大学院の違い
大学が広く基礎的な知識を身につけ、そこから専門的な知識や能力の習得を目的としているのに対して、大学院は、さらに専門的な知識や能力の習得を目的としている。つまり、大学院とは、専門分野について大学の学部よりさらに深く学び、研究する、教育・研究機関を指す。
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大学院は、スペシャリストになるための場所
「大学院は、好きなこと、興味のあることをとことん突き詰められる、ものすごく楽しい場所」と、リクルート進学総研主任研究員の乾さんは言う。誰かに教えてもらうという受け身ではなく、自ら学び探究する姿勢が、大学以上に求められると言えるでしょう。
それゆえ、甘い気持ちで進学すると後悔することになります。
一方、興味・関心の近い仲間と議論をしたり、マニアックな話をしたりしながら学び合える場は、好きな人にとってはたまらないものでしょう。
分野によっては大学院を卒業していることが前提になる職種もあるので、将来、就きたい仕事がある人は、要件などをあらかじめ調べておくことをおすすめします」(乾さん)
グローバルに活躍したいなら、大学院へ!
また、「世界を舞台に活躍したいなら、大学院に行ったほうがいい」と乾さん。今や大学院卒は、世界的なスタンダードになっていると言う。
世界的に見れば、大学院卒であることは、ハイクラスの仕事に就くための“パスポート”なんです。
修士や博士の学位を持っているかどうかで、年収や雇用の条件も大きく変わってきます。
グローバルに活躍したいと考えている人は、大学院進学も視野に入れておきましょう」(乾さん)
大学院の種類
日本の大学院には、大きく分けて2種類ある。研究者の育成を目指す研究系の大学院と、高度専門職業人の育成を目指す専門職大学院だ。
それぞれについて解説していこう。
研究系の大学院
研究者を育成することを目的とした大学院で、国内の大学院の多くが、このカテゴリーに属する。大学院生は専門分野の研究に取り組み、最終的には論文(修士論文・博士論文)としてまとめ、発表する。
この論文が審査に通ると、修士・博士などの学位を取得できる(大学院卒と認められる)。
学部を持つ大学院
学部を持つ大学院とは、基礎となる学部組織のある大学院のこと。例えば、「文学部(学部)」を持つ「文学研究科(大学院)」などが挙げられる。
大学の学部(学士課程)の学びを発展させながら、高度で専門的な研究や教育を行う。
独立研究科
基礎となる学部組織を持たないのが独立研究科。多様な学部の卒業生を受け入れ、分野を超えた研究が行われるのが特徴。
大学院大学
学部がない大学院だけの機関が、大学院大学。総合研究大学院大学、政策研究大学院大学など国立の大学院大学のほか、私立の大学院大学もある。
専門職大学院
高度で専門的な知識や能力を磨き、実務の場で活かせる「高度専門職業人」を育成するのが専門職大学院。法曹界のプロを養成する「法科大学院」、教員を養成する「教職大学院」をはじめ、会計、臨床心理、ビジネスなどの分野で設置されている。
研究系の大学院とは異なり、修了に際して、基本的に論文の提出は不要。
卒業後はその分野の専門職に就くことを前提としている。
専門職大学院で学ぶことが資格取得の条件になっているケースや、専門職大学院で学ぶことで資格試験が一部免除されるケースもある。
大学院の修士課程と博士課程の違い
※大学院の修士課程と博士課程の違いを理解しよう
大学院には「修士課程」と「博士課程」がある。一般的に修士課程(「博士課程前期」と呼ばれていることも)は2年、博士課程(「博士課程後期」)は3年。
修士課程とは
研究系の大学院における修士課程(博士課程前期)では、研究者を目指すうえでの基礎を学ぶ。自分で設定したテーマの研究に取り組み、最終的に「修士論文」を執筆・提出する。
この論文が審査に通ると、「修士」(マスター)という学位を取得できる。
卒業後は、就職、もしくは博士課程に進学する。
その場合であっても、大学院で身につけた新たな課題を発見し設定する力や論理的思考力、論証の技術は、仕事を進めていくうえで大きく役立ちます」(乾さん)
2年間をかけて専門的な知識やスキルを実践を通して身につけ、卒業後はその分野の専門職に就く。
博士課程とは
研究系の大学院において修士を取得したのち、本格的に研究者を目指す場合には博士課程(後期)に進学する。引き続き研究に取り組み、博士論文を執筆し、審査に通ると「博士」(ドクター)という学位を取得できる。
なお、学位を取得しないまま課程満期修了というケースもある。
卒業後は、大学教員や研究所の研究員など研究者になるケースが多いですが、高い専門性を活かしてグローバルに活躍する人もいます。
日本企業では少ないですが、海外の企業では文系理系を問わず多くの博士号取得者が経営陣や管理職として活躍しています」(乾さん)
大学院入学までのステップ
大学院に入学するためには、大学の学部で学び、「学士」の学位を取得することが必須(ただし高校卒でも専門職経験などによって入学資格が認定される場合もある)。大きく分けると、大学を卒業してそのまま大学院に進学する道と、大学を卒業して社会人として働いたのちに、大学院に進学する道がある。
学部生向け入学試験は夏から
学部生向けの入学試験は、夏〜秋にかけて行われるのが一般的。試験に向けての準備を考慮し、遅くとも大学3年生の後期には大学院に進学するかどうかを決めることになる。
社会人向け入学試験は遅め
一方、社会人向けの入学試験は、学部生向けの試験よりも遅めに設定されているケースが多い。仕事を辞めて大学院に入学する人もいるが、働きながらでも学べるよう配慮されている大学院も増えてきた。
入試科目も学生より軽減されているため、入学のハードルが低いのも魅力だ。
どこの大学院に行くかを決める
学部生の場合は、在籍する大学の大学院に進学するのか、それ以外の大学院に進学するのかを検討する。社会人の場合は、授業の時間帯や立地、オンライン活用など、働きながら学べるかどうか、授業の時間帯も重要になります」(乾さん)
大学院入試の主な種類
一般入試
学部生が受ける一般入試は、専門科目、英語(外国語)、面接・口述試験、研究計画書による評価が一般的。なかでも重要なのが、大学院で何を研究したいかを記した研究計画書だ。
具体的な研究テーマやそれに関する先行研究について言及し、自分がどういう視点でアプローチしたいのかをまとめて指定の形式で提出する。
社会人入試
社会人入試では、専門科目と英語(外国語)が課されず、面接・口述試験、研究計画書(あるいは志望理由書)のみのケースが少なくない。そのぶん、社会人としてどのような経験をし、どのような課題を感じてきたかなど、大学院入学の背景についてしっかりと語れるようにしておく必要がある。
学校の資料を取り寄せて調べる
大学院に行くメリットは?先輩に聞いてみた!
※大学院に進学した先輩たちの意見を聞いてみよう
大学院に進学した先輩たちに、大学院に進学してよかったことを聞いた。
将来の幅が広がる! 就職に有利!
「就職活動がかなり有利になった。分野にもよるが、自分の専攻では主にメーカーで重宝される能力を伸ばせたので、面接官の反応も良く、スムーズに複数社の内定を得ることができた。」(物理学系大学院生)
「大学院に進学したことで、就職の際に企業選びの幅が大きくなった。自分は何がやりたいのかをじっくりと考える時間をもてたことも、非常に有意義だった。」(機械工学系大学院卒業生)
「将来の選択肢が広がった。理系では修士課程まで進むのは当たり前になってきているので、就職先の選択肢を増やすには、修士課程に進むことが必要だと思う。」(薬学系大学院生)
仲間ができる! 人脈が広がる!
「自分の興味がある分野についての知的好奇心を満たせる。そして、同じ分野に興味をもつ人とも知り合える。大学院以外の場では、専門分野について友人と盛り上がれることはなかなかない。」(国際学系大学院生)
「大学院では、多くの仲間と出会えた。自分とは異なる考えの人たちとの出会いは、多様な考え方を学ぶ機会をもたらしてくれた。また、仲間の意見を聞いたり、仲間と協力したりすることで、自分一人ではできなかった経験ができた。」(農学生命科学系大学院生)
専門性+αの力が身につく!
「学部時代に比べて、物事を多段的に考えられるようになった。大学院では多角的な視点を探る訓練をするため、日常においても、流れてきた情報を鵜呑みにせず自ら考えて判断するようになった。」(都市社会学系大学院生)
「専門的な知識が得られたのはもちろん、ものの考え方(理論的な思考回路)や他人に聞いてもらうための話し方(プレゼンのスキル)など、社会に出てからも通用するスキルが得られた。」(自然システム系大学院卒業生)
大学院に行くデメリットはある?先輩に聞いてみた!
続いて、大学院に進学することのデメリットを聞いた。社会に出るタイミングが遅れる
「周りの友だちは就職して働いているのに、自分だけ学生で取り残されている焦燥感がある。また、働いている様子を聞き、自分にそれができるのか不安でもある。」(機械工学系大学院生)
「社会に出るのが2年遅くなる。社会人1年目だが年齢は25歳なので、即戦力として扱われることがあり、プレッシャーに感じる。また、年下の先輩や上司もいるので、気まずく感じることもある。」(材料工学系大学院生)
「社会に出るのが遅れる。世界が狭くなる。大学院では基本的にうちにこもって研究を行うことが多く、外部とのつながりは学会や共同研究などが中心で、見識が狭まる恐れもあると感じる。」(応用科学系大学院卒業生)
経済的な不安がある
「文系院卒は、学部卒で就職した人と比べて生涯年収が低くなる場合が多いのではないかと思う。博士後期課程まで進学すると、国民年金なども払えない期間が長くなるので、将来の経済的な不安が大きい。」(国際学系大学院生)
「金銭のやりくりが大変。2年間、学生期間が延長されるため、その分の学費や奨学金がかさんでしまう。また、研究活動が忙しく、学部時代のようにアルバイトができないため、金銭的に困難な生活を強いられた。」(化学系大学院生)
「経済的な負担が増えた。奨学金で授業料や生活費を工面していたが、卒業後も借金返済に追われて苦労している。」(教育科学系大学院卒業生)
忙しい。精神的に追い詰められる
「休みがない。土日も研究室に出ることがあり、学生だから平日遊べるということもない。バイトもできず、お金が貯まらない。有給休暇のある社会人がうらやましくなる。」(応用生命科学系大学院生)
「自分から動かなければ何も進まず、思っていた以上に自主性が重要であると進学してから気づかされた。自分の研究に悩んだときは、なかなかモチベーションが上がらず先に進めない。」(都市社会学系大学院生)
「分野によっては専門的すぎて、大学で研究者にでもならない限り役に立たない場合がある。社会人になってから役立つ・使えるスキルや知識を求めるのであれば、必ずしも大学院進学は最適ではない。」(法学系大学院生)
まとめ
※将来突け詰めて勉強したいことがある人は大学院を検討するとよい
大学院がどんな場所か、イメージが湧いてきただろうか。大学院進学で得られるメリットは大きい一方、先輩たちのアンケートからは、さまざまな負担があり、軽い気持ちで行く場所ではないことが見えてきた。
性格や興味・関心のベクトルにより、向き・不向きがあるのも事実だ。
それでも、大学院に行ってみたいと心躍った人は、ぜひとも目指してほしい。
最後に、乾さんからメッセージをもらった。
一方、大学生の段階では興味・関心が一つに定まらず、いろんなことに挑戦したいという人もいるでしょう。
お伝えしてきたように、大学院には社会人入試という道があり、近年は働きながら大学院で学ぶワーカーも増えてきています。
判断を急ぐ必要はありません。
大事なのは、大学院という選択肢があることを知っておくこと。
将来、深く掘り下げたいテーマが出てきたときには、ぜひ、挑戦してみてほしいと思います」(乾さん)
乾 喜一郎さん
リクルート進学総研 主任研究員(社会人領域)
一貫してキャリアに関する領域に携わり、2006年「ケイコとマナブムックシリーズ」編集長。
社会人大学院生をはじめ3000名を超える社会人学習者の事例を取り上げる。
2019年現職。学習者にとって意義のあるリカレント教育・社会人学習のあり方について提言を続けているほか、文部科学省等のリカレント教育推進施策の検討に参画している。
取材・文/笹原風花 監修/乾 喜一郎 構成/寺崎彩乃(本誌) ※2023年11月一部追記
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