法学部を目指す人もそうじゃない人も…知っておきたい民法改正

今、国会で民法の改正について審議しているのを知っているだろうか。民法の大改正は、なんと120年ぶりということで、新聞やテレビでもよく取り上げられている。

 

なぜ、今になって民法を改正することになったの? そして、民法改正で私たちの生活って何か変わるの? 高校生でも知っておきたい、民法改正の基礎知識を紹介したい。

 

■そもそも民法ってなんなの?

 

民法とは、市「民」のことについて定めた「法」律のこと。

 

1896年(明治29年)に「総則」「物権」「債権」、1898年(明治31年)に「親族」「相続」が公布された。その後、「親族」「相続」の2つについては、戦後の新憲法のもと、「個人の尊重」と「男女平等」の観点から全面改正されたものの、それ以外の部分については、明治時代に制定された民法のままだった。

 

それを、社会や経済の変化に対応させつつ、もっとわかりやすいものとするという観点で改正することになったのだ。

 

法学部を目指す人もそうじゃない人も…知っておきたい民法改正

 
 

■わかりやすく公平に

 

これまでの民法は、表現も定められている内容も現代の感覚と異なる部分が多く、とにかくわかりにくい。その代表が債券に関する「時効」。この場合の時効とは、法律上、一定期間がたつと貸したお金・払ってもらっていない代金などを請求する権利が消えることを指している。

 

現在の民法では、レストランなどの飲食店の代金やホテル・旅館の宿泊料などの時効は1年、お店で購入した商品の代金は2年、医師の診察料は3年といった具合に、貸した側の職業によって時効の期間が異なっている。そのため、もっとわかりやすく、職業を問わずに平等な法律を望む声が多かったのだ。

 

そこで、時効については5年間に統一することで、誰もがわかりやすく公平な民法にしようとしている。

 

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■法律の改正は手間と時間がかかる

 

ところで、なぜ、120年ものあいだ民法は改正されなかったのだろう?

 

そもそも法律を改正するには長い時間と手間がかかるが、特に民法は私たち国民の暮らしに大きく関わっているだけに、関係する省庁も数多く、その影響力も広範囲におよぶ。

 

利害が相反する業界や団体もあり、たくさんの反対意見も出された。そのため、今の時世に則しながらも誰にでも公平で長く使える民法を目指して、今回は改正案を出すのに約8年間も費やしている。そして、内容をより詳しく検討するための部会も約100回開催され、9年かかってようやく国会で審議されるところまでたどり着いた。

 

法学部を目指す人もそうじゃない人も…知っておきたい民法改正

 
 

■私たちの暮らしにも密接な新民法は

 

現在、国会で審議されている民法はおよそ200項目にもおよぶ。その中で、高校生の暮らしにも密接に関係するものといったら…例えば、お店やインターネットで購入した商品に関すること。

 

商品が故障していたりした場合、これまでの民法では、「売買契約(売り買いの約束)を解除する」「損害賠償(被った損失を埋め合わせてもらうこと)の請求をする」としか記載されていなかった。そのため、売買契約を解除したあとの代金の支払いなどでもめ事になることも少なくなかったのだ。

 

そこで、購入する人を保護するために、新しい民法には、修理を請求したり、品物を取り替えてもらったり、代金を安くするよう交渉できることが明記される予定だ。

 

法学部を目指す人もそうじゃない人も…知っておきたい民法改正

 
 

新しい民法は、2018年ごろの施行を目指している。今後のなりゆきに関心をもって見守っていこう。