小論文の書き出し【例文】19選。点が取れる!小論文の書き方マニュアルⅢ
小論文の基本について解説した「小論文の書き方完全マニュアル」。オリジナリティのある視点の設定の仕方や序論の書き方について解説した「マニュアルⅡ」。
そして、今回の「マニュアルⅢ」では小論文の書き出し例文を、解説付きで紹介していく。
ぜひ、3記事すべて読み、小論文対策を万全なものにしてほしい。
目次
まずは小論文の基本と書き方を理解しよう
小論文の学習は初めて、苦手意識があるという人は、まずはこの「書き方完全マニュアル」で、小論文の基礎について理解しよう。小論文を書く前に整理すべきこと、序論、本論、結論の書き方、原稿用紙の使い方・ルールなど、小論文を書くうえで必ず押さえておきたことを、初心者でもわかりやすいように解説されている。 小論文の序論、本論、結論の中でも、重要な役割を果たす序論。
小柴先生も「最も重視して対策を行うべき」と話す序論の書き方について、より詳しく解説されている。
さて、小論文の基本や書き方について理解したら、いよいよ問題演習。
たくさんの実例を通して、理解を深めてほしい。
以下から、設問のタイプ別に書き出しの文例と書き方のポイントを小柴先生が解説していく。
序論のパターンを頭に叩き込み、実際に試験で小論文を書く際に自分なりにアレンジできるように練習しておこう。
小論文の書き出し実例:序論で結論まで書いてしまってもOK
(注1)文章は省略しています。
(注2)要約はすでに別の問いとして済んでいるとします。
それゆえ、対面的な人間関係を重視する生き方が求められると考える。以下詳しく論じる。
“アイデンティティ"という哲学的で抽象度の高いテーマは、取り組みやすそうにみえて意外と難しい。
ノープランで臨むと、小論文自体も漠然としたあいまいなものになりがち。序論サンプル1は“情報化社会"という切り口でテーマを明示することで具体的かつエッジの効いた序論になっている。
「この小論文で展開されるのが、“対策"や“可能性の指摘"ではなく、“問題の指摘"であることを最初に示している点もグッド。読み手は何を書こうとしている文章なのかを序論で把握できます」
序論サンプル1と同様に、“情報化社会"という視点を採用しているが、こちらはポジティブな可能性を指摘するパターン。ちなみに意見の種類が、“問題の指摘"にとどまっていても、“可能性の指摘"にまで及んでいても点数には関係ない。重要なのは論理に説得力があるかどうかだ。
「なお、序論サンプル1もそうですが、最初に結論まで述べている点もポイントですね。この方法は有効です。結論は最後までとっておいたほうが文章構成上効果的と考える人もいるかもしれませんが、エッセイや小説ではないので読み物としてのおもしろさを追求する必要はありません。また、結論を先に書く方法には、時間切れで最後まで書き切れなかったときに“結論がない小論文"になってしまうリスクを避けられるというメリットもあります」
小論文の書き出し実例:特定の職業の視点から論じる手法もある!
学問関心・職業関心の視点を設定するパターン。自分が実際に医療者として働いていなくても、医療関連の職種を志望していて、仕事について関心をもっていれば、このような角度から切り込んでいくこともできる。
「“アイデンティティ"というテーマからなかなか“医学・医療者"という視点は出てきません。オリジナリティーの項目で点数を稼げる序論です」
こちらはサンプル1~3とは異なり、意見として“対策"まで論じるパターン。
「ただし、問題点を指摘してその対策まで論じる場合、書くことが多すぎて字数がオーバーしてしまうリスクもあります。対策に関していいアイデアがあっても、シミュレーションの段階で書き切ることに不安があれば、問題の指摘にとどめる作戦に切り替えるのもありです。序論がしっかり構想できれば、そのようなシミュレーションもしやすいですよ」
小論文の書き出し実例:医学系のテーマをあえて“教育"の視点で論じる手法も
(注1)文章は省略しています。
(注2)要約はすでに別の問いとして済んでいるとします。
感染症という医療系のテーマに対して、“学校教育"という角度を変えた視点で切り込んでいる点がポイント。
「医療分野が苦手で教育分野が得意なら有効なやり方。テーマそのものに精通していなくても、視点の設定次第でこのように自分の得意分野に引き寄せることができます」
序論サンプル5と同じように学問関心・職業関心の視点を設定して自分の得意分野に引き寄せているパターン。
「正攻法で対策を論じようとすると、該当する分野の知識がどうしても必要になりますが、この方法をとれば医療分野に詳しくなくても対策まで論じることが可能になります」
こちらは“格差の拡大"という現代社会の視点で掘り下げることでオリジナリティーをもたせるパターン。
「感染症という一見絞られたテーマでも、視点の設定次第で、ここで紹介したようにさまざまな対策を論じることができます。テーマだけで“苦手分野だ"とあきらめず柔軟に考えましょう」
小論文の書き出し実例:シンプルな設問ほど視点設定が重要になる
特定の専門分野に関する知識が必要とされず、一見誰にでも論じやすい設問に思えるが、こういう設問こそ視点の設定がより重要になると小柴先生。
「答えやすい反面、切り口を絞り込まないと誰でも語れる一般論に終始する恐れがあります。この序論は“異文化理解"“多様性"という視点を設定することで切り口がシャープになっています。設問に沿って賛成か反対かを序論で示すことも、当然ながら大事なポイントです」
こちらは“政治・公共性"という視点からアプローチしたパターン。
「“政治・公共性"はこの社会に生きる誰にでも関係すること。日頃から社会に対して関心をもっていれば、志望学部・学科に関係なく採用できる“使える視点"の一つですね」
“環境問題"という視点を設定して、自分の得意分野にうまく引き寄せている序論。
「日頃から環境問題に関心をもっている人なら、この視点設定さえできれば、何を書くべきかイメージしやすくなるはず。抽象度の高いテーマほど、学問関心・職業関心の得意分野をもっていることが強みになるんです」
小論文の書き出し実例:現代社会の主要なキーワードは理解しておこう
現代社会の視点から可能性・意義・重要性について指摘することを示した序論。比較的オーソドックスなアプローチだ。
「“国際化"や“少子化・人口減少"は現代社会を読み解くうえでの重要なキーワードなので、しっかり勉強して語れるようにしておくと、いろいろなテーマに対して応用することができます」
思い切って“教諭の給与"に絞り込んでいるのがこの序論のポイント。問題文では民間企業に限定する記述はないので、このアプローチでもまったく問題ない。
「これも自分の得意分野にうまく引き寄せている序論です。このように受験生にとって身近ではないテーマでも、視点設定次第で攻略は十分可能なんです」
“社会学"“ジェンダー"という学問関心・職業関心の視点から問題点と可能性の両方を指摘することを示した序論。
「一つの小論文で“問題点の指摘"と“可能性の指摘"の両方を盛り込むことはよくあります。その点をこのように序論で明示しておくと、何をゴールとした小論文なのかが読み手にスムーズに伝わりますね」
小論文の書き出し実例:一つの社会問題でもさまざまな対策が発想できる
社会問題に対して現実的な対策を論じさせる問題はなかなかハードルが高い。
「あまりに凡庸な対策、根拠が弱い思いつきレベルのアイデアでは通用しません。これも自分の得意分野にうまく引き寄せて(この場合は“法律")、具体例やデータを盛り込むことが大きなポイントになります」
序論サンプル14は“法令"という切り口から攻めているが、こちらは“教育&メディア"という切り口を設定している。こちらのほうが法律分野より身近で書きやすいという人も多いかもしれない。
「序論サンプル14とはまったく違う角度からのアプローチ。このように視点の設定次第で同じテーマでもさまざまな対策を論じることができます。正解が一つではないのが小論文。柔軟に発想すれば、オリジナリティーのある論が展開できるはずです」
こちらは“テクノロジー"を活用した対策の提案。
「最新のテクノロジーに関してある程度の知識がある場合は、この切り口も有効ですね。ただし、知識がなく、根拠を具体的に語れないのであれば、『こんなことができたらいいな』という単なる空想論に陥ってしまうリスクもあるので注意しましょう」
小論文の書き出し実例:図表分析型の設問でも序論の基本は同じ
(注1)図表は省略しています。
(注2)図表分析はすでに別の問いとして済んでいるとします。
図表分析型の設問は、まず図表をしっかりと読み解き、そこに表れている傾向をつかみとることがポイント。それができれば、続くアプローチはほかのタイプの設問と同様だ。
「普通に考えると“健康・栄養"あるいは“教育"の問題としてとらえがちなテーマですが、そこに“心理"という視点を取り入れている点がユニーク。うまく自分なりの視点設定ができている序論です」
朝食を食べない習慣が広がった原因はさまざまなものが考えられるが、序論サンプル18は“情報化社会"という点に絞っているところがポイント。
「複合的な原因が考えられるテーマは、視点を絞らないと話が広がりすぎやすい。“情報化社会"という切り口に絞るのは得策です」
こちらは“経済・経営"の視点を採用したパターン。序論サンプル17、18とはまた違ったオリジナリティーのあるアプローチだ。
「例えば、『医療や教育などの分野はあまり得意ではないが、ビジネス関連は比較的得意』という人なら十分あり得るアプローチですね。序論サンプル17、18は原因の分析を目的としていましたが、このアプローチなら、対策あるいはその可能性を論じるほうがいいでしょう。視点の設定次第で意見の種類も変わってくるのです」
「これなら自分にも書けそう!」という感触が得られた人もいるのでは?
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監修/小柴大輔 構成/寺崎彩乃(本誌)
※2024年10月更新