読書感想文のコツ!時間のない高校生のための裏ワザも紹介

高校生を悩ませる夏の定番宿題「読書感想文」。
 
書き方もわからないし、そもそも「何を読めばいいのかわからない!」という人も多いのでは?
 
そこで、『文体の科学』『文学論(F+f)+』など、文章にまつわる本を多数出版されている文章のプロ・山本貴光先生に、読書感想文のための本選びから書き方まで教えてもらった!
 
この夏はワンランクアップした読書感想文を書いちゃおう!
 


 

 

まずは本選び 読みやすい&書きやすいジャンルとは?

おすすめは「謎」を考える本

とっつきやすい本は謎のある本

読みやすい本がどのようなものか、まず考えてみよう。
 
実は、難しそうに思える学問に関する本はとっつきやすい可能性が高い。
 
「宇宙はどうなっているのだろう」「素数にはどんな性質があるのだろう」「小説を読むとき、人は何を考えているのか」「たくさんの人が幸せに生きるしくみとは」など、研究者が読者と一緒に謎を探求しようとして書いていることも多いからだ。
 
その謎をおもしろがれればOK!
 

<山本先生より>
 
本を読むとき、著者がどんな謎に挑んでいるかに気をつけてみるといいですね。
 
その謎に興味をもてればこっちのものです。
 
「おもしろそう!」とピンときたら、楽しく読めます。
 
そういう意味では、研究者の書いたエッセイもよいですね。
 
古くは寺田寅彦(随筆家としても知られる戦前の物理学者)のように名エッセイストでもある研究者が書いたものは、そうした謎の入り口をやさしく話してくれているのでおもしろいですよ。

 
まずは本選び 読みやすい&書きやすいジャンルとは?
 

近くの書店や図書館で「どんな謎があるのかな」と並んでいる本を一覧しよう

理系、文系の壁など自分の興味にこだわりすぎず、近くの書店や図書館で「どんな謎があるのかな」と並んでいる本を一覧してみよう。
 
長時間でなくても、10分間通り過ぎるだけでもかまわないから、背表紙だけでもどんどん見るのがコツ。
 
どんな本があるのかがわかるようになったら、さらに大きな書店や大きな図書館をぐるぐると歩きまわってみよう。
 

<山本先生より>
 
書店や図書館は謎の宝庫です。
 
歩き回って探検しましょう。
 
はじめは何も思い浮かんでなかったとしても、並んでいる背表紙を見て歩いているうちに、「空は何で青いのかな」「そういえば感情って何だろう」「スマホってどういうしくみで動いてるのかな」と、気になることが出てきたりします。
 
そうなれば大成功です。

小説やラノベでも書ける?

「どうしてこのページで笑ったんだろう」「どうしてここで泣いたんだろう」を記録しておけばOK

小説の感想文を書くのは、実はとても難しい作業。
 
小説では作者がどんな問題を問いかけているかをテーマに考えることが多くなる。
 
人間関係や状況の変化に注目すればしっかり書けるが、それは高度なテクニックを要すること。
 
夏休みの宿題の読書感想文としてはハードルが高いようだ。
 

<山本先生より>
 
小説を読んでいるあいだに、思わず笑っちゃったり切なくなったり、いろんな気持ちになりますよね。
 
そうした自分の心に生じた変化をつかまえて記録しておくのがおすすめです。
 
それで、「どうして私はここで笑ったんだろう」と考えてみるわけです。
 
その理由やしくみを書けば感想文になります。

まずは本選び 読みやすい&書きやすいジャンルとは?
 

課題図書から選ぶ方が良い?

興味のある本を選ぶことが大切。最初から1冊に絞らず、興味をもてるものを何冊か選ぼう

学校で参考として課題図書が紹介されることもある。
 
それを読むなら本選びは楽だが、決まったなかから選ぶことで、苦しみを味わうことも。
 
やはり興味のある本を選ぶことが大切。
 
おすすめは、最初から1冊に絞らず、興味をもてるものを何冊か選んでそのなかから選ぶこと。
 
気になった本が見つかったら数冊選んで持ち帰り、読まずに積んでおいて、1冊ずつめくってみるだけで最初はOK。
 
めくるだけでも、気になるキーワードは頭の片隅に残る。気になったものを「本日のベスト3」として候補に残そう。
 

<山本先生より>
 
最初に本を選ぶときは、表紙のデザインとかタイトルが気になるから、ぐらいでOKです。
 
そうしたら、まずはじっくり読まなくてもいいので、本を手にとってパラパラめくってみましょう。
 
意外とそれだけでもいろんなことが目に飛び込んでくるし、気になるページがあったらちょっと立ち止まって試し読みしてもいいですね。
 
今のところは、電子書籍より紙の本が圧倒的に便利です。
 
本の全体像をつかみやすいからです。
 
それから、本は買って自分のものにして読むといいですね。
 
書き込みをしたりページを折ったり自由に使えるし、本が自分用にカスタマイズされます。
 
まずは薄めの文庫でもいいので、試しにそんなふうにして自分のものにしてみましょう。 

本を読もう 読書感想文を書くための読み方とは

メモを取ろう

読みながら書いたメモを整理するだけで、感想文はすぐ書ける

本を読みながらメモをとろう。
 
メモすることで世界に1冊の自分だけの本が完成!
 
なくさないように本そのものに書きつけてしまってもOK。
 
バーッと読んでメモを整理するだけで感想文はすぐに書ける。
 
時間を節約したいときは1章ずつ立ち止まって要約しよう。
 
要約するときは、著書の言っていることを自分の言葉で言い換える「パラフレーズ」という作業を行おう。
 
これで自分の言葉が生きる感想文が書ける!
 

<山本先生より>
 
例えば、10章からなる本をいきなりまるごと要約するのはプロでも大変。
 
まずは1章ずつ、それでも難しければ1ページごとでもいいですね。
 
これができれば、その本は読めているようなもの。
 
「こういう本なんだよ」という説明ができますから。
 
内容を自分の言葉で要約できたら、読書感想文は半分書けたも同然です。

線を引こう

多色ペンなどで色分けをしておくと便利

気になった箇所には線を引こう。線を引きたいのは下記の3カ所。
 
①疑問、今はわからない「わからないポイント」
 
多くの本では、ずっと前に亡くなった人や自分とは関係のない他人が考えたことを読んでいるので、すんなりとはわからないはず。
 
どこがわからないかをマークしよう。
 
②自分で気がついた本の核(コア)となる部分
 
読んでいるうちに「ここがこの本のキモだ!」とわかる瞬間があるはず。
 
そこを逃さずにしっかりマークしておくこと。
 
③読んで思い浮かんだこと
 
中身を理解するというよりも「読んで何が浮かぶか」「誰かが何を考えたか」に本を通じて触れることが大切。
 

<山本先生より>
 
決まったルールがあるわけではないので、自分で自由に工夫するといいですね。
 
あとで読書感想文を書くために、気になるところに線を引いたり、メモをとったりするなら、多色ペンで「疑問は赤」「要約は青」などと色分けをする手もあります。
 
こうしておけば、感想文を書くときに便利です。
 
色分けの代わりに記号を使うのも良いですね。
 
例えば「ここはわからない」という箇所には「?」と書いたり、「いいね!」というページには「!」と記しておいたり。

本を読もう 読書感想文を書くための読み方とは
 

一回目に読むときは書いても書かなくてもかまわない

本のはじを折る「ドッグイヤー」やしおりで気になったページを残しておこう

メモをとることや線を引くことに気をとられすぎて、読むことがおろそかになったら本末転倒。
 
気が散るようならまずはとにかく読み進めよう。
 
ただし、その場合も、なんとなく気になったページは、本のはじを折る「ドッグイヤー」という方法や、しおりを使って、あとでわかるようにしておくのがコツ。
 

<山本先生より>
 
メモや線引きが気になりすぎて先に進まないなんて場合には、読むことに集中しましょう。
 
あとで気になったページがすぐわかるように、付箋をつけたりページを折ったりしておくといいですね。

一読ではわからなくてあたりまえ

「わからないからおもしろい」「知りたくなる」が大切

一読で本に書いてあるすべてを理解することは不可能。
 
ただ、まるでわからなくても困りもの。
 
ほどほどにわかる本を見つけるよう心がけよう。
 

<山本先生より>
 
本を読むとき、はじめから全部わかることを目指す必要はありません。
 
「わからないからおもしろい」という気分が大切です。
 
わからないからこそ知りたくなって、先を読みたくなったりもするわけです。

「この本は自分に合わない!」と思ったらすぐやめる

さっさと控えの本を取り出し、次へ切り替えよう

読んでいるうちに「この本は自分とは合わなかった!」と気づくことも。
 
そんなときには無理をするのはNG。いやになって読書感想文の宿題が中断してしまうので、早めに控えの本のなかから次の本に切り替えよう。
 
「いやにならない」ことは何より大切。無理をして読むよりは相性の良い本を探すほうがベターだ。
 

<山本先生より>
 
こういう場合、大切なのは「失敗上等」の精神です。
 
一発で今の自分にとって良い本に出合うとは限りませんから。
 
そのときは読めなかった本でも、何年も後になったら読めるようになるケースもあります。
 
わたしも20年くらいかかって、ようやくわかるようになった本があります。

読書感想文の書き方 いったい何を書けばいいの?

読書感想文の書き方 いったい何を書けばいいの?
 

まずは要約しよう

「その本に何が書いてあったか」を書く

いよいよ書き始めるとき、基本的には「その本に何が書いてあったか」と要約ができればOK。
 
何が書いてあったかを一通り書いてみよう。
 
むしろ、それが言えなければ書けないのだ。
 
次に、その謎の追跡についておもしろかったことなど、気づいたことを書いてみよう。
 

<山本先生より>
 
本を読んだ後で「著者は何を考えようとしていたのか」をひとことで言えると良いですね。
 
読んでいる最中に、ページに線やメモが残っていれば、要約するときにとても役立ちます。
 
本への書き込みは、将来の自分に手がかりを残すようなものなのですね。

書きたいけど「何だかわからない」ときには

「わからない」も感想のひとつ

もし、読んだけれど「わからなかった」という部分があるときは、「わからない」も感想のひとつとして、自信をもって書ききろう。
 
わかったことだけ書いても実はそんなにおもしろい感想文にはできない。
 

<山本先生より>
 
読んでわからなかったからといって、へこむ必要はありません。
 
そもそも一冊の本に書かれていることを丸ごと理解するのは大変な作業です。
 
どこがどうしてわからなかったかを感想文に書いてもいいですね。

本に問いかける

本を読んでいて浮かんだ疑問を文章にする

自分から本への問いかけをすれば感想文の筋道が立つ。
 
例えば「何が書いてあったか」「どうしてそんなことをしようと思ったのか」「どのように問いに応えようとしているのか」といった疑問を文章にしてみること。
 

<山本先生より>
 
「この本には●●や■■といったことが書かれているのではないかと期待して読み始めた。要約すれば◆◆ということが書かれた本だ。結果的に●●はわかったものの、■■はわからなかった。それは▲▲だからだと考える」と書ければ最高ですね。
 
大人でもちょっと書けないような立派な感想文になります。

途中で筆が止まった!そんなときには

読んでいた時の「めっちゃ気になったポイント」に戻る

書いている途中で先にすすめなくなったら、気になるページに戻ろう。
 
そのページをもとに「どうしてこのページが気になったのか」ということを書けば文字数は埋められるはず!
 

<山本先生より>
 
「ドッグイヤー」やしおりをつけたページは、あなたの「気になったポイント」のはず。
 
気になった理由を書けば、マス目が残っていたとしても、あっという間に埋まりますよ。

全部書き終わった!より完成度を高めるには?

ようやく最後までたどり着いた 読み直しをしよう

パソコンで書いた人は、紙に印刷して読み直そう

全部書き終わったら、推敲(見直し)をしよう。
 
パソコンで書いている人は、画面ではなく紙に印刷して読み直すことが、感想文を磨き上げるために大切な作業だ。
 

<山本先生より>
 
読み直す場合には、いつもいる部屋ではなく、電車や公園など、ちょっと違う場所に行くと良いですね。
 
いつもと違う気持ちになるので、「ここは変かな」という点に気づきやすくなります。

音読のススメ

息継ぎのポイントを知ると、句読点の入れ方が上手になる

書いたものを声に出して読んでみることも、良い文章のためには必要な作業。
 
音読して息が続かないなら、その文章は長すぎて意味が通じていない場合が多いのだ。
 

<山本先生より>
 
音読すると文章の変なところがすぐわかります。
 
それに息継ぎのポイントがわかると、句読点の入れ方も上手になります。
 
それに改行や段落分けなどの必然性も感じられるようになったりと、音読にはメリットがたくさんありますよ。

人の目に触れさせるのも大切

「誰かに伝える」ことを意識すると、文章は上達する

書きあがった読書感想文を、自分以外の人に読んでもらうのもオススメ。
 
他人に文章を読まれるのは恥ずかしいかもしれないけれど、「誰かに伝える」ことを意識したり、他人に向けて書くことを念頭に置いたりすれば、みるみる上達!
 
手紙やメッセージの形式にするなど、宛先が明確ならさらに書きやすい。
 

<山本先生より>
 
「この本おもしろかった!誰かにすすめたい」という強い気持ちがあれば最高ですね。
 
まだその本を読んでいない誰かに向けて、「ほら、読みたくなるでしょう?」と誘うような気持ちで書くのもよいですよ。

時間はどのくらいかければOK?

読んで書くのに1日、寝かせるのに1日、完成するのに1日、が理想

夏休みの早い時期に始めて、読むことにしっかり時間をかけるのが理想。
 
ただ、高校生には受験勉強やほかの宿題もあるので難しいかもしれないが、できるだけ時間をかけて着実に進めよう。
 

<山本先生より>
 
最低でも3日は割きたいところ。
 
というのも、書き終わったラブレターは渡す前に1日置いたほうが良いのと同じで、読書感想文にも寝かせる時間が必要です(笑)。
 
書いてからちょっと時間をおいて読み直すと、不十分なところが見えるようになるわけです。
<時間がない人のための裏ワザ>
 
非常時のテクニックとして、1フレーズを引用して、200ページのうち「この言葉にとてもひかれた。こんなことが書いてあってこう思った」と書けば、マス目もだいぶ埋まります。
 
1点突破で詳しく書けば、「なかなか深く読んでいる」という印象も与えられます。
 
カバーなどに書かれた本の解説を手がかりにするのも時間がないときの裏ワザです。
 
また、1フレーズでは足りないときは、そのフレーズを中心に、その1ページについて書くのもいいですね。
 
本の解説からそのページがどんな位置づけか説明するのも良いでしょう。
 
さらには、本の装丁(デザイン)も材料になります。
 
デザインにひかれて本を選んだ経緯や、本の内容が表紙に表現されている様子などを書いてみるのも良いでしょう。

たった一つの感想文を目指そう ~山本先生からのメッセージ~

100人分の読書感想文を読む人の立場を想像してみましょう。
 
例えば100人のうち98人が同じような内容を書いていたら、どんな気持ちになるでしょうか。
 
きっと「またこれか」と読む気も起きなくなってしまいますよね。
 
この場合、似たような98人の文章はあまり印象に残りません。
 
できれば残りの2人に入る読書感想文を目指したいところ。
 
では、どうすればよいでしょうか。
 
例えば、1カ所でもいいので、自分だけしか書かないことがあると良いですね。
 
そんなのどうすればいいのさ、と思うかもしれません。
 
コツは、読んだ本のなかから気になる箇所を具体的に取り出して、それについて感じたり考えたりした内容を具体的に書くことです。
 
このとき、目のつけ所がユニークであれば、あなただけの光る読書感想文を書き上げることができます。
 
普段から本をたくさん読んで文章を書くことに慣れている人も、あまり本を読んだことがない人も、ここまでお話ししたコツをお試しあれ。
 
きっと今までとひと味ちがった読書感想文が仕上がって、自分でも目を丸くする夏になると思います。
 
そんな皆さんを応援しています!

 

【これで完璧!読書感想文のポイント】
 
1. 書店や図書館に行こう(ブラブラするだけでもOK)
 
2. 気に入った本(見た目でOK)を何冊か選んで、ぱらぱらめくろう
 
3. 一番気にいった本を読みこもう
 
4. 本を読むときはメモをとったり線を引いたりすると便利
 
5. 要約から書き始めよう
 
6. 「書けない!」と思ったらすっぱりあきらめて次にいこう
 
7. わからないことは「わからない」と書く勇気をもてば好感度アップ!
 
8. 印象的なフレーズについてしっかり書き込めば字数は足りる
 
9. 書き終えたら音読してみよう
 
10. 1カ所でも人とはちがう光るポイントをつくろう
 

***プロフィール***
●山本貴光
1971年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。コーエーにてゲーム制作に従事したあと、ゲーム作家、文筆業などで活躍中。
 
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