「ながら勉強」って効果はある?メリット&デメリットやOK・NG例を専門家が解説!
例えば音楽を聴きながら勉強したり、通学の合間のスキマ時間に勉強したり……。こうした「ながら勉強」を実践している人は多いのでは?
なかには「ながら勉強」を取り入れつつも、「“ながら勉強”は効率が悪いのかな?」と不安になっている人もいるかもしれない。
そこで今回は、「ながら勉強」の効果やメリット・デメリット、OK例・NG例などを、脳科学の専門家である篠原菊紀先生に解説してもらったよ!
篠原菊紀
公立諏訪東京理科大学・工学部情報応用工学科教授、地域連携研究開発機構・医療介護・健康工学部門長、学生相談室長。茅野市縄文ふるさと大使。
研究分野は応用健康科学、脳科学。「遊んでいるとき」「運動しているとき」「学習しているとき」など、日常的な場面での脳活動を調べている。
テレビやラジオでの解説監修、著書、講演等多数。
目次
「ながら勉強」とは
「ながら勉強」とは、ほかのことをしながら勉強すること。例えば音楽を聴きながら、運動をしながら。
または通学時や入浴時など、勉強以外の行為をしながら、並行して勉強することだ。
「ながら勉強」は効率がいい?効果はある?
「ながら勉強」には、リラックス効果や集中力の維持、学習機会を増やすといったメリットがある。上手に取り入れれば効果的な勉強法だといえるよ。
でも、複数のことを同時に行う「ながら勉強」には当然デメリットやNG行為もある。
取り組み方次第では非効率な勉強になってしまうので、特徴を理解して実践するのが大事だ!
効率的な「ながら勉強」にはワーキングメモリの活用がカギ
ワーキングメモリとは、人間の認識や行動に必要な情報を一時的に記憶し、処理する脳の機能のこと。この能力は私たちが日々の生活を営むうえで不可欠であり、もちろん勉強でもとても重要なんだ。
「ながら勉強」が効果的かどうかは、このワーキングメモリを上手に使えるかどうかにかかっている!
「ながら勉強」のメリット
「ながら勉強」のメリットは、上手に活用すれば集中力がアップしたり、リラックス効果を得やすくなったりすることだ。メリット①集中力が上がる
“ながら勉強”と相性がいいのは単語学習やキーワード暗記、既習分野のおさらいといった単純作業です。
こうした軽めの勉強の際には、実は脳のワーキングメモリはフルには使われていません。
ワーキングメモリに余裕があると、脳が勉強に無関係な余計なことを考え出し、勉強の妨げになってしまうことがあります。
こうしたときには、"ながら勉強"が効果的です。
例えば音楽を聴きながら勉強することで、脳が音楽にとらわれる状態をあえて設定する。
ワーキングメモリの余白を音楽で適度に埋めることで勉強以外の雑念を封じ、結果的に集中力の持続につながるわけです」(篠原先生)
メリット②リラックスできる
そのおかげで集中力が維持でき勉強を頑張れるのですが、やはり疲れてしまいますね。
こうした際にはリラックスするときに働く副交感神経を刺激することで、疲労を軽減するのが効果的です。
“ながら勉強”で副交感神経を活性化しリラックスした気分になれば、結果的にパフォーマンスや記憶力の向上が期待できます。
深呼吸や軽いストレッチ、音楽などにはこうした効果があるので、"ながら勉強"として取り入れることによって、リラックスした状態で勉強できます」(篠原先生)
メリット③気軽に学習に取り組みやすくなる
すべての意識をテキストに向ける時間を確保することに比べれば、スッと学習に取り掛かれる。
そうすると自然と学習機会が増えます。
コマ切れ時間でもトータルで勉強する時間が長くなれば、成績が向上するのは当然のこと。
学習の機会を増やせることも“ながら勉強”のメリットでしょう」(篠原先生)
「ながら勉強」のデメリット
ながら勉強のデメリットは、勉強に使うべきワーキングメモリが足りなくなってしまったり、 本番で実力を発揮できなくなったりすることだ。そのことを肝に銘じて取り組まないといけません」(篠原先生)
デメリット①脳のパフォーマンス(働き)が十分でなくなる
勉強以外にも意識が向く"ながら勉強"では集中力を研ぎ澄ますことは難しいのです。
特に応用的、発展的な難しい内容を勉強するときは、ワーキングメモリをフル稼働させる必要があります。
『国語や英語の文章読解』や『数学の応用問題』のような、高い思考力が求められる学習 では、"ながら勉強"はやめましょう」(篠原先生)
デメリット②本番で実力を発揮できなくなる可能性がある
何かをしていないと勉強に取り組めないというのでは、有意義な勉強はできなくなるでしょう。
そして全意識を集中させる必要がある受験本番でも、実力を発揮できなくなってしまいます」(篠原先生)
「ながら勉強」におすすめな教科や内容は?
「ながら勉強」におすすめなのは、単調で集中力をあまり使わない勉強だ。具体的には英単語や漢字などの学習、歴史の年号・キーワード暗記、理数科目の簡単な計算問題などですね。
ほかにも履修済みの範囲をさらっと復習するといった軽めの勉強も“ながら勉強”と相性がいいでしょう」(篠原先生)
「ながら勉強」のOK例
勉強しながらしてもOKなことは何だろう?それは適度に脳のワーキングメモリを使って、勉強以外で気がそれることを防ぎつつ、勉強の邪魔にはならない行為だ。
具体的な例を挙げてもらったよ。
OK例①音楽を聴きながら
リラックス効果や集中力の維持が期待できるでしょう。
ただし、音量は控えめにすること。
大音量では意識がそちらに向いてしまい、勉強に集中できません。
自分が勉強に集中できるほどほどの音量を見極めましょう」(篠原先生)
歌詞の有無、ジャンル、どんな音楽ならOK?
ポイントは集中を妨げないかどうか。
勉強の邪魔にならない聞き流せる音楽であれば、どんなジャンルの曲でもOKです」(篠原先生)
OK例②通学や入浴をしながら
実は勉強時間というのは一度に長時間よりも、区分けされているほうがいい。
学習は基本的に長く続けるほど効果が落ちることが知られています。
しかもわれわれの脳は勉強時間以外にも実は勉強していることがわかっています。
睡眠中に記憶が定着するというのがその代表例ですね。
こうした脳のオフライン学習は、適度に時間間隔を置くことで促進され、記憶の定着につながりやすい。
その意味でスキマ時間を見つけて、バラバラな時間に勉強するというのは理に適っています」(篠原先生)
OK例③香りを嗅ぎながら
自分の好きな香りに満たされることで学習パフォーマンスが向上するでしょう。
少し本題からそれますが、ローズマリーの香りがこれから先に何を行うかについての記憶を良くするという研究もあります。
自分が立てた予定や計画を、脳が記憶しやすくなるのです。
ローズマリーの香りを嗅ぎながら学習計画を立ててみるのはおもしろいと思います。
脳が『勉強している未来の自分』のイメージを記憶するので、やる気につながるかもしれません」(篠原先生)
「ながら勉強」のNG例
やってはいけない「ながら勉強」は、YouTubeやテレビなどの動画を見る、スマホをいじる、食事をするといったワーキングメモリが、勉強以外に大きく使われてしまう行為。勉強に割くべき脳の資源(リソース)が足りなくなってしまえば、学習効率が悪くなる。
NG例①テレビやYouTubeなど動画を見ながら
動画の情報処理に脳のワーキングメモリが使われることで記憶干渉が起きるので、効果的な学習は不可能でしょう。
YouTubeやテレビなどの動画視聴が使う脳の領域はエピソードバッファといって、画像と音声が複合したとても強力な記憶領域ですので、“ながら勉強”したとしても優先的に動画のほうを記憶してしまいます」(篠原先生)
NG例②食事をしながら
食事は食事で楽しんだほうが、気分転換できていいみたいだね!
NG例③スマホを見ながら(LINEをしながら)
ほんの少しのやり取りのつもりが、気付いたら数十分経過ということもありえます。
勉強中にスマホをいじるのはやめておくべきでしょう」(篠原先生)
「ながら勉強」を効果的に行う方法がわかったかな?
こうした分野に興味がある人は脳科学や医療などの分野で学べるよ
これを読んで脳科学という研究分野に興味が湧いた人もいるかもしれないね。
こうした分野は主に医学部、薬学部、工学部、理学部などで学ぶことができるよ。
下のリンクをチェックしてみて!
脳科学に関連する分野が学べる学校
スポーツ・健康・医療を学べる学校
工学が学べる学校
理学が学べる学校