学校推薦型選抜(公募推薦・指定校推薦)とは?一般選抜や総合型選抜との違いや試験内容を解説!
大学入試には、一般選抜、総合型選抜(旧AO入試)、学校推薦型選抜(旧推薦入試)がある。近年は総合型選抜、学校推薦型選抜などの、いわゆる推薦型の選抜による入学者比率が増加中で、私立大学では50%以上もの入学者が利用している。
ただ、「学校推薦型選抜の仕組みは?総合型選抜と学校推薦型選抜との違いはあるの?」など、疑問に思っている人もはいるのでは?
今回は、この学校推薦型選抜の公募制(公募推薦)、指定校制(指定校推薦)についてクローズアップ!
押さえておきたいポイントや、注意すべき点について、スタディサプリ講師でカンザキメソッド代表の神﨑史彦先生に教えてもらおう!
神﨑史彦先生
株式会社カンザキメソッド代表取締役。
スタディサプリ講師。私立学校研究家。高大接続・教育コンサルタント。
大学卒業後、大学受験予備校において小論文講師として活動する一方、通信教育会社や教科書会社にて小論文・志望理由書・自己アピール文の模擬試験作成および評価基準策定を担当。
のべ6万人以上の受験生と向き合うなかで得た経験や知見をもとに、小論文,
志望理由・自己アピール・面接の指導法「カンザキメソッド」を開発する。
現在までに刊行した参考書は26冊(改訂版含む)、販売部数は延べ25万冊、指導した学生は10万人以上にのぼる。
目次
推薦入試とは?
推薦入試とは、学校推薦型選抜の旧名称で、2021年度の入試より、推薦入試から学校推薦型選抜に改名された。正式な呼称は「学校推薦型選抜」だが、長く「推薦入試」と呼ばれてきたことから、現在でも通称として「推薦入試」が使用されるケースもある。
学校推薦型選抜(旧推薦入試)とは?
学校推薦型選抜とは、出願時に学校長の推薦書類が必要な入試方式のことで、大きく分けて、「指定校制」と「公募制」がある。大学・学部により異なりますが、書類審査、学科試験、面接などを通して、その人物を多面的に評価していきます」(神﨑先生)
私立大学の学校推薦型選抜(旧推薦入試)とは
※まずは、学校推薦型選抜(旧推薦入試)の特徴を理解しよう
高校時代の学業成績やスポーツ・文化活動などの推薦基準を満たしている生徒を高校の学校長が推薦する入試です(自己推薦は例外)。
前提として、評定平均などの推薦基準を満たし推薦書を得ることが出願の条件になります」(神﨑先生)
推薦入試の種類や大学・短大、学部・学科によって違いがあるので、希望の進学先の基準を確認しておこう。
また入学者の選抜の際は、大学教育を受けるために必要な知識・技能、思考力・判断力・表現力があるかどうかも判断材料になる。
大学で学ぶ力を測るために、調査書・推薦書等の出願書類だけでなく、学力検査や小論文、口頭試問、資格・検定試験の成績、大学入学共通テストなどのうち少なくともひとつを活用するように定められている*。
*出典:令和3年度大学入学者選抜実施要項
どんな審査方法が用いられるかは、大学の募集要項に書いてあるので、要チェック!なお、学校推薦型選抜は出身校に推薦してもらう性質上、合格したら必ず進学する必要がある。
だから基本的に専願(1つしか受験しないこと)だ。
つまり学校推薦型選抜や総合型選抜をいくつも掛け持ちして出願することは原則的にできない。
一般選抜との違い、どちらが難しい?
一般選抜との最大の違いは、学校長の推薦が必要かどうか。一般選抜は主に学力検査(入学試験)の結果で合否が決定されるが、学校推薦型選抜では、書類審査、学科試験、面接などが行われ、多面的に評価される。
また、一般選抜の出願条件は「高校を卒業した者」「高校卒業見込みの者」または「高校卒業と同等の学力と認められる者」などを条件とする大学が多く、出願条件は緩やか。
一方、学校推薦型選抜は、前述の通り、学業成績をもとにした評定平均が基準を上回らないと出願することができない。
試験の実施時期は一般選抜が1月~3月頃に実施されるのに対し、学校推薦型選抜は一足早く11月~12月頃に実施されることが多い。
一方、指定校制の場合は、いわゆる校内選考の方が厳しいケースも。
校内選考を通過して出願すると合格できる可能性が高くなりますが、100%ではないので油断はできません」(神﨑先生)
総合型選抜(旧AO入試)との違い
総合型選抜とは、書類審査と詳細な面接等を組み合わせることによって、入学志願者の能力や大学で学ぶ適性があるかどうかを総合的に判定する入試方法。学校推薦型選抜との一番の違いは、入学志願者自ら出願できる公募推薦であり、出身高校からの推薦が不要なこと。
総合型選抜の実施時期は8月~12月の期間で各大学によって違い、また選抜期間は学校推薦型選抜に比べて長いことが多い。
★「総合型選抜」について詳しく知りたい人はこちら
総合型選抜とは?AO入試からどう変わった? 学校推薦型選抜との違いは? 特徴や流れを解説
大学入試の3種類の違いまとめ
一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜の違いをまとめると、以下のようになる。
学校推薦型選抜(旧推薦入試)の2種類、公募制と指定校制の違い
再び、学校推薦型選抜に焦点を当て、詳しく説明しよう。
学校推薦型選抜の中には、「公募制(公募推薦)」と「指定校制(指定校推薦)」の2種類があることを知っているだろうか。
公募制は出願できる学校に制限がないが、指定校制では自分が通っている高校が大学に推薦校として指定されていなければならない。
どちらの場合もそれぞれの大学の出願条件を満たし、高校の校長の推薦があることが出願の条件になっている。
それぞれの特徴を詳しく見ていこう。
公募制(公募推薦)の特徴
※公募制(公募推薦)には、一般選抜と特別推薦選抜がある
学校推薦型選抜の公募制(公募推薦)は、大学が定める出願条件を満たし、校長の推薦があれば出願できる。大学からの指定がなくても、全国のどの高校からでも出願できるのがポイント。
学校の成績が一定の基準を超えていれば、出願できる公募制一般選抜と、スポーツや文化活動で活躍したことをアピールできる公募制特別推薦選抜がある。
公募推薦特別推薦選抜は高校での成績を審査対象にしない場合もある。
「評定平均など、大学が求める出願条件を満たしていて、高校の校長からの推薦が得られれば誰でも受験できる推薦入試。
公募制推薦(一般推薦)は私立大学だけでなく、国公立大学でも実施されています。
人気のある大学や学部では倍率も高くなるので、指定校推薦と違って高確率で合格できる保証はありません」(神﨑先生)
◆公募制特別推薦選抜
「スポーツの実績や文化活動、取得資格などが出願条件となっている入試。
大会やコンテストの成績、資格・検定であれば級やスコアなどの条件が定められていることが多いですね。
こちらも校長の推薦は必要です」(神﨑先生)
公募制推薦選抜の場合は、高校の定期テストなどでまんべんなく高い得点を得られている人に有利。
公募制特別推薦選抜はスポーツや文化芸術分野で優れた実績があるとアピールできる。
指定校制(指定校推薦)の特徴
※指定校推薦(指定校制)をねらう場合、高校で行われる校内選考に通る必要がある
学校推薦型選抜の指定校制(指定校推薦)は、大学が指定した高校の生徒にのみ出願資格がある。ひとつの高校から推薦できる人数は限られており、希望者が多い場合は校内選考で選抜される。
選考では評定平均といわれる3年間の成績、課外活動実績、生活態度などを総合的に判断する。
高校からの推薦を得ることができれば、合格率がかなり高いのが特徴。
一方で大学・短大などに進学後の学業成績や生活態度次第では、母校の推薦枠が減らされたり、なくなったりすることもあるので責任は重い。
「大学に指定された高校の生徒だけが対象となる推薦入試です。
私立大学を中心に実施されており、指定校にはそれぞれ推薦枠があります。
指定校推薦を受験するに当たっては、高校で行われる校内選考に通る必要があります」(神﨑先生)
人気のある指定校推薦枠を得るには、学内での選抜を勝ち抜かなければならない。
学内選抜の選考基準は、まず定期試験のテストを含めた、各科目の総合的な成績で判断される。
だから苦手教科がなく、まんべんなく良い成績が取れる人に向いている。
そのうえで日々の学校生活に積極的に取り組んでいると、さらに有利になる。
国公立大学の学校推薦型選抜(旧推薦入試)
国公立大学の学校推薦型選抜は公募推薦のみとなっている。また、私立大学に比べて募集人員が少なく、成績基準も厳しい傾向にある。
学力試験を実施する大学も多く、なかでも大学入試共通テストを活用する割合が高くなっている。
国立・公立大学には、その地域の発展や地域への貢献を意図して全国枠とは別に、地域枠を設けている大学も。
特に医学部の場合は、卒業後に一定期間地元の医療に従事することなどを条件とした地域枠推薦がある大学も多い。
地域枠は全国枠の推薦と併願できる場合もあるので、確認しておこう。
学校推薦型選抜(旧推薦入試)の出願条件、評価基準
※学校推薦型選抜(旧推薦入試)の出願条件について、早めに確認しておくことが重要
学校推薦型選抜では、高校1年から高校3年1学期までの評定平均が出願条件として指定されることが多い。例えば、「全体の評定平均3.5以上」といったように全体の評定平均のみを指定する大学・短大もあれば、「全体の評定平均が4.0以上で、英語は4.3以上」など、全体に加えて、特定教科の評定平均を指定する大学・短大もある。
なお、最近は前年から評定平均の基準を上げてくる大学も増えているので注意が必要だ。
これがけっこうハードルが高い場合が多いので要注意です。
出願直前に級・スコアを一気に上げるのは難しいので、基準となる級・スコアを調べて早めに準備を始める必要があります。
実用英語技能検定(英検®️)なら2年の終わりまでに2級はとっておきたいところ。
CBT(オンライン試験)で受験できる検定は結果が出るのが早く、回数を多く受験することをおすすめします。
一番良いスコアを提出できますから」(神﨑先生)
ですから、推薦入試を意識しているなら、文理選択の際にはよく考える必要がありますね」(神﨑先生)
誰でも受けられる?
繰り返しにはなるが、学校推薦型選抜は、大学・学部が提示する出願条件を満たし、かつ、学校長の推薦が得られた人しか受けることができないことを覚えておこう。
出願条件には学校の成績(評定)が定められているケースが多く、そこをクリアできていないと出願することができない。
どのような点が評価される?
目立つ活動や成果はなくても、コツコツと努力を重ねてきた人が評価されます。
『1・2年生はあまり勉強していなかったけど、3年生になってバリバリがんばり始めた!』というタイプには、一般選抜の方がおすすめです」(神﨑先生)
評定平均って何? 何を基に決められるの?
学校推薦型選抜の出願条件にもなる評定平均とはなにか、詳しく見ていこう。高校1年から高校3年の1学期までの成績を対象として算出するので、高い評定平均を取るには1年次から学校の勉強にまじめに取り組むことが大切です」(神﨑先生)
高校の成績評価が10段階の場合の5段階への直し方は、学校ごとに定められた換算基準により異なるので注意が必要だ。
例えば、10段階のうち9と10が5になる学校もあれば、8、9、10が5になる学校も。
さらに、A・B・C・D・Eの5段階で評価する学習成績概評で基準を示している大学や短大もある。
なお、全教科の評定平均のほか、教科ごとの評定平均の提出を求められることもあるので注意が必要だ。
そうすると、数学はすべての科目を履修すれば、6科目になります。
その6科目分の評定の平均値が、数学という科目の評定平均になります」(神﨑先生)
評定評価というと、定期テストの点数ばかりに注意が行きがちだが、評定が決まる要素はそれだけではない。
2022年度から高校で実施される新学習指導要領では、授業で3観点といわれる「知識および技能」「思考力・判断力・表現力など」「学びに向かう力、人間性など」の育成を目標とすることが決まっています。
評定評価も3観点が習得されているかどうかが、見られることになるでしょう」(神﨑先生)
★評定平均についてもっと詳しく知る
評定平均はどう計算される?学校推薦型選抜(旧推薦入試)の基準になる?
学校推薦型選抜(旧推薦入試)の選考方法
学校推薦型選抜の選考方法は、書類選考、面接、小論文が一般的だが、学力試験が課される大学・短大も。調査書・推薦書等の出願書類が重要視されるが、その他の方法も用いて総合的に判断される。
文部科学省の「大学入学者選抜実施要項 」では、大学教育を受けるために必要な知識・技能、思考力・判断力・表現力を判断するために下記のような選考方法を定めている。
付け焼き刃での対策は難しいので、目標とする大学の募集要項を確認しておこう。
「平成33年度大学入学者選抜実施要項の 見直しに係る予告(平成29年7月)」参照
私立大学 学校推薦型選抜(旧推薦入試)のスケジュール
学校推薦型選抜の出願・選考はだいたい10月~11月頃がピークとなっている。◆公募制(公募推薦)
募集要項が発表されるのが、私立大学は6月下旬頃からで、国公立大学は7月下旬頃から。
出願期間は11月1日以降となっている。
選考は11月に行われることが多い。合格発表は12月頃。
◆指定校制(指定校推薦)
高校で指定校推薦の募集に関する情報が公開されるのが6月~8月頃。
校内選考は早ければ7月〜10月頃に始まる。
10月には指定校ごとに推薦される生徒が決まり、11月に出願・選考が行われ、12月頃に合格発表というのが一般的なスケジュール。
なお、ここで紹介しているスケジュールはあくまで大まかな目安。
大学ごとにスケジュールは異なり、2次募集を行う場合もあるので、志望校が決まったら早めに出願・選考の日程を確認しておこう。
学校推薦型選抜(旧推薦入試)の対策のポイント
学校推薦型選抜は、推薦を得ることができれば高確率で合格ができる入学試験だが、どんな対策が必要で注意すべき点はどんなことだろうか。早めの対策&準備が明暗を分ける!
学校推薦型選抜は高校入学から積み重ねた評定評価の平均値が最も重要視される試験。高校生になった1年生の時から真剣に勉強に取り組まなければならない。
また、書類選考以外に用いられる面接や小論文などに関しても付け焼き刃の対策が効かない。
そのためには高校1年生の時から、評定評価を良くすること以外にも、やっておきたいことがたくさんあります。
学年別にやるべきことの目安を図にしておいたので、参考にしてください」(神﨑先生)
もし落ちた時はどうしたらいい?
※もし希望どおりにいかなかった場合、どうしたらよいだろうか
指定校推薦なら校内選考で落ちてしまうこともあるし、公募推薦なら当然不合格のケースも想定しておかなければならない。ただし、推薦入試は専願が基本なので、秋の入試のピーク時に同時に複数校を受験できないのが悩ましいところ。
一般選抜の対策をしていない受験生が、12月頃から一般選抜に目標を切り替えても間に合いませんから」(神﨑先生)
ただし、それでは、進学後に納得のいく学生生活を送れない可能性もある。
それなら、学校推薦型選抜で志望校に合格できなかった場合、一般選抜に目標を切り替えることができます」(神﨑先生)
これだけは押さえよう!学校推薦型選抜(旧推薦入試)の重要ポイント
高校時代の学業成績やスポーツ・文化活動などの推薦基準を満たしている生徒を高校の学校長が推薦する入試。
専願が基本。
◆学校推薦型選抜の2種類、公募推薦と指定校推薦の違い
公募推薦は出願できる学校に制限がないが、指定校推薦では自分が通っている高校が大学の指定校でなければ出願できない。
どちらの場合も大学の出願条件を満たし、高等学校長の推薦があることが出願の条件。
◆学校推薦型選抜の出願条件によく用いられる評定平均とは
全科目の成績を足して科目数で割った数字が全体の評定平均。
科目ごとの評定平均が求められる場合もある。
◆私立大学の学校推薦型選抜のスケジュール
10月末から11月頃に出願が始まり、11月末か12月頭には合否が決まる場合が多い。
他の入試方法とも比較しながら、自分の力を生かせる入試方法を検討しよう。
取材・文/蜂谷智子・笹原風花(2023年3月一部追記) 監修/神﨑史彦 デザイン/桜田もも 構成/寺崎彩乃(本誌)
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