【プレテスト分析】大学入学共通テスト、大学入試センター試験とどう違う?

2020年度から始まる新しい大学入試。
 
 
でも「どんな試験なのかよくわからない…」という人も多いのでは?
 
 
テストの科目や形式など、これまでとの違いについて、入試対策のプロに話を聞いてみた!
 
 

【お話を聞いた人】

 

下松 淳子(くだまつ あつこ)さん
学校法人河合塾 教育イノベーション本部 教育企画開発部 部長
学校法人河合塾広島校入社後、広島、大阪の教務部で生徒指導を行うほか、英語科、数学科チーフとして全国カリキュラム策定や教材開発を推進。
2016年 教育イノベーション本部 教育企画開発部へ。
英語4技能を中心としたグローバル教育、アクティブラーニング、学力スタンダード、日本の全大学の調査などに取り組んでいる。

 


 

 

大学入学共通テストってどんなもの?

これまで行われていた大学入試センター試験が廃止され、それに代わって2020年度(2021年1月)からスタートするのが大学入学共通テストです。
 
2018年4月時点の高校1年生(2021年3月の卒業生)から大学入学共通テストを受けることになります。
 
大学入試センター試験と同様、大学入学希望者を対象に1月中旬の2日間で行われ、国公立大学を志望する場合は原則受験することになります。
 
また、私立大学ではセンター試験利用入試のように、大学入学共通テストを入試に利用するところもあります。

 
大学入学共通テスト

※大学入学共通テストは国公立大学を志望する場合は原則受験、私立大学も入試に利用する場合がある

 

なぜ大学入試センター試験から大学入学共通テストに変わるの?

情報化社会が進み、世の中はめまぐるしく変化しています。
 
高校生の皆さんが社会の第一線で活躍するころには、グローバル化やAIの活用がさらに進むことが予想され、現在とは社会が大きく変わっているでしょう。
 
ITの発達によって、新しい職業が登場したり、これまで人が行っていた仕事がロボットに代わったりと、仕事のあり方が大きく変わっている可能性もあると言われるほどです。
 
そうした変化の激しい社会の中で活躍するためには、知識をもっているだけでなく、自分から課題をみつけ、まわりと協力して解決する力が必要になります。
 
そこで、高校教育や大学教育、さらに高校と大学をつなぐ大学入試の改革が行われることになったのです。
 
大学入学共通テストの導入は、大学入試改革の一つ。この改革によって、これまで大学入試で主に求められていた「知識・技能」に加え、「思考力・判断力・表現力」をさらに重視し、「多様な人々と協働して主体的に学ぶ力」を評価する内容に変わっていきます。

 
大学入学共通テスト

※大学入学共通テストでは「知識・技能」に加え、「思考力・判断力・表現力」をさらに重視する

 

大学入学共通テストが始まることに伴い、2017年と2018年に試行調査(プレテスト)が行われました。
 
その傾向を見ると、多くの教科で長い文章を読み取ったり、図表・グラフ・写真・絵・資料から必要な情報を探して答えを導いたりと、情報を多面的・多角的な視点で解釈する力や、もっている知識を活用しながら仮説を立てて考える力が問われています。
 
さらに、大学入学後の学びも意識され、講義の内容を的確に聞き取る力、教師や仲間と意見を交わしながら協力して答えをみつける力も求められています。
 
読み取った情報を自分なりに整理して自分の意見として表現すること、身につけた知識を活用して問題を解決することを、日頃から意識して学ぶことが大切になるでしょう。

アクティブラーニングを取り入れた授業が増えてきているように、受け身ではなく、自分から考えて判断したり、表現したりすることが大学入試でも重要視されるんだ。
 
大学入学共通テストがどんな内容なのかますます気になるところ!
 
もっと具体的な内容を見ていこう。
 

大学入学共通テストの出題教科・科目は?

【出題教科・科目】6教科30科目

2020~2023年度は大学入試センター試験と同じ、6教科30科目(国語・地理歴史・公民・数学・理科・外国語)が予定されています。
 
2022年度に高校では新しい学習指導要領に沿った教科・科目の授業がスタートするため、2024年度以降の大学入学共通テストでは、その新しい教科・科目に沿って実施される予定です。

 

大学入学共通テストと大学入試センター試験の違いは?

【変更点1】数学・国語の一部で“記述式問題”が導入

大学入試センター試験はすべてマークシート方式でしたが、大学入学共通テストでは数学と国語の一部の問題で記述式が導入されることが大きな変化の一つです。
 
2024年度以降は地理歴史・公民・理科にも記述式問題の導入が検討されています。

どの程度、記述式問題が出題されるのか、もう少し具体的に見てみよう。
 

【数学】
「数学Ⅰ」「数学Ⅰ・A」受検者を対象に「数学Ⅰ」の範囲から3問程度
 
→試験時間は70分に延長(大学入試センター試験からプラス10分)
【国語】
20~30字程度、40~50字程度、80~120字程度を記述する問題がそれぞれ1問ずつ、合計3問程度(「国語総合」(古文・漢文を除く)の範囲から出題)
 
→試験時間は100分に延長(大学入試センター試験からプラス20分)
記述式問題では、必要な情報を読み取って的確に解答をまとめる思考力・判断力・表現力が問われます。

 

【変更点2】マークシートの出題形式が変わる

大学入学共通テストではマークシートの解答形式にも変化があります。
 
大学入試センター試験では、「選択肢の中から1つ選べ」という問いが基本でしたが、試行調査(プレテスト)では「当てはまる選択肢をすべて選べ」「選択肢の中に該当するものがない場合は0を選べ」「選択肢は2回以上使ってもかまわない」など、これまでとは違う形で出題されています。
 
これまでのように選択肢の中に必ず一つの正解があるとは限らず、選択肢の一つひとつに対して正しいかどうかを判断して解答する必要があります。
 
世の中に多様な考え方が生まれて「必ずしも答えは一つではない」という場面が多くなり、そうした社会に対応できるよう、より思考力・判断力が問われる内容になっていると言えます。

 

【変更点3】英語は「読む」「聞く」に加え、「話す」「書く」力も評価の対象に

試験形態が大きく変わるのが英語です。
 
グローバル化が進む社会に対応できるよう、英語でのコミュニケーション力を重視する観点から、これまでの「読む」「聞く」に加えて、「話す」「書く」の4技能を評価する試験内容に変わります。
 
ただ、大学入試センター試験のように大勢の受験生に対して一斉に「話す」「書く」の試験を行うことが難しいため、英語に関しては、英検やTOEFL(R)テストなど国が認定した民間の資格・検定試験を活用することになりました。

2020年度から2023年度までの4年間は大学入学共通テストでも英語の試験が実施され、民間の資格・検定試験と併用されるそう。
 
それぞれ大学によって入試への利用方法に違いがあるので、注意が必要だ。
 
まだ利用方法の公表がない大学もあるので、志望校の最新情報をチェックしよう。
 
大学入学共通テスト

※英語は「読む」「聞く」に加えて、「話す」「書く」の4技能を評価する試験内容に変わる

 

英語の民間資格・検定試験の入試への活用方針

【国立大学】
基本的に大学入学共通テストと民間資格・検定試験の両方を利用。
 
ただし、大学により活用方法が異なる。
【公立大学&私立大学】
基本的に大学入学共通テストと民間資格・検定試験の両方を利用。
 
ただし、大学により活用方法が異なる。
 
大学入学共通テストと民間資格・検定試験のどちらかを利用する、もしくは両方利用するかを各大学が判断

※大学受験に利用できる民間資格・検定試験は、高校3年生の4~12月の間に受けた2回までの試験結果
 

民間の資格・検定試験で「話す」「書く」力を評価する分、試行調査(プレテスト)では、筆記(リーディング)においては発音・アクセント・語句整序の問題などがなくなったほか、問題文が日本語表記から英語に変わるなど、「読む」力に特化する内容になっていました。
 
また、リスニングでは、聞き取った内容から文法を問う問題もありました。さらに、アメリカ英語以外の読み上げがあったのも特徴です。
 
今後はイギリス英語やアジア圏の人が読み上げる英語を聞き取る力も問われていくでしょう。
 
大学入試センター試験ではリスニングより筆記(リーディング)の配点が大きかったのですが、試行調査(プレテスト)では筆記(リーディング)とリスニングの配点を均等として実施されました。
 
「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能をバランスよく把握することが求められており、2020年度以降は4技能の配点がほぼ同じになり、バランスよく英語の力が問われるようになっていくのではないでしょうか。

大学入学共通テスト

※英語の試行調査(プレテスト)では筆記とリスニングの配点が均等に!

 

試行調査(プレテスト)では、どんな問題が出たの?

まだ試行調査段階なので、2020年度までに改善が加えられる可能性もありますが、多くの教科で複数の文章や図が提示され、そこから必要な情報を読み取ったり組み合わせたりして、思考力・判断力を問う傾向が見られました。
 
また、高校での探究活動など学習の過程を意識した場面設定の問題が出題されているのも大きな特徴ですね。
 
全体の傾向として状況説明文や図・資料など問題を解くための情報量が増えたので、問題冊子のページ数が増えています。
 
複数の文や図・資料を読み、必要な情報をすばやく見抜いて解答する情報処理力のほか、理系・文系問わず、文章の読解力や図表を読み解く力をつけることが求められていると言えます。

さっそく、2018年に行われた試行調査(プレテスト)の中から、特徴的な問題を実際に見てみよう。
 

【数学Ⅰ・A】

大学入学共通テスト
大学入学共通テスト

 

※「大学入学共通テスト」試行調査(平成30年11月実施分)【数学I・A】第3問(18~19ページ)

パッと見て、数学の問題とは思えないような文章量ですよね。
 
文章をすばやく正確に理解して、解答に必要な条件や情報を正しく把握・選択することが正解につながります。
 
この問題は二人がくじを順番に引く場面設定で確率を考える内容ですが、ほかにもコンピュータのグラフ表示ソフトを使う場面設定で相関関係を読み取る問題や、建築基準法をもとに三角比を使って階段の踏面を考える問題もあり、数学を日常生活に応用する力を測る意図が見られます。

【国語】

大学入学共通テスト
大学入学共通テスト

 

※「大学入学共通テスト」試行調査(平成30年11月実施分)【国語】第1問(10~11ページ)

大学入学共通テストで新たに導入される記述式の問題ですが、国語は第1問すべてが記述式でした。
 
異なる2つの文章がどう関連しているのかを読み取るだけでなく、問3では【資料】として新たな文章が提示され、必要な情報を比較・関連づけして考えをまとめる力が求められています」

【英語】

大学入学共通テスト
大学入学共通テスト

 

※「大学入学共通テスト」試行調査(平成30年11月実施分)【英語】第5問(20~21ページ)

大学で技術革新と未来の職業のかかわりについての講義を聞いているという場面設定で、講義内容をワークシートにまとめて問いに答えるという問題です。
 
大学入試センター試験では、すべての問題で読み上げが2回ありましたが、試行調査(プレテスト)では、2回読み上げと1回読み上げが混在する方式で実施されました。
 
実際の講義を想定しているためか、この問題の読み上げは1回だけでした。
 
読み上げられる英文自体はそれほど難解な内容ではありませんが、聞き取った内容の要点をまとめたり、図表から読み取れる情報と組み合わせて判断したりするなど、実践的な力が必要になります」

 

大学入試改革における大学入学共通テスト以外の変更点は?

推薦入試やAO入試にも変化があります。2020年度から推薦入試は「学校推薦型選抜」、AO入試は「総合型選抜」と名称変更されます。
 
これまでは「原則として学力検査を免除」されていましたが、2020年度からは小論文やプレゼンテーション、大学入学共通テストなど、各大学が実施する評価方法を通じて学力を問う試験が必須化される予定です。

大学入学共通テストへの対策は?

大学入学共通テストの内容や大学入試センター試験との違いをいろいろ教えてもらったけれど、大学入学共通テストってなんだか難しそう…。

これまでのように、知識や技能が大切というベースは変わらないので、あわてる必要はありません。問題の切り口が変わり、身につけた知識や技能をもとに考えを深める過程が問われるようになったのです。
 
そういう面では、これまで以上に知識や技能を身につけることが大切だとも言えます。今までのように、教科書の内容をしっかり理解することが一つの対策になります。
 
たとえば、国語では教科書に載っているさまざまな文章を読んでみることや、1つの文章を読み込み、内容を正しく読み取ることをこれまで以上にしっかりやっていくといいでしょう。
 
数学では、くじ引きやコンピュータの表計算ソフトなど、日常の中で数学が生かせるシーンを意識して生活してみるといいですね。
 
英語では、英文にざっと目を通して何が書いてあるかをつかむ力が必要です。文章だけでなく、料理のレシピや図など、世の中のあらゆる英語に触れておきましょう。
 
事実を整理して考える癖をつけること、自分が言いたいことを表現することを普段から心がけてみてください。

もっている知識を使って考えたり、自分の意見をわかりやすくまとめたり、日頃からの積み重ねがいっそう大事になりそう!
 
まずは大学で何を学びたいのか、どんな力をつけたいのかを自分の中でしっかり見据えて日々の勉強に臨むと、モチベーションも維持できるはず。
 
大学入学共通テストの試験日や時間など新しい情報が今後発表されていくので、随時、最新情報をチェックしていこう。
 
大学入学共通テスト

※随時、最新情報をチェックして志望校合格を目指そう!

 
 
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