「専門職大学・専門職短期大学」ってどんな学校?
高校生のみんなは、2019年4月に登場する「専門職大学・専門職短期大学」について知っているだろうか?
「ちょっと聞いたことがある」「そういえばCMで見た」という高校生もいれば、「よくわかんない。専門学校みたいなもの?」という高校生もきっと少なくないはず。
高校生にとって、専門職大学・専門職短期大学は大学・短大・専門学校と並ぶ進学先の新たな選択肢となる学校種。
だから、何が学べるどんな学校なのか、どの地域にどのくらいの数ができるのか、といった基本情報はぜひ押さえておきたいところだ。
そこで、現段階で専門職大学・専門職短期大学について理解しておきたいポイントを、リクルート進学総研の小林 浩所長に聞いてみよう!
<<目次>>
専門職大学・専門職短期大学では将来就きたい職業に必要な実践力と理論を両方学ぶことができる
まず、専門職大学・専門職短期大学がいったいどんな学校なのか概要を説明しておこう。
大学・短大や専門学校とどう違うのかを比較するとわかりやすいので、下の表をざっと見てほしい。
専門職大学・専門職短期大学の一番のポイントは、卒業後に就く職業に関連した実践的知識・技能を養えること。
表を見ても、実践力の養成や産業界との連携に力を入れていることがよくわかる。さて、そこで多くの高校生はきっとこんな疑問を抱くはず。
「それなら専門学校も同じじゃないの?」。
では、専門学校とはどう違うのだろうか?
そこが今ある専門学校との違いの一つですね」(小林所長)
さらにもう一つ、専門学校との大きな違いは大卒・短大卒の学位(=学士、短期大学士)を取得できること。
もちろん国内で就職する際にも大卒の学位が求められることは多いし、大卒の学位は海外でも評価される。
今後、グローバルに就職活動を展開する人が増えることを考えれば、「職業に直結する実践力も、大卒の学位も両方ほしい!」というニーズは確実に高まっていくはずで、専門職大学・専門職短期大学はそれに応える学校となりうる。
専門職大学・専門職短期大学では企業内実習600時間以上&実務家教員4割以上!
では、どのように実践力を磨くことができるのだろう。そこにも専門学校との違いはあるのだろうか?
専門学校はそこまでの条件は設けられていないですから、その点でも違いはあるといえますね」(小林所長)
開設が期待されている主な分野は、農業、情報、観光、医療・保健、マンガ、アニメ、ゲーム、ファッション、食など。
このあたりは今ある専門学校に近いイメージだ。
それもあって、今ある専門学校が専門職大学・専門職短期大学に移行するケースが多くなるとみられるが、もちろん大学が専門職学部・学科として設置するケース、新たに学校が作られるケースもある。
主な入試方法は、AO入試、推薦入試、学力試験による一般入試。
学校によっては社会人入試や留学生入試も実施する。
この入試区分はいまある私立大学に近い。もちろん具体的な試験内容や、一般入試の試験科目などは学校によって異なるので、募集要項で確認しよう。
今ある大学や専門学校も含め、個々の学校の教育内容をしっかりチェック
というわけで、「自分が将来就きたい職業に必要な実践的な知識や技能を身につけたい」という人にとっては、ぜひ注目してほしい学校種。
そう考えている人のうち、「大卒の学位にはこだわらないから、早く卒業して社会に出たい」という人にとっては最短2年で卒業できる専門学校が有力な候補になる。
それに対して、「4年かけてじっくり学び、実践力だけでなく、その分野の理論も体系的に学びたい」と考えている人にとっては、今後は専門職大学が第一候補になる可能性も十分あるということ。
では、大学と専門職大学(あるいは短大と専門職短期大学)でどちらを選べばいいか迷うケースはないだろうか?
法学や経済学、文学など学問をしっかりやることを目的とした大学と実践力を磨く専門職大学なら、「学問か、実践力養成か」の選択だし、分野もあまり重ならないので、比較的迷うことはなさそう。ただし、大学の種類はそれだけではない。
現場での実習もありますし、実務家の教員も多いですから、実質的には専門職大学が目指す教育内容と大きな違いはありません。
ですから、ざっくり、大学、専門職大学、専門学校という区分でみるだけでなく、分野によるカリキュラムの違いや、学校ごとの教育内容の特色もしっかりチェックしたほうがいいですね。
特に専門学校は、もともと業界や企業と連携した教育に力を入れているので、その違いも見ていく必要があります」(小林所長)
高校の進路指導の先生などは9割以上が専門職大学・専門職短期大学を認知
進路指導にあたる高校の先生たちも、専門職大学・専門職短期大学へ興味しんしんのようだ。
リクルート進学総研が専門職大学をテーマに行った調査ではなんと、9割以上もの先生が専門職大学・専門職短期大学を認知していた!
調査結果を詳しくみてみよう。
※専門職大学の認知(2016年)
※専門職大学の認知(2018年)
(調査対象:全国の全日制高校4703校、集計対象数:1203件、調査期間:2018年10月5日~2018年10月27日投函締切)。
回答してくれたのは主に進路指導主事や進路指導部の先生など。
専門職大学について知っているかどうかを尋ねたところ、「名称も内容も知っている」が41.6%、「名称は知っている」が50.3%で、合わせて91.9%の高校で専門職大学が認知されていることがわかった。
「知らない」は6.3%。2016年の同じ内容の調査では、「知らない」が32.5%だったので、認知度はこの2年間で25ポイント以上上昇したことがわかる。
「名称も内容も知っている」との回答は、2018年は2016年の2倍に増えており、この2年間で情報収集した先生が多かったようだ。
次に、高校の先生が専門職大学に期待していることをチェックしてみよう。
※専門職大学への期待(2018年/複数回答)
トップは「社会ニーズに対応した人材育成」の35.5%。
以下、「実践的な教育内容」32.8%、「現在の大学・専門学校ではできない教育」24.4%と続いている。
産業界が求める実践力の高い人材を養成するという専門職大学・専門職短期大学の趣旨はしっかりと伝わっているようだ。
続いて、専門職大学の懸念点についても聞いてみた。
※専門職大学の懸念点(2018年/複数回答)
最も多かったのが「現状の専門学校との違いがわからない」42.7%。
このあたりは高校生にも共通する懸念点ではないだろうか。
そのほか、できたばかりの学校種だけに、「企業のニーズが不明である」36.1%、「取得学位が社会的に受け入れられるのかどうかわからない」29.0%という回答も上位にきている。
カリキュラムなどは決まっているとはいえ、実際にどのような教育が行われるのかはやってみないとわからない部分もあります。
ですから、進学先の候補にしようかどうか迷っている人は、オープンキャンパスに積極的に足を運んで、特に2年目以降の学校に関しては、在学生の話をしっかり聞いてみるといいでしょう」(小林所長)
2019年4月は専門職大学2校、専門職短期大学1校がスタート
制度の1年目となる2019年4月にスタートした専門職大学・専門職短期大学は全国で3校(大学2校、短期大学1校)。
2020年4月の開設に向けては、今のところ、
・保健科学専門職大学(千葉県、石川県)
・東京医療専門職大学(仮称)(東京都)
・東京国際工科専門職大学(仮称)(東京都)
・東京専門職大学(東京都)
・i専門職大学(東京都)
・名古屋医療専門職大学(仮称)(愛知県)
・大阪医療専門職大学(仮称)(大阪府)
・国際貢献専門職大学(福岡県)
・せとうち観光専門職短期大学(香川県)
※名称はすべて仮称です(2019年4月時点)。
※文科省の申請リスト(2018年11月時点)にもとづき作成しています。最新の情報は各学校の公式HPをご確認ください。
など公立2校、私立18校の20校(大学15校、短大5校)が設置認可申請中。
順調にいけば、2020年以降は全国で幅広い分野の専門職大学・専門職短期大学が増えていきそうだ。
それでは、2019年4月登場の3校について、どんなことが学べるのか、どんな特色があるのかをチェックしてみよう。※学校名五十音順
高知リハビリテーション専門職大学
医師や看護師などほかの専門職と連携して活躍できる力を養う
4年制の専門学校だった高知リハビリテーション学院が移行した専門職大学。
キャンパスがあるのは高知県土佐市。学部・学科構成は次の通りだ。
高知リハビリテーション専門職大学では、専攻ごとにリハビリテーションの専門職である理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(いずれも国家資格)を育成。
目指すのは、医療機関や地域社会で、医師や看護師をはじめ、ほかの医療・保健・福祉系職種と連携しながら活躍できる専門職を育てること。
※リハビリテーションの専門職としての使命感や目的意識、コミュニケーション能力、実行力、協調性などを伸ばす
そのため、単に国家資格取得に必要な知識・技能を身につけるだけでなく、リハビリテーションの専門職としての使命感や目的意識、コミュニケーション能力、実行力、協調性など、学生の個性に応じた人間性を伸ばす教育に力を入れていることが特色の一つ。
この人間性の形成をベースに、科学的思考力や問題解決能力、主体的学修力を総合的に高めていく。
また、保健医療福祉領域のほかの専門職との連携をスムーズにするために、展開科目として関連する他分野について学修するカリキュラムになっているのもポイントだ。
地域の医療・保健・福祉に貢献できるリーダーの育成を目指す
地域に貢献できる人材育成に力を入れている点も同専門職大学の大きな特色。
土佐市や高知県の地域特性を踏まえ、健康寿命を延ばす取り組みや介護予防、高齢者や障がい者自立支援、障がい発生予防、障がい児療育や特別支援教育、障がい者の就労支援や生活活動支援、より良いコミュニケーションのための環境づくりなどに携わるリーダーを育てるため、地元と連携した教育を行っていく。
地元企業とのコラボレーションによる医療・介護関連の機器の研究・開発、支援サービスの開発などにも取り組むことができる。
2019年度入試は指定校推薦入試、公募制推薦入試、社会人推薦入試、一般入試、AO方式入試の5区分。
一般入試は3教科3科目の学力試験と面接。学力試験は、必修2科目(コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ〈リスニングを除く〉と国語総合〈古文・漢文を除く〉)と選択1科目(数学Ⅰ・A、化学基礎、生物基礎の3科目から 1 科目選択)が課される。
国際ファッション専門職大学
3年次には全員、海外実習・インターンシップを実施!
学校法人日本教育財団が運営する国際ファッション専門職大学は日本で唯一、「ファッション」と「ビジネス」を学ぶことができる専門職大学。
学部・学科構成は次の通りで、東京・大阪・名古屋の3地域に開設される。
・ファッションクリエイション学科、ファッションビジネス学科(いずれも東京キャンパス)
・大阪ファッションクリエイション・ビジネス学科(大阪キャンパス)
・名古屋ファッションクリエイション・ビジネス学科(名古屋キャンパス)
同専門職大学が目指しているのは、グローバルに活躍することができるファッション業界のリーダーを育成すること。
「世界」を視野に入れた人材育成に取り組むことが大きな特色だ。
専門職大学に義務づけられている長期の企業内実習もグローバルに実施する。
そういった時代背景から、国際教養をもつファッションの専門家を育てるために、3年生の時点で全員、海外実習、希望者はその後、海外インターンシップを実施します」(大学設立準備室責任者/後藤京子さん)
海外での実習・インターンシップ!
これだけでもワクワクしてくるひともいるのでは?
実習先はヨーロッパ、アメリカ、アジアと幅広く用意されるという。
指導陣も国内外の有名ブランド、企業から招かれる
教員陣は国内外の有名ブランドやファッション系企業の実務家が多数。
米 ラルフローレンをはじめ、パリ、ロンドンなどの欧米で活躍するプロによる特別講義も行われるなど、国内での教育もグローバルを意識した内容。
語学に関しては、一般的な英語学習ではなく、コミュニケーションしながら、ファッション業界で必要とされる実践的な英語を学ぶことができる。海外からの留学生も受け入れる。
※開学にあたっての記者発表へ登壇した山本寛斎氏・近藤誠一学長・鈴木寛氏(左から)
デザインなど、単にファッションの専門知識や技能を身につけるだけでなく、グローバルなファッションビジネスの舞台で必要となる力も養いたいというひとにとっては要注目の専門職大学だ。
国内の受験生を対象とした2019年度入試は、AO入試、一般入試の3区分(ほかに留学生入試あり)。
AO入試は「書類審査」と「面接」で選抜。一般入試では、「書類審査」「面接」に加えて、高校卒業程度の国語・英語の基礎学力を測る「適性診断Ⅰ」、論理的な思考力・表現力を測る「適性診断Ⅱ」が課される。
※2020年度より、上記に加え推薦入試を実施予定。
ヤマザキ動物看護専門職短期大学
訪問看護や在宅看護にも対応できる動物看護師を育成する
動物看護や動物美容などの教育に実績のある学校法人ヤマザキ学園が新たに開設したヤマザキ動物看護専門職短期大学。
キャンパスは東京都渋谷区。学部・学科構成は次の通り。
※動物のトータルケアや、専門性を活かして消費者と企業をつなぐ動物看護師を目指す
同専門職短期大学が目指すのは、動物病院で獣医師をサポートするだけでなく、訪問看護と在宅ケアに対応した動物のトータルケアができる動物看護師の養成と、飼い主(消費者)と企業をつなぐ動物看護師の養成である。
市場規模が1兆5000億円ともいわれるペット産業において、今まで以上に幅広い領域で重要な役割を果たすことができる専門職を意識している点が大きな特色だ。
教育面でのポイントは「学内実習450時間+臨地実務実習(企業内実習)450時間」というボリュームで行われる実習と、「少子高齢化社会と人口問題」「消費者行動分析学」「起業論」など、世の中や関連する他分野について幅広く知ることができる展開科目が充実している。
1~3年次それぞれに現場での実習をしっかり行う
臨地実務実習は1~3年次を通して行われる。
1年次は校舎に併設されているペットサロンか動物病院で各3日間の実習、2年次は動物病院と動物関連企業などで8日間×2施設、3年次は動物病院か動物関連企業で7日間×3施設の実習を行うため、学生の立場で、段階的に幅広い現場経験を重ねていくことができる。
2019年度入試はAO入学試験、公募推薦入学試験、社会人入学試験、一般入学試験の4区分。
AO入学試験は「書類審査」「自己推薦書」「小論文」「個人面接」、公募推薦入学試験は「書類審査」「小論文」「個人面接」、一般入学試験は「書類審査」「筆記試験2科目(理科・英語)」で選抜される。
気になる学校があったら早速ホームページで情報をチェックしてみよう!
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