「コスパがいい勉強法」ってあるの? 地方県立高校から東大理三に合格した 現役東大生に聞いた

「東京の大学に憧れているけど、地方の公立高校だと不利」「受験勉強には時間も、塾に行くお金もかかる」と、志望校をあきらめてしまっていない?

一所懸命に勉強していても、なかなか成績がアップしないのは、勉強法が間違っているかも?

「正しい勉強法」は、実はとてもシンプルで無駄がなく「コスパがいい」もの。無駄な時間とお金を使う必要がないのだ。

そんな「コスパがいい勉強法」について、地方の県立高校から東大理科三類に合格した現役東大生の佐々木京聖さんに教えてもらった。
 
受験を控えている高校3年生でも間に合う直前対策の勉強法もあるので、ぜひ実践してみよう!  

【今回教えてくれたのは…】
東大生が教えるコスパがいい勉強法
佐々木 京聖さん

東京大学 医学部医学科在籍(2020年現在)。
1996年5月23日生まれ。福島県郡山市出身。
東京大学医学部の野球部で活動しながら、塾講師や家庭教師として受験生に指導をしている。趣味は野球、海外旅行、ゴルフ、食べること。
著書『現役東大生が教える超コスパ勉強法』(彩図社)
 

地方の県立高校出身でも東大理科三類に合格できる!

現役東大生が教える超コスパ勉強法

※効率の良い勉強法を教えてくれた佐々木さん


地方の県立高校出身で、東大医学部に通っている現役東大生・佐々木京聖さん。  
 

著書『現役東大生が教える超コスパ勉強法』を出版しようと思った理由は?

「僕が合格した東大理科三類は、ほとんどが東京や大阪の有名な私立の進学校出身。

僕は福島県郡山市出身で、家の周りは田んぼや畑が多く、電車は1時間に1本くらいしか走っていない田舎ですが、そんな地方の県立高校出身でも東大理科三類に合格できることを知ってもらうことで、地方の高校生たちの励みになればうれしいと思ったのです。

僕が編み出した超コスパ勉強法を形として残しておきたい気持ちもありました」
 

地方の公立高校が東大受験に不利だと思った理由は?

「地方にも塾や予備校がありますが、難関大学の受験対策のノウハウを持っている先生が少ないのです。

東京や大阪なら、この塾や予備校に通って、頑張ってついていければ合格できるかも、というレールがありますが、地方には難関大学を目指すレールが少ないから、自分で道をつくらなくてはいけない。合格するために、どんな勉強をすればいいか、わからないのです。
だから、僕が編み出した勉強法を教えようと思いました。

高校3年生のときは、その勉強法がわからず、手も足も出なくて不合格。

一度、失敗しているので、これはやってはいけない、これはやるべき、と両方を教えることができます」

そもそも東大を目指そうと思ったきっかけは?

「通っていた高校の企画で、東大の学園祭・五月祭へ行ったとき、初めて見た現役の東大生がカッコ良かった。ガリ勉のイメージがあったけど、キラキラして見えて、こんな大学生になりたいな、と憧れました。

その後、他の大学のオープンキャンパスにも参加してみましたが、やっぱり東大に挑戦しようと決心!」
 
正しい勉強法は、とにかくコスパが良くて、無駄な時間やお金はかからないという。

では、実際にどうすればいいのか、聞いてみた。  

超コスパ勉強法1~3は、大学受験を控えている高校3年生の直前対策にも活用できるので、参考にしてみよう。  

超コスパ勉強法1 本番の試験と同じ時間をかけて、見直しの練習もする

「受験勉強では、当然、過去問題を解きますが、その解き方で高得点が取れるかどうか決まってきます。
まず、本番の試験と同じ時間でやってみること。

例えば60分間の試験なのに、50分で解けてしまったら、じゃあ丸つけしてみよう、と終わってしまう人がいますが、それではダメ。なぜなら、本番で時間が余ったら必ず見直しをしますよね? その見直しの練習も必要なのです。

見直しの練習をすると、自分がどういうところに気をつけて見直すべきかがわかって、効率良く見直せるようになり、本番での点数が5~6点はアップできますよ」
 

超コスパ勉強法2 わからなかった問題だけを書き出したノートをつくる

「問題集や過去問題を解いて、できなかった問題、わからなかった問題は、科目別に1冊のノートに書き出しておきましょう。

間違った問題をもう一度勉強し直すのは時間がもったいないので、その時間を節約するためのノートをつくるのです。

試験の直前に見直せば、一気に復習ができます。試験に同じような問題が出て、『あれ? さっき見たばっかり』ということもありますよ。

大事なことしか書いていないノートだから、全部黒字でOK。カラフルに色分けしたり、マーカーをする手間も必要もありません」
 

超コスパ勉強法3 できそうな問題から解くために、それを見極める練習をする

東大生に聞く超コスパ勉強法

※『現役東大生が教える超コスパ勉強法』199ページより

「第1問目から順番に問題を解いていくのではなく、まず全部の問題に目を通して、できそうな問題から解いていくのがポイント。

東大に合格する人は、難しい問題まで解けると思われがちですが、難しい問題が解けなくても、総合点で合格点を1点でも超えられればいいのです。ちゃんと勉強したのに、試験本番で緊張して、いつもならできる問題が解けなかった、というのが一番悔しいし、僕自身も現役のときに失敗しました。

最初から問題を解いていくと、例えば第1問目に難しい問題が出たとき、パニックになって終わってしまう。

試験問題の難易度はバラバラになっていることが多いから、普段から自分が解けそうな問題と難しそうな問題を最初に見極める練習をしましょう。解ける問題を確実に取っておくことが大事なのです。

例えば東大の入試の数学は、6問中4問を確実に得点できれば合格点に達するので、最悪2問は白紙でもいいくらいの気持ちだと余裕がでてきます。僕は最初の30分は何も解答せず、6問の問題を各5分ずつ考えて、優先順位を決めました。試験時間150分間の場合、最初の30分は問題の見極め、110分で解答して、最後の10分は見直しに使っていました。

センター試験だと試験時間が短いので、1問2分ずつ見極めに使って、ラスト5分は見直しに使うといいでしょう。

例えば、残り5分で、まだ1問解いていなくて、どうしようか迷ったとき、その1問が5分で解けなければ無駄になってしまいます。

最後に残すのは難しい問題なので、5分で解けない可能性が高いでしょう。

最後の5分は見直しに使ったほうが効率良く得点を稼げる可能性が高いと思いますよ」
 

超コスパ勉強法4 スランプに陥ったら3日間くらい苦手科目の勉強をやめる

「大学受験本番まで残り1カ月なのに、問題を読んでも文章が頭に入ってこない。

過去問題を何回やっても正答率が下がってしまう。

受験直前になると『気持ちの焦り』からスランプに陥ってしまう人が増えていきます。僕もそうでした。

自分ではどうしようもなくなって、予備校の先生に泣きながら相談したら、『これから3日間、苦手な国語はやらなくていいよ』と言われたのです。先生を信じ、3日間は国語を忘れて、他の科目を頑張りました。

そして3日後に国語の勉強を再開したら、調子が戻っていて、ビックリ! 少し時間をおいたことで、脳が勝手に苦手科目に対する偏見を整理してくれたようです。

本番が近いのに勉強をやめるのは勇気がいることだけど、僕の場合はそれで救われました」
 

超コスパ勉強法5 模擬試験を受けたら必ず3回ずつ復習をする

「入試本番が近くなってくると、受験した模擬試験がたまってきていると思いますが、復習しないまま、受けっぱなしだと超コスパ勉強法とは言えません。

僕は『3 STEP復習法』で、必ず3回ずつ復習しました。

1回目は模擬試験終了直後。試験を受けた当日か、遅くても翌日。自己採点をするのが目的で、解答や解説をチェックし、間違っていた問題は解説を読んで解き方を確認。

正解でも、自分と違う解き方だったら、そのやり方までチェックすると良いですね。

2回目は試験の結果が返却されたとき。不正解の問題を中心に、なぜ間違えたのか、解答や解説を徹底的に復習しましょう。記述問題で減点されていたら、なぜ減点されたのか、しっかり分析をすること。

3回目は2回目の復習をした1~2カ月後。

試験についてすっかり忘れた頃に、すべての問題を解き直します。

知識の確認になるし、最初よりも短時間で解けて得点が上がれば、自信につながりますよ。

逆に解けなかったら、苦手な問題が再認識でき、そこを重点的に勉強すればいいので、入試本番直前に3回目の復習をするのがオススメ。
 
3回ずつ復習をすれば、これまで受けてきた模擬試験が無駄にはなりません。

入試本番直前になると、もっと他にやらなきゃ、という焦りから、新しい参考書や問題集に手を出してしまいがちですが、お金と時間が無駄になるだけ。この時期は、今まで使ってきた問題集や模擬試験の復習をして、完璧に自分のものにするほうがコスパは良いのです」
 

超コスパ勉強法6 すきま時間とスマホをうまく活用する

「これまで勉強習慣がなかった人が『1日〇時間勉強する!』と決めても、いきなり集中力を長時間持続させるのは難しいですよね。  
そこで、まずは、すきま時間を使うことから始めましょう。  

例えば、通学の電車に乗っている20分間とか休み時間の10分間、スマホでSNSや動画サイトを見るのではなく、暗記モノ、特に単語の勉強をするのがオススメ。単語帳を使ってもいいのですが、スマホのアプリを使えば、効率良く勉強できますよ。

僕のオススメを紹介しますが、自分に合いそうなものを試してみてください」
 東大生が教えるコスパ勉強法

※『現役東大生が教える超コスパ勉強法』68ページより



 
 
6つの超コスパ勉強法をベースに、科目別では、特にどんなポイントがあるのか、聞いてみた。

科目別・超コスパ勉強法【英語】 英単語・英文法・英文読解を同時並行で勉強する

「最も早くて効率の良い英語の勉強法は、まず英単語を暗記して、英文法を使えるようにしてから長文を読む、ではなく、すべて同時に勉強していくやり方。  

英文読解やリスニングの問題を解き、わからない単語や文法が出てきたら調べて、その都度、覚えていく、という実践形式です。
英単語は、書いて覚える、読んで覚える、単語帳などに付いているCDを聴いて覚える、聞いた単語を発音して覚える、中には見ているだけで覚えられる人もいるので、まず自分に合った単語の覚え方を見つけましょう。
 
英文読解は、とにかくたくさん読んで速読力をアップするより、一文一文の構造を細かく読み解く練習をするといいですね」
 

科目別・超コスパ勉強法【国語・現代文】 設問の守備範囲を見極めるようにする

「国語の現代文は、評論文も小説も、まったく同じ解き方で解けます。この設問は、本文のどこの範囲を理解してほしいのか、出題者が傍線を引いている意図を考えるようにするのです。  

すると、この問題は1段落目から3段落目までの内容をまとめれば解答できるようにつくられているな、とわかるようになってきます。  
出題者がどの範囲の理解を求めているか、各設問の守備範囲を的確に把握できるようになれば、解答時間の短縮になり、正答率がアップしますよ。
選択式問題を記述式で解いてみるのもオススメ。選択肢を見ないで、60~100文字程度で解答を書いてみるのです。記述式で解答する練習をしていくと、実際に書かなくても頭の中で記述解答ができるようになり、選択肢で迷うことがなくなると思います」
 

科目別・超コスパ勉強法【国語・漢文】 ひたすら句形を覚える

「最もコスパの良い科目が国語の漢文です。

2週間しっかり勉強すれば正答率9割も夢ではありません。

漢文は、ほとんどが句形を問う問題なので、句形さえマスターしていれば解答できます。句形とは、英語でいう文法みたいなもの。例えばセンター試験に出やすい句形は50くらいしかないので、ひたすら音読をして、漢字の順番と意味を覚えればいいのです。

しかも、漢文は英語と同じ文型で、SVOCの順番が同じなので、英語の知識を転用できるというコスパもあります。

現代文だと問題文によって得意不得意の差がでるので、国語の得点は漢文で着実に稼ぎましょう」
 東大生が教えるコスパ勉強法

※『現役東大生が教える超コスパ勉強法』151ページより

科目別・超コスパ勉強法【数学】 とにかく書いて解法パターンを頭に入れる

「数学は、とにかく手を動かして問題を解きましょう。わからなかった問題や間違えた問題は、解説文の大事そうなところにマーカーをして終わるのではなく、最初は丸写しでもいいから、解き方や解答をノートに書くこと。文字としてノートに書き起こしていると、解答ではシンプルに書かれている計算が、実はすごく難しい計算をしていることに気づくこともあります。

数学は書かないと成長しません。

そして『定石=頻出問題の解法パターン』をたくさん頭に入れましょう。

大学の入試問題は、教科書に載っている定石を組み合わせるだけで解けてしまう問題がほとんど。定石は、とにかく何回もくり返して解くことで、覚えるというより、身体に染み付いていくものです」
 

科目別・超コスパ勉強法【物理】 基本となる公式を理解して解答を研究する

「物理が苦手な人は、ひたすらたくさんの問題を解いて、本番の試験で、あの問題は確かこういう解き方だったから、と公式を当て込むコスパの悪い勉強法をしています。

物理は公式が多いというイメージがありますが、単元ごとに基本となる公式があって、そこから他の公式が派生しているもの。たくさんの公式を丸暗記するのではなく、基本の公式がどうしてそうなっているのか、『物理法則』を理解して使えるようになれば、自然に他の10個の公式がでてきます。

この『物理法則』を導けるようになるには、解いた問題を研究する作業が重要なので、最初はなかなか成績が上がらず、苦しい時期があるかもしれません。しかし、爆発的に成績アップするときがくるので、物理では量よりも深さを追求して、『公式と基本原理』を正しく理解する勉強をしましょう」
 

「わからないところ」がわからない人は一つ一つ解決していこう

「そもそも、わからないところがわからない、という人は、まず自分はどこができないかを特定しましょう。
教科書を読んで、問題集を解いて、どこでつまったのか、そのつまったところを先生や友達に聞いて、一つ一つ解決していく。

すごく当たり前のことのように思えるのですが、勉強ができない子は、できなかったところを飛ばしてしまいがち。それが溜まった結果、もうダメだ、最終的に1からやり直すことになって時間がもったいない、となる。

僕も現役時代は、とにかく量だけこなそうと思って、わからないところは、これは試験に出ないだろうと飛ばしていたら、それが本番の試験に出てしまった。

とにかく、わからない問題を一つ一つ解決していくこと。

問題集を1冊解くのに、1周目は時間がかかるけれど、2周目、3周目とくり返していけば、解答時間が短縮できるようになっていきますよ」
 

「この大学に行きたい」という憧れだけで進路を決めてもいい

「高校生のうちから、将来やりたいことや職業を決めるのは難しいと思うのです。『この大学に行きたい』という憧れで決めてもいいのではないでしょうか。

東大は1~2年次の成績で、自分の行きたい学部を変えることができて、極端な例では文系から医学部へ進むことも可能。他の大学でも、大学内で転部や転科ができる場合があるので、僕のように『この大学の先輩がカッコイイから行きたい』くらいの気持ちで始めるほうがプレッシャーにならないかもしれませんね。

その大学独特の空気感があるので、オープンキャンパスに参加するだけでなく、興味のある大学にふらっと入ってみてもいいでしょう。実際にキャンパスの雰囲気を見ることで、モチベーションがかなりアップしますよ」
 

3年生はこれまでにやったことがないくらい勉強してほしい

東大生が教えるコスパ勉強法

※佐々木さんから高校生へエール

「今、3年生の人は、本番の入試直前に他の問題集に手を出しても、できないと焦ってしまうだけなので、これまでやってきたことを信じて、今まで使ってきた参考書や問題集を見直したり、復習に力を入れて、取りこぼしのないように頑張ってほしい。過去問題を解いて、間違っていた問題だけを書き出したノートをつくれば、本番の試験直前に見直せます。

今後の人生で大学受験ほど勉強することはない人のほうが多いと思うので、これまでに勉強したことがないくらい、必死に勉強してください。やり過ぎても死なないので(笑)。

万が一、第一希望が叶わなかったとき、勉強しなかったからとモヤモヤ感が残ってしまうより、やりきった感があったほうが後悔はないと思います」
 

1~2年生は自分に合ったスタイルの勉強法を見つけよう

「1~2年生は、自分が一番コスパがいいと思える勉強法を見つけましょう。どうやったら覚えやすいか、勉強に集中できるか、は個人差があるので、いろいろ試してみるといいですね。

行きたい大学があったら、今はまだ手が届かなそうなレベルでも、憧れの気持ちを大事にして、あきらめないでほしい。まだ志望校はいくらでも変えられます。

一度ランクを下げてしまうと落ちていくだけで、勉強のモチベーションも下がってしまうから、自分の気持ちに嘘をつかないで、今は上を向いて勉強を頑張っていきましょう
 
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