史記「鴻門之会」(こうもんのかい)の現代語訳をわかりやすく解説!
中国の歴史書『史記』には、史実がよくわかる話がたくさんあります。その中でも有名な「項羽と劉邦」の戦いについて記した『鴻門之会(こうもんのかい)』について、スタディサプリの古文・漢文講師 岡本梨奈先生に解説してもらった。
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岡本梨奈先生
古文・漢文講師
スタディサプリの古文・漢文すべての講座を担当。
自身が受験時代に、それまで苦手だった古文を克服して一番の得点源の科目に変えられたからこそ伝えられる「わかりやすい解説」で、全国から感動・感謝の声が続出。
著書に『岡本梨奈の1冊読むだけで古文の読み方&解き方が面白いほど身につく本』『岡本梨奈の1冊読むだけで漢文の読み方&解き方が面白いほど身につく本』『古文ポラリス[1基礎レベル][2標準レベル]』(以上、KADOKAWA)、『古文単語キャラ図鑑』(新星出版社)などがある。
目次
1分でわかる!『鴻門之会』ってどんな話?
これまでの『鴻門之会(こうもんのかい)』のあらすじをわかりやすく解説!
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秦の始皇帝が死ぬと、各地で反乱が起きる。
秦軍を破り、函谷関(かんこくかん) に着いた項王(こうおう)が、沛公(はいこう)に先を越されたことを知る。
さらに、項王は、沛公の部下である曹無傷(そうむしょう)から「沛公は関中(かんちゅう)の王になろうとしている」と告げられ、激怒して、沛公の軍を攻撃しようとする。
それを知った沛公が、数人の家来とともに項王のもとを訪れ、言い訳をしたところ、項王は怒りを鎮めた。
その日、項王は沛公を引き留め、酒宴を行う。
項王の部下である范増(はん ぞう)は、今、この機会に沛公を殺すように項王に目配せをするが、項王は応じなかった。
そこで、范増は項荘(こうそう)を呼び、剣の舞にかこつけて沛公を殺すように命じ、項荘は剣舞を実行する。
しかし、項王の叔父でありながら沛公の部下の張良(ちょうりょう)に恩がある項伯(こう はく)は、項荘が沛公の命を狙っていることを察し、項伯も剣を抜いて舞い、自分の身体で沛公をかばって守ったので、項荘は沛公を攻撃する機会をみつけられない。
そんな中、酒宴に同席している張良が酒宴を抜け出し、部下たちが待機している軍門に行き、樊噲に会った。そこからのお話。
今回の『鴻門之会(こうもんのかい)』のあらすじをわかりやすく解説!
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秦の始皇帝の死後、次の皇帝の座を狙って戦った項羽と劉邦の話。
劉邦が項羽と和解するために会見したとき、項羽の部下が劉邦を暗殺しようとするが、項羽の叔父・項伯や劉邦の部下の樊噲などの活躍により、劉邦は無事難を逃れることができた。
『鴻門之会』の登場人物とよみがな
●項王(こうおう)=項羽(こうう)。家は、代々楚の国の将軍を務める。秦軍と戦う反乱軍の最高司令官●沛公(はいこう)=劉邦(りゅうほう)。後に項王を破り、漢の初代皇帝となる。
●張良(ちょうりょう)沛公の部下
●樊噲(はんかい)沛公の部下
●曹無傷(そうむしょう)沛公の部下
●項荘(こうそう)項王のいとこ
●范増(はんぞう)項王の部下
●項伯(こうはく)項王の叔父。かつて張良に助けられたことがあり、恩がある
●秦王(しんおう)=始皇帝
●懐王(かいおう)項王らによって仮に立てられた天子
『鴻門之会(こうもんのかい)』の現代語訳を見てみよう
※緑は下記にPoint記載そこで張良は陣営の門へ行き、樊噲を見た。
樊噲が言うには、「今日の会見は、どのようだ」と。
張良が言うには、「とても切迫している。今、項荘が剣を抜いて舞を舞っている。その狙いは常に沛公にあるのだ〔=沛公を殺そうとしている〕」と。
樊噲が言うには、「これは危ない。どうか私に、宴席に入り、沛公と生死をともにさせてください」と。
樊噲はすぐに剣を腰につけて、盾をだき抱えて陣営の門から入ろうとした。
戟を交差して守る番兵が、中に入れないように留めようとした。
樊噲はその盾を傾けて、そして(それで)突いた。
番兵は地面に倒れた。
樊噲はついに中に入り、張り巡らした幕を手でかき分けて、西を向いて立ち、怒って目をむいて項王を見た。
頭髪は逆立ち、めじりはすっかり裂けていた。
項王は剣を手でおさえて立膝をついて身構えて言うには、「お前は何者だ」と。
張良が言うには、「沛公の護衛のために同乗する者で樊噲という者です」と。
項王が言うには、「勇壮な男である。このものに大杯についだ酒を差し上げよ」と。
そこで一斗入りの大杯についだ酒を与えた。
樊噲は拝礼して立ち、立ったままこれを飲んだ。
項王が言うには、「このものに豚の肩の肉を差し上げよ」と。
そこで一つの(塊の)生の豚の肩の肉を与えた。
樊噲は持っていた盾を地面に伏せて、豚の肩の肉を上に載せて、剣を抜いて切って、これをむさぼり食べた。
項王が言うには、「勇壮な男である。また飲むことができるか」と。
樊噲が言うには、「私は死でさえ避けない。まして、大杯についだ酒など、どうして辞退しようか、いや、しない。
そもそも秦王には虎狼の心〔=残忍な心〕がありました。
人を殺すことが数えることができないほどで、人を罰することも数えられないほどで(処刑しきれないことを)心配するほどでした。
(だから)天下の人々はみんな秦王に背きました。
懐王は、諸将と約束をして言うには、『先に秦を破って咸陽[=秦の都]に入った者は、その地の王としよう』と。
今、沛公が、先に秦を破り咸陽に入りましたが、少しも決して自分のものにすることがなかった。
宮室を閉鎖し、軍を陣を引いた場所の覇上に返して、大王様〔=項王〕がいらっしゃる
のを待っていました。
わざわざ将兵を派遣して函谷関を守らせたのは、他の盗賊が出入りするのと非常事態とに備えたのです。
苦労がとてもひどく功績が高いことはこのようですが、まだ諸侯に取り立てる恩賞もありません。
しかし(項王は)つまらない者の言うことを聴いて、功績がある人を殺そうとお考えです。
これは滅亡した秦の二の舞なだけです。
はばかりながら大王様には賛成はしません」と。
項王はまだ何も答えない。
「座れ」と言った。
樊噲は張良に従って座った。
座ってまもなく、沛公は立って厠に行った。
ついでに樊噲を招いて出て行った。
沛公はすでに(項王のもとを)出た。
項王は軍の部隊長の陳平に沛公を呼ばせた。
沛公が言うには、「今出てきたが、まだ別れの挨拶をしていない。(もう一度、酒宴の席に戻って)これをするのは、どうだろうか」と。
樊噲が言うには、「大きな行い(をするに)は小さな謹みなど気にとめず、大きな礼(を行うに)は小さな譲り合いなど問題にしない。
今、人〔=項王側〕は包丁とまな板で、私〔=沛公側〕は魚と肉です。どうして別れの挨拶をしようか、いや、しない」と。
そこで、そのまま立ち去った。
『鴻門之会』の定期テスト対策!ポイントをチェック
「於是」の現代語訳
「於」と「是」の間にレ点(返り点)を付けて、「ここにおいて」と読みます。ちなみに「以是」は「これをもって」と「是」の読みが「これ」に変わりますが、「是以」と逆になると「ここをもって」で「ここ」と読みます。
試験によく出る読み方なので、しっかりと覚えておきましょう。
「何如」の読みと現代語訳
文末に「何如」があり、「何」が上のときは送り仮名が付かず、「いかん」と読みます。「いかん」と読んだ場合は、状態や結果の疑問になるので、「どうであるか」「どのような様子か」と訳します。
「何為者」の読みと現代語訳
「何為」は「なんすれぞ」と読む重要な疑問形ですが、「何為者」と「者」が付いた場合は「なんするものぞ」と読みます。現代語訳は「何者だ」です。
「臣死且不避。卮酒安足辞。」の現代語訳
「死且」は、「死スラ且ツ」と送り仮名を入れて、「死でさえ」と訳します。大事なポイントは「安」です。「安クンゾ」と送り仮名を入れて、「いづくんぞ」と読みます。
「安クンゾ」には疑問と反語の2つがありますが、ここでは次に「足ラン」と「ン」の送り仮名が付くところに注目。「ン」や「ンヤ」と一緒に使っているときは反語になります。
そのため、「私は死でさえ避けない。まして、大杯についだ酒など、どうして辞退しようか、いや、しない。」と訳します。
「夫」の読みと現代語訳
「夫」は重要単語です。「夫レ」と送り仮名を付けて「それ」と読み、「そもそも」と訳します。
別の話題に変わったり、まとめのような話になっていくことが多いです。
「不敢」の現代語訳
「敢ヘテ」と送り仮名を付けて「あへて~ず」と読み、「決して~ない」と訳します。「窃」の読み
副詞「窃」は「ひそかに」と読みます。その他に「ひそかに」と読む漢字には「私」と「陰」などがあります。
「須臾」の読みと現代語訳
「しゅゆにして」と読み、「わずかな時間・しばらく」と訳します。「未辞也」の書き下し文
「未」と「辞」の間にレ点が入りますが、「未」は再読文字なのでレ点を無視して、まず「未だ」と読みます。「辞」は「辞す」という動詞ですが、上に「未」が付いているので未然形にして「辞せず」。
しかし、その後の「也」は上に疑問や反語がないので、断定の「なり」となるため、連体形にして「辞せざる」です。
「也」は断定の助動詞なので、書き下し文にするときは平仮名になり、「未だ辞せざるなり」となります。
「何辞為」の現代語訳
「何ゾ」と送り仮名が付くときは、疑問なのか反語なのか見分けましょう。ここでは、その後に「為サント」と送り仮名に「ン」が入るので、反語になります。
そのため、「どうして別れの挨拶をしようか、いや、しない」と訳します。
この数年後には、今は下の立場にいる沛公が項王を逆転していく展開になります。
とても有名な話もあるので、漢文を読む練習として活用していきましょう。
取材・文/やまだ みちこ 監修/岡本 梨奈 イラスト/カワモト トモカ 構成/黒川 安弥
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