【文学部、国際・外国語学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

学部によって書き方やテーマが異なる小論文。

対策として過去問を演習することはもちろんだが、目指す大学や学部の出題傾向に応じた社会課題やその背景にある歴史、国際情勢にも視点を向け知識を蓄えていきたいところだ。

今回は文学部、国際・外国語学部の小論文対策を紹介。

現代文・小論文講師の小柴先生による論理的思考と構成力のポイントを押さえて、合格点を目指そう。

教えてくれるのは
小柴大輔先生

【文学部、国際・外国語学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

Z会東大進学教室で講師を務めるほか、ロースクール(法科大学院)受験の予備校においても一般教養小論文を指導している。
感覚ではなく論理的に答えを導く指導に定評があり、「現代文に対するイメージが変わった」と受験生から圧倒的な支持を集めている。
スタディサプリでは、現代文の他、小論文や総合型、学校推薦型選抜の対策講座を担当。

文学部の小論文対策

【文学部、国際・外国語学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

※文学部の小論文では文系学部の存在意義について出題されたことも

文学部に限らないが、小論文では読解力と思考の幅を求められる。

したがって、自分の考えやその根拠を論述するためには、日ごろから社会問題歴史的背景の知識を広げておくことが重要だ。

新聞はもちろん、関連する新書や書籍、論文などを読んで理解しておこう。

問題意識をもって読むことで読解力をつけることができる。

また、最近では文系学部の存在意義をテーマとした問題が目立つ。

課題文に吉見俊哉氏による「『文系学部廃止』の衝撃」が引用され出題されたこともある。

文学は人類にとって必要なのか。必要であれば、それはなぜなのか。

他者が理解できる、説得力のある論述と思考力が求められている。

文学部の小論文頻出テーマをチェック!

実際に過去に出題されたテーマは以下。
 ◆「ルサンチマン」「ヘイトスピーチ」
 
◆「知識と情報と知恵」
 
◆「文系学部の役立ち方」
今年度考えられるテーマとして、コロナ禍など「非常時における文学や芸術などの存在意義がある。

文学や哲学、芸術は、コロナ禍の社会や人々の暮らしに何かをもたらしたとしたら、それは何か。

文学はなぜ存在しているのか、考えてみよう。

また、多様性を問う出題にも注意したい。

多様性とは、マイノリティ障害の有無だけではなく、異文化や価値観、人生観、思想、宗教なども含まれる。

本来、社会を生きる人々は多種多様なはずなのに、なぜ誹謗中傷や争いが起きてしまうのか。

過去にはある大学の推薦入試で、「なぜ人は呪うのか」がテーマとして出題された。

コロナ禍で、良くも悪くも日本人気質が浮き彫りになったといわれる。

ヘイトスピーチと言論の自由、陰謀論と思想など、比較しながら考察しよう。
<ADVICE>

ある大学の文学部の一般入試で「哲学や文学はぜいたく品であり、飢えている人を救うことはできない」と述べ、ノーベル文学賞を辞退したサルトルの逸話と、「非常時こそ文学が必要」と訴えた岡真理氏を課題文紹介し、文学の存在の是非を問う出題がありました。

我々は、感染症流行の非常時であり、今まさに文学の存在意義を問われる経験をしています。

文学の登場人物に共感できることは、社会の中で生きるためにどうかかわってくるのか。

ぜひ、自分の言葉で考えをまとめてください。

社会問題について意見を求める出題もあります。

この場合、問われていることに対して解答できているかが重要であり、レアな知識や意見を求められているのではありません。

一方的にならないよう自分と異なる意見を踏まえつつ自分の意見を述べる。

設問条件を踏まえて論述することが重要です。

新聞の土曜・日曜版などに掲載されている書評は、要約や意見の論述方法を学ぶのに役立ちます。

文学部の小論文対策に読んでおきたい!小柴先生おすすめ本

『本へのとびら─岩波少年文庫を語る』
宮崎駿(岩波新書2011年)

著者は1941年生まれ、学習院大卒、東映動画を経て、スタジオジブリ設立。
かの宮崎駿監督による児童文学の案内書。
『書斎の王様』
「図書」編集部(岩波新書1985年)

17人の作家やジャーナリストがそれぞれの読書経験と書斎を語る。
本を読むことと書斎をもつことのべらぼうなカッコよさがわかる。
特に立花隆の「わが要塞」と小田島雄志の、喫茶店でシェイクスピア全集翻訳のエピソードは忘れられない。
『本は、これから』
池澤夏樹・編(岩波新書2010年)

編者は1945年生まれ、埼玉大工学部卒、『スティルライフ』で芥川賞。
本人を含む37人の本にまつわる未来像。
慶大文学部をはじめ多くの入試で出題されている。
 
<ADVICE>
「以下の「文学部は考える」シリーズは、「リテラチャー」だけでなく、およそ「文学部」で学べるトピックを網羅していて参考になります。」
『文学部は考える1 恋愛を考える』
(慶大出版会2011年)

「本質と変容」神崎忠昭:西洋史学/「プラトン哲学から恋愛の本質を考えよう」納富信留:哲学/「恋愛モバイルとモバイル恋愛」岡原正幸:社会学/「フランスと日本」荻野安奈:仏文学/「文学と愛の情景」小倉孝誠:仏文学/「江戸時代における恋愛模様─浮世絵から探る」内藤正人:美学美術史/「形象と色彩」倉田敬子:図書館情報学/「乙女チックマンガにおける恋と未来」大串尚代英米文学/「奈良絵本・絵巻に見る恋愛」石川透:国文学+安藤寿康:教育学/「イスラーム世界での恋愛・結婚・離婚」長谷部史彦:東洋史学/「恋における[遺伝子VS脳]」渡辺茂:心理学
『文学部は考える2 「絆」を考える』
(慶大出版会2012年)

「シェイクスピアと家族の絆」井出新:英米文学/「江戸時代農民と家族の絆」岡田あおい:社会学/「神に仕える人々の絆─古代・中世キリスト教修道士の世界」赤江雄一:英米文学/「宗教が生み出す二つの絆」樫尾直樹:社会学/「天安門事件」関根謙:中国文学/「ベルリンの壁崩壊」神田順司:西洋史学/「無縁社会と絆」浜日出夫:社会学/「絆と愛の脳科学」川畑秀明:心理学/「危機と絆─言葉はどこまで力を持つか」荻野安奈:仏文学
『文学部は考える3 「夢」を考える』
(慶大出版会2012年)

「限りなき夢の仲間たち」巽孝之:英米文学/「タカラヅカの夢」上田修一:図書館情報学/「夢ふくらむ南海の神秘─歴史人類学」山口徹:民族学考古学/「東洋の夢」井上櫻子:仏文学/「夢と道学」山本正身:教育学/「中国夢物語」八木章好:中国文学/「だからボクらは夢を見る」宇沢美子:英米文学/「大学に進むという夢」鹿又伸夫:人間科学/「人の夢、社会の夢」樽井正義:倫理学/「移民の夢」藤田苑子:西洋史学/「ハワイからの手紙」柳田利夫:日本史学/「リンカーンのボディガード」粂川麻里生:英米文学
『文学部は考える4 「私」を考える』
(慶大出版会2013年)

「感受性・パトスとしての私」池谷のぞみ:図書館情報学/「キリシタン史における痛み」浅見雅一:日本史学/「私の/と痛み」斎藤慶典:哲学/「文学の中の私」杉野元子:中国文学/「一人称小説の不思議」吉田恭子:英米文学/「わたくしという現象は……」村松友視:国文学/「アイデンティティを紡ぐ」清水明子:西洋史学/「記憶から見た私」伊藤裕司:心理学/「うつの医療人類学」北中淳子:人間科学/「近世に生きる私」谷寿美:倫理学/「芸術家における公と私─モーツァルトの場合」西川尚生:美学美術史/「旅人にみる私─オスマン帝国史」藤木健二:東洋史学

国際学部・外国語学部の小論文対策

【文学部、国際・外国語学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

※国際・外国語学部を志望しているのなら、グローバルな視点は欠かせない

最近の小論文試験では、言語と文化の関係を問うテーマがよく出題されている。

例えば、「日本において公用語を英語とするメリットとデメリット」。

英語を公用語としている企業はあるが、社会全体として考えるとどうだろう。

また、国際・外国語学部を志望しているのなら、グローバルな視点は欠かせない

世界の中における日本について考察してみよう。

昨今であれば、ダイバーシティとインクルージョンの問題がある。日本ではなぜ多様性の文化が浸透しにくいのか、考えてみたい。

新聞からの出題が多い傾向にあるため、新聞を読む習慣をつけよう

時事用語は日々変わる。

国際関係の時事問題について広い知識をもっておくことが必要だ。

国際学部・外国語学部の小論文頻出テーマ

 
◆「言語と文化の多様性・EU」「英語帝国主義」「英語の公用語化」

言語の一元化におけるメリットとデメリットが問われる。

例えばEUについて、通貨は統一されているが、言語は統一しないと明言している。

言語文化の多様性を、歴史的背景にも目を向けて考えよう。

◆「性的マイノリティ・LGBT」

多様性を問う出題で、文学部でもよくみるテーマ。

世界と日本を比較して考察しよう。

◆「異文化コミュニケーションで必要なこと」

グローバル化が進むなか、貧富の差や環境破壊、医療格差などの問題が起こるのはなぜなのか。

どこで問題が起こりうるのかを考える。

また、自国文化の特殊性を主張する弊害は、どこでどのように生まれているだろうか。

歴史を踏まえて、グローバルな関係構築を考えてみよう。

◆「グローバルIT企業と国家と個人」

経済学部や法学政治学部でもよくみるテーマ。

世界的巨大IT企業が躍進するなか、個人のプライバシー侵害自国の市場にもたらされる不利益の危機についてどう考えるのか。

さらに、日本企業による海外進出外国人労働者の増加について、メリットとデメリットを考えよう。

◆「環境問題」「感染症対策」

SDGsについての出題は増加傾向にある。

基本的な知識をつけておこう。

SDGsは環境問題だけではなく、貧困や教育、多様性なども重要な目標だ。

世界からみた日本の現状を説明してみよう。

また、世界的な感染症の流行で、各国で様々な対策が講じられ、文化や思想による分断も生じた。

国際交流が必須な時代における感染症流行について、考えをまとめておこう。
<ADVICE>

時事問題や国際情勢のデータに興味をもって、新聞を読みましょう。

ニュースを見るのなら、日本のものだけではなく海外の放送局のニュースも見ておきたいところです。

世界的な問題や日本をどう報道しているのかを知ることができます。

グローバルな視野を広げることができるでしょう。

テレビのニュースでも見ることはできますが、ネットであれば時間を気にせず視聴できます。

倫理、多様性を問う設問には、様々な考えがあるとしても全否定は避けましょう

文化についても「うちはうち、よそはよそ」と開き直ってはいけません。

世界の中の日本として、今後どうしていくべきか。

多様性と共生の視点をもって自分の考えを述べることが大切です。

国際学部・外国語学部の小論文対策に読んでおきたい!小柴先生おすすめ本

『異文化コミュニケーション学』
鳥飼玖美子(岩波新書2021年)

著者は上智大外国語学部卒、コロンビア大大学院修士課程修了、サウザンプトン大学院博士課程修了。立教大教授。
ラジオ「100万人の英語」講師、NHK「テレビ英会話」講師。
立教大学の超人気学部、異文化コミュニケーション学部の代表ともいえる先生の本。
『愛の不時着』などドラマや映画の事例が豊富でドラマが異文化理解・異文化衝突の格好の素材であることを教えてもらえる。
文化人類学の川田順造が提唱した「文化の三角測量(二つの文化比較では不十分で第3の比較軸を入れる)」は本書でも紹介されている。
同じ筆者の本として、『通訳者と戦後日米外交』(みすず書房07年)、『異文化コミュニケーション学への招待』(みすず書房21年)、立教大大学院異文化コミュニケーション学専攻(異文化コミュニケーション学部)の4人の教授によるがある。
『ウェブスター辞典あるいは英語をめぐる冒険─言葉の謎をとく14章─』
コーリー・スタンパー(左右社2020年)

筆者はアメリカで一番有名な英語辞書ウェブスターの編集者。
その採用面接から日々の業務、そこでの悲喜こもごもがつづられる。
また近代言語である英語の成立・起源の説明に加え、現在進行形で生きた言語である英語のダイナミズムがよくわかる。
ことばというものに関心のある、すべての読者の心に響く内容。
『日々翻訳ざんげ─エンタメ翻訳この四〇年』
田口俊樹(本の雑誌社2020年)

著者は1950年生まれ、早大卒、高校教師を経て、翻訳業へ。
翻訳学校の講師でもある。
ブンガクならぬエンタメ系の翻訳200冊以上のベテランのエッセイ。
翻訳の失敗談や苦労話はどうしてこんなに楽しいのだろう。
本書自体がエンターテインメント。

哲学的な思考とグローバルな視点をもって対策を

【文学部、国際・外国語学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

自身の考えを論理的に説明するための知識と構成力を身に付けよう


文学部、国際・外国語学部ともに、思想や文化の違い、歴史的背景など、哲学や心理学の領域に踏み込んだ出題が考えられる。

日頃の読書や考察力が差をつけるため、時事、社会問題を把握できる新聞や、知識を得て論理的な思考を身につけることができる新書などの書籍を読もう。

国際問題では、環境問題だけではなく、格差や貧困、多様性など様々な課題があり、今はまだ解決への道半ばだ。

国際社会におけるこれからの日本のあり方や、課題を見つけ出し自身の考えを論述するための、知識と構成力が鍵を握ると言えるだろう。

小論対策にぴったりな記事をピックアップ!

小論文の構成、基本的な書き方を学びたい、例題に触れたいなど、小論文対策に本腰を入れていきたいキミのために、役に立つ記事をピックアップ。

スタサプの人気講師、小柴大輔先生が長年の受験生指導の経験から得たオリジナルのノウハウを紹介してくれているので、ぜひチェックしよう。

小論文とは何か、書き方の基本をマスターしたいなら

小論文の学習は初めて、苦手意識があるという人はまずはこの『書き方完全マニュアル』からスタートしよう。

小論文と作文の違い、基本的な書き方について詳しく解説されている。
 
模範答案と減点対象の答案が比較して解説されているので、合格に必要なレベルの答案とはどんなのか理解しやすいはず!

 

序論の書き方をマスターしたいなら

小論文の序論、本論、結論の中でも、重要な役割を果たす序論。

小柴先生も「最も重視して対策を行うべき」と話す序論の書き方について、より詳しく解説されているのがこちらの「書き方マニュアルⅡ・Ⅲ」だ。

序論がうまく書ければ加点が得られる可能性もぐんと高まる。

書き方のポイントと例文をチェックしよう!

 

大学入試での出題傾向をチェックしたいなら

小論文の基本を理解したら、次に、志望する大学でどのような形式の小論文が出題されるのか確認し、対策を進めていく必要がある。

大学入試での小論文の出題傾向、テーマ型小論文、課題文読解型小論文、資料分析型小論文の違いから、それぞれの対策方法まで、詳しく解説されている。

推敲の際に活用できる「小論文の評価基準チェックリスト」は保存必須!

 

学部ごとの対策を強化したいなら

小論文の出題内容やテーマは学部・学科ごとに大きく異なる。

他の学部・学科のものを知りたい人はこちらからチェックしよう。

●文学部、国際・外国語学部

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【心理学系分野】小論文&志望理由書対策のおすすめ本をスタサプ講師が解説!

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●法学・政治学部、経済学・経営学部

【法学・政治学部、経済学・経営学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

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時事問題を1冊でおさえる!小論文&志望理由書対策のおすすめ本をスタサプ講師が解説!


●理学・工学部、農学・水産学・畜産学部

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●医学部、看護・医療系学部、スポーツ学部

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\出題傾向を詳しく知りたいなら/


これらの記事を読んだら、ぜひさまざまな小論文問題に実際にチャレンジしてみよう。

基礎を理解し、書くトレーニングを重ねることで、小論文の得点力は確実にアップするはずだ。


取材・文/櫻庭由紀子 監修/小柴大輔 構成/寺崎彩乃(本誌)
※2024年10月更新