大学入学共通テスト利用入試とは? 個別入試との違い、メリット・デメリットを詳しく解説!

私立大学で増えている「大学入学共通テスト利用入試」。

共通テストを受けるだけで複数の私立大学に出願できる、コスパの良い入試方式だ。

とはいえ、もちろんデメリットや注意点もある。

概要を知ってポイントを押さえ、最大限に活用しよう!

教えてくれたのは
神﨑史彦 先生

株式会社カンザキメソッド代表取締役。スタディサプリ講師。私立学校研究家。高大接続・教育コンサルタント。21世紀型教育機構リサーチ・フェロー。

大学卒業後、大学受験予備校において小論文講師として活動する一方、通信教育会社や教科書会社にて小論文・志望理由書・自己アピール文の模擬試験作成および評価基準策定を担当。

延べ6万人以上の受験生と向き合うなかで得た経験や知見をもとに、小論文・志望理由・自己アピール・面接の指導法「カンザキメソッド」を開発する。現在までに刊行した参考書は26冊(改訂版含む)、販売部数は延べ25万冊、指導した学生は10万人以上にのぼる。

共通テスト利用入試とは?

毎年1月に実施される「大学入学共通テスト」(以下、共通テスト)。

「共通テスト=国公立大学を受験する人が受ける試験」という印象があるかもしれない。

実際、国公立大学の一般選抜は「共通テスト+2次試験(大学独自の試験)」、私立大学の一般選抜は「大学独自の試験のみ」というのが主流だ。

一方、私立大学の一般選抜には、共通テストの結果で合否を判定する「共通テスト利用入試」という方式もあり、近年は採用する大学・学部が増えてきている。

今回は、この私立大学の共通テスト利用入試について解説していこう。


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●学校の資料を取り寄せて調べる

私立大学の共通テスト利用入試は2タイプ


※共通テスト利用入試の「単独型」と「併用型」について理解しよう

私立大学の共通テスト利用入試には、「単独型」と「併用型」の2つのタイプがある。

それぞれ順番に見ていこう。

共通テストだけで合否が決まる「単独型」

共通テストの結果次第で合否が決まるのが、単独型。

共通テスト利用入試を採用している大学・学部の多くが、この形式をとっている。

受験科目は、少ないところは1〜2科目、多いところは5〜6科目と大学・学部によりさまざまで、配点も独自に調整するケースが多い。(神﨑先生)

共通テスト+大学独自の試験で合否が決まる「併用型」

共通テストの成績に加えて、大学独自の個別試験の成績で合否を判定するのが併用型。

両方の合計点で判断するケースもあれば、点数の高い方を採用するケースもある。

個別試験では、小論文や適性検査、総合問題などが課されることが多い。

同じ大学・学部でも、単独型と併用型の両方がある場合もあるので、自分にとって有利な方式を選択しよう。

共通テスト利用入試と個別入試との違いは?

私立大学の個別入試では3〜4科目が課されるのが一般的で、大学・学部の個性が表れた問題が出題される。

そのため、たとえ併願校であっても、受験校の過去問を解いて出題傾向や形式に十分に慣れておく必要がある。

受験校が増えるとそのぶん対策が必要になるため、受験勉強の負担がどうしても大きくなってしまう。

一方、共通テスト利用入試では、共通テストを受けるだけで複数の私立大学に出願できるため、効率よく受験対策ができる。

しかし、共通テスト利用入試は定員が少ないため合格最低点(ボーダーライン)が上がりやすい傾向があり、注意も必要だ。

実際、同じ大学・学部でも、個別入試の偏差値より共通テスト利用入試の偏差値の方が高いケースが多い。

以上のことから、一般選抜ねらいの受験生には、次のような戦略がオススメだ。


① 第1志望が国公立大学のケース

志望校対策の一環として共通テスト対策を行い、併願校受験時に私立大学の共通テスト利用入試を活用する。
共通テスト利用入試は、受験科目数が多いものがねらい目。


② 第1志望が私立大学のケース

本命の第1志望校は個別入試で受験。
共通テスト対策もしておき(受験科目を絞り込む方が対策しやすい)、併願校は共通テスト利用入試を活用して複数受験する。

共通テスト利用入試を実施する私立大学が増加


近年は、共通テスト利用入試を実施する私立大学が増える傾向にある。

共通テストを実施している独立行政法人 大学入試センターのホームページで共通テストを利用する大学を検索できるので、積極的に活用しよう。

また、最新の入試情報は各大学のホームページなどで確認することも忘れずに。

例年、6月頃から翌年実施の入試情報が公開されるので、早めにチェックしておこう。

※参考資料:大学入試センター

医学部にも共通テスト利用入試がある!?

私立大学の医学部のなかには、共通テスト利用入試を実施しているところもある。

1次試験として共通テストの成績を採用し、2次試験として小論文、面接、総合問題などを課すケースがほとんどだ。

ただし、定員が少なくボーダーライン(共通テストの得点率)もかなり高いため、「狭き門」であることには注意が必要だ。
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共通テスト利用入試のボーダーラインは?


※共通テスト利用入試のボーダーラインは独自入試よりも上がりやすい傾向

先に述べたように、共通テスト利用入試の定員は少なく、合格最低点(ボーダーライン)は独自入試よりも上がりやすい傾向にある。

だからといって、受験校のランクを下げるのは早急だ。

予備校などが発表している入試別の難易度ランキングをよく見てみよう。

上位(ボーダーラインが高い入試)には、受験科目数が少ない方式が並んでいるはずだ。

一方、受験科目数が5〜6科目と多い方式は、大学・学部自体の偏差値が高いとしても、ボーダーラインは意外と低いケースも少なくない。

つまり、受験科目数が少なければボーダーラインは上がり、多ければ下がる傾向があるということ。

「共通テスト利用入試=ボーダーラインが高い」と思い込まず、必ず細部までチェックしよう。
※参考資料「予備校などが発表している入試別の難易度ランキング」の一例(河合塾)

共通テスト利用入試の受験料は?

私立大学受験で気になるのが受験料。

一般選抜の独自入試は、医学部を除き、30,000円〜35,000円程度が一般的だ。

一方、共通テスト利用入試の受験料は、15,000円程度が相場。

共通テストの受験料18,000円(3教科以上受験の場合)を考慮しても、コストパフォーマンスが良い方式だと言えるだろう。

共通テスト利用入試のメリット・デメリット

ここで改めて、共通テスト利用入試のメリット・デメリットを見ていこう。

共通テスト利用入試のメリット

●地元で受験できる

共通テストは地元の受験会場で受けられるため、大学まで足を運ぶ必要がない。

移動の時間的・経済的コストがかからないため、特に地方在住の受験生にとっては大きなメリットだ。

また、受験シーズンの感染リスク軽減の面でも有効だ。


●受験料が安く抑えられる

先述のように、共通テスト利用入試の受験料は個別入試の約半額。

共通テスト利用入試の受験料を考慮しても、出費を抑えることができる。


●合否の予想がしやすい

予備校各社が実施するマーク式模試は、過去の共通テストの問題に準じて作成されている。

そのため、模試の得点と本番の共通テストの結果とのブレが小さく、出願先を見極めやすい。

共通テスト直前に受けた模試の結果を参考に、共通テスト利用入試の出願先を決めるのがオススメだ。

共通テスト利用入試のデメリット

※共通テスト利用入試のメリットデメリットを見てみよう

●ボーダーラインが上がりやすい

共通テスト利用入試は定員が少ないため、どうしてもボーダーラインが上がりやすい。

また、ボーダーライン前後に多くの受験生がいるため、1点、2点の差で合否が決まることもある。


●受験校決定時期が早い

一部、共通テスト利用入試の出願期限を共通テスト実施後に設定している大学・学部もあるが、多くは共通テスト実施前に出願する必要がある。

そのため、個別入試に比べて早い時期に受験校を決めなければならない。


●共通テスト対策が必要になる

第1志望が私立大学の受験生は、本来なら共通テスト対策は不要だが、共通テスト利用入試を受験する場合は対策が必要になる。

共通テストは思考力・判断力・表現力を問う内容で、出題形式にも特徴があるため、しっかりと慣れておく必要がある。

共通テスト利用入試の対策は?

共通テストは高校で学ぶ内容から出題されるため、一部の私立大学のようなマニアックな問題や細かい知識を問うような問題は出題されない。

一方で、知識を覚えただけでは解けない問題や思考力・判断力・表現力を問う問題が出題される、読解スピードが求められるなど、さらっと対策しただけでは高得点を取るのは難しい。

私立大学志願者で共通テスト利用入試を受ける人は、本命校の対策に重点を置きつつ、秋以降は共通テスト用の問題集や過去問にも取り組もう。

これまでに受けたマーク式模試を解き直してみるのもオススメだ。

共通テスト対策は本命校対策にも通じるものなので、焦らずコツコツ取り組もう。
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神崎先生から受験生へのメッセージ

コスパの良い共通テスト利用入試は、併願校受験の手段としてはかなりオススメだ。

本命校の受験勉強を最優先にしつつ、共通テストについてもきちんと対策をしておこう。

出願にあたっては、難易度(偏差値)を参考にしながら、5ポイント刻みで、「絶対に合格できる」「合格できそう」「チャレンジ」の3段階で受験校を1〜2校ずつセレクトするといいだろう。

共通テスト利用入試の合格で自信をつけて、本命校にも堂々とチャレンジしてほしい。

取材・文/笹原風花 監修/神﨑史彦 構成/寺崎彩乃(本誌)


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