これで数学嫌いを脱出!「演習」ばかりでなく「理論」の確認を!
「数学だけは本当にニガテ…」と思う人は多いんじゃないかな?
実際に、高校生416人に「苦手科目は何ですか?」とアンケートしたところ、 数学は34.3%が「苦手」と答え、ぶっちぎりの1位になった!(※)
では、どうしたら数学への苦手意識を克服できるのだろうか? 大手予備校・河合塾で人気の数学科講師、秦野透(はたのとおる)先生に話を聞いた。
*
高校1、2年生で、「数学ギライ」になってしまう原因のひとつに「やたらと記号が多く、何をやっているのかわかりにくい」ということが挙げられるかと思います。
例えば、三角比の単元で出てくるsinθ、cosθ、tanθ、場合の数の単元で出てくるnPr、nCrなど。これらの記号が何を示しているかわからないと、その記号が出てくる単元そのものが理解しにくいものになって、興味も湧きませんよね。
そうなってくると、記号や用語の定義を無視して、いきなり公式や解法を丸暗記して、なんとか定期テストを乗り切る…、というやり方をとる学生がいますが、それはレシピも知らずにやみくもにロシア料理を作るのと同じくらい無謀なことです。
そして、そのようなやり方だと、その丸暗記した公式や解法もすぐ忘れてしまうことでしょう。
■各単元の基本事項を他人に説明できるようにする
この状況から抜け出すには、教科書の各単元の最初のほうに書いてある記号や用語についての説明や、公式および定理を導く過程が記されているページを、理解しようとすることが大切です。
ここを簡単に読むだけで終わってしまい、問題演習を中心に進める高校生も多いようですが、教科書の各単元の最初の方のページには、その単元におけるもっとも重要で、もっとも基本的な考え方や理論が書かれています。
この部分からひとつひとつ理解しようという姿勢で学習すれば、その単元の問題の多くが自力で解けるようになっていくと言ってもいいくらいです。
そして、理解を深めるために、役立つのが図や表などの「イメージさせてくれるもの」です。
図や表を用いて、イメージをしながら理解すると、忘れそうになったときに思い出せたり、ケアレスミスが防げるという効果もあります。三角比なら直角三角形や単位円、2次関数ならグラフをイメージしながら考えるクセをつけましょう。
以上のことを踏まえて、「わかった!」と思えたことが出てきたら、それを自分の言葉で友達に説明してみてください。
説明するときは、正しい日本語を使って、はっきりと説明することを心がけましょう。いざ説明するとなると、「ここがこうなるから、こんな感じで、そして、多分これはこうなって…」というように、結構アバウトな言い回しを使いがちですが、それでは相手にはなかなか通じないと思います。誰もが「わかった!」と納得できる説明ができるようになるまで、とことんやってみましょう。
他人に説明できる物事は、忘れたくても忘れられないくらい自分の頭の中に残っているものなのですから。
■根本的な考え方がわかれば公式の丸暗記は必要なくなる
各単元の基本事項が語れるくらい説明できるようになると、そこから派生する定理や公式が自力で導けるようになり、その単元に出てくるおびただしい数の定理や公式を意味もわからずにただただ暗記する必要はなくなります。
高校数学の単元は約20個ありますから、極端な話、約20個の概念・考え方を理解すれば、そこから派生する定理や公式はおのずと導き出せるのです。
例えば、三角関数の単元では公式と呼ばれるものは30個以上はあると思いますが、もっとも大切なsinθ、cosθ、tanθの定義を頭に入れておくことで、三平方の定理によって得られるsin2θ+cos2θ=1をはじめ、三角関数の単元の公式を次々に導き出すことができます。
確かに意味もわからずにただただ公式や解法を覚えて問題演習を重ねれば、ある程度問題を解けるようになるでしょう。でもそれだと、ただ単に問題を解くという作業の繰り返しばかりでおもしろくないし、そもそも何のために問題を解いているのかすらわからなくなってきます。
私自身の学生時代を振り返ると、1つの大切なことからさまざまな定理や解法を導き出せるところがおもしろくて、数学が好きになりました。
大切なことを先生に教わり、それに基づいて、自分で考えて、計算して、「わかった!」「解けた!」という喜びが味わえるのが数学の醍醐味。そのおもしろさを一人でも多くの人にわかってほしいです。そして、そのおもしろさを味わった経験が「応用力」を育んでくれるのではないかと思います。
*
とにかく、それぞれの単元で重要とされている基本的な事柄(用語や記号の定義と定理や公式の導出など)を1つ理解して、友達に語れるようになることがニガテ克服の第一歩!さっそく、少しでも興味が湧きそうな単元を一つ選んで挑戦してみよう!
※2014年11月にインターネット上で実施。高校1~3年生416人が回答。数値は複数回答者も含む。