企画・お金・編集・宣伝も全部関わる!映画『耳をすませば』のプロデューサーさんにインタビュー
10月14日(金)公開!話題の映画『耳をすませば』。
今回は、自身も大ファンだったという原作マンガの実写化をかなえた映画プロデューサーの西麻美さんにインタビュー。
そもそも映画プロデューサーって何するの?どうやってなったの?学生時代や進学ってどうした?などなど、気になることを根掘り葉掘りリサーチ!
(C)柊あおい/集英社 (C)2022『耳をすませば』製作委員会
地元福岡の大学を卒業後に上京し、映画やアニメ等を制作・配給する松竹株式会社へ入社。
TVドラマプロデューサーを経て現職。
『記憶屋 あなたを忘れない』(主演:山田涼介)、『パーフェクトワールド 君といる奇跡』(主演:岩田剛典)など、人気作を多数生み出す映画プロデューサー。
趣味は海外旅行で、仕事が落ち着いたら行きたい場所はハワイ。
目次
映画プロデューサーの仕事って?
製作に関わること、0から100まで全部携わります
映画会社や作品の特性によって関わる範囲は少し違うのですが、私の場合はまず「何を映画にする?」からスタート。
実は自身も『耳をすませば』の大ファンだったこともあり、恐れ多くも「このマンガの実写をやりたいです!」と自ら企画を立案。
今回は原作マンガそのままではなく、オリジナルのストーリー要素も入れたので、新たな脚本を作り、それをもって、演じる役者さんや制作スタッフさんを決めていきました。
映画を作るためにはお金も必要なので、スポンサーさんをみつけて予算を調達するのも重要な仕事。
そこから実際の撮影現場や編集に立ち会い、完成したあとはどうやって宣伝するかまで責任をもつのが、映画プロデューサーの仕事です。
(C)柊あおい/集英社 (C)2022『耳をすませば』製作委員会
誰に演じてもらうか?キャスティングのポイントって?
特にマンガの実写化だとキャスティングは大事な仕事の一つ。
もちろんそのキャラクターに合っているかどうかで選ぶのも重要ですが、それ以上に大切にしているのは、お芝居がしっかりしていること。
今回も、雫ちゃんと聖司くんの雰囲気を、演技含めて誰が一番もっているか?をポイントに探し、これは清野菜名さんと松坂桃李さんだなと確信してお願いしました。
キャスティングのためにも普段から映画やドラマなどの映像作品は相当数を見ています。
元々エンタメを見るのが好きなのですが、もう趣味ってより仕事になっちゃっていますね。
特に注目して見るのは新しい役者さんや新しい監督の作品。
常にアンテナを張って新たな才能に触れるようにしています。
実は私、あまりインターネットでの検索はしない派。
基本は人とたくさん会って、いっぱい話をして、そこから情報を得るっていうのをしていますね。
「今、あれがおもしろいよ」「この役者さんがいいよ」「あの作品が今来てる」など同業種だけでなく他業種の方とも話して、生の声から拾うほうが多いです。
情報の発端ってやっぱり人。
自分の力だけではたどりつけない情報って本当にたくさんあるので、何かを調べるときにもネットだけでなく、周りにいる人から興味があることの新しい情報を得るのも大事なことだと思います。
(C)柊あおい/集英社 (C)2022『耳をすませば』製作委員会
コロナ禍で撮影が何度も中断!ピンチと戦うからこその喜びも
今回はコロナ禍での撮影だったので「こんなに大変なのはあとにも先にも絶対にない!」というくらい撮影は大変でした。
まず、海外渡航が厳しくなったので、イタリアで撮影予定だったシーンが全部撮影NGに。
国内でも緊急事態宣言が出たので、元々決まっていたロケ場所も断られたり、何度も撮影を中断せざるをえなかったり。
スケジュールが変わると、出演いただくキャストさんや制作スタッフさんの調整も必要になるので、本当に大変でしたね。
とはいえ、そこを何とかするのがプロデューサーの仕事。
海外で撮影予定だったものは、グリーンバックを使用した撮影に変更。
何度も中断を重ねると、製作資金も増額が必要になるので、撮影を一旦やめるにしても「いつ止めるのか?」「やめたあとにいつ再開するのか」「増額分の資金はどうするか?」などを最終ジャッジするのもしんどい仕事でした。
何かこんなことを言うと、ただただ辛そうな仕事としか思われないかもしれませんが(汗)。
こういう大変さを経たからこそ、公開されて映画館でお客さんが入っているのを見たときや、周りの人に「おもしろかったよ!」と言ってもらえると、自分で自分に拍手するくらい、最高の喜びを感じられるんです。
(C)柊あおい/集英社 (C)2022『耳をすませば』製作委員会
どんな高校生時代だった?
3年生になるまで1秒も勉強した記憶がない(笑)
実は私、高校の1、2年で1秒も勉強した記憶がないんです。
それでそのまま3年生になったときに、ついに学年で最下位になってしまって…やっと焦りましたね。
「さすがにこれはヤバい」と思い、そこからやっと勉強し始めました。
当時は1日10時間くらい勉強してたんじゃないかな。
一生のうちそんなに勉強することってないので、今思い返すと良い経験だし、何とか現役で大学にも合格したので、もし今これを見ていてあきらめかけている高校生でも大丈夫。
今から本気出せばなんとかなります!
受験勉強ってやってるときはしんどいし、これって何に役立つの?意味あるの?と思う人もいるかもしれません。
でも意外と役立つんですよ!
私は日本史をやっていたから今、時代劇の映画製作ができているし、数学をやってたからお金にも強い。
あとから気づくことも多いのですが、勉強って意外と仕事とつながるんです。
部活に関しても、私は友達に誘われて無理やり入った演劇部でしたが、裏方をやったり舞台に立ったり、壁を作らずにいろいろと挑戦してみたんです。
それが結果的に、ひとつのものをみんなで作る楽しさや大変さを知れて、仕事選びにも生きてきていますね。
(C)柊あおい/集英社 (C)2022『耳をすませば』製作委員会
お金が好き!会計士を目指して経済学部へ。でも速攻で挫折
実は高校生のころなりたかった職業は、会計士なんです。
高校でいろいろな職業の方にお話を聞く機会があって、そのなかで一番興味をもてたのが会計士の方のお話。
私自身が昔からお金を計算するのが好きなタイプだったので、これは会計士だ!と思い、大学も経済学部に入学しました。
ただ、入学後すぐに簿記の3級でつまずいて(笑)。
「なんか思ってたのと違う」「これはおもしろくないかも」と思って結構すぐにあきらめましたね。
でも今の仕事もお金の管理が大切な仕事なので、このとき試しにやってみたことも結局、今の仕事につながっているんだなと思います。
(C)柊あおい/集英社 (C)2022『耳をすませば』製作委員会
地元の大学を選んだことで、視野が広がる
大学はあえて地元の学校を選びました。
東京の大学に行くという選択肢もありましたが、地元でよかったことは実家から通えるので、海外旅行へ頻繁に行けたこと。
東京にいたらそこまでの余裕がなかっただろうし、海外には行かず東京で遊んじゃったかも…と思うと、すごく良い選択だったなと思います。
大学時代はいろいろな国に行きましたが、一番印象的なのはインド。
とにかくすべてが日本のルールとはまったく違って、私が旅行に行ったときはうまくいかないことばっかりだったんですよ。
電車は平気で何十時間も遅れる、約束守らない、ぼったくられる、うそをつかれるetc.
1カ月半ほど滞在したんですが、その経験を通して「人生なんとでもどうにでもなる」レットイットビー精神が身について、それが本当に社会人になってから生きていますね。
特にプロデューサーの仕事は、うまくいかないことやイレギュラーなことへの対応が多いので、どうにでもなる精神がないと続けられなかったかもしれません。
(C)柊あおい/集英社 (C)2022『耳をすませば』製作委員会
2番目に好きなことを仕事にするのが、ちょうどよかった
誰に言われたかをまったく覚えていないのですが(笑)。
大学のときに「一番に好きなことは趣味。二番目に好きなことを仕事にしたほうがいい」というアドバイスをもらって、そのとおりにしてみたからこそ今があるんです。
ちなみに私の一番好きなことは海外旅行!
最初は旅行会社にもエントリーする予定だったのですが、その前に2番目に好きな映画の会社に内定したので、今の会社に決めました。
今思い返すと、二番目に好きなことにしてよかったことは本当に多いですね。
好きな仕事って言っても楽しいことばかりじゃないんですよ。
でも一番に好きなことが別にあればそれが逃げ道になります。
私の場合「忙しいし疲れたけど、これが終わったらハワイに行こう!」とか疲れの癒しを、一番好きなことにできるのですごくいいです。
2番目に好きと言っても、好きなことに変わりはないので、仕事も興味をもってできますしね。
やりたいことや職業選択=一番好きなもので!と考えがちですが、一歩引いて、2番目に好きなことから広げてみるのもいいと思います。
(C)柊あおい/集英社 (C)2022『耳をすませば』製作委員会
聞いたことはあるけど実は知らないことも多い「プロデューサー」のお仕事紹介、どうだった?
西さんのように、一見すると高校時代に選んだ進路(経済学部)と今のお仕事(映画プロデューサー)は全然別に見えても、実は「お金」というキーワードでつながっている!なんてこともある。
取材でお話を聞いてて、「演劇部×経済学部×映画」という掛け合わせで可能性がどんどん広がっていく感じが「こことここがつながっていたのかー!」という伏線回収みたいでおもしろかった!
高校生のみんなも、ぜひたくさんの「好き」を探して、可能性を広げていってほしいな。
(C)柊あおい/集英社 (C)2022『耳をすませば』製作委員会
10.14 ROADSHOW
原作:柊あおい『耳をすませば」(集英社文庫(コミック版)刊)
主演:清野菜名、松坂桃李ほか
配給 : ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 松竹
(C)柊あおい/集英社 (C)2020『耳をすませば』製作委員会
雫と聖司の物語に10年後のオリジナルストーリーを加えた注目の実写映画。
学生生活の日常にある歯痒さや微妙な距離感で感じる甘酸っぱさにきゅん♡
公式サイト
https://movies.shochiku.co.jp/mimisuma-movie/