「どっちを選んでも後悔するなら、可能性のあるほうに賭ける」原菜乃華さんから高校生のみんなへ
夏休みも真っ最中の8月、みんなどう過ごしてる?
学校がなくて周りの様子が見えにくいぶん、自分のペースや状況にやきもきしたり、逆にのんびりしすぎたり。
意外とペースがつかみづらい“夏のモヤモヤ期”のヒントを、劇場アニメ『不思議の国でアリスと-Dive in Wonderland-』で主人公・安曇野りせの声を演じた原菜乃華さんに聞いてみたよ。
目次
2003年8月26日生まれ。東京都出身。
数多くのドラマや映画、CMなどに出演。2022年には映画『すずめの戸締まり』でヒロインを演じ、第18回声優アワード・新人声優賞を受賞し注目が集まる。 2025年8月29日公開『不思議の国でアリスと-Dive in Wonderland-』では、まじめで几帳面な性格ながら、なかなかうまくいかない日常に悩む不器用な主人公・安曇野りせの声を担当する。
夏のモヤモヤその1「勉強を頑張ってるのにうまくいかない」
高3のみんなは受験本番に向けて、ブーストをかけていきたい夏休み。
でも、自分に向き合う時間がたっぷりありすぎるお休み期間中は、気づけば何だかネガティブになっちゃうことも。
「頑張ってるのにな…」ってモヤモヤしたとき、原さんはどんなふうに受け止めている?
「努力しているのにうまくいかないこと、私もよくあります。
劇場アニメ『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』でも、就活に悩むりせが『みんなと同じようにやってるのに、うまくいかないんだよね』っていうセリフを言うんですけど、台本を読んだときに、私、『もう役作りしなくていいや』って思ったくらい(笑)。
私、何をしてても基本、自信がないんです。
でも、自分を追い詰めないとできないタイプだから、ネガティブが逆に良い方に繋がってることも多くて。
父に『練習不足だから不安になるんだ』って言われたことがあって、過去の取材でも“準備はきちんとする”って話したんですけど、今でも、どれだけ準備しても不安なものは不安で。
だから最近は、準備を万端にしたうえで、『不安になるのはしょうがないな』って思うようにしてます。
“やれることは全部やった”って思えたら、少し安心できるようになりました。
まずはやりきることが大事かも、って思ってます」
夏のモヤモヤその2「この道でよかったのか、不安になっちゃう…」
自分で選んだはずなのに、「これでよかったのかな?」と迷う瞬間って、誰にでもあるよね。
志望校の決め方、将来やりたいこと、今の頑張り方——夏はいろんな選択に意外とモヤモヤしがち。
原さんが高校時代に向き合ったのは、「芸能を続けるか」「進学するか」という人生の選択。
そのとき、頼りにしたのは「まだ可能性があるほうに賭ける」という考え方だったそう。
「芸能を続けるか、進学するか——どっちに進むのも地獄だって思っていました。
辞めたら今までの時間が無駄になる気がしたし、続けてもこの先仕事があるかわからないし。
辞めても苦しい、続けてても苦しい。
でも、どっちを選んでも後悔するなら、“まだ可能性があるほう”に賭けたほうがいいかなって。
今思えば、辞める勇気がなかっただけかもしれないけど…(笑)。
あるとき、『演技のお仕事、あなたに向いてると思うよ』って言われて、すごく腑に落ちたんです。
全部が楽しいわけじゃないけど、それでも続けられているのって、やっぱり向いてるからなんじゃないかなって。
やりたいこととか好きなことって、仕事にすると娯楽じゃなくなることもあるじゃないですか。
だから私は、“人から何を褒められるか”っていう視点も大事にしてます。
苦なく続けられることとか、自然とできることって、自分では意外と気づけない。
だからこそ、“褒められたこと”を頼りにするのもアリだと思ってます」
夏のモヤモヤその3「自分は何が好きかわからなくなる」
「これが好き!」って言えてたはずなのに、進路のことを考えているうちに「自分って何がしたいんだっけ?」とわからなくなること、あるよね。
原菜乃華さんも、“好き”がブレそうになるとき、自分らしさを守るために続けていることがあるそうです。
「自分が思ったことは、なるべくメモに残すようにしてます。
人と話して共感したこと、作品を観て感じたこと、好きなセリフ、なんで好きなんだろう?っていう理由も。
忘れちゃうから書いとかないと。
見返すと、自分の感覚の変化にも気づけるんです。
『あ、こんなことで悩んでたな』『若かったな』とか思ったりして。
小説を読むときも、好きな言葉にマーカーを引いたり、付箋を貼ったりしてて。
あとから見返すと、2年前に響いた文章が今は響かなかったり、逆に当時スルーしてた一文がすごく心に刺さったりして。
同じ本でも、自分の感じ方が変わってるのがわかるんですよね。
“ああ、ちょっと前とは違う自分になってるんだな”って思えて。
だからメモもそうだけど、“残しておく”ってすごく大事だなって思います。
あと、ずっと人と話してるとアップアップになっちゃうので、ちゃんと消化するためにも“一人の時間”がすごく大事。
アニメを一気見したりして、頭を空っぽにしたりしてます」
声の仕事= “好きなアニメの現場にいられる幸せ”
最後に、主演を務める劇場アニメ『不思議の国でアリスと-Dive in Wonderland-』についてお聞きしました。
「『すずめの戸締まり』以来、また声の仕事ができるとは思っていなかったので、本当にうれしかったです。
好きなアニメの現場にいられること、それ自体がすごく幸せだなあと感じました。
本作は、映像も本当に美しくて。
スクリーンで観るからこそ伝わる“ワンダーランド”の世界を、ぜひ体感してほしいです。
主人公のりせも、“自分って何だろう”とか、“みんなと同じようにやってるのにうまくいかない”とか、たくさんのモヤモヤを抱えている。
でも、そんなりせが少しずつ自分をみつけていく姿には、きっと共感してもらえると思います」
夏のモヤモヤ、不安、焦り——全部を否定せず、原さんは「それでも一歩ずつ進んできた」ことを、静かにまっすぐ話してくれたよ。
この夏、悩んでるあなたにも、原さんの言葉が、ふっと背中を押してくれるかも。

2025年8月29日(金)全国公開
出演:原菜乃華 マイカ ピュ ほか
原作:『不思議の国のアリス』(ルイス・キャロル)
主題歌:SEKAI NO OWARI「図鑑」(ユニバーサルミュージック)
監督:篠原俊哉
脚本:柿原優子
せっかくなので、撮影現場の様子もちょこっとお見せします!
今回のセット、ふわふわのシフォンみたいな布がいっぱい使われてて、何だか“アリスの世界”っぽい雰囲気…♡
全部はお見せできなかったけど、雰囲気だけでも伝わるとうれしいな〜と思って、こっそりバシャッと撮ってきました。
光が当たるとほんのり透けて、すごくきれいだったんだよ〜〜。
そんな幻想セットの中で撮ったすてきな写真と、原菜乃華さんのまっすぐな言葉。
夏のモヤモヤを抱えてるあなたに、そっと届きますように◎

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Photograph / 杉江拓哉(TRON), Hair&Makeup / 馬場麻子, Styling / 山田安莉沙
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