“天才じゃない人”の夢のかなえ方!『左ききのエレン』原作者・かっぴーさんインタビュー
なりたい職業があっても「自分には才能がないかも」と、気持ちにフタをしちゃった経験、みんなはない?そんな人に刺さること間違いなしなのが、「天才になれなかった全ての人へ」のキャッチコピーでおなじみ、4月からアニメ放送が始まる『左ききのエレン』。
原作者のかっぴーさんは、会社員として広告代理店に勤めた後、漫画家の道に進んだ人。進路選択の経緯や、夢のかなえ方について、かっぴーさんにお話を聞いたよ。
目次
1985年、神奈川県生まれ。武蔵野美術大学を卒業後、大手広告代理店のアートディレクターとして働くが、自分が“天才ではない”と気づき挫折。WEB制作会社のプランナーに転職後、趣味で描いた漫画「フェイスブックポリス」をnote(ネット上に文章を投稿するプラットフォーム)に掲載し大きな話題となる。2016年に漫画家として独立。
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高2の文化祭で作った“クラT”が進路選択のきっかけに
Q. 高校時代はどんなことに関心がありましたか? 武蔵野美術大学に進学を決めた理由は?
高校に入るまでのぼくは、目立った特徴のないタイプでした。それが高校生になって「絵は好きだけど、漫画家になれるほどの才能があるわけじゃない。これからどうすべきだろう」と、初めて自分の意志で、将来について考え始めました。何かに突き抜けていたら悩まなかったと思うのですが、ぼくにはそれがなかったんです。
進路を決めるきっかけになったのは、高校2年生の文化祭でした。クラスTシャツを作ることになり、周りから「絵が描けるらしいから君が作って」と。それで、地球をモチーフにした、ちょっとおしゃれなTシャツを作りました。すると、普段話したこともないクラスの人たちが、文化祭が終わった後もずっとそのTシャツを着てくれたんです。自分の作ったものが人に受け入れられるのはこんなにうれしいことなんだ!と、そのとき気づきました。
数学の先生がそれを見て、「君がやっているのはグラフィックデザインだ。ぼくの友達が広告代理店でデザインの仕事をしているんだけど、君もその仕事に向いているんじゃないかな」と教えてくれました。調べてみると、デザインというものはどうやら感性勝負ではなく、ちゃんと系統化されていて、学問として勉強できるらしい。それが、自分にとって大きな希望になりました。
そこからの進路選択は“逆算”です。広告代理店に入ってデザインの仕事をするには、美大を卒業してクリエイティブ採用にチャレンジする必要があると知り、武蔵野美術大学に進学しました。そして卒業後は、高校時代に思い描いたとおり、広告代理店でアートディレクターになりました。

デザインは「絵を描くことじゃない」と知った、広告代理店時代
『左ききのエレン』でも描かれている、広告代理店の世界ですね。当時はどんな仕事をしていたのですか?
ぼくが長く担当したのは、百貨店の仕事です。百貨店の館内に貼るポスターや、カタログなどをデザインすること。入社前は有名なテレビCMを作るような仕事をイメージしていたので、「こういう仕事もあるんだ」とギャップを感じましたね。
また、「デザイン」というと絵を描くイメージがあるかもしれませんが、実際の広告代理店のデザイナーは、考えることと、チームを動かすことがメインの仕事です。企画を考えて、制作現場で最終的な「OK」を出す。だから夢中になって手を動かすのが好きというタイプの人が広告代理店に行くと、びっくりするかもしれません。
その後、アートディレクターとして働くなかで、周りのクリエイティブな天才たちと自分を比較するようになりました。自分は“天才ではないのか”と限界を感じて、王道の広告代理店から企画の強みを活かせそうな、個性的で自由な人たちがたくさんいるWEB制作会社に転職しました。
自己紹介で描いた漫画が、人生を変えた
Q. その後、会社員として働いていたかっぴーさんが、なぜ漫画家の道へ?
最初は漫画家になろうなんて、夢にも思っていませんでした。ぼくは炎上が怖くてインターネットがあまり好きじゃなかったほどの、慎重派なんです。でも、転職先の会社はネットに強い人が多かったので、社員の人たちに自分の存在を知ってもらう自己紹介の目的で、SNSあるあるのネタを漫画にした「フェイスブックポリス」を描き、社内の日報で送りました。そしたら社内でウケたので、第2弾、第3弾と、学級新聞のような感覚で、たまに漫画を描いては社内で発表していました。
入社から半年ほど経ったころ、長期休みに自主制作として仕事以外の何かを作って発表しようと、社内が盛り上がっていました。でもぼくは、休みの最終日になっても何もしていなくて、まずい!と思った。それでしかたなく、これまで社内の人にしか見せていなかった漫画のデータを、note(ネット上に文章を投稿するプラットフォーム)で公開してみたんです。翌日出社したらバズっていて、お昼休みには取材の依頼が来ていました。それからしばらくして、WEBサイトの編集部に「1話5000円で漫画を描きませんか」と依頼されました。当時は会社員だったので、給料とは別に漫画でお金がもらえたことが、ただうれしくて。「これを連載したらお小遣いが稼げるぞ」という発想で描き始めました。
なので、退路を断って漫画家になろうと挑戦したわけではないんです。会社員をやりながら漫画を描いてネットに公開し続けるうちに何度もバズり、さらに描き始めた『左ききのエレン』が賞を獲って、連載が決まりました。「会社員でいるよりも、漫画家として独立したほうがいい」と自分でも思える状況になってから、ようやく退職を決意したんです。

小さく試して、自分に向いているやり方をみつけていく。それが天才になるよりも大事なこと
Q.『左ききのエレン』では、高校時代に出会った天才・エレンと比較して、突出した才能をもたない自分の限界に悩む主人公が描かれています。「自分は天才ではない」と思う人が夢をかなえるには、どんなことが大事だと思いますか?
何かを選択するときに「それをやれるだけの才能が、自分にはあるのかな」と考えてしまう――その気持ちはよくわかります。僕自身も、すごく慎重で、ビビリなので。ただ今は、あらゆる挑戦がしやすくなっている時代です。例えばぼくの時代なら「DJをやってみたい」と思ったら、最初に数十万円の機材を買う必要があった。でも今なら、アプリやAIを使って、簡単に試せますよね。時間やお金の面のハードルが下がり「ちょっと挑戦してみよう」くらいなら、誰でもできるようになった。
だから、「まずやってみて、世間の評価にさらされてみる」ことが、何より大事です。完璧でなくてもいいから、とりあえずやってみて、評価されてみる。何回失敗してもよくて、ダメだったらまた別のことを試せばいいだけです。いきなり大きな一歩を踏み出す必要はありません。まずは小さく試して、自分に向いているやり方をみつけていく。そうやって考えて、考えて、動き続けることのほうが、もしかしたら天才になるよりも大事なのかもしれませんね。

高校生のみんなへ、泥臭くて熱い主人公の成長を見届けて!
Q.『左ききのエレン』がアニメ化されます。高校生の皆さんに対して見どころを教えてください。
主人公の朝倉光一は、泥臭くてちょっとイタい、現代からすると時代遅れな熱血男です。高校生の皆さんが見ると、心がざわつくかもしれません。でも、「冷笑」時代と呼ばれる今だからこそ、真逆をいく彼の「熱泣(あつなき)」キャラクターを見てほしい。何になりたいかもわからないまま「何者かになりたい」ともがく彼が、どのように成長していくのかを、ぜひ見届けてください。

【STORY】
高校生活も半分が過ぎ、誰もが本格的に進路を考えはじめるころ。デザイナーになるため美大を目指す朝倉光一は、ある日、美術館の壁に殴り描きされたグラフィティに衝撃を受ける。描いたのは、あるできごとをきっかけに才能を封じ込めてきた、左ききの女子高生・山岸エレンだった。いつしか二人は「描く」ことを通じてお互いを認めあい、光一はデザイナー、エレンは画家への道を歩み始めるが――。
テレ東系列にて 2026年4月7日(火)24時より放送開始!
『左ききのエレン』
原作:かっぴー『左ききのエレン』
監督:鈴木利正
アニメーション制作:シグナル・エムディ/Production I.G
配給:ギャガ
製作:アニメ『左ききのエレン』製作委員会
朝倉光一:千葉翔也
山岸エレン:内山夕実
©︎かっぴー/アニメ『左ききのエレン』製作委員会
公式サイト:https://eren-anime.com/

かっぴーさんのインタビュー記事どうだった?将来の夢や進路に悩んでいる子はぜひ、アニメ『左ききのエレン』を見てみて!
とっても熱くて胸打たれるものがあるはず。私も毎週チェックしようと思います!楽しみ~!
取材・文・構成/塚田智恵美
写真提供/©︎かっぴー/アニメ『左ききのエレン』製作委員会
※2026年4月更新














































