【21世紀型スキル総合コース 第1回】藤原和博×西野亮廣による「考える」とは何か

スタディサプリでは、これからの時代を生きていく上で必要不可欠な、正解のない問いに対する“納得解"を紡ぎ出す情報編集力を鍛える「よのなか科」をベースに、「考える」とは何かを習得する高校生向けの年間講座を提供します。
 
藤原和博・西野亮廣、両プロデューサーを迎えて行った第1回目の講座の内容です。
 

藤原:
なぜこの2人が組んだのか、を簡単に。
 
西野さんが僕の著書、「1%の人になる方法」を読んでくれていて、(*『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』:東洋経済新報社)僕と知り合う前にもう大騒ぎしてくれて自分の舞台でもこれを読めって勧めてくれたりしていたんですね。
 
出版して3年くらい経っていた本なんですが、いきなり売れ出したからおかしいなって思って、Amazonのランキングも上位になっているしね。
 
それで編集者の人と探したんですよ、誰がこういうことをやっているんだろうと。
 
そうしたら西野さんにたどり着き、対談をしたらビートたけしを超える天才だと思ったのがきっかけで。
 

西野:
これね、僕が言っているわけじゃないですからね(笑)
 
藤原:
それで今回の「スタディサプリ」の話をもらったときに“俺は西野さんじゃないとやらないよ"って言ってね。
 
それでコンビを組んでいます。
 

西野:
ありがとうございます。
 

藤原:
このコースは1時間目、2時間目と分かれています。
 
最初の1時間で僕が君たちの頭を柔らかくして「どんな企画が実現できるのか」ということを教えます。
 
君たちはこれからの人生で、企画というものを無限に考えて、実現していくと思うのです。
 
でもね、企画ってただ単にアイデアをワーッと独り言で言っていても実現できないんですよね。
 

そのあとに、西野さん得意のクラウドファンディングの時間です。
 
企画を実現するには人も集めないとだけど、まずお金を集めないと実現しないじゃない?
 
志だけで実現するものじゃないのでね。
 
という順番で授業をすすめます。
 
西野さん、一言お願いします。
 

西野:
僕だけじゃなくて、みなさんにもちょっと頑張ってもらわないと成立しない企画なので、いつまでも客でいられると思うなよって話で、僕にあんまり期待しないでください(笑)。
 

藤原:
それ、いいですね、では始めます。
 

1時間目「どんな企画が実現するか」

藤原:
企画を実現する、企画の実現の可能性をあげる。
 
そのためには、とりもなおさず
いい企画を編み出さないといけないってことなんだけど、
そのことを1時間で教えたいと思います。
 

最初のお題は、
「この10年最大の社会変化ってなんだと思うか?」

いろんなことがありますよね。
 
日本だけのことを考えたら、少子化や高齢化があったり。
 

これこそは一番大きいと思う社会変化を“これじゃない?あれじゃない?"といっぱい挙げてもらいたい。
 

その中でどれが最大か、というのを議論してください。
 

ブレインストーミングで大事なことは「脳をつなげる」ことなんです。
 

佐藤くん、鈴木くん、田中くんがいたとしたら、それぞれが自分の頭でふっと思いついたことをただ単に独り言で言ってるだけじゃブレストじゃないんですね。
 

佐藤、鈴木、田中の脳がつながって「佐藤・鈴木・田中脳」にならないといけないのね。
 
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それぞれの脳がつながりながら化学変化が起こって、自分が思ってもいないことを言っちゃう。
 

これがとても大事。
 

その化学変化を起こすには2つほどコツがあります。
 

ひとつは「人が言ったアイデアは絶対潰さない」、人が言ったことを“いいね!いいね!"って盛り上げてほしい。
 

もうひとつは「最初の1周か2周はわざとバカなことを言う。正解を当てようとしない」気を緩めると脳がつながるので。
 
2つのコツを頭にいれながら、この10年で最大の社会変化って何か、こうじゃない?ああじゃない?って、すごいスピードで。
 
はい、スタート!
 
【ブレスト中】
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藤原:
世界中の有識者の意見が一致しているので僕から言っちゃいますね。
 

それは何と言っても「地球上の50億人がスマホでつながっちゃう」ことです。
 

「ケータイでつながる」だけなら、新宿のこの会場からアフリカに電話ができる、で終わっちゃう話なんだけど、スマホだとほぼ脳がつながっちゃうことに等しい。
 

動画でつながるから。
 
ある企画が、いい企画として演出されて、バッっと広がると世界中がそれを評価できる、というマーケットができているということです。
 

で、この10年最大の変化はそのネットワークにさらにロボットとAIがつながるということです。
 

AI武装したロボットね。
 
もう車は“乗り込み型ロボット"になっている。
 

それから掃除機。
 

今はロボットって感じじゃないと思うけど、もう少ししたらカメラも搭載して、家の中のことがスマホから見られるセキュリティロボになる。
 
その後、手がついたり足がついたり、たとえば飼い犬にお手とか、お座りとか、餌を出すこともできるようになるんじゃないかな。
 
人型とは限らない。
 
あらゆるところにチップが埋め込まれていて、君たちと連動していくわけですよ。
 
君たちの心地良いように。
 
そういう世界がもう来てる。
 

そしてどんどん進化していくんです。
 

なくなる仕事、なくなりにくい仕事の特徴とは。

藤原:
僕らの時代、君たちのお父さんお母さんの時代は目の前の未来というのがコンクリートと鉄でできていったんです。
 
高速道路ができて、新幹線ができて、豪華客船ができたり。
 
鉄とコンクリートで未来が開けていったからわかりやすかったんだけど、これからは建設行為の半分がネットの中で起こります。
 
例えば10年経っても、見た目には新宿の街は変わらないかもしれないけど、ネットの世界では建設がどんどん起きる。
 
この建設をするのは大工さんじゃなく、プログラマーですよね。
 
なのでプログラマーのニーズが膨大に増える。
 
そういう時代にいったいどういう仕事がなくなりそうか、またなくなりにくいか。
 
そして新しく生まれる仕事には、どんな仕事があるかを考えてほしいんです。
 
君たちが高校、大学と進んで社会人になるときに、なくなる仕事に就こうとしてもしょうがないでしょ?
 
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ヒントを言います。
 
すごいわかりやすいヒント。
 

駅の改札で、昔は切符をチョキチョキ切ってたんだけど、それが自動改札になって、プリペイドカードになって、今はスマホかざせばいいでしょ?
 
そのうちスマホさえ持っていれば、非接触で乗り降りできるようになるでしょうね。
 
改札のことを思い浮かべるだけで、そこに駅員さんがいなくなったね、というのがわかるわけです。
 

はい、じゃあまたブレストしてみましょう。
 

【ブレスト中】
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藤原:
医者の仕事ではいろんな段階があるけど、診断と治療があるとしたら、診断については世界中の学会で発表されたものとか、写真が載っているものなど、膨大な医療のデータから多言語で探すほうが絶対いいよね。
 

でも治療の領域はまだわからない。
 

手術でもロボットが入ってきてはいるけど、例えばちょっと熱がある人に対してロボット的に判断するより“ちょっとお疲れなんじゃないですか。
 
よく眠れるように薬を出しておきますね"って言われたほうが、安心できますよね。
 

ちなみに、どこからかおもしろい話が出ましたよね、芸人だっけ?
 

AI武装したロボットが芸人を超えられるか、もしくはロボット芸人が出てくるか。
 

西野さんどう?
 

西野:
おもしろさを超えられるかはわからないけど、1人の時間って限りがあるじゃないですか。
 

24時間を何に使うかと考えていたとき、お笑いを見るのか、彼女とLINEするのか、
ポケモンGOするのか。
 
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そもそもロボット芸人をつくるメリットはないんだけど、負けるんじゃないかなぁ。
 
結論、
時間の勝負になったとき負ける。
 
僕だったらお笑いを見るより、女の子とLINEしていたいんです、もはや(笑)。
 

正解のない問いに、どう立ち向かうか。

藤原:
なるほど。
 
芸人かロボットかじゃなくて、楽しみたいとか癒されたいとなったときにすべてのエンタテイメントから何を選ぶかということが勝負になると。
 
ロボットであろうと人間であろうと関係ないかもしれない。
 
芸やお笑いの世界がそれほど広がらないかもしれない、もっとおもしろいことがいっぱいできちゃうんじゃないか、そういうことですよね。
 

では、今度はなくなりにくい仕事を考えてほしいわけ。
 

そのことを徹底的に考えると、事務処理的な業務はAIがやっていくけど、人間はいったい何をやらねばならんのか、人間の本質とは何か、人間が本来やるべき仕事はなんなのか?
 

そういうことにつながりますよね。
 
半分以上の仕事がなくなる、というとあぶれる人が出てくると思うかもしれないけど、新しい仕事も増えるはずなのでバランスがとれると思います。
 

何と言っても大事なのは「なくなりにくい仕事」ですよね。
 
ここはAIやロボットには取られない領域、それが人間が人間たる所以だと思うんです。
 

ちょっとこれを議論してほしいと思います。
 

【ブレスト中】
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藤原:
これが正解ってわけじゃないんだけど、大事なポイントを言うね。
 

両手を出して目の前でこうやってみて。
 
ちょっと絡めてみたり、離したり。
 

この動きが実はなかなかロボットにはできない。
 
最先端のロボット開発技術者にも、
開発にはあと10年から15年かかると言われています。
 

足の動きや手の動きは代替されるかもしれないけど、指先は残るんじゃないかと言われている。
 
その延長で、撫でて慰めたり、触れると温かいという指先を使った行為はロボットには難しいでしょう。
 
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2つ目は、みんなも思い浮かんだと思うけど、看護師や保育士など高度にヒューマンウェアな仕事はなくならないでしょうね。
 
それからもうひとつあります。
 

人間がイマジネーションやインスピレーションで情報をつないで、企画を実現していくような行為ですね。
 
文科相も使っている「生きる力の逆三角形」という図があります。
 
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まず「基礎的な人間力」。
 

体力・忍耐力・精神力・集中力・持久力、これは51%が家庭教育で育まれていきます。
 

左上の角を「情報処理力」と言っています。
 

これは正解がある前提の問題に対して早く正確に当てられる力。
 

つまり学校で勉強をしっかりやるとこれが身につきます。
 

基礎学力とはこの情報処理力とイコールだと思ってください。
 

それに対して、今、世の中が成熟社会に入って、正解があることがどんどんなくなっています。
 

正解がない問題が出されるようになったために、それに対してどういう風に自分が身につけた知識、技術、経験を組み合わせて、さっきから君たちがやってるブレストもそうなんだけど、自分が納得し、且つ関わる他者が納得できる解「納得解」と言うんだけど、これをどれくらい頭を柔らかくして紡げるかが大切なんです。
 

この納得解を紡ぐ力を「情報編集力」と言います。
 

この力はすごく大事で、もしかしたらディープラーニングという技術でロボットもAIも10年もしたらこの力をつけちゃう可能性もあるけど、当面は情報処理力から情報編集力にシフトしていけば、知恵を出して企画を出して実現していく人間の仕事として残る可能性が高いです。
 

さっき出た高度なヒューマンウェアな仕事は基礎的人間力が重要ですよね。
 
情報処理力はどんどんロボット、AIに変わっていくと思う。
 

企画を通すためには、力を借りたい人のことを徹底的に調べる。

藤原:
では、その情報編集力を強めるひとつのケースとして、ここに「ベクトルの和」という謎の言葉があるんだけど、「どうしたら企画が実現するか」というのをブレストしてほしいんです。
 

【ブレスト中】
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まず、魅力的な企画なら通るよね。
 
でも、魅力的ってどういうこと?
 

一番乗りのマツウラくん、どんな企画なら通りやすいか、どんな企画が実現しやすいか、という質問にどう答える?
 

(学生)
「今ないものを、今あるものを組み合わせてつくる」
 
藤原:
なるほど。
 
今ない企画を、今あるもの、あるいは得意である2人のキャラを組み合わせてつくり出す化学変化。
 
おもしろいよね、すばらしい答えだと思います。
 
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結論を言いますと、僕はこう考えます。
 
ベクトルの和って、聞いたことありますか?
 

ベクトルCは環境が持つエネルギー、ベクトルiは自分が持つエネルギーだと思ってください。
 

自分が与えられた環境、西野さんがいたり、藤原がいたりする環境と自分との間で、どういうことをやると最大の和が生まれるか。
 
それはベクトルCとベクトルiを平行四辺形としたときの対角線、C+i。
 
いかなる場合でも2つのエネルギー、2つの和を取れば絶対にどちらよりも長いんですよ。
 
これがミソなんです。
 
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自分で自分のやりたいことだけを追いかけていってもそれ以上にはならない。
 

周りのベクトル、エネルギーを巻き込んでいけば必ず和ができる。
 

対角線に補助線を引ければです。
 
この補助線を自分に近いところだけに引くとどうか。
 

例えば自分は犬好きだから、犬と関係のあることしかできない、とソニーに入ったのにそんなこと言っている人がいたとしたら平行四辺形が小さくなって、環境エネルギー、会社のパワーが大幅に減じますよね。
 
短くなっちゃう。
 
逆に、会社寄りだとどうか。
 

社長が、“俺の言う通りにやれ"といって会社寄りに補助線を引くと、今度は個人のベクトルが大幅にロスしてしまう。
 
この環境で言えば、スタディサプリの藤原×西野の環境エネルギーと自分のエネルギーの平行四辺形の対角線上を狙って企画を出していくと、ものすごく実現しやすくなります。
 
ものすごい大きなエネルギーで。
 
自分が1人でやるより、僕が1人でやるより、西野さんが単独でやるより、はるかに実現しやすくなる。
 
「ベクトルの和」というのを頭に入れておいてください。
 

みんながよのなかフォーラムで書いてくれたこと、あれは高校生としてはすばらしい。
 

みんな100点あげたい。
 
でも150点取るにはどうするか考えてください。
 

それに何が足りないかというと、まったく調べ尽くしていないということ。
 

僕のことについても、西野さんについても。
 
もっと深く調べないといい企画にはなりません。
 

僕が力を貸すとしたら、僕のことをもっと知っている人になんですよ。
 

僕の、本当はやりたいけど言っていないことを言ってくれたら、それは協力する気になるよね。
 

藤原×西野の掛け算+君たちの掛け算で実現できるようになる。
 

そうなると人間、モチベーションがあがる。
 
相手のモチベーション引き出さないと!
 
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※ホワイトボードにサッカーグラウンドを書き、左側が藤原、右側が西野とし、それぞれを調べたのち、得意なことなどを書き出し、紙を貼るワーク

 
2人を徹底的に調査して、僕ので20個、西野さんので20個は出してください。
 
ゴールって書いてあるのは、僕の得意分野はもちろん教育の分野だから、ベースになっていいのだけど、もっと張り出して攻める感じじゃないとつまんないじゃん、僕にとって。
 
西野さんのゴールはもちろんお笑い、漫才ですよ。
 
ここにくれば西野さんは絶対に勝てるんだけど、ここにとどまっていておもしろい?
 
おもしろくないよね。
 
もっと前のほうで蹴りたいはずなんだよ。
 

2人のキャラのどれとどれをクロスさせるとおもしろいことになるか。
 

それをみなさんに企画してもらい、加担してもらい、実際に一緒にやってもらって目撃してほしいと思っています。