数学を使うとおしゃれ上級者になれる!? 日常で役立つ数学とは
「数学は社会に出たとき役に立つ!」と言われるけど、いまいちピンとこないのでは?
「身近に使われている例を見ればわかるかも!」ということで、『はたらく数学 25の「仕事」でわかる数学の本当の使われ方』を出版した、フリーアナウンサーの篠崎菜穂子さんに、数学を使う意外な職業や、数学の楽しさについてお話をうかがった。
この本では、数学や算数が実際の社会の中でどのように生かされているのか、幅広い仕事とともに紹介している。
美容師やパティシエ、パイロット、グラフィックデザイナー、アパレル販売員、ゲームクリエイターなど、高校生に人気の高い25の職業だ。
美容師が腕を上げるには、円周率をマスターすべき!?
篠崎さんによると、数学が導く裏付けや証明は、特に感覚的なセンスが必要な仕事では大きな助けになるのだという。たとえば、美容師がお客さんにパーマをかける時、円周率の考え方が生かされる場合がある。
「実際に美容学校でも、思い通りのきれいなウェーブを作るために、円周率の考えが必要だと教えているところもあるんです。具体的には、直径20mmのロッドを使って髪を1回転巻くためには、髪の長さがどのくらいの必要なのかを、円周率を使って求めれば良い、といった具合です」
上の場合、計算するとロッドの円周は6.28cmになるから、それに合わせて回転数や、使う箇所を決めることもあるのだとか。プロの美容師はいちいち計算してパーマをかけるわけではないが、理論を知っていると技術の習得の大きな助けになるという。
「場合の数」が得意になれば、おしゃれの効率UP!
また、服をコーディネートするアパレル販売員やスタイリストには、「場合の数」の考え方が生かされるという。「場合の数」とは、「さいころを2つ同時に振った時、目の組み合わせは何通りあるか」など、「ある事柄の起こりうる場合の総数」のことをいう。
「たとえば、トップス、ボトムス、ストールの組み合わせを変えて、どのくらいの数のコーディネートができるのか。5通りのファッションを楽しむためには、何アイテムが必要なのかと計算することができます。雑誌の“1カ月間コーディネート”と同じです。「場合の数」を意識すると、実際の生活で、「どんなアイテムを買えばコーディネートの幅が広がるか」がわかって、おしゃれの効率もUPすると思います」
ほかにも、パティシエやパン屋さんが、「数種類の材料の組み合わせで、どのくらいのバリエーションが出せるのか」などを考える際にも、非常に役に立つのだ。
アナウンサーの仕事にも、数学的な考え方が有効!
答えは1つだが、答えに行くための道筋(証明や公式など)が複数ある数学は、アナウンサーの仕事でも生かされているようだ。それが特にはっきりわかるのが、インタビューの時だという。
「こう答えてほしいなと思った時に、Aという聞き方をしてみる。ダメだったらBという聞き方、それでもダメならCと、いろいろな道を試してみることで目的にたどり着ける。それが、数学で問題が解けた時の達成感と似ているんです」
そういう考え方ができるのは、数学の解き方が身についているからだと日々感じるのだそう。「物事をいろんな視点から見て、ゴールにたどり着く」という喜びを実感して、『数学はこんなに楽しいんだ!』と思ってほしいと篠崎さんは言う。
「数学が苦手だから文系」と思っている人こそ、実は数学に向いている!
篠崎さんはアナウンサーになる前、数学の教員をしていた。生徒のテストを採点している時、「数学が苦手だと思ってしまう人ほど、向いている」と考えていたそうだ。
「正解ではないのですが、『別のアイディアで式を解いていき、考え抜いた末に出される答え』を見るのがすごく好きでした。そうした、一生懸命考えて、自分で何かを導き出そうとしている人のほうが、実は、数学に向いているんです。
たとえば、与えられた式を何の疑問ももたずに使って問題を解ける人は、高い点数が出せます。しかし、『この式はほんとに成り立つのかな?』などと疑問をもって自分なりに試行錯誤しながら、式をたてたり証明してみたり、こうしたユニークな考え方ができる人こそ、新しい解法を発見できるので、おもしろいと思います。」
そういう発想こそが、頭の柔らかさや独特なアイディアが求められる社会では生かされるのだという。「数学は苦手」と諦めてしまう人こそ、ぜひ数学を勉強してみてほしいと教えてくれた。
文系の分野を選ぶとしても、数学の知識はさまざまな仕事で役に立つ。数学が必要なのは「今だけ」と考えず、数学と仕事の身近な関係を知って、勉強のモチベーションを上げてみてはいかがだろうか。
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篠崎菜穂子さんブログ