警察からSE、SNS開発まで!心理学から広がる意外なキャリア
心の問題がクローズアップされる時代に注目の学問
「人の心」をテーマとする心理学は誰にとっても身近な学問。
特に今は、うつ病などの心身を脅かす問題や発達障害などの人間関係、コミュニケーションの問題が社会的にもクローズアップされている時代。
進学先として大学の心理学部・学科・専攻を考えている人もたくさんいるはずだ。
そこで気になるのが、心理学を専攻して卒業したあとの進路。一般的にイメージされやすいのは、カウンセラーなどの、「人とかかわり援助するような職業(対人援助職)」ではないだろうか。そうなると、「心理学に興味はあるけど、そういう職種に就くつもりはないなぁ」という高校生もきっといるだろう。
しかし、心理学を専攻したからといって、カウンセラーなどの職に就く人は、実は一握り。
大学卒業後に、臨床心理学系の大学院に進んで臨床心理士の資格を取り、対人援助職に就く人ももちろんいるのだが、それ以外の分野・仕事に就く人も非常に多いのだ。
最終的に臨床心理士を目指す学生は1.5割ほど
東京女子大学で心理学を教える前川あさ美教授(現代教養学部 人間科学科 心理学専攻)に実態を聞いてみた。
「本学の心理学専攻に入学してくる学生は、当初7~8割が臨床心理学に関心をもっています。
しかし、大学で認知心理学、発達心理学、社会心理学といった心理学を基礎から学び、実験や実習を体験する中で心理学の広い世界を知ると、臨床心理学にとどまらず、心のさまざまな側面へと好奇心を広げていきます。
その結果、卒業後、臨床心理士などの対人援助職を目指す学生は1.5割程度で、多くの学生は学部で深めた自己理解や対人関係への関心を土台に多様な仕事に就いています」
システムエンジニアなどIT分野への道も!
具体的にはどんな進路を学生は選んでいるのだろうか。学部卒業だけで、心理学の専門性をできるだけ直接的に生かしたいという学生は、公務員試験で心理職を目指したり、教員免許や介護・福祉系資格を取得したりして、福祉、保育、教育の分野に進んでいく。
一方、心理学専攻で学んだことを間接的に生かせる道に進もうとする学生の場合、一般企業の人事部門や、障害者や子ども専門の出版社を目指したり、地域コミュニティーへの関心から警察官を目指したりするケースも。
また、実験などで身につけたコンピュータスキルや統計処理の知識を生かして、システムエンジニア(SE)やSNS開発など、IT分野に進む人もいるという。
心理学は「理系」的要素と「文系」的要素をあわせもつ学問
心理学は文系的な面もあれば理系的な面もある学問。自分が、文系向きなのか理系向きなのかよくわからない、または、どちらかがとても苦手だという学生でも、心理学専攻での学びを通して、自分の中にいずれの力も育てるチャンスを得られるはず。どうだろう。最初に思っていた心理学へのイメージが変わった人もいるのでは?
「心理学は人間について学ぶ学問。他者だけでなく、自分自身の心にも向き合いながら、正解のない問いを考え続けることで培われる想像力や柔軟性は、どんな分野に進んでも役に立つはずです」
どんな仕事を選ぶかは今の段階で一つに決めていてもいいし、無理に決めなくてもいい。学びながらどんどん興味の範囲や視野が広がり、選択肢が増えていくのがこの学問の大きな魅力なのだ。