土にヒミツあり! 日本のアジサイが青くなる理由
今年も梅雨が近づいている。ジメジメとうっとうしい季節だが、雨の日を彩るアジサイになごむ人は多いだろう。
アジサイの赤、青、紫と色づく部分は、実は花ではなくガク。さまざまな色があり、その色が時とともに変わっていく様子はなんとも不思議だ。
そんなアジサイの色のメカニズムについて、理科のおもしろさの伝道師なべ先生こと、立命館宇治中学校・高等学校の渡辺儀輝先生に聞いた。
Q.アジサイが咲き始めから咲き終わるまでに、緑から青や紫へと色変わりするのはなぜですか?
A.大きく3段階に分けて説明しましょう。
①咲き始めは、ガクの中に葉緑素があるために緑色をしています。
②最盛期に向け、葉緑素は分解されて緑色が薄れていきます。同時にアントシアニンという色素が合成されることで青や紫に色づいていきますが、色の出方は環境によって違います。
③盛りが過ぎると、細胞中に二酸化炭素がたまってくることで酸化し、赤みを帯びてきます。老廃物がたまって色あせるという、いわば老化現象ですね。
Q.②の最盛期は「色の出方は環境によって違う」とのことですが、どんな環境ではどんな色になるのでしょうか?
A.簡単にいうと、アジサイが根を張る土が酸性だとアジサイの青が濃くなり、アルカリ性だと赤が濃くなります。
日本では青いアジサイが多くみられますが、これは土が酸性のためです。そう言うと大気汚染による酸性雨を心配されるかもしれませんが、日本の土壌はもとからやや酸性寄り。森林が多く湿潤な気候のため、二酸化炭素が溶けている雨の影響を受けやすいのです。同じ種類のアジサイでも、海外の乾燥地帯などのアルカリ性土壌に植えれば、日本とは違った赤っぽい色のアジサイが楽しめるでしょう。
Q.中学の理科で行うムラサキキャベツの実験や、リトマス試験紙の実験では、酸性のものには赤く、アルカリ性のものには青く反応したはず。アジサイの色の変化はそれと逆ですね。
A.そうなんです。土の酸性度によって土中のアルミニウムイオン濃度に違いが出て、それが濃いか薄いかがアジサイの色に影響するからです。
土が酸性の場合、土中にアルミニウムイオンができやすくなります。そのアルミニウムイオンを根が吸収し、ガクの中の色素アントシアニンなどが反応すると、アジサイの色は青くなります。
逆に土がアルカリ性の場合、アルミニウムイオンが少なくなり、本来のアントシアニンの色である赤みが強く出ます。
Q.同じ土に植えられたアジサイにも、さまざまな色みがあるのはなぜでしょうか。
A.水を吸い上げる根の元気度の違いが大きいでしょう。土にアルミニウムイオンがたくさん含まれていても、根に元気がなければアルミニウムイオンを十分に吸い上げられず、赤っぽくなります。ひとつの株でも、つながる根の元気度によって色の出方が変わるのです。
なんとアジサイの色から土の状態や根の元気度までわかってしまう?! 憂鬱な雨の日の通学は、道端のアジサイ観察を楽しみにしてはいかがだろうか。
もっと知りたい人はコチラ→
◆ミクロからマクロまで、自然界の現象を観察し、真理を探る【物理学】
◆物質の構造や性質などを実験を通して研究していく【化学】
【なべ先生】
立命館宇治中学校・高等学校 物理教諭 渡辺儀輝
今春、北海道の市立函館高等学校から京都府の立命館宇治中学校高等学校へ転任。FM番組の科学ニュース、ケーブルテレビの実験ショー、新聞の科学解説記事などで幅広く活躍。「すべての子どもたち、大人たちが理科好きになってほしい」と願っている。