親子で比較!高校時代の人気本ランキング
小学生から高校生までの子どもたちが今、どれくらい本を読んでいるか、どんな本を読んでいるかなど、読書の実態を調べる「学校読書調査」。毎日新聞と全国学校図書館協議会が毎年行っており、2012年度で58回目を数える。「せっかく58回の歴史があるのだから、昔の高校生が読んでいた本と、今の高校生が読んでいる本を比べてみるとおもしろいんじゃないか」と考えた。
そこで今回調べたのは今から28年前の1984年の調査と、2012年の調査の2つ。ちなみに28年前に15~18歳の高校生だった人は、2012年の今、43~46歳。ちょうど今の高校生の親の世代と重なる。自分の親が高校生だったころはやっていた本って何なのか、ちょっと興味がわかないだろうか?
まず1984年、今から28年前の高校生が1カ月に読んだ本のランキングは、1、2年男子の1位が「探偵物語」、3年男子1位が「時をかける少女」だった。女子は1、3年の1位が「積木くずし」、2年の1位が「探偵物語」だった。
「探偵物語」は1983年に薬師丸ひろ子主演で映画化され大ヒットした。「時をかける少女」は同じく1983年に原田知世主演で映画化されこちらも大ヒット。角川映画の黄金期を象徴する2作品となった。「時をかける少女」は、その後もアニメを含め3回映画化され、発表から40年以上たった今でも魅力が衰えない名作だ。
「積木くずし」は突然不良少女となったわが子との、200日間にわたる葛藤の日々を描いた手記。実話をもとに父親が執筆した。1982年に発表されるや、大きな反響を巻き起こし、300万部を売り上げた。1983年に放映されたTVドラマの最終回が関東で45.3%という高視聴率を記録した伝説の作品だ。
こうしてみると28年前からすでに、映像化作品が上位を占める傾向ははっきりしていたことがわかる。話題作が映画やTVドラマで映像化され、その話題性で本を買う人が増えるという構造がすでにあったのだ。当時のアイドルにあこがれて本を買った親世代も少なくないのだと思うと、なんだか親近感がわく。
一方で、文芸作品も健闘している。
1年男子の5位に「こころ」、2年男子の4位に歴史小説の名作「徳川家康」、3年女子では2位に「細雪」、4位に「こころ」がランクインしている。また1年女子で3位、5位に「雑居時代」「アグネス白書」が入っていることも印象的。これは現在のライトノベルの先駆け的存在といえるだろう。
※出典:第29回学校読書調査「最近1カ月に読んだ本は?」
次に2012年の第57回学校読書調査を見てみよう。
2012年、高校生が最近1カ月で読んだ本の1位は、男子では1~3年すべてで「もしも高校野球の女子マネージャーがドラッガーの『マネジメント』を読んだら」(以下「もしドラ」と省略)だった。高校野球と経営学の古典という意表を突く組み合わせで、幅広い世代で話題になった。
また“王様”から送られてきたメールに書かれた命令に従わなければ罰を受けるという謎のゲームに巻き込まれる高校生を描いた「王様ゲーム」が1、2年男子の2位にランクイン。「涼宮ハルヒの驚愕」など、シリーズもののライトノベルも人気が高かった。
女子では1・2年はお嬢様と毒舌執事が事件を解決する「謎解きはディナーのあとで」、3年は子どもを亡くした女性教師の復讐を描く「告白」が1位となり、男子とは異なる結果になった。ほかに現役医師が医療現場の日常を描いた「神様のカルテ」など、ストーリー性豊かな映像化作品が上位に入る傾向が強かった。
また3年女子で4位に「ノルウェイの森」がランクインしたのをはじめ、男女ともベスト20の下位ながら、「人間失格」、「こころ」などの文学作品が読まれていた。とはいえ28年前と比べると、いわゆる文豪の古典的な名作を読む高校生は明らかに減っていることがわかった。
※出典:第57回学校読書調査「最近1カ月に読んだ本は?」
※正式書名は「もしも高校野球の女子マネージャーがドラッガーの『マネジメント』を読んだら」
上位に入る本は、その年のベストセラー、流行だといってしまえばそれまでだ。でも、よく売れる本、よく読まれる本は、どこかにその時代の世相や価値観を映し出している。人々の心や社会に与えた影響も少なからずあるだろう。その本を読めば、その時代の空気を追体験する楽しみがある。
日頃、親や先生と世代間ギャップを感じる読者は、ぜひ自分と異なる世代に読まれた本を読んでみては? 想像以上におもしろく、刺激的で、「こんな本を読んでいたんだなあ」と身近に感じるきっかけになるかもしれない。