実在の風景を紙で再現! 大崎高校ペーパージオラマ部が熱い!

山や街の風景をミニチュアサイズでリアルに表現する“ジオラマ”。

 

その技術の高さを競い合う「全国高等学校鉄道模型コンテスト」という大会で、119の出場校の頂点に立ったのが、東京都立大崎高等学校の「ペーパージオラマ部」だ。

 

彼らが最優秀賞を受賞したのは、ハイジの村で知られるスイスの風景を再現したジオラマ。

 

他校の作品が、プラスチックや木材を使用している中、大崎高校は石橋や道路、建物など、ほとんどの部分を“紙”だけで作り上げたという! 

 

実在の風景を紙で再現! 大崎高校ペーパージオラマ部が熱い!

 

しかも彼らは、創部からわずか2年(!)、部員数10名でその栄光を手にしたというからすごい。

 

そこでさっそく、彼らの活動を見に行ってみることに。まずは、創部のきっかけを顧問の庭野裕先生に聞いた。

 

「当時、私が住んでいた家の近くに、紙だけでジオラマを創作する作家の田中秀幸さんのアトリエがあって、交流をもったのがきっかけです。学校で展示会を開いてもらったところ、紙で作ったとは思えない精巧な作品を見て、生徒たちも『すごい!』と興味をもってくれて。もともと私には、『手先を動かすのが好きな子や、運動が苦手な子が活躍できる部を作りたい』という思いがあったので、田中さんに講師をお願いして『部活にしてみよう』と決心しました」

 
 

■本物の建造物と同じ構造で作った紙の鉄橋は、強度最強!

 

ただ、電車を走らせたり、高さのあるビルを作るには、ある程度の強度が必要だ。それを紙だけで作り上げるって、一体どうやっているの? 2年生の山本くんに聞いた。

 

「紙は“ケント紙”という、画用紙ほどの厚さのものを使っているのですが、本物の建造物と同じ設計でパーツを組み立てているので、かなりの強度が出せるんです。電車や線路は市販のものを使っているので、その重さに耐えられるような構造にしています」

 

実在の風景を紙で再現! 大崎高校ペーパージオラマ部が熱い!

 

実際に、紙の鉄橋の強度を見せてもらうと、ペットボトルを載せてもびくともしない…! でもなぜ、紙にこだわるのだろう? ペーパージオラマのメリットって?

 

「紙は加工しやすく、0.1mm単位の細かいパーツも簡単に作れるんです。それに、材料費も高くないので何度でもやり直しながらリアルさを追求できるんです!」(2年生・間宮さん)

 

「ジオラマでは、普通は架空の風景を作ることが多いのですが、ぼくらは実在する街を再現することにこだわっています。細かい部分をリアルに表現できる“紙”を使って、誰が見ても『秋葉原だ』『銀座だ』とわかる作品を目指しています」(2年生・千葉くん)

 

紙へのこだわりは、リアルさを追求するためだったんだ!

 

実在の風景を紙で再現! 大崎高校ペーパージオラマ部が熱い!

 

看板も本物そっくりに再現!

 

看板も本物そっくりに再現!

 
 

■細部まで忠実に! 制作過程は相当な根気が必要

 

そんなハイレベルな完成度を求めるがゆえに、制作過程は相当大変なようで…、

 

「50年前の銀座の街を1/150サイズで再現したペーパージオラマでは、銀座のシンボル『和光』のビルの窓を作るのにかなり苦戦しました。窓枠の幅が0.5mmしかなくて、それが100個以上あったんです! 何度も失敗してやり直している時は、正直『もう嫌だ!』って思いましたね(笑)」

 

と、2年生の杉江さん。

 

実在の風景を紙で再現! 大崎高校ペーパージオラマ部が熱い!

 

そんな大変な作業をあきめずに続けられる理由とは…?

 

「チームで分担してやっているので、自分の担当分はきっちり完成させなきゃという責任感が生まれるんです。だから、最後まであきめずに頑張れるんだと思います」(杉江さん)

 

今後は、アニメのワンシーンの再現にも挑戦していきたいというペーパージオラマ部。プロフェッショナルな探究心と根気を秘めた彼らの活躍に注目したい!

 

実在の風景を紙で再現! 大崎高校ペーパージオラマ部が熱い!

 
 

***ペーパージオラマ部の作品はこちらで展示中
■「紙で再現! 世界遺産レーティッシュ鉄道アルブラ線」
展示場所:スイス大使館
展示期間:9月9日まで(4月25,26日は京王フローラルガーデンにて展示)

 

■「紙で再現! GINZA1964」
展示場所:銀座通郵便局
展示期間:常設展示