女子高生目線で開発! 目黒星美学園高校が作る災害用携帯トイレ
2011年の東日本大震災以降、震災に関する学習をしている高校は多い。
そんななか、特徴的な取り組みをしているのが、都内にある目黒星美学園高校だ。
この高校は「女性目線の防災」に取り組み、災害時に使える「携帯用簡易トイレ」を開発!
それを2015年に行われた下水道処理の技術や機器を紹介する「下水道展」で発表し、注目を集めたという。
でも、そもそも、なぜ簡易トイレを作ることになったのだろう? 制作に携わった生徒にお話を聞くことに!
被災地ボランティア研修がトイレに関心をもつきっかけに
「うちの学校では、東日本大震災の翌年から、現地でボランティア活動を行ってきました。その時、被災地の方から想像以上に過酷なトイレの現状を聞いたんです。断水されて自宅や学校内などのトイレは使えない。でも、設置された仮設トイレは数が足りず、においや衛生面もかなりひどかったとのことでした。そのため、水分や食事を控えて、トイレも我慢する人が増え、膀胱炎などの病気を発症したり、体調を崩したりする女性がたくさんいたそうです。そんな被災後の状況を知って、いざという時に役立つトイレ問題の対策に取り組み始めました」(1年生・服部百合さん)
仮設トイレは避難所の片隅に設置されることが多く、夜になると安全面に不安を感じる女性も多かったそう。
そこで彼女たちは、建物内にもともとある洋式トイレに、袋を装着して使う携帯トイレを作ろうと考えたという。
「調べてみると、洋式トイレに装着する携帯トイレはすでにいくつか販売されていたので、まずはいろんな商品を集めて研究しました。ボランティアに参加した20人で、『かばんに入れやすいデザインがいいよね』『においは絶対に抑えたい!』『気軽に使えるように低価格にしたいよね』などと改善点や要望を話し合ったんです」(2年生・福田李杜さん)
みんなの意見をもとに、理想の携帯トイレ作りがスタート。どんな材料を使えばいいのかと試行錯誤していた時、一緒にボランティアに参加した先生が、あるものを提案してくれたという。
「先生から、水分を含むとゲル状に固まる『吸水ポリマーシート』というものがあると教えていただいたんです。これは、犬や猫のペットシートに使われているもので、液体を固めることでにおいを軽減できるとわかったんです! このシートをメーカーさんから直接、大量購入すればコストも削減できるんじゃないかという話になって、早速販売元の会社に相談しました」(服部さん)
その結果、「簡易トイレに使うという発想はなかった。お役に立てるのならぜひ」と、彼女たちの活動を知ったメーカー側も快諾。
ロール状のシートが届いた後は、どれくらいのサイズにカットすれば必要最小限で済むのかを検証し、さらなるコスト削減を目指したそう。
「市販の簡易トイレは1回分が100円ほどだったのですが、私たちは20円〜30円程度に抑えることができたんです。実際に、吸水ポリマーシートの吸水率を調べようと実験をしたら、限度がわからず、袋が破けてしまって大騒ぎになったチームもいました(笑)。コスト面だけでなく、使用後のにおいについても『もっと軽減できないかな』とみんなで話し合い、病院で紙おむつなどを捨てる時に使われている『消臭袋』というものを使ってみることにしたんです」(1年生・大森彩央里さん)
見た目もかわいい女子高生ならではの携帯トイレが完成!
そうして半年かけてできあがった携帯トイレは、洋式トイレに設置するポリ袋、吸水シート、用を足した後にそれらをまとめる消臭袋の3点セット。パッケージには、女性が気軽に手に取れるよう「携帯トイレ」をイメージさせないかわいいイラストを添えるというこだわりも!
また、学園祭のバザーなどで販売した収益で、さらに被災者の方に「災害時用のトイレ」をプレゼントする活動を計画しているそう。
被災地の宮城県に持っていき、携帯トイレをプレゼントすると「これはいいね」「使いやすそうだね」と大好評だったとか。そんな実用性と女性らしさを兼ね備えた携帯トイレを作り上げた彼女たちが、活動を通して学んだこととは?
「携帯トイレを作ったことで、『高校生の私たちでも被災地のためにできることがあるんだ』と実感できたのは大きかったですね。この携帯トイレを全国に広めていくことでみんなの防災意識が高まれば、東日本大震災を風化させないことにも繋がると思います。だから、作って終わりではなく、これからは1人でも多くの人に持っていてもらえるようにアピールしていきたいです! それに、まだまだ改良したい点もあるので、被災地の方の意見を参考にしながら、もっと進化した携帯トイレを作りたいと思います」(2年生・原田理香子さん)
震災から明日で5年。あなたも、「被災地のためにできること」や「災害への備え」について、改めて考えてみては…?