未経験から世界へ!清瀬高校「少林寺拳法部」の強さの秘密とは?
東京都の清瀬高校には、全国的にも有名な少林寺拳法部がある。
本格的に活動を始めたのは4年前だが、そこからわずか1年足らずで、都大会や関東大会で優勝し、世界大会にも出場するほどの強豪校になったという。
しかも、ほとんどの部員が少林寺拳法初心者だというから驚きだ!
“演武"の完成度を競う少林寺拳法
でも、そもそも少林寺拳法ってどんな競技なんだろう?
清瀬高校少林寺拳法部顧問の福家健司先生に聞いた。
「少林寺拳法は、日本で生まれた武道です。競技の方式は、大きく2つに分かれていて、2人の選手が防具をつけて戦う『乱取り』と、技と技を組み合わせて流れとして見せる組手(くみて)の完成度を競う 『演武』があります。ただ、『乱取り』の試合には大学生以上でないと出場できないので、高校生は演武で競い合っています。高校の大会の演武は、1人で行う『単独演武』、2人1組になり、攻めと守りに分かれて型を披露する『組演武』、6人で同じ動きをする『団体演武』に分かれているんですよ」
空手のように、「相手を倒したら勝ち!」という格闘技とはちょっと違うみたい。
「演武で披露する“組手"は、突きや蹴りなどを組み合わせた6つの構成からできています。スピードや技の忠実性といった正確度と、気合や構えといった表現度を審判が採点し、勝負が決まるんですよ」(福家先生)
さっそく、稽古を見せてもらうと、部員たちが蹴りや突きの練習をしている真っ最中!「やあっ!」というかけ声の大きさと、みんなの気迫に思わず圧倒されてしまう…!
高く足を蹴り上げたり、拳を突き出してる姿は、かなり勇ましい!
実戦練習で気迫ある動きを身につける!
でも、こんな短期間で国内外で優秀な成績を残せるようになった“強さの秘密"って何なんだろう? 1年生の星野美咲さんに聞いた。
「試合で“技術点"を取るには、キレのある動きや、ピタっと止まる体幹の強さが必要なので、身体作りにはかなり力を入れています。特に、握った拳(こぶし)を床について腕立て伏せのような動きをする『拳立て』は、めっちゃキツいんですよ! 拳に体重が全部かかるのでマメができてすごく痛くて…。でも、これをやっておけば迫力のあるパフォーマンスができると思うと、頑張れるんです!」
「試合では、1人で演武する時でも、目の前に相手がいるように見えるくらい気迫があって、リアルな動きをすることが大切なんです。そのためにうちの部では、2人1組で防具を付けて、蹴りや突きなどを本気でやり合う実戦練習の『乱取り稽古』を行っています。この稽古をすることで、相手との距離感や、突きを入れるときの感覚が身につくので、力強い演武を見せられるようになるんです」(1年生・田中綾さん)
さらに、「技術だけじゃなく、精神面を鍛えることも重要なんです」と、部長の日野善嗣くん(2年生)。
「試合で上位に入る強い選手は、演武に入る前の立ち姿や歩き方から違うんです。でも、試合の時だけ意識してもダメなんですよね。日頃から礼儀作法や行動に気をつけて、内面から鍛えておかないと、本当に美しい立ち振る舞いはできないんです。そのためにぼくらがしてることは、脱いだ靴をそろえたり、あいさつをきちんとしたり…といった些細なことなんですけど、常に『拳士として恥ずかしくない行動をしよう』という意識をもつことで心が鍛えられていると思います。もともとぼくは『ケンカが強くなりたい』と思って入部したんですけど、やっていくうちに『少林寺では、体も心も一緒に鍛えることが大事なんだ』と気づきました」
福家先生も「一拳士として生きろ」と常日頃から部員たちに伝えているそう。
技術力も精神力も妥協なく磨いていることが、結果に繋がっているんだ!
最後に、なぜそこまで少林寺拳法に夢中になれるのか聞いてみた。
「少林寺をしていて、『イメージどおりの動きができた』って思えることってなかなかないんです。でも、鏡の前で何度も動きを確認したり、毎日コツコツ練習を続けていると『これだ!』って納得できる時があるんです。それがすごくうれしくて! また、あのときの気持ちを味わいたい! と思うと頑張ろうって思えるんです。それと、どんなに辛い練習でも励まし合える仲間がいることも、続けていける理由だと思います」(星野さん)