景気に左右される大卒求人倍率。企業規模でも差
リクルートワークス研究所が発表した2013年3月卒業予定の大学生・大学院生の求人倍率は1.27倍と、前年の1.23倍よりわずかに上昇した(グラフ①)。求人倍率が前年より上昇したのは、08年3月卒以来、5年ぶりだという。
そもそも求人倍率とはどういうものか、カンタンに解説しておこう。求人倍率とは、民間企業への就職を希望する学生1人に対する、企業の求人状況を算出したもの。計算式に表すと下記のとおりだ。
[求人倍率=求人総数÷民間企業就職希望者数]
つまり、「求人倍率が1.27倍」とは、「就職希望者1人に対して企業の求人が1.27件ある」ということ。数値が大きいほど、就職希望者にとって有利な状況といえる。
長期的な推移をみると、バブル全盛の1991年の求人倍率は2.86倍と3倍に迫る勢いだったが、景気動向によって大きく変動している。08年卒、09年卒は2.14倍と堅調だったが、リーマンショックが大卒就職を直撃した10年卒あたりからは、大卒求人倍率は下降を続けてきた。13年卒者で上昇に転じたのは、なんと5年ぶりだ。
ただ、この求人倍率の上昇の理由は、求人数が増えたためではない。13年卒も求人数の減少は続いている。しかし、それよりも民間企業就職希望者の減少幅のほうが大きかったため、求人倍率が上昇したというわけだ。
次に、求人倍率を従業員規模別にみてみよう(グラフ②)。従業員1000人未満の中小規模の企業の求人倍率は4倍を超えた時期もあるのに対して、従業員1000人以上のいわゆる大企業では好景気の時期も1倍に満たない。大手企業に人気が集中することが、こうした違いを生んでいる。
しかし、11年卒以降は中小企業の求人倍率が低下し13年卒は1.79倍、一方の大手企業の求人倍率は上昇し13年卒は0.73倍。中小企業にも目を向ける就職希望者が増えて、従業員規模間のミスマッチは少しずつ改善に向かっているようだ。
少し明るみがみられる大卒求人倍率だが、近年、採用予定数に満たなくても人材レベルは下げない「厳選採用」を行う企業は多く、グローバル化に対応するため外国人学生を積極的に採用する企業も増加している。求人倍率はわずかに改善したものの、学生にとって就職活動がラクになるほどではなさそうだ。
出典:リクルートワークス研究所「第29回ワークス大卒求人倍率調査(2013年卒)」