ロボット開発からヨガまで!「大学発ベンチャー」の現状と今後

「大学発ベンチャー」とは大学での研究成果を生かした起業のこと。教職員や学生が会社を立ち上げるケースもあれば、研究成果を活用して学外の人材が中心となって起業するケースもある。

 

大学では、民間だとなかなか手をつけられないさまざまな先端分野の研究が行われているため、今までにない新しいビジネスを生み出す起爆剤として社会的な期待も大きい。

 

しかし、日本は欧米と比べるとこの分野では大きく立ち後れている。90年代後半から大学発ベンチャーの設立件数は徐々に増加していったが、2004年の245社をピークに減少傾向に入り、ここ数年は2ケタ台。全体としては盛り上がりを欠いているのが現状だ。

 

要因としては、見込みのある研究があっても、それをビジネスとして展開するためのノウハウがないこと、それができる人材と大学を結びつける取り組みがまだまだ弱いことなどが挙げられる。もちろん、長引く景気低迷がチャレンジの意欲を削いでいる面もある。

 

しかし、そんななかでも、東京大学、京都大学をはじめ、着実に大学発ベンチャーを生み出している大学はある。筑波大学もその一つだ。同大学では2000年度以降安定したペースで起業件数が増加(2013年2月現在累計で95社)。

 

大学発ベンチャーは一般的にITとバイオが強いが、同大学ではそれらに加えて、スポーツ医学系の起業が目立つのが特徴。バイオ技術を生かした医薬品開発、災害用ロボット開発など大学発ベンチャーの王道系企業に加え、オンライン英会話スクール、最新脳科学に基づいた「サイバーヨガ」、スポーツ選手などを対象としたビジネス教育&職業紹介などバラエティーに富んだ事業が登場している。

 

同大学が成果を挙げている要因について、同大学産学連携本部ビジネス・インキュベーション・マネジャーの池田勝幸さんはこう話す。

 

「研究段階から起業後に至るまでの研究資金援助をはじめとする手厚い支援体制が一つ。さらに、私のような民間でビジネスを経験してきた起業支援の専門家を学内に配置していることも大きいと思います。加えて、アントレプレナーシップ(起業家精神)教育を充実させていることも成果につながっていますね」

 

さらに大学内でベンチャーが次々に生まれていることが全体の起業意欲を刺激している面もあると池田さん。つまり、支援体制や環境が整っていれば、あとは個々のチャレンジ精神の問題ともいえそうだ。

 

2012年度から文部科学省が「大学発新産業創出拠点プロジェクト」を新たにスタートしたこともあり、今後、大学発ベンチャーが活性化していく可能性は十分。「大学在学中に会社を立ち上げる!」という野望は決して夢物語ではないのだ。

 
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