「講義ってつまらない」を覆す!「バカ田大学」の講義に潜入
みんなは「大学の講義」と聞いて、どんなことをイメージする?「延々とつまらない話を聞かされて退屈」「難しそう…」と、マイナスイメージを持っている人も多いかもしれない。
でも、そんなイメージを覆す画期的な講義が東京大学にて開講された。その名も「バカ田大学」。
昨年12月から3月まで期間限定で開講されたこの特別講義は、漫画家・赤塚不二夫先生の生誕80周年を記念して企画されたもので、様々な視点で「“バカ"について解き明かす」という前代未聞の試み。講師陣も、イラストレーターのみうらじゅんさんや、脳科学者の茂木健一郎さん、バカリズムの升野英知さんといったそうそうたる顔ぶれだ。
一体どんな講義なのか…? その模様をご紹介しよう。
おもしろ写真からわかる“社会の真理"!?
まず訪れたのは、“ゆるキャラ"という言葉の考案者としても知られるイラストレーターのみうらじゅんさんの講義。当日は、雨という悪天候にもかかわらず超満員!
今回の講義のテーマは「社会」。開始早々、「本日は足元の悪い中、お越しいただいて深く深く深くお詫び申し上げます」とていねいすぎる謝罪で会場を笑わせるみうらさん。
「ここからは、準備をしてきたスライドで社会について説明したいと思います」と、まじめな話が始まるかと思いきや、最初に出された2枚のスライドは、あるテレビ番組に出演した“ゆるキャラ"たちの楽屋のネームプレートの写真。
1枚は「ひこにゃん」とだけ書かれた1人用の楽屋のネームプレートで、もう1枚は、たくさんのゆるキャラの名前が書かれた大部屋のものだった。これは“社会"と一体どんな関係が…?
「これは、ゆるキャラの社会ですね。実力があるゆるキャラはひとつの楽屋を準備してもらえるけど、実力がないゆるキャラはひとまとめにして大部屋に入れられてしまう。『社会とは、実力によって扱いが変わる』ということを示した写真ですね」
その後も、湖に並んだアヒルのボートの中で、ひとつだけ首が折れている写真を見せて「これは社会のイジメですね」と解説したり、タヌキの置き物が大量に並べられている写真を見せて「社会に出ると、同じ格好をして同じ方向を向かなければいけないんです」と話したりと、おもしろ写真から社会の真理を語るという、普通の講義ではあり得ない展開に!
新たな写真が出される度に客席からは爆笑が起こり、会場は大盛り上がり! おもしろ写真から語られる社会の真理は妙に説得力があり、思わず「なるほど」と納得してしまう…!
入試最難関の東大を舞台に、大人が大まじめに“バカ"をやる。こんなにぶっ飛んだ講義もあるなんてビックリだ!
誰でも天才になれる!? 茂木先生流の“天才論"!
また、別日に行われた脳科学者の茂木健一郎さんの講義は、みうらさんの講義とはまったく違うものだった。
茂木さんは、登壇するやいなや「『天才とは何なのか』を本日はガチでお話ししたいと思います」と宣言。バカを解き明かす講義で、それとは真逆の“天才"について語るとは…。一体、どんな内容になるんだろう。
まず、天才を語るうえで紹介されたのは「“thinking outside the box"(箱の外で思考する)」という言葉だった。
「これが天才の重要なポイントです。“箱"というのは、常識や既成概念を指しています。勉強に置き換えると、入試センター試験のような“すでに正解がある問題"です。今の日本では、正解のある問題をよく解ける人が『頭がいい』とされていますよね。でも、天才になるということは“箱"の外に出ることなんです。既成概念や常識を壊さなくちゃ天才にはなれない。常識から外れる“愚かさ"も必要なんです!」
なるほど。天才は賢さだけでなく“愚かさ=バカ"の要素も兼ね備えているってことなんだ!
さらに、
「センター試験で満点を取って東大に入ったとしても、それは問題の範囲を文脈に合わせて勉強しただけなんですよ。だから、実は東大には天才はほとんどいないんです」
と、大胆発言! センター試験といった今の受験制度までも批判してみせた。
その後は、海外の文献や研究結果を見せながら「天才」について解説するという学会スタイルで講義が展開。
今も保存されているアインシュタインの脳の解剖結果や、天才と呼ばれている偉人たちの自殺率や精神疾患にかかる割合の高さを示したデータなどを見せて、「天才と狂気には深い関係がある」「天才は幼い頃に家庭環境に問題を抱えていることが多い」といった説を紹介。
その中でも、会場の興味を引いたのは
「天才は、世の中で成功するために必要な資質を備えている」
という説だった。
その資質とは、以下の4つだという。
●高い目標を設定することができる
●ひとつのことを長期間継続できる
●他の人に合わせすぎない
●いろいろな人の意見に深く耳を傾けることができる
「これは、『天才は特別』という常識とは真逆の考え方なんです。というのも、これらの4つの要素は、誰もが実践できること。つまりは、みんな天才に近づけるってことなんですよ!」
そんな言葉に会場からは、どよめきが…。「天才」は生まれ持った才能だと思っていたけど、努力次第で誰もが近づける。この講義には、そんな茂木さんからの激励のメッセージが込められていた。
今回の特別講義のように、世の中には様々な“学びの場"がある。全国の大学を見ても、“怪物"を研究する「怪物論」(北海道大学)、「コーヒー学」(金沢大学)、「恋愛学入門」(早稲田大学)など、おもしろい講義がたくさん!「講義って難しい」「つまらない」という既成概念を捨てれば、勉強に対する姿勢も変わってくるかも?
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■「赤塚不二夫生誕80周年」公式サイト
■映画『マンガをはみだした男 赤塚不二夫』
※4月30日よりポレポレ東中野、下北沢トリウッド他全国ロードショー