モノづくりがもっと身近になる!進む3Dプリンタ技術!

この写真、何だかわかるだろうか? これは、「3Dプリンタ」を活用して作った人の形をしたグミ。

 

東京・渋谷にあるデジタルものづくりカフェ「FabCafe」で開かれたワークショップで、男子がバレンタインデーのお返しに自分の全身をかたどって作ったものだ。

 

「3Dプリンタ」とは、コンピュータ上で3次元に設計した図面をもとに、金属や樹脂(プラスチックなど)、石膏などを使って立体を作り出す装置のこと。

 

このグミの場合、全身を3Dスキャナでスキャンして作成した3次元データを3Dプリンタに取り込み、データのとおりの人型を作り出す→人型を元に、別の機械でプラスチックの型を製作→でき上がった型にグミの材料を流し込んで固める、という手順で作られている。同じ要領で、バレンタインデーに向けて女子の顔型のチョコレートを作るワークショップも開かれた。

 

こんなふうに、3Dプリンタを使ったモノづくりが今、注目を集めている。3Dプリンタ自体は20年ほど前から存在し、自動車や飛行機のメーカーで部品の試作などに使われていたが、これまでは1台につき数百万〜数千万円もしたため、購入できる企業・利用できる人が限られていた。それが、技術の進歩によって数万円程度のものも誕生し、格段に手に入れやすくなったのだ。安くなったことで、企業での活用が進むだけでなく、個人がオリジナルの「1点もの」を作ることにも活用され始めている。

 

冒頭のグミを作るワークショップを監修し、学校や企業への3Dプリンタの導入アドバイスなどにも取り組んでいる株式会社ケイズデザインラボの代表・原雄司さんは、3Dプリンタの可能性についてこのように話してくれた。

 

「実際のところ、数万円ほどの家庭用のプリンタの性能はまだそれほど高くありません。とはいえ、3Dプリンタが手に入りやすくなったのは、新しいアイデアを生み出す大きなチャンス。例えば、ある洗剤メーカーでは、3Dプリンタの導入によって社内で何十点と試作品を作れるようになり、より使いやすい液体洗剤のふたや注ぎ口を生み出しました。高校や大学で何かを作るときも同じ。作りたいもののアイデアが浮かんだとき、3Dプリンタがあれば気軽に試作できますし、試作品があれば、議論もアイデア出しもしやすくなります」

 

一方、大学でも、3Dプリンタを用いた研究が進められている。例えば医療分野では、人工骨や歯型、人工臓器などを3Dプリンタで作り出す研究が進められている。とりわけ、人工骨については、骨が欠けた箇所に埋め込む人工骨を患部に合わせて作る技術を東京大学が開発し、製造・販売の申請に向けた準備が進められている。

 

原さんは「3Dプリンタの使い方はアイデア次第」と話す。

 

「3Dプリンタはあくまで道具。すべてを3Dプリンタで作る必要はなく、部品のみを3Dプリンタで作り、既存のモノと組み合わせるような使い方もできます。いろんな発想で活用できるので、まずはさわってみてほしいですね」

 

iPhoneケースの図面をインターネットで探したり3DCADや3DCGを使って描いたりして作ってみる、体の一部や全身を3Dスキャナでスキャンして、自分型のフィギュアを作ってみるなど、使い方はいろいろ。首都圏では3Dプリンタを体験できる場所が増えてきているし、大学にもその動きがある。興味をもった人は、まずは実際に3Dプリンタに触れてみて、どんなことができるかぜひ体験してほしい。

 

<3Dプリンタなどのデジタル工作機器を体験できる場所・取り組み>
FabLab:東京都渋谷区、神奈川県鎌倉市、茨城県つくば市などに体験スペース。ワークショップも実施。

FabCafe:レーザーカッターや3Dプリンタを用いたワークショップを実施

東京大学 MONO-LAB-JAPAN: 3Dプリンタなどを用いたワークショップを開催

慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス:3Dプリンタを利用できる「ファブスペース」を設置

中央大学:サイエンスセミナーで3Dプリンタを用いた実験を実施